項目別バックナンバー[3]:ビジネス情報:66

日本の五輪ネット配信

東京五輪2020と東京パラリンピック2020が2021/09/05に閉幕した。
新型コロナ・ウィルス感染問題でほぼ無観客開催となった事で、実質的にはテレビ中継とインターネットは配信のみになったが、それによる観客収入減少による経費問題や、映像配信結果については次第に報告されるであろう。
日本では五輪・パラリンピック開催前は、テレビと新聞におけるマスメディアでは圧倒的に「五輪等開催反対」報道が多く、新型コロナ・ウィルス感染問題に関連して複数の専門家とコメンテーターが中止意見を出していた、それに加えてインターネットでも開催反対意見も多くあった。
五輪が開催されると、テレビでは地上波ではNHK2波と複数の民放がほぼ全日で中継を行い中止意見は抑えられたように見えた、新聞でも五輪報道は多くを占めて似た傾向となった。
インターネットでも新聞・テレビのニュースを引用するポータルサイトでは、似た傾向になった、多様な意見が混ざるネット全般では他よりは揺れは少ないと感じたが、今後の分析を待とう。
パラリンピック東京2020では同じ無観客で行われて、NHKテレビの放送体制はほぼ同じだったが、民放の中継は殆ど行われず五輪との差は多きかった、同時に後者の民放テレビ中継と繋がるネット配信も少なかった。

東京五輪2020は無観客でテレビ中継とインターネット配信が多数配信されて注目された中で終了した、五輪ネット配信についてもいずれ評価等が出てくるだろう。
NHK放送文化研究所の調査「五輪東京大会に期待する放送サービス」のアンケートは開催決定後の2016年から毎年行われて来た、その内容と変化は東京五輪の中継でも反映されているし、東京五輪2020の結果を受けての調査を加えて今後の中継に影響されてゆくと思われる。

以下引用する。
・「見逃し配信」=「終了した競技を様々な端末で後からいつでも見ることができる」>44%。
 「見逃し配信」は男女50歳代と女子30歳代で半数以上が要望した。
・「同時配信」=「様々な端末で、いつでもどこでも競技映像が見られる」>37%。
 「同時配信」は男女とも20歳代から50歳代までで40%以上で、いわゆる働き盛りの層で「動画配信」の需要が高い。
・「4K・8K」=「今よりも、高画質・高臨場感のテレビ中継が見られる」>36%。
 高年齢層では「4K・8K」への要望が高い。
・「端末への情報提供」=「選手のデータや競技に関する情報が手元の端末に表示される」>28%。
 男子30歳代と女子の20歳代で「端末への情報提供」が40%を超える。
・「自分だけのアングル」=「自分の好きな位置を選んで自分だけのアングルで競技を見られる」>15%。
・「バーチャル」=「自分も競技に参加しているかのような仮想体験ができる」

世代間での差があった。

アンケート調査結果からはインターネットの動画配信サイトの需要の高まりがはっきりと判る。
だがスポーツ配信は配信権利化ビジネスであり、五輪ネット配信での動画配信もオリンピックにおける権利ビジネスの一環であり、それは国際オリンピック委員会(IOC)との契約によって成立している。
ネットとそこでのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が日常生活に密接に関わって来てその存在が大きくなっている現在だが、そこでも権利を持っていなければ引用としての短いニュース映像以外では、オリンピックに関わる動画配信と競技の中継映像配信は出来ない。
東京五輪2020では、ネット配信の前提としては、NHKと民放と共に「地上波で中継する競技は基本的には全てネットでも同時配信される」だった。
ネット配信は、NHKで放送されるものは「NHKプラス」で配信された、民放各局で放送されたものは共同運営の見逃しサイト「TVer」で無料視聴できた。
NHKプラスは、通常は地上波の受信契約が済んでいるかの確認でのID登録が必要である、だがオリンピック期間中はID登録なしでも視聴できた。
民放共同サイトの「TVer」は元々から会員登録不要のサービスだった。

東京五輪2020の中継は、地上波テレビはNHKの2チャンネルと民放の複数チャネルで同時放映された、それに加えてBS放送でも中継放映された、ネット配信は地上波テレビ中継の同時配信として中継された。
さらにはそれぞれが見直し配信としてネット配信され、ダイジェスト版も配信され、テレビ中継されなかった競技もダイジェスト等で配信された。
スポーツ中継は多様化して、視聴機器や時間や場所の自由度が高まった。
その結果の上でも、追加でのオリンピックの映像配信への課題が言われている。

