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酒類通販販売

酒類の製造免許は1895年に販売免許は1938年に制度が作られ、1953年に酒税法が制定されて、以降に度々改正されてきた。
1989年に「通信販売酒類小売業免許」が「一般酒類小売業免許」と共に設定された、それは都道府県を越えた複数地域での通信販売の免許だったが、通信販売酒類小売業免許で販売できる酒類は「一般酒類小売業免許」の酒販店では購入が難しい酒類に限られた、(例えば、地酒や輸入酒)。
1994年の酒税法の改正により、ビールの製造免許の最低製造量が清酒と同じに引き下げられて、ビール製造が中小メーカーにも可能になり地ビール誕生に繋がった。
2006年の法改正で「通信販売酒類小売業免許」を取得すればネットショップ専業でも酒類販売が可能になった。
ただし「通信販売酒類小売業免許」設定以前は、酒類免許は「無制限」な酒類免許であり、電子商取引の通信販売でも品目・地域制限がかからず、古い時代に取得した「酒類小売免許」の買収等で制限を受けない「抜け道」があったとされた。

酒類販売の免許取得には「1:人的要件」「2:場所的要件」「3:経営基礎要件」「4:需給調整要件」が必要な4要件とされる。
「1:人的要件」は法令違反での罰則とかの履歴等で、「3:経営基礎要件」は資金や経営状態の判断で、「4:需給調整要件」は適正な仕入れ・販売や適正な品質・価格が可能かの判断などになるとされる。
酒類通販販売では「2:場所的要件」が問題になりそうで、事前の書類での明確化が必要となるとされる。例えば販売場について以下の例がある、要請があれば全て資料提出が必要になる。
1:自己所有の戸建て>原則可能
2:自己所有のマンションの1室>マンション管理規約等で問題無い事
3:賃貸マンションの1室>2:+管理者の事前承諾
4:賃貸オフィス>賃貸借関係の明確化資料
5:オフィスに間借り>間借り元賃貸人・不動産会社・所有者等の確認資料
6:レンタルオフィス>専用使用の可否
7:バーチャルオフィス>原則不可
8:自宅のパソコンのみ>自宅住所で免許申請でどうか

2006年の法改正で「通信販売酒類小売業免許」を取得すれば、ネットショップのみの専業でも酒類販売が可能になった。
通信販売酒類小売業免許
 ・2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、通信販売によって酒類を小売することができる。
 ・ただし「課税移出数量」が3000キロリットル以上で、日本国内の酒造メーカーが製造・販売する酒は、通信販売酒類小売業免許では扱えない。
  販売出来る品目は、日本産の酒は地酒等小さな製造場で製造されたもの、または輸入酒に限られる。
 が内容だ。
さらには通信販売酒類小売業免許を申請する場所は所轄の税務署であり、通信販売酒類小売業免許が取得できる場所については(前回の「2:場所的要件」参照)、国税庁では「他の酒類製造場や酒屋、飲食店と同一の場所ではないこと」「お酒の売り場が区画割り、代金決済の独立性、他営業主体との区分が明確であること」 の2つがしめされている。
ネットショップのみの専業では、一般の店舗販売と比較してどこでも開業して営業が行えそうだが、実際は酒類販売の免許取得には書類で明確化が必要とされている。

通信販売酒類小売業免許(再掲)
 ・インターネット、チラシ、カタログによる通信販売
 ・輸入酒は販売制限なし
 ・国産酒は大手メーカーの酒類は取扱い不可(3,000kl制限。)

上記の通りで、ネットショップを含む通信販売の場合には販売出来る酒類には条件があり、一般の酒屋で販売されている大手メーカ-のビールや大手蔵元の日本酒等は扱えなく、地酒か輸入酒に限定される。
大手メーカー・蔵元かどうかの基準は前回でも述べた(「課税移出数量」が3000キロリットル以上の日本国内の酒造メーカー)だ。
通信販売で扱える規模の小さな蔵元でも、取引の許諾を得る必要があるが一般的に簡単でないとされる、そして免許の申請時の必要書類の中には、酒類の製造者の証明書があるので事前に製造者・蔵元が決まっている場合にのみ、申請できる。従って免許を先に取得して、後から製造者・蔵元を探す方法は出来ない。

