探偵雑誌日記「昔の連載は、単行本化は前提でなかった」
現在は、雑誌連載長編・連作は基本は、完結後に単行本化されています。
逆に言えば、単行本を出したい作家に連載を依頼する傾向です。
古い時代は、かならずしも単行本化は前提でなかった様です。
そもそも、長編でも連載は少なかったです。
古くは、長編が少なく、戦後以降は一括掲載が増えました。
そして、雑誌に掲載されただけで今だ単行本化されていない作品が多く残りました。
今となっては、復刊されるのはレアなケースになりました。
昔は、雑誌単体で商売をしていたふしがありますが、廃刊が多いのは、今と同様に経営は難しかった様です。
人気作家の原稿を集める事の難しさは、当時も同様だったのでしょう。(2012/05/04)
探偵雑誌日記「つぶれた活字」
紙の質と活字の質で、印刷の多くが決まります。
戦後あたりは、紙の不足で1冊の雑誌でさえ、色々の紙質が混ざっています。
色も厚さも異なるので、やや不気味です。
活字印刷技術もまだまだで、かつ紙がばらばらですから、印字がしばしばつぶれます。
印刷機も迷惑と思うが、読者はきわめて読みがたいです。
印字が強くて、紙を破ったり裏に突き抜けたりは普通にあります。
まるで、虫食い算の小説版のごとくで、抜けた字をとばすか想像して読むしかありません。
そもそも旧字体が多い時代ですから、まともでも読みにくいですのに、抜け字は厳しい。
短い小説でも多大な時間がかかります。(2012/05/19)
探偵雑誌日記「単行本化時の改稿」
小説にはベストはありません、作者はベターを目指します。
きりがないのでどこかで妥協しますが、初出で満足は少ないです。
単行本やアンソロジーに取られる時に、加筆・訂正が行われる事は多いです。
古い雑誌では、旧かな使いの新かな使いに変更は普通です。
単純な誤植や、旧漢字の変更は出版社で規定がありそうです。
ただし内容は、著作者死去の時は変更は難しいです。
実は、わずかでも修正した方がよい所は沢山あります。
たぶん、著者も同じと思えるのですが、本人の承諾なしに変更は難しいです。
従って、死後出版はレベルが下がる事は避けられません。(2012/06/03)
探偵雑誌日記「SF・ミステリの先駆者・海野十三」
科学と小説で戦前・戦後に活躍した海野十三は、名前の読み方が不統一です。
現在では、ほぼ「じゅうざ」に統一の方向です。
戦後直ぐに、多くの未完作品を残して亡くなりました。
その幅広い作品内容は、発表誌も幅広かったです。
出身の徳島には、記念碑がありますが、生誕地付近の初代が残ったままで2代目が作られました。
徳島駅のすぐそばの市立公園内の2代目のほうが、訪問はしやすいのですが、2つある事も珍しいです。
どちらも、江戸川乱歩の文が掘られていますが、2代目は加えて海野十三の文も掘られています。
加えて、徳島県立図書館の一隅に常設展示があります。
最近増えている、SF要素のあるミステリーも海野は多く残しています。(2012/06/18)