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電子書籍

電子書籍とは、紙ではなく電子的に記録され、電子機器の画面で読む本や雑誌をいう。
電子書籍には色々な呼び方があり、他では電子ブック、デジタル書籍、デジタルブック、Eブック、オンライン書籍との呼び方もある。
電子書籍を読む電子機器は、急速に新しい機器が開発されており、過去・現在を含めて多彩となっている、現状で使用されている機器と方法としては、パソコンやスマートホンやタブレットで閲覧用アプリ・ソフトウエアを使用する方法が広まっている、それに加えて専用の電子書籍リーダーで閲覧する方法も広がっている。
既に20年以上前から出版方法として、書籍のデータを電子化する方法が進んでいる、さらに活字植版方法から電子植版から電子化印刷方法へと変わって来た、その過程で書籍データは電子ファイルとして保管されて来た。
既に過去に出版された紙への印刷書籍についても、それを電子ファイル化することで、印刷、製本、在庫確保、流通、その他経費を大幅に削減し再販できる、それにより絶版を避けやすくなる。
電子書籍は個人が出版社などを介する事無く独自で出版出来る可能性を広げた、それも電子書籍の魅力と言える。

電子技術と半導体技術から始まった技術進歩は、電子産業としてあらゆる分野に広がり影響を与えた。
一方では情報技術の進歩からデジタル技術が進歩して、電子産業との結びつきでデジタル電子素子と集積回路素子が進歩した。
電子技術と情報技術と集積回路技術等から、コンピュータが発明されて、その進歩が進んで、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータが登場して行った。
通信技術やネットワーク技術が進歩したが、コンピュータの進歩とその技術革新によって、そこで使用するデジタル通信とネットワークが普及してゆき、その中でインターネットが大きく普及した。
これらを利用する事でデジタル化、デジタル技術による、あらゆる分野での合理化が進む事になった、デジタル化には多くの優位性があるのがその理由だった。
音楽・音声分野でデジタル化が進んだ、次に画像・映画等の分野でデジタル化が進んで広がって来た、例としてはCDやDVDがある。
それは書籍と出版でも同様であるとされた、そこにはワープロやコンピュータを使用した創作作業が普及して、次に書籍データのデジタル化と印刷等の作本作業のデジタル化と電子化が進歩してきた。
そして、紙媒体の書籍も対して、電子媒体を使用した電子書籍が登場して来た。

かっては出版物の殆どの原稿は手書きで作られて来た、いわゆる肉筆原稿であった。
20世紀には、コピー技術とコピー機が発明されて普及した事で、原稿製作から校正や出版までの作業が大幅に改善された、コピーによる複製はバックアップ機能であり、保存性やあらゆる作業性を高めた、幾つかの作業の併行での実施も可能になった。
最終的に進化したコピー技術はデジタル技術だったが、そもそもは原稿がデジタル化として電子データ化される事で、コピーと印刷とが容易になり、保存性を含めての利用性が高くなった。
紙媒体の書籍出版は、活字の手作業植版が長く主流だったが、原稿の電子化によって、出版時の編集・植版・印刷等が電子化されて来た。
電子データがあれば、文字フォント・文字サイズや、ページごとの植版等が、容易に変更できる、さらに電子データは劣化しなくコンパクトな保存性もある、この優位性から電子化された出版が進みその合理化も進んだ。
そして、電子化データの紙媒体への印刷しての出版に対して、電子化データを基にして電子機器で直接的に読む方式の電子書籍が登場した。

原稿の電子化と出版作業の電子化では、書籍という最終形態は変わらないが、次に行われた書籍販売の電子化としての電子書籍では、一気に形態が変わり、読書方法や販売方法を含めた大規模な変革が出版側と読者(利用者)双方に起きた。
販売するものが電子データであり(注:この表現も厳密には正しくはないが、ここでは詳しく検討しない)、何を媒体にするかの問題がある。
現実にはインターネットの普及とネット通販の一般化で、データのダウンロード販売と言う販売方法が一般化した。
読者は、データもそれを保管する媒体も見えず、結果としての読書する端末機に表示された画像と文字を見る・読むことになる。
出版者・販売者は、読書する端末か、あるいは一般的なパソコンやスマートホンやタブレット端末等で電子書籍を読めるソフトウエアを利用者に提供すると言うビジネスモデルを作っている、さらに利用者にクラウド上のサーバ領域を提供する事も行っている。
そこでは、サブスクリプション等新販売方式も登場している。

