項目別バックナンバー[3]:ビジネス情報:75
銀行とデジタル化2
三菱UFJファイナンシャルグループ(MUFG)
MUFGは2021年の経営計画で「デジタルトランスフォーメーション」「強靭性」「エンゲージメント」を経営方針として、主要戦略の1つとして企業改革、デジタルトランスフォーメーションをあげた。
デジタルトランスフォーメーション担当部署は主要戦略として、業務のデジタルシフト推進とデジタルチャネルのビジネスモデル変革とした。
業務のデジタルシフト推進については、店頭の取引をインターネットバンキングへシフトする事で営業店チャネルの縮小を計画して、経費削減的な意味も持たす。
デジタルチャネルのビジネスモデル変革としては、新金融サービス提供プラットフォームと、幅広い顧客基盤や技術を持つ企業との提携をあげた。
(続く)
三菱UFJファイナンシャルグループ(MUFG)
(承前)
・MUFGではインターネットバンキングは個人口座保有者の1/4程度の利用であり、非利用者を含めたシステムがより望ましいという背景がある。
そこで「資産形成総合サポートサービス(マネー・キャンバス)」を提供して株式や投資信託やクライドファンディングや保険やポイント等を一元的に取り扱う。
・MUFGは2021年にNTTドコモと業務提携した、相互に口座サービスを提供する狙いがある。
・2021年にオンラインファクタリング事業の「ビズ・フォワード」を設立して中小企業への小口の資金調達を支援するサービスを始めた。
コロナ化の事業転換での運転資金が必要なケースに有効と考えられ、資金繰りの悪化に対して、売掛金の売却をオンラインで行うのが、オンラインファクタリングであった。
三井住友ファイナンスグループ(SMFG)
SMFGのDXへの取り組みは、1:情報産業化、2:プラットフォーマー化、3:ソリューションプロバイダー化、がある。
情報産業化
・キャッシュレス事業での次世代プラットフォーム「ステラ」で、加盟店と決済センターとネットワークと決済事業者のすべてを包含する。
・店舗でのオールインワン端末やECサイトのマルチ決済システムを提供する、そのデータを決済センターとネットワークで決済事業者に送る仕組みをオールインワンで提供する。
プラットフォーマー化
・ビジネスマッチングサービス「ビズ・クリエイト」で、インターネット上で企業間マッチングを原則で無料で行う。
・中小企業のデジタル化支援会社プラリオンの設立し、そこでは法人向けプラットフォーム「プラりタウン」を立ち上げた。
(続く)
三井住友ファイナンスグループ(SMFG)
(承前)
ソリューションプロバイダー化
・「SMBCクラウドサイン」で、銀行の企業取引の基盤を対象にして、クラウド型の電子契約サービスを提供する。
送信者が契約書をクラウドにアップロードして、契約書受信者とが同意すると締結して時間が記録されて、ハンコレスで、契約書がクラウド上に保管される。
勘定系システム更改
・三井住友銀行は1994年の住友銀行のシステムを使用するが、2020年に次世代勘定系システム構築を公表した。
・メインフレームの勘定元帳をリアルタイムでオープン系プラットフォームに「元帳ミラー」としてコピーする、これでメインフレームに手を付けずに新しいサービスを簡単に開発できる、とした。
・次世代勘定系システムの目標として
1:サービス価値の向上、2:経営基盤の強化、3:新ビジネスの創造、4:持続可能な開発 をあげている。
3メガバンクのDX
3メガバンクのDXの方向は異なる、それ以前の従来の銀行サービスは均質化していた中での競争だったが、これに対して新事業としてのビジネスモデルの構築は方向性が異なっている。
・三菱UFJ銀行:金融企業向け・企業と連携する事業や個人向け、企業向けとバランス良く進める。
・三井住友銀行:企業向けサービスで自社の若手社員を責任者にする取り組みがある。
・みずほ銀行:個人向けのサービスを中心に展開する。
三井住友ファイナンスグループ(SMFG)の次世代勘定系システムの開発期間は2024年頃からの5年程度で総投資は500億円の大規模開発だ、だが2109年のみずほFGの勘定系システム更改の投資額は4000億円台であり、2009年の旧三菱UFJ銀行のシステム統合の投資額3300億円だった。
さらにその勘定系システムへの取り組みで各銀行で差が生じているが、システム障害が起きた事で、新システム構築の早さが必ずしも有利になっていない。
三菱UFJ銀行は、地方銀行へのシステム提供も行っているが、新システムへの更改を求める必要性を含めて、抜本的なDXには勘定系システムとの連携が必要だ。
(続く)
3メガバンクのDX
(承前)
3メガバンクは従来は、自社と自社グループ内で商品およびサービスを開発する傾向があったが、DXに関してはいずれも、グループ外の企業との連携を行っていてそこに変化が見られる。
みずほFGはソフトバンクとLINEと提携している。
だが、ソフトバンクと提携した消費者向け与信サービス「j.score」は停滞している。
LINEと提携した、LINE BANK構想も遅れている。
三菱UFJ(MU)FGは、KDDIグループと合弁で2008年にネット銀行である、じぶん銀行を設立した。
NTTドコモと2021年に提携を発表した。
三井住友(SM)FGは、2020年にSBIホールディングスとの提携を発表して、三井住友銀行がSBIネオモバイル証券の株の一部を取得した。
社内ベンチャー企業の創業を目指して外部人材とでの活性化を行っている。
3メガバンクはDXに投資しているが、明確な進路はまだ不明な状態だ。
銀行とデジタル化3
地方銀行のDX
2018年の金融庁のレポート「地域金融の課題と競争のあり方」では、「資金需要の減衰や低金利での貸出競争により、地方銀行の収益力は低下している」「2016年度の決算では地域銀行の過半数は本業赤字」と指摘している。
