項目別バックナンバー[4]:ショップ情報:75

セルフ・サービスの技術

セルフサービスは安価な商品を大量販売する場合に於いて極めて有利な販売手法であり、通称の薄利多売商法では非常に効率的だ。
だが、一方では商品が高価で余り頻繁に売れない場合は、人件費分の値下げ幅も全体の価格からは比率的に小さくなる、セルフサービスは防犯面でも問題があり高額商品目あての万引きを誘発させやすい危険性がある。
例えば百貨店のように、専門化した商店が集まった所や専門的な商品を扱う所では、セルフサービスでは店員の説明が無いと商品の価値が判り難い面があり、商品の比較がしにくいと客側も買物し辛い問題もある。

防犯面では家電量販店のようにICタグを使って商品管理と盗難に備えることで高額商品を扱うことを可能にした業態も見られる。
また商品パッケージに詳しい説明を掲載したり、また商品陳列を工夫してPOP広告を出して、比較に際して情報を積極的に提供する、等の打開策も行われている。
それでも、物品販売では全てには展開できない、だがセルフサービスはそれ以外に展開されて来た、それはガソリンスタンドでの給油や飲食店へ展開だ。

経営者が頭を悩ませることのひとつに人手不足がある、特に飲食店では慢性的な人手不足が続いている、その結果で多くの飲食店では少ない人数で営業する工夫が行われて来た。
政府の調査からも、飲食店の欠員率は全産業と比べて2倍以上高く、深刻な人手不足に陥っていることがわかる、その中でも変わらず顧客満足度を達成するためには、業務を効率化してサービスの質を落とさない工夫が求められて来た。
セルフサービスは、元々スタッフが行っていた業務の一部を、客に行って貰う事だ、その代表には飲食店での配膳や、ガソリンスタンドでの給油がある。

飲食店におけるセルフサービスの例を客の行動で羅列する。
・券売機で食券を購入。
・タッチパネル式タブレットでのセルフオーダー。
・給水器やドリンクバーから客が飲み物を持ってくる。
・おしぼりを席まで持っていく。
・備え付けの布巾でテーブルをふく。
・料理を自分の席まで運ぶ。
・バイキング形式で料理を提供される。
・食べ終わった食器を返却口に持って行く。
・自分でレジにお金を入れて会計する。

社員食堂や商業施設のフードコートなど、ほとんどの作業をセルフサービスにしている店舗もある、一方で水と券売機のみだけなど、部分的に取り入れているだけの店舗もある。
何をセルフサービスにするのかは店舗に合わせて決められる、その為に試験的に容易で簡単なものから取り入れることが可能だ。

飲食店がセルフサービスを導入するメリット
・経営者が悩むことのひとつに人手不足がある、とくに飲食店では慢性的な人手不足が続いているので、どの飲食店でも少ない人数で営業する工夫が行われている。
・飲食店の欠員率は全産業と比べて倍以上であり、深刻な人手不足に陥っているとされる。そんな中でも変わらず顧客満足を得るためには、業務を効率化して、それでもサービスの質を落とさないことが要求されている。
・その問題・課題を解決してくれるのが「セルフサービス」だ。

小売店舗では大規模店舗のスーパーやホームセンターを中心に、セルフ・サービスが普及したが万引き対策が課題としてあった、それはセルフレジの普及により、より課題となっている。
飲食店でのセルフ・サービスでは、上記の課題は小売店よりは少ない。
社員食堂やファーストフード店を中心に、食券制や前払い方式が一般的になっており、前者は典型的なセルフサービスだ、後者では決済場所で客が短い待ち時間後に商品(食品)を受け取り座席に自ら運ぶ方式が中心となっておりこれもセルフサービスだ。
居酒屋店を中心にして、タブレット端末をテーブル毎に設置して、客自らがタブレットを操作してオーダーする方式が導入されて普及して来た、それは注文をセルフサービスにした意味がある。
そのメリットは
・省人化
・非接触
・メニュー表レス(省略)
・オーダー内容確認
・売り切れ表示対応  等がある。
さらには、・広告表示、・クーポン等のサービス、・決済明瞭化、・個人分割料金表示 等で色々な可能性がある。

