「横溝正史のエッセイ」
横溝正史はいくつかのエッセイを書いている。
日記風に過去を語るものがある、デビュー当時から編集時代や病気療養時代を過ごす。
戦時中の執筆状況や、疎開時代と、本格ミステリーへの憧れが書かれた。
第二次世界大戦後直ぐの執筆開始と、新分野への進出。
そして、2つの雑誌への同時の連載を行う、新分野故に無謀と思える。
その事情と書けるという思いと、熱意を感じる。
探偵役の話しも書く、由利先生と三津木コンビと、新キャラクターの金田一耕助登場の話しだ。
作者自らが語る事が残された事は喜ばしい。(2017/09/08)
「宮野村子の作風」
宮野村子は、松本景子と大倉てる子に次いで単行本を出した女流作家だ。
単行本を出すには、多作家であり長編を書く事が多い。
宮野は変格派であり、対象は幅が広い、執筆期間も当時では長い方だ。
雑誌「宝石」向けに書いた「鯉沼家の惨劇」が有名だ。
それは本格探偵小説と言われるが微妙であり、代表作と言われるが作風は違う。
長さ的には長編よりは中編に近い、それは当時には多い長さだ。
宮野はその後にも、いくつか単行本を出しているが今では流通は少ない。
宮野の作品は、細部にはおおらかさがあり、思うままに書くというイメージがある。
昭和30年代に複数の女流作家が登場するが、その頃まで活躍した。(2017/09/23)
「岡本綺堂の多様な作品」
岡本綺堂は戦前から多彩な作品を発表している。
ミステリーとしては、最初の捕物帳の「半七捕物帳」が有名だ。
捕物帳はその後に多くの作家で、色々なタイプの作品シリーズが書かれた。
だが最初に書かれた「半七捕物帳」は、引退した半七老人が昔の話しを語る構成だ。
その語る内容はオーソドックな、情景描写と謎を追う内容だ。
最初に書かれた捕物帳が一番に、オーソドックな内容なのは興味深い。
岡本綺堂は怪談でも有名だ。
「青蛙堂鬼談」は代表シリーズで、集まった人が順番に奇妙な話しをする構成だ。
多数の人が多数の場所での話しをする事は、希な怪談に合う。(2017/10/08)
「浜尾四郎と戦前本格派」
人数が少ない戦前の本格ミステリー作家では、浜尾四郎は目立つ。
副業作家故に作品数は少ないが、ほぼ全部が単行本になっている。
しかも多くが現在でも現役で読める。
長編「鉄鎖殺人事件」が復刊された。
長編は「殺人鬼」と「博士邸の殺人」を含めて3作で、4作目は中絶とされる。
短編は、ほぼ1冊の作品集「殺人小説集」に収録される。
4作でほぼ全作読めるので、その方面の愛好者は完読状態に近い。
戦前の本格ミステリ長編は、数が少なくて、復刊されるのはより少ない。
復刊時には漢字が現在使われている文字に変えられ、文語表現が口語に変えられて、読みやすくなる、それは意味がある。(2017/10/23)