探偵雑誌日記(2020/11-12)

「島田一男「刑事弁護士」」

戦後の雑誌宝石も懸賞コンクールで、多数の新人がデビューした。

一期生5人の一人、島田一男はデビュー時にすでに文体が完成していて直ぐに流行作家になった。

そして50年以上も書き続けて、多数の作品を量産し、探偵役とシリーズを残した。

刑事弁護士・南郷次郎は初期・中期の代表客のキャラクターだ。

代表作の「上を見るな」が本格推理であり、作者としての代表作でもある。

他の長編ではサスペンスやアクション味の作品が多くあり、ハードボイルド探偵とも言える。

「刑事弁護士」は短編集であり作風は幅が広い、印象は行動派の探偵だ。

(2020/11/08)

「飛鳥高「犯罪の場」」

昭和20年の雑誌「宝石」の短編コンクールで複数の作家がデビューしたが、その中に飛鳥高がいる。

飛鳥は兼業作家として、長編11作と短編集2冊を刊行したが、1970年頃からは発表は減っていた。

また文庫化や復刊もほとんど無かったので、アンソロジーで見かける作者だった。

2000年頃から、漸く復刊や再編集での作品集の刊行が行われるようになった。

「飛鳥高名作選 犯罪の場」は短編集2冊の合本を核とした作品集で、初期短編中心にまとめられた。

近年は「飛鳥高 探偵小説選」が長編1作と、短篇の組み合わせの作品集として5冊刊行された。

長篇としては、「疑惑の夜」「死を運ぶトラック」「死刑台へどうぞ」「青いリボンの誘惑」「ガラスの檻」が含まれる。

どれも初の復刊となるのは、逆に驚きだ。

(2020/11/22)

「久生十蘭「顎十郎捕物帳」」

久生十蘭の小説も、そのなかの「顎十郎捕物帳」も入手しやすい方の本だろう。

いくたびか復刊されており、三一書房からの全集にも収録されている。

その全集の都筑道夫も解説もあわせて有名だが、そのなかで初出雑誌から単行本を経る段階で書き換えられたと紹介される。

異本・異テキストは研究者以外は注目する事は少ないのだが、近年にそれが出版される事がある。

久生は発表後も手をいれる事で有名だし、同じ素材で再度かかれた作品も多い。

それが噂だけでなく、纏められたのが国書刊行会からの定本久生十蘭全集だ。

そこでは幾つかの小説の異本版が別巻に収録されており、「顎十郎捕物帳」もいくつか収録されている。

題名も変わっているし、ごっそりと削られたり追加されたりしている、実際に読むとそれは必読にも思えた。

(2020/12/07)

「魔子鬼一「牟家殺人事件」」

魔子鬼一は2017年に少部数出版で短編集が2冊出版された事で、作品内容がかなり知られた。

森英俊の解説によると、1977年の自費出版の作品集「女のミステリー」以来だと言う。

この本はレア本で、見たことも、オークションや古書カタログでも見たこともない。

雑誌「宝石」中心の私の、古書雑誌履歴では知らない雑誌への掲載が多い事もわかった。

長編「牟家殺人事件」は雑誌「宝石」に一挙掲載された長編であり、古書でも見かける。

また2012年に文庫版の「「宝石」1950」の中に収録されたことで、入手が容易でもあり知名度が高い。

この本には他に評論や小説も掲載され、年譜もあり資料性が高いが、その時点では魔子は消息不明作者であった。

その後に消息が分かり新聞にも報じられた、そして2冊の作品集が編まれたのだった。

(2020/12/22)

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