飲食店では決済方法として先払いの食券制をとるセルフ・サービスがある。
食券制は、決済のセルフ・サービスのほかには、客が窓口カウンターで自身で商品を受け取るセルフ・サービスとの組み合わせもあり、その後に客が食器を返却するセルフ・サービスとの組み合わせもある。
食券方式は自動販売機との相性が非常に良い、さらにはキャッシュレス決済との相性も非常に良い。
食券販売機と厨房をオンラインで結ぶ事で、客の購入と同時に商品の調理を開始しての料理時間の短縮も行われている、自動券販売機はレジやタブレットと同様に、統計データ取得が容易であり、さらにはタブレットと同様に売り切れ表示による対応が容易だ。
これらのメリットにより、ファーストフード店では多数が食券制でのセルフ・サービスを導入していて、現在では一般的な形態となっている。

食券制飲食店のセルフ・サービスと類似方式は他の分野でも導入されている、例えば散髪専門の理髪店、チケット制のガソリンスタンド等がある。

セルフ・サービスは新型コロナ・ウィルス感染問題での外出自粛と対人販売の自粛の影響を経て、変わって来た。
その状況の中では、
・キャッシュレス決済が、日本政府の普及方針の影響も加わり広がった。
・自動販売機では、キャッシュレス決済が利用できる機器が増えた。
・セルフレジ利用>利用店舗数が増えた>キャッシュレス決済の利用>暗証レス決済の導入もあった>ただし不正利用対策は課題だ。
・テイクアウトの普及>飲食店とファーストフードでテイクアウトの対応が増加した。
・飲食品の宅配、店舗の宅配サービスが増えた。
これらが外出自粛期間に増加したが、その自粛解除後も多数が継続して普及している。
そのなかでモバイル予約が普及した、それは宅配サービスや店内飲食予約にも利用されている。


インボイス制度

2023年10月1日から、消費税に関する「インボイス制度」がスタートする、ただ、直前になっても新聞等のメディアではあまり取り扱われていないようだ。
「インボイス制度」と言われているが、輸入輸出に関しては「インボイス制度」が以前から行われて来ているのでそれとは区別が必要だ。
輸出には通関への申請と関税支払いを含めて、輸出品に関する詳細情報を記載したインボイスの発行が必要だ、輸入の時には輸出側が発行したインボイスが必要になる、輸出品の規制と関税に関して使用される。
2023年10月1日からの消費税に関する「インボイス制度」は、輸入輸出のインボイスとは異なるが、以下では単に「インボイス制度」の言葉を使用する。
インボイス制度とは、正式名称を「適格請求書等保存方式」といい、請求書などの交付や保存に関わる制度のことを言う。
2023年10月1日から施行されるインボイス制度によって、多くの事業者には適格請求書の発行や保存が求められるようになる。
政府は消費税の透明化を目的としているが、それに伴う管理と事務手続が増える事が予想される、それが政府の負担ではなく、個々の事業者や個人の負担になる事で問題を抱えている。

日本に於ける消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広くほとんどの商品等に課税される税であり、消費者が負担し事業者が国に納付する、それは総合消費税の性格がある。
過去には総合消費税はなく、個別の商品に物品税等が掛けられていた。
税制を改定して、殆どすべての商品に3%の消費税が課せられた、その結果として除外品の0%と、一般の3%に2通りの税率が設けられた。
一般の税率は3%から、5%に変更になり、さらには3年前に10%に変更になった、その際に食品等の一部商品は8%に設定されて現在に至っている、その結果として0%、8%、10%の3通りの税率になっている。
消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して、広く課税されるが、生産、流通などの各取引段階で二重三重に税がかかることが無い様に税が累積しない仕組みが採用されている。
消費税が課税される取引には併せて地方消費税も課税される(一般には双方を合わせて消費税率と呼ばれる)、商品などの価格に上乗せされた消費税(と地方消費税分:以下省略して表現する)は、最終的に消費者が負担し、納税義務者である事業者が納める。

