探偵雑誌日記(2018/07-08)

「鮎川哲也「白の恐怖」復刊」

作者が復刊を止めている作品がある。

作者の没後には、著作権継承者が同様に復刊を止めなければ出版されることもある。

例えば、司馬遼太郎の「坂の上の道」の映像化がそうだった。

鮎川哲也は「白の恐怖」を復刊しなかった、後期には改稿予定と述べた。

実際に「白樺荘事件」との題名で改稿を行ったが、中絶した。

2017年に中絶状態の「白樺荘事件」と、「白の恐怖」を含む作品集が出版された。

まもなく「白の恐怖」が文庫版で復刊される。

こんどは普及版であり、一般的には本格的な復刊だと言える。(2018/07/05)

「岡本綺堂作品の復刊」

岡本綺堂は、いくつかの作品が復刊されてきた。

だが膨大な作品量があるようで、未知の作品が次々と復刊されている。

そのジャンルは時代物から怪奇物から怪談や捕り物帳と広い。

たぶんまだまだ全貌ではなく、異なる広い分野もあっても不思議でない。

時代物が多いと、逆に作品が古くなりにくい性質があるようだ。

現代物で新しい情報を取り入れると、直ぐに代わる事がある。

古い時代に書かれた、その前の時代物だと読む方が時代を錯覚するようだ。

岡本綺堂作品には明治から昭和最初の時代を描く事は多いが、かってに時代物と思ってしまう。

たびたびに復刊と、珍しい復刊が混ざる。(2018/07/20)

「甲賀三郎の復刊」

甲賀三郎は戦中に死んだが戦前の作品数は多い。

プロ作家として多数のジャンルの作品を書いているが、入手可能な作品は少ない。

作品の傾向は、入手可能作に依存するとも言える。

理化学トリックを使用した、戦前の本格派の紹介が多い。

戦前の本格の意味には、戦後の横溝正史の「本陣殺人事件」以降が本格ミステリする意見が含まれる。

作風や作品傾向として、単純に本格ミステリと言いにくい部分もある。

一方では、戦前では犯罪実話も多く書かれた。

実際にどの程度が取材実話かは確認できない事が多く、創作もあるかのしれない。

戦前作家は幻想・怪奇を多く書いているが、甲賀にも見つかる。(2018/08/04)

「アガサ・クリステイの訳書」

海外作品の翻訳は、時間をおいて改訳・新訳されている。

逆に、一度翻訳されても放置されて絶版になることも多い。

絶版本は古書で読める事も多いが、いわゆる旧訳のままだ。

新訳は意外な変更があるようだ、日本語と英語とは直訳は難しいと判る。

ほぼ全訳の作者は多くはないが、存在する。

それが現役となると僅かだ、その一人がアガサ・クリステイだ。

同じレベルの現役の訳で、ほぼ全部が読める事は読者に利点は多いだろう。

実際は、著名作家は過去に多数回出版されて、多数の訳書がある。

そこでは読者は、新刊か古書かを選ぶ事になるのだ。(2018/08/19)