探偵雑誌日記(2019/09-10)

「銭形平次捕物控 傑作集」

オンデマンド版で捕物小説が復刊されていて、ファンは注目だ。

ファンには捕物帖ファンと、作者へのファンがいると思う。

野村胡堂作の、銭形平次捕物控は作品数の多いシリーズとして知られる。

テレビ・映画・演劇に多数回演じられていて、知名度は高いが小説はそれより読まれていないと思う。

映像のイメージは小説と異なるが、膨大な原作はそもそも入手困難な面もある。

文庫版での復刊はうれしい事だ、だが傑作集の題名のように部分的な選集としての復刊に留まる。

文庫版での全集は無理なのだろう、将来的な全集での復刊を別に期待しよう。

(2019/09/14)

「小酒井不木「恋魔怪曲」復刊」

没後に時間が経過した作家2人の交流を取りあげる「ミステリー・レガシー」企画がある。

文庫版で年1回ペースで3回目は、小酒井不木と森下雨村だった。

どちらもゆっくりと復刊も行われている作者だが、勿論全貌は復刊だけでは不明だ。

森下雨村は長編「丹那殺人事件」を中心に構成されている。

一方の小酒井不木は長編「恋魔怪曲」と短篇4作と随筆で構成されている。

「恋魔怪曲」は初見の作品で、短篇の復刊が多いこの作者としてはレアなのか。

小酒井の中編と長編の数はどれくらいなもだろうか、「疑問の黒枠」以外は話題に昇り難い。

双方共に大正時代から登場する、乱歩登場から見ても古く登場した作者だ。

現代の文章に直して掲載されており読むのに支障はないが、雰囲気は現代の作品とは異なる。(2019/09/29)

「高木彬光「千両文七捕物帳」」

オンデマンド出版で、高木彬光「千両文七捕物帳」3巻が完結した。

時代小説も多数書いた、作者の捕物帳であり、一部は春陽文庫の2冊に20編集められていた。

今回は、雑誌発表後に単行本未収録だった短篇を加えて全集とした。

シリーズ全作品に加えて、千両文七が一部で登場する「私版天保六花選」4作も加えた。

「私版天保六花選」は6人中4作のみであり、千両文七は2作に登場する。

千両文七シリーズは、捕物帳でもいくつかの特徴がある。

レギュラーが文七と部下の勘八だけで、女っ気がない。

幽霊や不可解談が圧倒的に多く、人情物がほぼない。

(2019/10/14)

「笠井潔と矢吹駆シリーズ」

笠井潔が描く、矢吹駆を主人公にしたシリーズがある。

デビュー作「バイバイ、エンジェル」から3作が書かれ、時間をおいて「哲学者の密室」以降が書かれた。

プレシリーズに位置する「熾天使の夏」を除いては、超長編作が続いた。

通常長編の2倍かそれ以上のページ数の長い作品であり、読者を悩ませたと言える。

異色の番外編の「青銅の悲劇」の次ぎに、「吸血鬼と精神分析」を出した。

以降は雑誌には複数作を連載したが、単行本としては出版されていない。

質も量もジャンルも、マニア的な本になりそうだが、未単行本というのは厄介だ。

長期連載が多くて、雑誌のバックナンバー探しはまた厄介だ。(2019/10/29)

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