探偵雑誌日記(2017/05-06)

「甲賀三郎作品の復刊」

甲賀三郎は昭和20年の死去だが戦死ではなく、病死だ。

作品数は多く、著作権は早くに切れているが作品の全貌は明らかでない。

復刊は定期的に僅かずつ行われているが、作品数と比較して一部としか言えない。

正史・乱歩でも完全といえないくらいなので、完全はもとめても仕方がない。

それでも最近は、出版的には上向いていて、甲賀三郎探偵小説選3冊と長編復刊がある。

ただし資料的にはネットサイトの「甲賀三郎の世界」が圧倒的に充実している。

幾人かの故人作家のサイトが作られているが、甲賀三郎も少ない例だ。

本の復刊はその紙の出版的な性格がある。(2017/05/10)

「香山滋とゴジラ」

戦後第1期の作者の一人の香山滋はそのジャンルが特徴だ。

SF的・幻想的・秘境的とか多様に言われる、現実の世界を離れた世界を描く。

デビュー作の「オランペンデクの復讐」から新人類を探す・遭遇する話しだ。

人見十吉が秘境を探検するシリーズも有名だ。

活動後期に書いたのが、映画「ゴジラ」の原作だ。

原爆実験の結果か誕生した放射能怪獣という設定は、原爆問題への抗議も含んだ。

ただそのインパクトは、その後の怪獣ブームから多くの特写映画を誕生させた。

ゴジラ自体も一人歩きして、大きさやデザインも変わり続編が作られている。

米国製のパソコンゲームのシムシティの東京の自然災害が「怪獣の襲われる」のは有名だ。(2017/05/25)

「森下雨村の位置付け」

江戸川乱歩を日本の探偵小説の祖とする事は一般だが、デビューが早い作家は他に居る。

創作よりも翻訳・翻案で有名なのが黒岩涙香であり、冒険小説の押川春浪へと繋がる。

乱歩より早いデビューは、横溝正史や森下雨村がいる。

横溝は戦後の本格ミステリで有名になった。

森下雨村は編集者として有名だが、その埋もれた作品が掘り起こされている。

登場した頃にSFや冒険や探検物が書かれている。

その多彩さと先駆的さに、日本の歴史をかえそうなものが多い。

内容と量的に、前後の時代の作品をと較べても多彩で大きい。

かなり時代を先取りした感が強い。(2017/06/09)

「小栗虫太郎は難解さを楽しむのか?」

小栗虫太郎の小説は判り易さを拒絶している。

小説内に色々な情報を取り入れる手法を採る。

作家には限界があるから、それは見かけは膨大な情報に見えても、真実の情報かは不明だ。

小説は真実でなくて作者の想像力で見かけ上をどう見せるかに注力する。

読者はその外見を感じて読むか、想像力をそのまま受け入れる方法がある。

第三の真実を読み解く事は非常に難しい、同時にそれが面白いかは不明だ。

ただ、その不明な事にとりくむ人は、継続的に出ている。

代表的な「黒死館殺人事件」の復刊は、その部分の解明と注記に力をそそぐ傾向がある。

それ故に復刊本が、それぞれに個性を持つ事が多い。(2017/06/24)