探偵雑誌日記(2021/07-08)

「横溝正史「大迷宮」」

横溝正史の作品は、多数の作品が複数回復刊されている、それはジュブナイルの分野でも同じだ。

長編「大迷宮」は昭和26年に1年に渡り雑誌「少年クラブ」に連載されたが、この作品からジュブナイルにも金田一耕助が登場した。

怪獣男爵というキャラが長編「怪獣男爵」から登場しているが、その2作目である。

保有しているのは、昭和51年4月の少年倶楽部文庫(講談社)「大迷宮」と、昭和54年6月の角川文庫「大迷宮」だ。

いきなり本文を読むと気が付きにくいが、章題がかなり異なっている、その目で見ると本文も異なるところがある。

少年倶楽部文庫版は章題の他に大章題もあり、挿絵も多い。

かなり後になり、角川文庫版は用語を書き替えていると判った、そういう時代もあったが2021年現在は初出優先に戻ってきているようだ。

またまた後日に少年倶楽部文庫版は4つの章が欠落していると知った、大章題が13になるが年に13回発行だったのだろうか。

(2021/07/06)

「小酒井不木「小酒井不木全集第三巻」」

小酒井不木は医学部教授だが病気で退職して、評論を書きその後に小説も書いた。

病気で39歳で死んだが活動内容は多彩であり、生前の再末期に探偵小説の一部を除く全業績が12巻の全集に編まれた。

作者の死後に、読者等からの希望で、省かれていた探偵小説を3巻に編集して加えて、全15巻となった。

「小酒井不木全集第三巻」は生前に作者自身が選んだ探偵小説の選集になる。

巻題は「探偵小説短編集」であり、29作の短編と、翻訳「ドーゼ作・スミルノ博士の日記」からなっている。

解説等は全く無く、小説が並んでいるだけだ。

追加3巻の予告があり「13巻・探偵小説短編集」「14巻・探偵小説集」「15巻・闘病余談及断片」となっている。

後の小酒井の短編集が幾度か復刊されたが、かなりの作品はこの第3巻に取られている。

(2021/07/21)

「水谷準「野獣」」

水谷準の作家デビューは早く、学生時代の大正時代になる。

作風は変格探偵小説と言われるものであり、幻想と怪奇と言われる内容が主体だった。

継続的に短編を発表したが、昭和初期に発表した作品がその後の短編集に多く取られている。

それと同時期には、雑誌編集長となったが、作品の発表も行っている、その後の作品には、ユーモア・ミステリーのジャンルもある。

第二次大戦後は作家専業になり、短編で探偵作家クラブ賞も受賞した、また捕物帳も書いた。

長編「野獣」は昭和31年の書き下ろし叢書の1冊だ。

著者近影写真と、「私の近況」が収録されている。

2001年死去だが、断続的に短編集が再編集で出されてきている。

(2021/08/05)

「「ロック」第1巻第2号」

本サイトでは雑誌「ロック」第1巻第3号の内容を紹介しているが、その後入手した第1巻第2号を紹介する。

1946/04/01発行で創刊2号に当たる、外観や紙質等の全体の作りはこのころの他号とほぼ同じだ(紙室は微妙に変わるが)。

小説は横溝正史「刺青された男」、小栗虫太郎「死霊」、コール「女優の怪死事件」、オー・ヘンリー「哀しき錯覚」、上田秋成「蛇性のいん」だ。

創作は横溝と小栗のみで、他は翻訳となるが翻訳者名は末尾に小さく記載されているだけだ。

「死霊」は小栗の遺作と言う事で、長編の出だしだけで途絶えている。海野十三と江戸川乱歩が小栗に関して文を寄稿している

翻訳は連載と短文であり、結局は読み切りの小説としては横溝のみとなっている。

次号予告は横溝の「蝶々殺人事件」連載と、渡辺啓助「幽霊島通信」があり、翌号で載ったが創作はその2編だった。

(2021/08/20)