地酒は酒税法で製造免許をとるのに必要な最低製造量が60KLに決められている、1994年の酒税法の改正でビールの製造免許も最低製造量がそれまでの年間2,000KLから地酒と同じ60KLに引き下げられた、これでビール製造も中小メーカーにも可能になり全国で地ビールが誕生した。
酒類通販販売許可を得るには多数の必要書類の中に、地酒の製造元(蔵元)の合意書(証明書)が必要といわれる、蔵元との取引が可能と示す書類として免許を取得後に販売する事の合意書も税務署に提出が必要とされる。
酒販免許は具体的に「どこからどの酒を仕入れて、どこでどの量を何時から販売予定」の具体的な計画と実現性が免許取得には必要であり、蔵元の同意書が必要なのだが、免許取得前の者には蔵元は逆に簡単には応じないので蔵元を探すことは簡単ではない。

通信販売酒類小売業免許を得ると、輸入酒に関しては通販では(に限って)制限なく販売出来るが、これは「販売するための手続き」にあたる。
他方では酒類の輸入ビジネスとしては「輸入許可を受けるための手続き」が必要だ。
 免許取得が必要
  ・洋酒卸売業免許
   ワイン、ウイスキー、スピリッツ、発泡酒、リキュールなどを卸売する
   他卸業者からの仕入れも可能
  ・輸出入卸売業免許>自社輸入・輸出の酒類を卸売する免許
 輸入の認可を得ても、税に関することや食品輸入に関する手続き等は全て行う必要がある。

輸入目的が販売のための時には免許が必要だが、手続きを経て輸入して通関を終えて日本に商品が入った時の価格が重要であり、これから販売価格を設定する必要がある(販売に関する税が加わる)、そこで利益が出ないと洋酒の販売の意味が無くなる。


プライベートブランド

ブランド( brand)は、ある商品やサービスを、他と区別するためのあらゆる概念で、情報とメディア特性と消費者の対応が加わり、結果的に消費者が該当するサービス全体に対して持つイメージとされる。
文字や図形で具体的に表現された商標を使用することが多く、高級品だけでは無く、低品質も含めて品質には関係無く全ての商品やサービスに対してブランドと呼ぶ。
製造メーカー独自のブランドをナショナルブランド(National Brand)と呼び略して「NB」とも呼ぶ、例えばスーパーやコンビニ等の小売店に並ぶ共通商品の多くはブランド名が付いており、その多数はメーカーが生産するNBとなっている。
プライベートブランド(PB)は、メーカーでは無く、コンビニやホームセンターやコンビニ等の小売店や小売店に商品を卸す卸売業者などの企業が独自のブランドを付け販売している商品のことだ、それらの企業は本来は自らは商品を企画したり生産しない企業であった。
英語の「Private Brand」の頭文字から「PB」と呼ばれる、店舗が独自で販売することから「ストアブランド」とも呼ばれる。

小売店や卸店が規模が小さい時代には、メーカーが展開するナショナルブランド(NB)が力を持っていたが、その後に大手の販売網を展開する小売店が続々と登場して百貨店に続いて、スーパーやコンビニやホームセンターやドラッグショップ等の多彩な方式が広がった。
そこでは大きな販売量を持ち情報収集力を持ち企画力も持っていた事から、自らのブランドであるプライベートブランド(PB)を持つ事も増加した。
小売店や卸店業者が自ら企画し生産して、販売まで一貫して行うこともあり、それがPBのイメージになった傾向があるが、現実は方式は多彩であり、OEMで小売店がメーカー等のの外部の企業に依頼して生産しているPBは多い。
大手の販売力が高い小売店チェーンではPBの保有は一般化しており、NBを保有して販売展開するメーカー側が生産と販売促進目的で小売店やチェーンに対してPBを企画する事も増えている。