消費税が課税される取引
・国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に課税される。
 商品の販売や運送、広告など、対価を得て行う取引のほとんどは課税の対象となる。
・外国から商品を輸入する場合も輸入のときに課税される。
非課税取引
 下記の取引は、消費税の性格や社会政策的な配慮などから非課税となる。

1:土地の譲渡、貸付け(一時的なものを除く。)など
2:有価証券、支払手段の譲渡など
3:利子、保証料、保険料など
4:特定の場所で行う郵便切手、印紙などの譲渡
5:商品券、プリペイドカードなどの譲渡
6:住民票、戸籍抄本等の行政手数料など
7:外国為替など
8:社会保険医療など
9:介護保険サービス・社会福祉事業など
10:お産費用など
11:埋葬料・火葬料
12:一定の身体障害者用物品の譲渡・貸付けなど
13:一定の学校の授業料、入学金、入学検定料、施設設備費など
14:教科用図書の譲渡
15:住宅の貸付け(一時的なものを除く。)

仕入税額控除
・課税事業者は売上にかかる消費税を申告・納付するが、その事業者も商品などを仕入れる際には消費税を支払っている。
・その事から、消費税額を算出する時には、課税売上にかかる消費税額から課税仕入にかかる消費税を差し引いて、納入するべき税額を求める、これを仕入税額控除と呼ぶ。
適格請求書
・消費税のインボイス制度は、課税事業者が上記の仕入税額控除を受けるためのものである、そこでは事業者は取引相手から発行された適格請求書等の保存が必要となる。
・その適格請求書等は「インボイス」とも呼ばれる、その内容は売手側が買手側に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものとなる。
・その目的から、適格請求書等には「適用税率」や「税率ごとに区分した消費税額等」といった定められた項目の記載も必須項目となっている。

消費税に関しては、年間売り上げが1000万円以下の事業者は消費税を納税する義務が無く、消費税免税事業者と呼ばれる。
ただし、消費税免税事業者はインボイス制度ではインボイスを発行できないので、そこからの商品・サービスを受けた事業者はそこから納税消費税額を控除できない。

インボイス制度の大きな目的は、取引における正確な消費税額と消費税率を把握することにある。
2019年の消費税増税で消費税率は10%になったが、食品や定期購読の新聞などには8%の軽減税率が適用されている。
それにより、仕入や販売に8%と10%の消費税率が混在するケースが発生し(消費税非対象:0%もある)、納付する消費税額を正確に計算するためには、税率ごとに区分した対価額や適用税率・税額等を明記した請求書が必要になっている。
そこでは、仕入れ商品の消費税率が8%の時に間違って10%で計上すると、差の2%分は不当な利益となる。
インボイス制度は、不当利益や計算ミスを防ぐため、インボイスの記載義務を満たした請求書によって消費税を計算して納付する制度だ。
ただし、その為の事務等の負担が事業者にかかる事のよって発生する問題が指摘されている。

適格請求書等(インボイス)を交付することができるのは、納税地を管轄する税務署に登録を申請して受理された適格請求書発行事業者のみだ。
適格請求書発行事業者の登録がない事業者は、インボイスを発行することは出来ない。
そこでは、2023/10/01からのインボイス制度導入のタイミングで適格請求書発行事業者になるには、原則として2021/10/01から2023/03/31までに登録申請手続を行う必要があった。

国税庁ホームページでは「令和5年度税制改正関係(インボイス関連)」を掲載している。
そこでは、制度として
・二割特例
・少額特例
・少額な返還インボイス(適格返還請求書)の交付義務免除
・インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)に係わる登録制度の見直しが掲載されている。

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