項目別バックナンバー[3]:ビジネス情報:65
ネット銀行
インターネット専業銀行は、インターネット銀行やネット銀行と呼ばれて、インターネットや電話などの通信端末を介して取り引きを行う業務が中心となる普通銀行を指す。
金融庁の分類では「新たな形態の銀行」のうち「インターネット上でのみサービスの提供を行う銀行」に入る、「新たな形態」とはそれまでの分類に当てはまらない新たな形態の意味であり、預金口座までが新たな形態になっている意味ではない。
インターネットの個人利用が普及した初期には、従来の銀行はインターネットに対応が遅れていたので、ネットビジネスやネットでの買い物や課金サービスの利用時の決済手段としてネット銀行は急激に広がった。
その後のネット利用人口の増加に伴い、従来の銀行がインターネットバンキングに対応して行った事で次第に共存という形になった。
ネット銀行と従来の銀行との、商品内容やサービス内容には差がある部分は有るが、ネット銀行間でも差があり、棲み分けか共存かそれ以外かの今後は不透明とも言える。
ネット銀行(ネット専用銀行)から見たメリットには下記がある、
・営業上最小限必要な店舗のみを有する
・店舗は少なく、同時に自社が管理して運営するATMが少ない
・紙ベースの預金通帳等を発行しない。
・上記により、人件費や店舗運営コストが少なくなる
ネット銀行の取り引きでは、振込や振替などはインターネットバンキングやテレフォンバンキングサービスを利用する、現金の取り扱いが必要な時にはキャッシュカードと提携先のATMを使用する。
紙ベースの預金通帳を発行しなくて、インターネットのウェブサイトでの「入出金明細」を使用している、紙ベースの取引明細書のが必要な時は有料で対応する。
一般的にはネット銀行の口座開設は無料であり、取引の手続きはネットで完結する、その結果運用コストが少なくなるので、手数料が安く設定できる、預金金利が高く出来る、これらはネット銀行の特徴と出来る。
利用者側から見たのネット銀行の利点には下記がある(個々に差があるが一般的にだ。メリットと感じるか微妙なものもある)
・ネット銀行の口座開設は簡単な手続きで短時間で終わる。
・口座開設料金は、無料。
・口座開設も、その後の各種手続きも、ネットのみで完結できる。
・紙ベースの預金通帳等を発行しなく、管理はデジタルデータとなる。
・現金引き出しは提携銀行と提携コンビニのATMとなる、環境的に身近になるケースも多い。
・普通預金金利が高い。
・振り込み手数料が安い。
・キャンペーン、特典等のサービスが多く充実度が高い。
ネット銀行(ネット専用銀行)が初めて登場した時は、インターネット上の銀行である事自体が特長であったが、現在では一般の銀行・金融機関がネット支店で対応しておりそれ以外で特長を出す色々な戦略が取られている。
ネット銀行の戦略・特長には以下がある。
・金利と手数料
・ウエブ機能
・他のネットサービスとの連携
実店舗がなく運営費・人件費を削減できる利点を生かしての、普通預金金利を高くする事、手数料を安くする事は既に述べてきた。
ネット銀行のウェブサイトでの取引照会では基本は表示されるだけだが、データをダウンロードでの提供も一部であり、Microsoft MoneyのデータやCSVファイルやPDFファイルなどの電子媒体の提供例がある。
ネット銀行での紙媒体通帳レスは当初から一般的であり、むしろ通帳の概念を持たない(呼ばない)所も多い。
日常の振り込み・送金作業に対応して、振り込み先情報の事前登録と利用後の登録機能を早くから備えており、振り込み先入力を簡単にする機能もオンライン先では早くから対応していた(1:自社内、2:オンライン銀行間、現在では多数の金融機関)、これは振り込みミスの削減に寄与したので、現在では一般銀行のネット支店でも対応している。
振り込み・送金作業に関してはネット銀行が先行して、人気があれば一般銀行が追従してきた、ネット銀行の一部では一般銀行の行うサービスに対応する所もある(例えば、定期的引き落とし、年金振込、税金引き落とし等)。
ネットサービスがネット銀行を傘下に入れて、ネット銀行と他のネットサービスとの連携を強める戦略を強めている。
そしてスマートホンでの利用が注目されている。
ネット銀行ではユニークなサービスを含めて、多様なサービスを展開している。
