探偵雑誌日記(2020/01-02)

「戸川昌子「緋の堕胎」」

戸川昌子は、時々に復刊される作者だ。

復刊された長編としては、「大いなる幻影」「火の接吻」「猟人日記」などがある。

短篇集は単純な復刊は少ない、それは本1冊に含まれる量の問題だろう。

現在はノベルスブームが過ぎて、1冊の長さ(原稿用紙換算枚数)が1.5-2倍に増えている。

昭和の短篇集を復刊するには枚数が少ないので、再編集が必要のようだ。

復刊短篇集「緋の堕胎」は、同題の短編集に他の短編集からの3題を加えたという。

最近は復刊、特に再編集短編集を編む編集者で重複を避ける傾向があり、復刊本好きにはありがたい。

(2020/01/12)

「南條範夫「月影兵庫シリーズ」」

南條範夫「月影兵庫シリーズ」は、映画・ドラマで知名度が高い。

素浪人として知られているが、設定は幕府にも関わる家柄で、そもそもはそこの事件に絡んだという。

「月影兵庫ミステリ傑作選 血染めの旅籠」は複数の短篇集から17作を集めた再編集作品集だ。

シリーズは途中から明確な目的なしに、巡察的な要素はあるが、全国を旅して回る設定になった。

主人公の兵庫は江戸在住時に結婚したが、妻子を流産で一度に無くして旅に出る事になった。

江戸が舞台のシリーズキャラには妻とか女性が絡むが、旅となるといなくなるようだ。

ミステリ傑作選なので選んだかも知れないが、ミステリ味もかなり強い作品が多い。

剣豪小説であろ時代ミステリでもあると言える。

(2020/01/27)

「榊原姿保美「青月記」」

榊原姿保美は1900代の末から2000代初めに作品を書き、途絶えた。

現在では新刊も復刊も無く、本の入手は古書しかない。

作風とテーマは特殊で、復刊されるかは微妙だとも言える。

「青月記」はデビュー作を含む作品集であり、少し書いた時間がずれた3作だ。

短い期間に急激に作風が拡がったと言える。

その変化で、その後の作品はミステリー味や伝奇味や怪奇味が強くなった。

いわゆるエンターテイメント性の増加となった。

特異な内容故に、出版社的にマイナーな本が多い。

(2020/02/10)

「栗田信「中州砂六シリーズ」」

栗田信の「醗酵人間」の復刊で知られたが、正体不明の作者だった。

2019年に少部数出版で、「栗田信傑作集」の上下2冊が出版されて、その作品がかなり読めた。

「醗酵人間」の奇妙な内容と比較するとおとなしいが、奇妙な作品群が存在した。

森英俊・日下三蔵の解説に依ると、1953年から約30年作品を発表した。

ジャンルはミステリから時代小説やSFや怪奇小説を含むエンターテイメント全般だ。

中州砂六は、栗田信のペンメームだが登場人物でも」あり、和製シャーロックホームズとして活躍する。

貸本小説が多かった時代に、多数の作品書き、ジャンルをまたぐオールランド作家だったという。

そして雑誌発表作の全容はまだ判っていないともされている。

(2020/02/26)

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