項目別バックナンバー[3]:ビジネス情報:76

銀行とデジタル化4

地方銀行のDX
(承前)
地方銀行は都市銀行と比べてビジネスの規模が小さく、IT投資への負担感が高まっていった。
その背景で2000年頃からシステム共同化が進んで、その特徴から3類型がある。
1:ベンダー主導型
 NTTデータ、日本IBM、日立製作所、富士通等のITベンダーが主導する共同化だ。
2:大手銀行主導型
 三菱UFJ銀行、りそな銀行、八十二銀行のシステムをベースにするものがある。
 地方銀行上位の横浜銀行、千葉銀行、福岡銀行、静岡銀行は自行主導の共同化を行った。
3:オープン系型
 日本ユニシスが2007年にリリースした。

三類型で共同化が進み、共同化グループの乱立が起きた、その事からITコストの削減は限定的になり、経営統合の制約となった。
共同化の副作用として、1:銀行内の人材の育成が不十分となる、2:共同化のハブ部分の障害発生リスクへの留意が必要がある。
(続く)

協同組織金融機関の金融DX
銀行以外の預金取扱金融機関の協同組織金融機関には信用金庫や信用組合がある。
信用金庫。信用組合は非営利団体であり、それぞれ信用金庫法、中小企業等協同組合法が根拠法となっている、そして株式会社ではなく会員や組合員の出資で成り立つ。
銀行よりは税制では優遇されるが、貸出は会員や組合員に限定され、営業地域も限定される。
協同組織金融機関の目的は営業地域の活性化であり、銀行よりも地域への貢献を行いやすい立場だ。
取り組みの例としては、
 飛騨信用組合の地域通貨「さるぼぼコイン」
 君津信用組合が参画する地域通貨「アクアコイン」 がある。
(続く)

協同組織金融機関の金融DX
(承前)
飛騨信用組合の地域通貨「さるぼぼコイン」
・「さるぼぼコイン」は2017年に飛騨信用組合が運用開始した地域通貨で、4年で勢力を広げて飛騨高山白川地区の個人と加盟店ともが4割加入している。
 「さるぼぼコイン」の特徴は、地域の中小規模商店のみを加盟店として、地域の活性化と「お金の地産、地消」を目指している事だ。
 加盟店は飛騨信用組合が作成した掲示プレート設置で導入出来て、さらに導入後の手数料も低水準に設定されている、ユーザーには入金時にポイントを付けて、利用期間を1年にして退蔵を防いでいる。
・システムは飛騨信用組合とアイブリッジ社の共同開発で、飛騨信用組合は投資が抑えられ、アイブリッジは開発したシステムを他の運営者に提供する。
・飛騨信用組合は「さるぼぼコイン」以外にも、中国のAlipayとの提携や、クレジットの推進にも多様な決済に対応できる決済専用端末を活用した。
(続く)

協同組織金融機関の金融DX
飛騨信用組合の地域通貨「さるぼぼコイン」
(承前)
・2018年の大手通信キャリアのQRコード決済への進出と、そこでのポイント還元競争が始まった、さらには新型コロナウィルス感染問題で海外からの観光客の受け入れ停止になった。 ・「さるぼぼコイン」は3つの活動で推進した。
 1:加盟店向け活動
  仕組み作りとコスト負担の軽減、地域の零細商店向けのサービス。
 2:域内ユーザー向け活動
  丁寧いな使い方の説明とその機会を作った。
 3:域外のユーザーと観光客向けの活動
  事前購入用に全国のセブンイレブンでのチャージを可能にした。
  特産品通販サイトの構築。
・「さるぼぼコイン」から地域通貨として学ぶ事は、キャッシュレスに拘らず地域活性化の仕掛けと捕らえる事、預金取扱金融機関が関与して流通性を付与する事、弱点としては行政の巻き込みが課題となる。

協同組織金融機関の金融DX

木更津市限定の地域通貨「アクアコイン」
・飛騨信用組合の地域通貨「さるぼぼコイン」と同じ電子地域通貨プラットフォームを利用して2018年から運営された。
 最初から行政と金融機関と商工会議所が「三位一体」で運営して持続性を高めている。
・木更津市と君津信用組合と木更津商工会議所が運営主体で、木更津市のポイント還元施策に活用している。
 参加店募集は、信用組合ルートと商工会議所ルートで増加を図っている。
・基本機能は「さるぼぼコイン」と同じで、プリペイドのチャージ機能が最初に提供された、2020年に君津信用組合口座所有者向けの「アクアBANK」が追加されて、利用限度額が増えて、払い戻しや送金も可能になった。
 地域の店舗だけでなく、コンビニの一部でも利用可能で利便性を高めている。

協同組織金融機関の金融DX

運用に必要なコスト
・地域通貨のシステムを持続的に運用するにはコストが必要になる。
 環境省の事例集によると、10万人都市の場合で初期費用が約3000万円で年間使用料は600万円となっている。
 「さるほぼコイン」に適応すると、年間利用料600万円の利益をあげるには年間12億円の払い戻しが必要となる。
・「さるほぼコイン」の実績は、年40億円程度の流通規模で上記はクリアしている、さらにコスト面では飛騨信用組合のような金融機関は預金は本業なので運営に新しい要員が不要の強みもある。
・だが成功の為には、継続的に様様な策を繰り出す必要がある、単純な採算のメリットを考えるのではなく、短期では収益にはならなくとも、地域の中小規模の商店との連携を高める意思が重要となる。


