「銭形平次捕物控 傑作集」
オンデマンド版で捕物小説が復刊されていて、ファンは注目だ。
ファンには捕物帖ファンと、作者へのファンがいると思う。
野村胡堂作の、銭形平次捕物控は作品数の多いシリーズとして知られる。
テレビ・映画・演劇に多数回演じられていて、知名度は高いが小説はそれより読まれていないと思う。
映像のイメージは小説と異なるが、膨大な原作はそもそも入手困難な面もある。
文庫版での復刊はうれしい事だ、だが傑作集の題名のように部分的な選集としての復刊に留まる。
文庫版での全集は無理なのだろう、将来的な全集での復刊を別に期待しよう。
(2019/09/14)
「小酒井不木「恋魔怪曲」復刊」
没後に時間が経過した作家2人の交流を取りあげる「ミステリー・レガシー」企画がある。
文庫版で年1回ペースで3回目は、小酒井不木と森下雨村だった。
どちらもゆっくりと復刊も行われている作者だが、勿論全貌は復刊だけでは不明だ。
森下雨村は長編「丹那殺人事件」を中心に構成されている。
一方の小酒井不木は長編「恋魔怪曲」と短篇4作と随筆で構成されている。
「恋魔怪曲」は初見の作品で、短篇の復刊が多いこの作者としてはレアなのか。
小酒井の中編と長編の数はどれくらいなもだろうか、「疑問の黒枠」以外は話題に昇り難い。
双方共に大正時代から登場する、乱歩登場から見ても古く登場した作者だ。
現代の文章に直して掲載されており読むのに支障はないが、雰囲気は現代の作品とは異なる。(2019/09/29)
「高木彬光「千両文七捕物帳」」
オンデマンド出版で、高木彬光「千両文七捕物帳」3巻が完結した。
時代小説も多数書いた、作者の捕物帳であり、一部は春陽文庫の2冊に20編集められていた。
今回は、雑誌発表後に単行本未収録だった短篇を加えて全集とした。
シリーズ全作品に加えて、千両文七が一部で登場する「私版天保六花選」4作も加えた。
「私版天保六花選」は6人中4作のみであり、千両文七は2作に登場する。
千両文七シリーズは、捕物帳でもいくつかの特徴がある。
レギュラーが文七と部下の勘八だけで、女っ気がない。
幽霊や不可解談が圧倒的に多く、人情物がほぼない。
(2019/10/14)
「笠井潔と矢吹駆シリーズ」
笠井潔が描く、矢吹駆を主人公にしたシリーズがある。
デビュー作「バイバイ、エンジェル」から3作が書かれ、時間をおいて「哲学者の密室」以降が書かれた。
プレシリーズに位置する「熾天使の夏」を除いては、超長編作が続いた。
通常長編の2倍かそれ以上のページ数の長い作品であり、読者を悩ませたと言える。
異色の番外編の「青銅の悲劇」の次ぎに、「吸血鬼と精神分析」を出した。
以降は雑誌には複数作を連載したが、単行本としては出版されていない。
質も量もジャンルも、マニア的な本になりそうだが、未単行本というのは厄介だ。
長期連載が多くて、雑誌のバックナンバー探しはまた厄介だ。(2019/10/29)