紙媒体の書籍販売と比較して、電子書籍は流通形態が全く異なる。
紙書籍では多数派の出版社は再販制をとっている、出版社から問屋を通して書籍は小売店に販売委託される、小売店ではきめられた価格で販売して売れた書籍に対しては一致のマージンを受け取る、売れ残った書籍は返品する。
この制度では価格は安定するが、小売店は売りたい書籍を選べない、出版社は大量の返品が発生する事が避けにくい。
電子書籍では、小売りの概念が弱く直販に近い、販売店ではデータを保有しているが紙媒体のような数のある在庫を持たないので返品の概念も弱い、そこでは再販制の意味も弱い。
従って販売店としてはネット通販大手あるいは書籍専門通販店がなり、ほぼ日本全体をカバーするので小売店の概念は弱くなる、価格設定はあるが、度々割引セールが実施されたりする、さらにその他のデータを扱うジャンル特有のビジネスモデルが生まれている。
そして紙媒体書籍では普通である絶版の概念も弱い。

紙媒体書籍では、痛みや劣化や破損等が起きる、それは使用する事で起きるが、保存するだけでも計時変化として生じる事もある。
それ故に紙媒体書籍では、新刊書籍の概念があり、それに対してユーズド書籍や古書や古本の概念がある、ただし後者の中には骨董品や貴重品やレア書籍の概念も含まれる。
それらは価格面で分類される事もあるが、区別には中間のゾーンが存在してしまう、さらには定価が存在しない一品商品の市場でもあり、新刊書籍とは大きく異なる。
電子書籍では、媒体が無い事から劣化・破損・計時変化は原則として無い、データの破損の可能性はあるが、ビジネスモデルによっては修復される・再発行されるケースもあり、ユーズド・古書と新刊との区別は不明確であり、無いも言える。
それ故に、電子書籍では古書も古書市場も概念が無い。
紙媒体書籍には、図書館や貸本という概念が存在するが、電子書籍では媒体が無く、データを貸す概念がなくコピーに近くなる。
ただし音楽のサブスクリプションサービスに近いサービス(読み放題)が存在する、さらに似た読書履歴になる国会図書館デジタルネットサービスが開始している。


電子書籍端末

主要な電子書籍フォーマット
・EPUB
 米国の電子書籍標準化団体IDPFが推進するXMLベースのオープン規格。
 2011年のEPUB3より縦書きやルビがサポートされ、日本語への対応が向上した。
 国内、海外の複数の電子書籍ストアで採用されている。
・AZW
 Amazon Kindle用の電子書籍フォーマット。
 AmaZon Wispernetの略と言われる。
 仏Mobipocket社の開発した「Mobipocket」フォーマット(MOBIフォーマット)がベースとなっており、Amazonによる同社の買収でKindle用の電子書籍フォーマットに転用された。
 DRM保護のされていないMOBIフォーマットの電子書籍はKindleで読むことが可能。
 EPUB形式からの変換は「Kindle ダイレクト・パブリッシング」で公開されている「KindleGen」というツールで、行うことが出来る。
・Kindle Format 8
 2011年、従来のMOBIフォーマットに代わって採用されたAmazon Kindle用のフォーマットだ。
 略称はKF8またはAZW3。Kindle FireがKF8をはじめてサポートした電子書籍リーダーとなった。
 KF8はHTML5およびCSS3をベースにしており、拡張子は従来同様、.mobiまたは.azwが使用される。

主要な電子書籍フォーマット(2)
(承前)
・book(ドットブック)
 日本のボイジャーが1990年代に開発した「エキスパンドブック (EBK) 形式」の後継フォーマットだ。
 縦書きやルビをサポートしていて、文芸作品や漫画単行本の電子書籍・携帯コミック化に採用された。
 ビューワーソフトとして「T-time」が公開されていて、有償版ではファイルの自作も可能だった。
 2005年頃に携帯コミックのビューワーがセルシスの「ComicSurfing」と統合され「BookSurfing Reader」となり、その後に携帯コミックでは主流フォーマットとなった、日本の漫画においては主要なプラットフォームだった。
・XMDF
 シャープが開発した電子書籍コンテンツのフォーマットだ。
 大手出版社21社が参加する日本電子書籍出版社協会運営の「電子文庫パブリ」などで利用された。
 専用リーダーソフトとして「ブンコビューア」でZaurus、PalmOS、PocketPC、HandheldPC、Windows向けが無料で公開された。
・他にもプレーンテキスト、PDFといった汎用文書フォーマットが商業電子書籍販売に利用されることもあり、JPEGやPNGといった標準的な画像フォーマットで書面を保持すれば静止画閲覧ソフトがそのまま電子書籍閲覧ソフトとして利用できる。

