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インボイス制度2
前述の適格請求書発行事業者の申請・登録ができるのは、消費税の課税事業者だ、そのために免税事業者が登録を受けるには、原則として、消費税課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者になる必要がある。
既に2023/10/01にインボイス制度は開始しているが、インボイス制度導入の経過措置として、2023/10/1から2029/09/30までに適格請求書発行事業者の申請をする場合は、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出するだけで自動的に課税事業者になるため、消費税課税事業者選択届出書は不要となっている。
売手側の適格請求書発行事業者は、買手側の取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければならない。
売手側の適格請求書発行事業者がインボイスを交付した場合は、その写しを保存しておく必要がある。
その保存期間は、交付した日を含む課税期間(個人事業者は1月1日から12月31日、法人は事業年度)の消費税の申告期限から数えて、7年間保存する必要がある。
なお、自社で発行した請求書の控えは、法人税法や所得税法によって、法人も個人事業主(青色申告事業者)でも申告期限日の翌日から7年間の保存が義務付けられている、青色申告法人で欠損金が出た場合は10年間保存が必要となっている。
買手側の課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、売手側からインボイスの交付を受けて、さらにはそれを保存しなければならない。
ただし、消費税申告で簡易課税制度を選択している場合では、買手側がインボイスを保存しなくても仕入税額控除が可能となっている。
ただし、簡易課税制度を選択している場合も、受領した請求書等は帳簿に関連する重要な書類として、所得税や法人税法、会社法によって一定期間の保存が義務付けられている。
その具体的内容は、法人も個人事業主(青色申告事業者)も、申告期限日の翌日から請求書の7年間の保存が必要となっている、ただし、青色申告法人で欠損金が出た場合は10年間、個人事業主の白色申告の場合は5年間など条件
によって異なっている。
青色申告
「確定申告書」には、白色申告と青色申告の2種類ある。
青色申告とは、「複式簿記」もしくは「簡易簿記」で作成した帳簿に基づいて、申告する方法で、誰でも申告できる白色申告とは異なり、青色申告は特定の条件を満たした人のみとなる。
青色申告するために満たすべき条件とは
・青色申告ができるのは、事業所得・不動産所得・山林所得がある人のみ。
・その上で、青色申告をする年の3月15日までに下記2種類の書類を税務署に提出する必要がある。
・開業届
・青色申告承認申請書
消費税は10%への変更時に消費税の軽減税率導入が行われて、8%と10%の税率が存在するようになった、その結果として仕入税額控除を受けるには、仕入れた商品が軽減税率の対象かそうではないかを明記した帳簿や請求書等の
保存が必要になった。
このような、区分経理に対応した帳簿と区分記載された請求書等を保存する方式は、「区分記載請求書等保存方式」と呼ばれる。
この区分記載請求書等保存方式は、インボイス制度導入までの経過措置であったために、適用されるのは2023/09/30までだった。
インボイス(適格請求書等)では、区分記載請求書等を記載する内容に一部が追加される事で違いがある。
区分記載請求書等の記載項目
・請求書発行者の氏名または名称
・取引年月日
・取引内容
・対価の額
・請求書受領者の氏名または名称
・軽減税率の対象品目である旨
・税率ごとに合計した対価の額(税込)
(続く)
(承前)
区分記載請求書等の記載項目に対してインボイスの記載事項は下記だ。
インボイスの記載事項
・請求書発行者の氏名または名称
・取引年月日
・取引内容
・対価の額
・請求書受領者の氏名または名称
・軽減税率の対象品目である旨
・税率ごとに合計した対価の額(税込)
・登録番号 @
・税抜価額または税込価額を税率ごとに区分した合計額および適用税率 @
・消費税額等 @
@は区分記載請求書等には記載が必要ない項目で、
インボイスに記載が必要な項目のうち、区分記載請求書等に追加されるのは、
・「登録番号」
・「税抜価額または税込価額を税率ごとに区分した合計額および適用税率」
・「消費税額等」
の3つで、従来の区分記載請求書等にこの3項目を加えれば、インボイスの要件を満たす事になる。
「登録番号」は、適格請求書発行事業者の登録をすると税務署から通知される。
区分記載請求書等では、消費税の端数処理のルールは決まっていなかった。
しかし、インボイスでは端数処理のルールが定められており、「1つの請求書につき、8%、10%の税率ごとに1回ずつ」となっています。
そのために、請求書単位で、税率ごとの合計額に対してそれぞれ端数処理を行わなければならないです。
区分記載請求書等で別の方法を行っていた時には、会計システムの変更・改修が必要になる、例えば個々の商品ごとに端数処理を行っていた場合などがこれに当り、インボイス制度では改修が必要となる。
課税事業者が適格請求書等(インボイス)を発行するためには、適格請求書発行事業者になる必要があるので、納税地を所轄する税務署に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、登録を受ける事になる。
インボイス制度が開始される2023/10/01から登録を受けるには、原則として2023/03/31までに申請書を提出する必要があった。
既に2023/10/01にインボイス制度は開始しているので、インボイス制度導入の経過措置として、2023/10/1から2029/09/30までは、適格請求書発行事業者の申請をする場合には、自動的に課税事業者になる。
基準期間(個人事業主は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、基本的に消費税の申告・納付義務がない、このような、消費税の納税義務が免除されている事業者を、免税事業者と呼ぶ。
適格請求書発行事業者の登録を受けられるのは、消費税の課税事業者だけなので、免税事業者はインボイス制度の導入にあたり、インボイスを発行できるように課税事業者になるか、インボイスを発行できない免税事業者のままで
いるかを選択する必要がある。
課税事業者になり適格請求書発行事業者の申請をすれば、インボイスを発行できるが、同時に消費税の申告義務が発生する。
一方では、免税事業者のままでいるとインボイスの発行ができず、取引先が課税事業者だった場合に、取引先は仕入税額控除を受けられずに損をする。