例えば、一般の送金情報である銀行名や口座番号を入力しなくとも、携帯電話番号やメールアドレスやURLと相手の口座名義だけで同じ銀行の受取人に送金できるサービスがある、ただ受取人がパソコン等での操作が必要になる。
同銀行間の振り込みで、店舗での営業時間外に振込みでもその日に同じ銀行の振込相手の口座に入金できるサービスもある、日にち・時間限定稼動の全銀システムを使わず自行システム内だけで処理するためだ、全銀システムの対応自体も広がっている。
ネット銀行では、24時間対応が広く行われていて、それは自社内で顕著だが、全ての銀行へも広がっている。
ネット銀行のスマートホンへの対応は広がっており、ほとんどのサービスがスマホのアプリから操作できるようになって来ている。
スマホの特性を利用した、キャッシュレス決済への対応が急激に広がっている、スマホの個人認証機能とモバイル性とQRコードとの相性の良さ等を利用している。
ネット銀行は新しい形態の銀行として登場して、インターネット上で独自のサービスを展開してきたが、現在では一般銀行をはじめとして地方信用金庫・JA・郵便貯金(ゆうちょ銀行)を含めたほとんどの金融機関がインターネットサービスを始めて、それらがシステム(例えば全銀システム)として繋がってきている。
その結果として、インターネットで送金手続きが全て完了するネット銀行の特徴は多くの金融機関では一般的となった、さらには大手銀行では通帳レス(ウエブ通帳)のサービスを始めており、ネット銀行の通帳レスも必ずしも特徴でもなくなりつつある。
ネット銀行では送金手数料が安く、普通貯金金利が高い特徴は残っているが、あらたな差別化を模索している。
開業当時からの課題であった、「非電子化利用者への対応」(そもそも口座開設が出来ない)はスマートホンの普及により、スマホサービス展開に置き換わったともいえる。
新たな展開の例が各種ネットサービスとの提携でありその拠点化である、またスマホへの対応はキャッシュレス決済への対応に進んでいる。
ネット銀行はインターネット上のサービスである事からどの段階でもセキュリティ面が課題となっている。
五輪ネット配信
新型コロナ・ウィルス感染問題で延期されていた五輪「東京2020オリンピック」が開幕した、無観客開催であるが、それ以前にはアメリカのテレビ視聴を対象とした競技時間や、猛暑対策問題が、話題になった事もある。
ほぼ全競技がライブ中継されて、全世界へテレビ中継されているが、インターネット配信でも複数の配信が行われている。
日本での「東京2020オリンピック」のネット配信状況を整理すると、オリンピック競技をネット配信するサービスは、
・オリンピック公式競技動画配信サイト「gorin.jp」
・民放公式テレビポータル「TVer」
・NHKの配信サービス「NHKプラス」 の3つだ。
「TVer」と「NHKプラス」では、まず民放とNHK総合テレビ/Eテレでテレビ放映される競技がライブでネット配信される、それに加えてハイライトやダイジェストも配信される。
インターネットは1900年代末から普及し始めていたが、五輪に関してはIOC(国際オリンピック委員会)は当初にはネットの活用に関しては積極的では無かった。
その理由としてはIOCは財源の多くの比率をテレビ放送の放送権料で得ていた事がある、同時にネット配信の可能性とその権利「ネット権」について判断しきれていなかった事がある、さらにはテレビ局がネット配信に関してどのような考えを持っているのかが判断できなかった面もあると言われた。
IOCは2000年シドニー五輪大会前に漸くに「ネット権」をどう扱うかの議論を行ったとされるが、実際には変革は行われなかった、その理由としては独占放送権の扱いが難しかったと言われている。
2002年ソルトレーク冬季五輪大会では試験的なインターネット放送が行われた、続いての2004年アテネ五輪大会ではストリーミング配信が行われた、ただしあくまでも慎重な姿勢で行われた事で変革途中と言える。
アテネ2004以降にIOCのネット配信に対する慎重な姿勢が変わってきた。
従来のテレビ放送権に加えて、インターネット配信権を考え始めて、双方を合わせた「ニューメディア権」という考え方を持つようになった。
理由としてはネット配信に関する議論が進んだ事や、試験配信が行われて議論内容が具体化した事や、インターネットの技術革新で課題であった権利保護技術が進んだ事がある。