電子書籍は同じフォーマットでも、そのレイアウト(文章と画像の配置)の形式によってリフロー(再流動)型とフィックス(固定)型に分類される。

リフロー(再流動)型
・リフロー型は画面サイズ変更に追随してレイアウトが変更され、またフォントサイズや行間などを任意で変更することが出来る形式だ。
 小説や学術書など文章(テキスト)中心の書籍に多く使用されている、そこではページという概念がない、現在の電子書籍では%で表示される。
フィックス(固定)型
・フィックス型は画面サイズが変更されてもレイアウトが固定されていて、フォントサイズの変更も出来ない形式だ。
 写真集やコミックなどの書籍に多く使用されている。
 ページ全体を画像として取り込まれた形式のものもフィックス型と言われる、それは画像であるためテキスト情報は持たず、通常的な文字列検索は出来ない。
 日本電子書籍出版社協会はフィックス型の場合には、全ページ画像のみで構成されるよう勧告している。

電子書籍の読書は専用の閲覧ソフトを利用して、電子機器端末の表示画面に表示させる。
電子機器端末としては
・専用端末
・PDA
・ケータイ
・スマートホン
・タブレット端末
・パソコン
等が利用される、2023年ではPDAとケータイは利用が減少している、パソコンも他に押されている。

専用端末は、電子書籍を閲覧するための機器で電子書籍リーダーとも呼ばれ、パソコンとの比較や、スマホやタブレットとの比較と共に、紙媒体書籍に比較していくつかの課題が求められる。
・読みやすい画面。
・小型で紙書籍より軽いか同等。
・長時間動作可能>モバイル性からバッテリー駆動が普及している。
・コンテンツの購入が容易な事。
・初期コストとなる専用端末の価格が廉価。
・他にも、耐衝撃性や簡易な耐水性、複数の電子書籍フォーマット対応、盗難防止への工夫などがある。

電子書籍端末は、パソコン等でソフトウエアを稼働させる場合とは異なり、モバイル性のある携帯型情報端末になる、それゆえに類似機器(例えば、スマートホンやタブレット端末等)が持つ機能への対応も可能な限り求められる。
機能としては、
・画面のカラー化
・動画再生機能、静止画表示機能
・音楽の再生機能
・インターネット接続機能 等がある。

その過程で登場した技術や機能は多い。
・表示部に電子ペーパーを使った。
・大容量で低価格になったフラッシュメモリの採用で、多数の電子書籍を格納可能になった。
・バッテリーの性能の向上と、機器の省電力化技術で、長時間使用が可能になった。
・クラウドコンピューティングの発展で、同じ電子書籍を違う端末で読む場合に、同じ電子書籍サービスアカウント間での相互接続で、異なる端末で同期したページから読書が可能になった。

電子書籍専用端末に向いた最新技術としては電子ペーパーがある、これはそれまで以上に省電力であり、さらに高コントラストの表示だとも言われた。
電子書籍専用端末では、液晶表示と共に電子ペーパーも使用された、さらには一部には電子ペーパーと液晶の2つのモードを持つ機器も登場した。
電子書籍端末本体価格は、技術改革が進んでも依然高価であり、普及による量産効果や共通規格の策定での一般化による低価格化は期待される程ではない、むしろスマホやタブレット等のスマート機器の1つのアプリ機能としての普及が大きい。
長く紙媒体を置き換えるほどの普及を見せるかは未知数であったが、新型コロナ・ウィルス感染問題により紙媒体書籍の店舗販売が低迷した中で、紙媒体書籍の通販の拡大され、それと共に電子書籍の拡大も起きて来た。
日本で現在発売されている、電子書籍専用端末の例としては、「Amazon Kindle」や「楽天 Kobo」がある。

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