仕入税額控除については経過措置があるが、全額の控除は受けられない、そのために、免税事業者は、それまで請求していた消費税を請求できなくなったり、取引先から消費税分にあたる金額の値下げを求められたり、場合によれ
ば取引自体の中止の可能性もある。
それ故に、課税事業者になるか免税事業者のままなのかは、どちらのメリットが大きいか検討が必要だ。
インボイス制度3
消費税に対するインボイス制度では、売手側にとっては、次のような業務が増えることになる、特に後者が事業者にとっては負担になる事が多い。
・免税事業者の場合、消費税の確定申告業務
・課税事業者の場合、消費税が関わる新しい会計処理方法の検討
適格請求書発行事業者になる場合には、取引先から求められたときには必要な記載項目を満たしたインボイスの交付と、交付したインボイスの写しの保管が必要となる。
そこに於いては、それ以前から現在に使用している請求書管理システムや会計ソフトなどが適格請求書等(インボイス)に対応できるかどうかを確認する必要がある。
それが対応していない場合や、かえって業務が煩雑になりそうな場合があれば、システムの見直しが必要になる。
特に小売業などでは、レジをはじめとする会計システムをインボイスに対応したものに変更しなければならない。
インボイス制度では、買手側の立場では、経理事務の煩雑化が予想される。
仕入税額控除を受けるには、仕入先からインボイスの交付を受け、それを保管する必要がある。
そのため、取引の際には仕入先が適格請求書発行事業者であるかどうかを確認して、さらに売手側が適格請求書発行事業者である場合にはインボイスの発行を依頼する作業が発生する。
さらに加えて、会計処理においては、免税事業者と課税事業者(適格請求書発行事業者)の取引を分けて仕訳をしなければならない。
売手側である仕入先が免税事業者である場合には、仕入にかかる税額の一定割合を控除できる経過措置があるために、その対象になるかどうかもチェックが必要になる。
インボイス制度導入後は、消費税の計算をするときには、下記のいずれかを選択できるようになる。
・適用税率ごとの取引総額を割り戻して計算する「割戻し計算」。
・インボイスに記載のある消費税額等を積み上げて計算する「積上げ計算」。
これによって、従来とは税額の計算方法が変更になる可能性もある。
インボイス制度では、免税事業者は、適格請求書発行事業者になるかどうかにかかわらず、「基準期間」または「特定期間」の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、課税事業者になる。
免税事業者が課税事業者になった場合には、消費税課税事業者届出書をすみやかに所轄の税務署に提出しなければならない。
なお、特定期間については、特定期間中に支払った給与等の金額により判定することもできる。
特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円を超えていなければ、給与等支払額により免税事業者と判定することができる。
消費税課税事業者届出書には、基準期間用と特定期間用があり、消費税課税事業者届出書を所轄の税務署に提出する時には、間違えないように注意が必要になる。
繰り返しになるが、適格請求書等(インボイス)を発行できるのは、登録を受けた適格請求書発行事業者だけだ、そして、課税事業者でなければ、適格請求書発行事業者の登録申請を行うことはできない。
そのため、免税事業者が適格請求書発行事業者になろうとする場合は、原則として消費税課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者になる必要がある。
ただし、2029年9月30日までは適格請求書発行事業者の登録申請書を提出するだけで自動的に課税事業者になるために、消費税課税事業者選択届出書は不要となっている。
2029年10月以降には、手続きには消費税課税事業者選択届出書と適格請求書発行事業者の登録申請書の両方の提出が必要となる。
インボイス制度の経過措置
インボイス制度の開始を機に、免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった人には、仕入税額控除の金額を、特別控除税額(課税標準である金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額
に係る消費税額の合計額を控除した残額の100分の80に相当する金額)とすることが出来る(通称:2割特例)。
(続く)
インボイス制度の経過措置
(承前)
2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった人が対象になる。
従たがって、
・基準期間における課税売上高が1千万円を超える事業者。
・資本金1千万円以上の新設法人。
・調整対象固定資産や高額特定資産を取得して仕入税額控除を行った事業者等。
インボイス発行事業者の登録と関係なく事業者免税点制度の適用を受けないことになる場合や、課税期間を1カ月又は3カ月に短縮する特例の適用を受ける場合などでは、2割特例の対象とはならない。
(注)「基準期間」とは、個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度のことを言う。
(注)「事業者免税点制度」とは、基準期間における課税売上高が1千万円以下であることにより事業者の納税義務が免除される制度を言う。これで、納税義務が免除される事業者を免税事業者と言う。
インボイス制度の経過措置
(承前)
2割特例を適用できる期間
2割特例を適用できる期間は、令和5年10/01から令和8年09/30までの日の属する各課税期間となる。
・免税事業者である個人事業者が令和5年10/01から登録を受ける場合
令和5年分(10月から12月分)の申告から令和8年分の申告までの計4回の申告が適用対象範囲となる。
・免税事業者である3月決算法人が令和5年10/01から登録を受ける場合
令和5年10月から令和6年3月の申告から令和8年期の申告までの計4回の申告が適用対象範囲となる。
2割特例を適用するに当たっての注意点
・2割特例は、免税事業者(消費税課税事業者選択届出書の提出により課税事業者となった免税事業者を含む)がインボイス発行事業者となる場合にインボイス発行事業者の令和5年10/01から令和8年09/30までの日の属する各課税期間において、適用することができる。
(注) 課税事業者がインボイス発行事業者となった場合であっても、当該インボイス発行事業者となった課税期間の翌課税期間以降の課税期間について、基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合には、原則として、2割特例の適用を受けることができる。
(続く)