そこでは、新たにIT投資を展開する力にちては限定的だがいくつかの取り組みが、出て来ている、例えば、
・2021年に北國銀行がマイクロソフトのパブリッククラウド上でオープン勘定系システムを稼働させた。
・2021年にふくおかファイナンシャルグループが設立したみんなの銀行が、グーグルクラウド基盤のシステムで新規開業した。
1989年に132行あった地方銀行は合併統合で減少していて、2022年に99行になっている。
その減少度合いは都市銀行からメガバンクに進んだ大幅減少に比べて緩やかであり、地方銀行は基盤の地域が明確であった事で生き残ってきたと言われている。
(続く)
地方銀行のDX
(承前)
北國銀行の改革
・北國銀行は地方銀行中ではDXの先頭にいて次々改革を出している。
1:コンサルティング体制の構築
支店を統廃合して人材の転換を行い、本部のコンサルティング要員を確保した、それによりコンサルティングは外部依頼せずに社員が実施した。
コンサルティングは地域企業の経営改善が目的であり、リーズナブルな有償サービスで地方活性化と銀行自体のビジネスモデル変革の両立を図ってきた。
2:ペーパーレス化等の生産性向上
グループウエア採用やオフィス環境整備により、文書削減に加えて、会議や打合せの改革を図った。
3:情報システム改革
オープン系システムを勘定方システムに採用した、それはメーカー独自仕様の機器でのシステムに対して、サーバが安価でインフラコストを大きく抑えた。
さらにパブリッククラウド環境で勘定方システムを稼働させた。
4:持株会社体制への変更
「地域商業企業」から、預金貸出等の銀行業務を1事業とする「地域総合商社」への転換を目指した。
(続く)
地方銀行のDX
(承前)
地方銀行の経営統合とシステム共同化
・地方銀行の経営環境は悪化していて、その経営統合が進んでいる。
その理由としては、1:人口減少傾向、2:2016年からのマイナス金利政策による利ザヤ縮小がある。
・地方銀行は2014年の105行から、2021年に99行に減少した。
・2021年に改正金融機能強化法が成立し、2026年までの時限措置として、合併
・統合の費用の一部を交付金で支援する制度が出来た事も加速理由だ。
・地方銀行の特色として、大きな再編の代わりに新規IT投資の負担の削減が経営課題となった事で、システム共同化が進んだ事がある。
・共同化においては、利用銀行が24行のNTTデータと、利用銀行は24行だが大手地銀が中心の日本IBMと、17行が利用する日立と、11銀行が利用するBIPROGYのBANKVISIONが競っている。
・経営統合が効果的なのは同じ県の銀行同士だが逆にライバル同士でもあり、異なる陣営に入る事もあった、経営統合では統合後にどのシステム統合するかの調整に手間取る可能性がある。
(続く)
地方銀行のDX
(承前)
第4のメガバンク構想
・SBIホールディングスは2019年に第4のメガバンク構想を打ち出した。
・その内容は現行の3メガバンクのような大きな銀行を合併する方法では無くて、10行程度の地方銀行との資本提携による緩やかな連合体を目指すものだった。
・島根銀行(2019/09)、福島銀行(2019/11)、筑邦銀行(2020/01)、清水銀行(2020/02)、東和銀行(2020/10)、仙台銀行(2020/11)、きらやか銀行(2020/11)、筑波銀行(2021/05)、新生銀行(2021/12)と資本提携した。
・2020/08には共同で地方創生パートナーズを設立した、そこではあえてSBIの名称を付けなかった。
・SBIホールディングスは、新生銀行を連結子会社化したことでSBIグループの弱かった部分が強化されて、新生銀行を連携する地域金融機関の新たなプラットフォームとして位置付けるとした。
(続く)
地方銀行のDX
(承前)
勘定系共同化連合の枠組み変化
1:共同化利用システムのオープン化
2:アプリでの共同化枠組みを超えた提携
共同化利用システムのオープン化
・2019年に横浜銀行等5行が利用する勘定系共同化システムの陣営でオープン基盤への移行が発表された。
2024の移行と2030年のクラウド化が予定されている。
・2021年に地銀共同センター陣営(13行)と、MEJAR陣営(5行)とで、共同化グループの枠組みを超えたシステム運用効率化を検討するシステム・ワーキンググループ(CMS-WG)を立ち上げた。
そこでは、1:勘定系システムの効率的運用、2:営業店窓口機器などの効率的な開発と調達、3:オンラインデータ連携基盤の相互利用、4:IT/デジタル人財の育成策、5:サイバーセキュリティの共助が研究テーマとなっている。
(続く)
地方銀行のDX
(承前)
アプリでの共同化枠組みを超えた提携
・2016年にiBankマーケテイング社が銀行代理業として「Wallet+」という口座管理アプリを福岡銀行向けに開始した。
このアプリは、口座の収支管理に加えて資産運用が可能だった、そして非金融サービスとしてポイントサービスや情報コンテンツサービスも提供する。
2017年にグループ内の熊本銀行、親和銀行にサービスを拡大して、2018年以降はグループ外の銀行6行でも利用開始して、順次拡大している。
参加銀行は各県内でシェアの高い有力地方銀行が多い、それは地銀の共同化システムの枠を超えている、BIPROGYのBANKVION利用銀行が2行、日本IBMのCHANCE利用銀行、じゅうだん会の銀行が各2行だ。
・2018年にチームラボ、日本IBM、りそなデジタルアイの3社の協同で、りそな口座アプリをりそな銀行・埼玉りそな銀行・近畿大阪銀行で開始した。
このアプリを地域金融機関に提供する試みを行って来た、2021年にりそなHDは京葉銀行とバンキングアプリを含む戦略的業務提携を発表した。
(続く)