OEM:
 「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」の略語で、他社ブランドの製品を製造すること、あるいはその企業を指す。
 アパレル業界や化粧品や家電・食品・自動車業界などで普及している。

日本でプライベートブランド(PB)は1960年ごろからであり、百貨店やスーパーマーケットや生活協同組合がPB商品作りを始めた、ターゲットとしたナショナルブランド(NB)商品と比較して価格は安かったが品質が劣っていたので一般的にまではならなかった。
1980年代にスパー西友のPB商品だった「無印良品」の独立があり、またスーパーのダイエーの商品が価格破壊例と言われた、ししてPB商品が一般化してきた。
2000年代には石油高騰等や経済危機が起きた事などで、NB商品の価格上昇が起きた、そこでは消費者の節約志向がありPB商品に人気が高まった。
その中で2008年には、年間のヒット商品ベスト30に「PB(プライベートブランド)」が選ばれ、「ヒット商品番付」にPB商品が選ばれた、2009年以降では、大手流通グループでもPB商品の比率を高くする方向になり、それからはPB商品は市場規模が増加している。

プライベートブランド(PB)が市場に拡がった理由は、小売店とメーカーと消費者のそれぞれにメリットがある事による。
小売店=PBを展開する側のメリットには、最初にコストと利益率がある、PBの商品ではナショナルブランド(NB)の商品よりも仕入原価を下げることが出来て、その結果で利益率が高い商品を販売できる事がある。
PBで仕入原価が安く出来る理由はいくつかある、商品開発当初から市場を見据えていて(大きな市場が存在する分野を選んで)大量生産とそれに伴う仕入れと生産を行う事がある、加えて市場が見えやすい故の商品開発の効率化が可能な事もある、そしてNB商品の生産には原価の他にプロモーションコスト・広告費が上乗せされている(例えばテレビCMを行うNB商品では数億円以上のプロモーションコストがかかる事も多い)がPBでは避けられる。
PBはプロモーションコスト等を上乗せしない事で、仕入原価は安くなって、販売店も高い利益率を確保することが可能になる、それに加えてPBを展開する小売店側が販売価格を自由に決められるというメリットもある、これらから競合する他社との差別化を図りやすく、競争優位性を持つことができる。

プライベートブランド(PB)の小売店にとってのメリットは仕入れ原価を安く出来る以外にもある。
PBは原価を安く出来てその結果で高い利益率を確保できるが、それ利用しての色々の販売戦略を立てることができる、その一つはナショナルブランド(NB)のみの商品では出来ない販売価格の設定での低価格競争だ、逆に原材料費用への上乗せでの高品質や高付加価値商品の販売戦略も可能になる。
(NB)商品は原則には小売店はどこでも取り扱いが可能で消費者はどこの店舗でも購入可能だ、それに対して(PB)は小売店が持つ独自のブランドであるので、その小売店のみでの販売商品となる、そのために(PB)商品は評判が高ければ、結果として顧客を囲い込むことができる。

プライベートブランド(PB)は、小売店や卸店が運営することが一般的だが、それらは製造メーカーでは無いので、商品の製造に関してはPB商品の多くは運営する小売店などが製造メーカーに依頼するので、実際には製造メーカーが製造している。
それをナショナルブランド(NB)と比較した場合の特徴は、PBはオーダーメイド品の性格がある事であり、そこでは基本としては返品がない事になる、すなわち原則としてはPB側が受注して、メーカーが生産したPB商品に関しては全品買い取りとなる。
製造メーカー側にとっては、PB商品はNB商品とは異なり返品が無く、生産計画が立てやすい事になる、その結果は売上が見込めると共に利益なども確保しやすくなる、それは製造メーカー側にも大きなメリットとなる。
PBはブランドを作り運営する小売店側だけでなく、商品を製造するメーカーにもメリットがある事になる。

 

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