技術革新としては、「IP Geolocation」によるアクセス制御や地域制限技術により、放送権が及ぶ範囲以外からのアクセスを排除する事が可能になった事がある。
IOCは2008年北京大会の前に、テレビ放送権の保有者にネット動画配信を提案した。
日本では放送権を持つジャパンコンソーシアム(JC、NHKと民放キー局5社で構成される)は、ネットでの動画配信を持ち掛けられたが急にはその対応は難しかった。
その理由は、配信内容が不明であり、ネット配信の地上波への影響が不明であり、参加各社間で対応に差があり、特に民放局はスポンサーの対応が必要でありそれは難しかった。
ただしネット配信しない場合は、他のネットメディアにネット配信権利が移る可能性があった。
ロンドン2012大会でネット配信が本格化した
IOCは選手のSNS使用もガイドラインを遵守する事を条件にして容認した、ガイドラインは「オリンピック憲章の遵守」「一人称で日記形式の書き込み」「商業、広告目的に活用しない」「競技リポートをしない」「他選手の言動、活動にコメントしない」「競技会場、選手村等オリンピック施設内での動画投稿の禁止」だった。
選手たちのSNS情報発信が活発になった。
動画配信では、オリンピックの独占的放送権を持つ米国NBCが競技のストリーミング配信を行った、NBCは全競技の配信を行うと共にケーブルテレビへの加入を勧め、専用アプリの提供を行い、視聴者を地上波や特設サイトやケーブルテレビに誘導した、その結果はテレビとSNSの親和性が高い事を示した。
開催地の英国BBCでも、地上波と共に、ネットのオンライン配信を行い、国内の総視聴回数を向上させた。
日本でもロンドン2012で、NHKは8チャンネルで20競技をライブストリーミング配信して、特設サイトを開設してTwitterの公式アカウントを公開した、その結果はアクセス数を伸ばした、ネット配信が認知された事で、インターネットのライブストリーミング配信や動画配信が大きな可能性をもつ事が確認された。
ロンドン2012大会でネット配信が本格化したが、その内容は「IOCが選手のSNS使用の条件付き容認した事と、テレビ局にネット配信を勧めた事と、かつその結果からネット配信の有効性を確認した事」だった。
2016年リオデジャネイロ大会では、IOCは2016年に独自にインターネットテレビ局「Olympic Channel」を開局した、そこではオリジナル番組と過去の大会映像との動画を配信し始めた、それによりネット配信での動画配信の可能性をさらに追求し始めた。
日本ではNHKは特設サイトで、民放はサイト「gorin.jp」で、ともに一気に配信時間を長くしたライブストリーミング映像を配信した、ロンドン2012と比較して時間で2.5倍以上であり、配信回数にも増加があった。
五輪中継は依然としてテレビが主体ではあった、だが動画サイトとネット配信の知名度と配信数とアクセスの急増で、ネット配信の存在感が急増した。リオデジャネイロ2016大会と、次の2018年平昌冬季大会では、スマートホンでの観戦とパソコンでの観戦の需要が増えた、その報告によると勤務時間帯にはスマホ観戦が行われ、午後にはパソコン配信がアクセスが増えたとされた。
東京2020は新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期されて2021年開催となったが、依然として感染問題は継続しており、無観客開催(東京以外の開催地の一部競技のみ入場制限)となった。
無観客開催によって観戦様式も必然的に大きく変化して、実質はテレビ中継とインターネットでの動画配信のみとなった、その事でネット配信の需要が拡大した。
ネット配信では一部競技でテレビ中継とネットとの同時配信が行われた、それに加えてネット配信では「見逃し配信」「テレビ中継がない競技のライブ配信」「情報提供配信」、そして日ごとの「ハイライト動画配信」が行われて、急増した需要に対応した。
東京2020は日本では自国開催なので時差がなかったが、例えば次回のパリ開催や次々回のロサンゼルス開催では大きな時差がある、時差がある時のネット配信も課題の一つとなる、今回ではアメリカのテレビ中継向けに日本時間で午前中に決勝種目が多くあった事も含めての課題となる。
もう一つはオリンピック独特の課題がある、同時に複数競技が実施される事に対していかにその放映と配信を行うかがある、テレビよりも複数種目を並行して配信可能なネット配信でも技術面を含めて課題となっている。