銀行とデジタル化3

ネット銀行(インターネット専業銀行)
・実店舗を持たず、インターネットのみでの専業銀行。
 専業銀行か、銀行のインターネット部門なのかは多様で微妙だ。
・ネット銀行例
 Paypay銀行:2000年10月開業:旧ジャパンネット銀行
 ソニー銀行:2001年6月開業:
 楽天銀行:2001年7月開業:旧イーバンク
 住信SBIネット銀行:2007年9月開業:
 auじぶん銀行:2008年6月開業
 大和ネクスト銀行:2011年4月開業
 GMOあおぞら銀行:2018年7月開業
 みんなの銀行:2021年5月開業:新設
 UI銀行:2022年1月開業:新設

実店舗の窓口を持たない事は共通だが、ビジネスがネットとデジタルですべて完結しているかはそれぞれで異なる。

ふくおかフィナンシャルグループのみんなの銀行が2021年5月に開業して、そこでは「日本初のデジタルバンク」だとされた。
そこでは、実店舗も窓口を持たないだけで無く、スマートホンベースのデジタルですべてが完結するように、業務・商品・システムをゼロから作り上げていた。
みんなの銀行は九州地区の比率は少なくて、ユニークなデジタルバンクとして日本全体から利用者が集まっている。
友達紹介で口座作成時に紹介者と被紹介者に入金する「お友達紹介プログラム」の仕組みを持ち、銀行自体の営業は不要となっている。
有料プレミアムサービスとして、他行無料振り込み無利子の少額建て替えサービスを行う、それには1年間のトライヤル期間がある。
(続く)

(承前)
みんなの銀行の特徴は
機能面
・1:デジタル技術を活用して非金融サービスとの連携を図る。
 2:パーソナライズ化を行う>金融及び非金融の行動データを活用して、最適なタイミングで情報提供を可能にする。
開発面
・1:パブリッククラウドの活用>システムのアプリケーションをユニークで小さなサービスに分割して実現するマイクロサービス、システムのアプリケーションの実行環境をひとまとめで提供する仮想化技術であるコンテナ技術等のクラウドに適した技術を採用した。
 2:既存のシステムを使わず新規開発で行う。
  システムのアプリケーションを提供機能であるドメイン単位で区切り、提供するサービスに絞ってリリースした。

東京きらぼしフィナンシャルグループのUI銀行
・地方銀行発のデジタルバンクの2号目は、東京きらぼしフィナンシャルグループのUI銀行だ。
 東京都民銀行と八千代銀行と新銀行東京が合併してきらぼし銀行が誕生して、持株会社も東京きらぼしフィナンシャルグループとなった、そしてUI銀行が誕生した。
・2020年に「きらぼしデジタルバンク設立準備会社」が設立されてデジタルバンク構想が発表された。
 そこでは「金融・非金融を問わないシームレスな総合サービスをスマートホンアプリで提供する」とした、さらに「きらぼし銀行と連携して、対面コンサルティングサービスをデジタル面からサポートして、対話を軸にした金融にも強い総合サービス業の進化を図る」とした。
(続く)

東京きらぼしフィナンシャルグループのUI銀行
(承前)
・UI銀行は顧客としてはスマートホンの操作が出来るが金融知識が少ない人を想定している、さらに地域は東京に絞り、対面サービスのきらぼし銀行が対応できない顧客へのサービスを目指す。
・UI銀行は既存のシステムを活用する事によって、準備会社設立からわずかの1年3月で開業出来た。
・きらぼし銀行の窓口に「デジタルコンシュルジュ」を設置してUI銀行の口座開設支援や利用方法の相談を受けて、スマホ操作に慣れていない人にも対応していった。
・UI銀行には東京都も出資しており、行政サービスとの連携も今後に期待される。
 さらには系列証券会社やクレジットカードとの連携や金融以外のサービスとの連携での手数料収入も計画している。
(続く)

デジタルバンクの将来性
みんなの銀行、UI銀行等のスマートホン専用のデジタルバンクの将来性の最大の課題は収益化だ。
デジタルバンクは店舗や営業コストが少ない事が強みだが、若い世代の預金は少ないので預金とローンから得られる収益は大きくは無い。
システムコストをクラウド化で削減しても、アプリの継続的な開発等の投資は必要になる。
収益化には、下記がある。
 1:ローンの収益
  ・既存銀行が出来ていない小口ローンの審査コストを下げて、収益性を確保する。
 2:非金融の手数料
  ・金融以外のサービスと提携して紹介手数料を得る。
  ・証券・保険・コンサルティング等の金融サービス、自動車・航空・住宅等の高額商品。
 3:システムの販売
  ・金融サービスを行い企業への提供。
(続く)

データコピー・バックアップサービスの@IDEA

このページの先頭へ