探偵雑誌日記(09/05-06)

探偵雑誌日記「著者の消息不明」

古い雑誌の小説等の著者のプライベートデータがある事はむしろ希です。その後、有名になったかあるいはその時点での詳しい紹介 が有る場合です。

ただし後者の場合は、書き続けないとその後は不明になります。

それでは、ある程度有名な作者はと言うと、現在は行方不明も増えています。アンソロジー等を組むと複数の作家の消息を問い合わせる 呼びかけが書かれています。

ひと昔前は、消息が分かっていた人も時間の経過と共に不明になってしまいます。わずかに例外的に逆のケースも存在しますが、本当に 例外的です。

探偵小説は戦前戦後直ぐは、まだ狭い世界だったと言われていますから、著者以外は周辺も少数の人しか知らない時代かもしれません。

実は、消息不明は作者の生存・没年が不明という事ですから、著作権の生きているかどうかも分からない事になります。

作家の消息を含めた生存・没年が多く分かっているのは最近のデビュー作家だけです。でも作品が少数だといずれは同じになるかも しれません。(2009/05/15)

探偵雑誌日記「雑誌の発行日の定期性」

雑誌だから定期的に発行されるとは限りません。その常識のような事が守られている時は、比較的運営が順調だと言えるでしょう。

ただし多くの雑誌を発行している出版社は例外です。雑誌の創刊・廃刊は戦略的で、全体の資金繰りが難しくなる前に対処します。

戦前・戦後直後の探偵雑誌は、寿命が短いものが多いですが、廃刊になる前に発行の不定期化と、誌面の刷新・増刊の発行等の 変則的な状況になる事が多い事が分かっています。

少数の雑誌のみを出版している場合は、発行元の資金繰りが悪くなると、上記の現象や対策が行われ易いのでしょう。

雑誌を定期購読している人は分かるでしょうが、不定期発行になると相乗効果で購読者が減る事になります。

増刊は本編雑誌の安定発行が前提にあれば、問題はないでしょうが、発行に無理が感じる状態は危険でしょう。

本には奥付けがありますが、その内容が実際の発行日と激しく食い違う時も、廃刊の予兆と言えるでしょう。(2009/05/30)

探偵雑誌日記「雑誌の埋め原稿」

雑誌には短い期間での編集が必要です。

従って予定原稿を並べると、空白ページや場所が生じます。

上記空白が、不自然ならば大幅な組み替えか、「埋め原稿」での対応となります。残った隙間の量で何かを書く事は慣れが必要 です。

ただ、時間的にも編集者かその付近の人が対応する事が多いでしょう。

無記名で、書いた本人も忘れてしまう原稿です。日本では、編集長経験のある作家が当時は多かったですが、全集を作るとしても もう埋め原稿を確認する事は出来ません。

埋め原稿でなくても、無記名原稿はかなり存在します。(2009/06/14)

探偵雑誌日記「未成熟な犯人当て」

探偵雑誌では戦前から「犯人当て」が行われていました。その名称は色々ですが、いわゆる懸賞形式です。

エラリー・クィーン等の「読者への挑戦」とは異なり、伏線から論理的に犯人と犯行を推理するものは戦前にはありません。

現在でも、類似の本や作品を見る事はありますが、本格ミステリでの「読者への挑戦」とは分けて扱う必要があります。

トリックや犯人当てのみがミステリではないとの認識は、現在でも興味のない人には理解されていません。まして戦前ではやむを 得ないと言うべきでしょう。

本格ミステリのフェアプレイの一つの形としての「読者への挑戦」が確立するのは、戦後です。そしてその形式は必ずしも、ミステリ の主流とは言えない時期が長いです。

本格とは言っても、必ずしも数的に主流ではないです。(2009/06/29)