探偵雑誌日記(2020/09-10)

「大阪圭吉「死の快走船」」

第二次世界大戦前の探偵小説作家として、特に本格探偵小説が人気なのが大阪圭吉だ。

1970年代に鮎川哲也や渡辺剣二のアンソロジーに多数収録されて、広く知られた。

そお後に単行本で幾度か復刊されたが、文庫版の2冊「ともらい機関車」「銀座幽霊」はロングセラーだ。

同じ文庫に「死の快走船」が出版された、15短篇を収録する短篇集だ。

大阪は本格物が優先的に復刊され、それ以外はレア古書として流通していた。

近年では、本格物以外の作品も復刊されて来ており、文庫版「死の快走船」には多彩なジャンルの作品が並んでいる。

埋もれた作品の発掘が行われている作者だが、普及版での作品集の出版もうれしい。

(2020/09/08)

「北洋探偵小説選」

昭和20年頃の雑誌「ロック」で活躍した作家に、北洋がいる、数少ない「ロック作家」の一人だ。

短篇ばかりを1冊分だけ、「ロック」を中心に発表した、現在は「北洋探偵小説選」として出版された、これは全集だ。

鮎川哲也が「幻の探偵小説作家を求めて」で取りあげられて、その内容が少ない情報となっている。

物理学者が、兼業的に短い期間に、探偵小説を書いていた。

デビュー作は「写真解読者」で以降は、科学・物理・光学・工学等の知識を生かした短篇を書いた。

舞台はドイツ等の海外が多いが、「清滝川の惨劇」のような日本が舞台の作品もある。

後期に入ると、フロイトの影響を受けた作品が加わり、夢判断や心理分析がテーマの作品がある。

書かれた当時は先端的な知識を取り入れて、科学の啓蒙も目的にひとつだったようだ。

(2020/09/23)

「大倉てる子探偵小説選」

大倉てる子(てるは、火篇に華)は第二次世界大戦の前後に活動した作家だ。

古書カタログで時々に著書が見つかるがレア本であり、ほとんど復刊されていない。。

情報が殆どなかった作者だが、「大倉てる子探偵小説選」が出版されて幾つかの資料の内容が紹介された。

作品リストは無く、作品の全貌は判らない、上記探偵小説選でも判らない部分が有るとの記述がある。

作品集「踊る影絵」とその中の短篇「踊る影絵」は名前的には知名度が高いが、内容はこの本で漸く復刊された。

「大倉てる子探偵小説選」には活動期全般に渡り多数の短篇が収録されているが、当然に作風やジャンルが広い。

それは戦中の探偵小説が禁止されていた背景もあるだろうし、発表出来る環境の変化が関わるだろう。

昭和30年台まで活動したが、読める作品からは、探偵小説時代の作品・作者の印象が強い。

(2020/10/07)

「高木彬光「刺青殺人事件」」

本棚整理中に、宝石選書の雑誌版の高木彬光「刺青殺人事件」を見つけた。

特徴的な表紙だが、本自体は痛みが激しく、丁寧に扱わないと分解してしまいそうだ。

旧字というか旧漢字で通常の感覚では読みにくい、ルビが多く振られている漸く読める。

挿絵もありそれは楽しめるが、見取り図は小さすぎて見えにくい。

有名な、江戸川乱歩の「序」と、「再販を祝す」が掲載されている。

雑誌版だが、乱歩の序文と、長編小説のみで、雑誌名が奇妙に見える。

106ページの少ないページ数で、いわゆる初稿350枚版だが、ぎっしり埋まった活字から重量感は強い。

読みやすい復刊で、初稿も、改稿版も読んでいるが、雑誌初出(再版だが)の雰囲気はかなり異なる。

(2020/10/23)

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