オリンピックでは同時に開催されている競技数が多く、同時に多数を中継する事や録画ダイジェストへの映像を含めると、全競技中継自体が課題であった、それ以上はさらなる大きなハードルとなる。
その上で、例えばサッカーのワールドカップでは一つの競技で映像の種類を増やしての「臨場感」「多視点」のようなアプローチが行われている、五輪でも同様の可能性が課題となっている。
幾つかの競技は予定する試合時間を超えた延長が生じる、テレビ中継では放送予定時間延長を事前に予定しているがさらに超える事もある、対応例としては過去のスポーツ中継では民放がYouTubeや見逃し配信(TVer)にリレーして中継した事がある、他には東京五輪2020の中継を含めてサブチャンネルの利用が行われている、五輪中継ではNHKは一部の競技で複数チャネル放送での相互補完を行った。
テレビ局がテレビとインターネット双方を活用していくことにより、サービスの高度化が進んだが、将来的にはテレビとインターネットの融合が進み、テレビ中継をネット配信する原則から変わる可能性が生まれて来た。

日本の五輪中継のアンケートには、テレビ放送の高品質化の要望と期待がある、その具体的内容には4Kと8K放送がある。
現在の地上デジタル放送・衛星放送・テレビ受像機で「フルHD」と呼ばれる規格があり、横×縦の画素数が1920×1080のものを指す、この規格は4Kが登場して以降は「2K」と呼ばれている。
4Kとは「4000」の意味であり、テレビの場合は、横×縦の画素数が4000×2000前後の規格を「4K2K」と呼ぶが、あるいは省略して「4K」と呼ぶ、(Ultra HD と呼ぶ事もある)。
2Kと4Kの違いは、画面を構成する画素数の差であり、2Kは約200万画素であるが、それに対して4Kは約800万画素になる、同じ画面サイズの時には4Kは2Kよりも画素が4倍高密度になるので映像が緻密になる。
8Kは8000×4000=3200万画素で、4Kのさらに4倍の画素を持つ、それは超高精細映像であり「スーパーハイビジョン(SHV)」と呼ばれる。
東京五輪2020のテレビ中継では、4K/8K放送はNHKや民放が地上波とBS4K/BS8Kで同時放送を行うパターンがメインで組まれた。
組み合わせは色々と行われた。

インターネットとそこでの動画配信技術の進歩の結果は高機能・高性能になり、スポーツ中継においても新技術の適用対象として望まれている。
利用者アンケートに出ていた内容には、3次元映像やバーチャル映像がある、特殊な器具や高速通信容量が必要だ。
上記を踏まえると、現在サービスが開始して、ハード機器が対応し始めた5G通信回線への期待が大きい。
またネット配信に利用者個人の設定機能を望む事もある、具体的内容は課題だが、音楽・映像等では既に色々な機能が有り、ネットでは自然な流れだ。
東京五輪(2020)ネット配信では日本では無料配信が基本で行われたが、有料化の問題がある、無料配信コンテンツと有料コンテンツの併用は他のネット配信では標準となっている。
アメリカでは有料テレビ中継が広く利用されており、今回の東京五輪(2020)では有料テレビ局が行ったネット配信利用者が増えたとされている。
DAZNなどのスポーツ専門有料ネット配信企業が事業を伸ばしており、スポーツ中継を見るために課金でお金を払う時代が来ている、それは五輪中継でも無視は出来ないだろう。
既に日本でもスポーツの地上波中継が減少していて、DAZNなどが中継している、スポーツ専門企業へシフトが当然の流れになりつつある。


iモードのビジネスモデル

携帯機器・モバイル機器を使用した通信方法とサービスの分野は、急激に技術革新で変化して来て、そして大きく普及してきた。
2021年現在はスマートホンが普及して、それを使用するビジネスモデルが広がているが、今なおその詳細な内容は変化し続けている。
スマホ機器とそれを使用したビジネスモデルの登場以前に、日本では独自の携帯電話情報サービスが登場して普及していた、それは結果的には携帯通信3キャリア毎に構築されていた、その中で最初に登場して中心となっていたのがNTTドコモ(以下、ドコモ)の「iモード」だった。

「iモード(アイモード)」は、ドコモの対応携帯電話(フィーチャーホン(ガラケー))に於いて。キャリアメール(iモードメール)の送受信やウェブページ閲覧等を可能にした携帯電話IP接続サービスであり、機種的には限定されていたが世界最初のサービスだった。

iモードとはNTTドコモが3G回線携帯電話(フィーチャーホン=ガラケー)時代に提供を開始したインターネット接続サービスの名称であり、音声通話に加えてiモード対応機器を使う事で多様な機能を使用できるようにした。
iモードは1999年にサービスを開始して、以降は順調に利用者・加入者を増やした、日本の携帯電話に於いては大きな影響を及ぼして携帯電話とその業界と事業の発展に大きく関わり、功罪含めて日本の携帯電話使用文化を作って来た。
その後にスマートホンの登場とその急激な普及により、利用者が減少してきた、そして2021年現在では3G回線なサービス停止が決まり、既に対応電話機器は発売中止になり、サービス終了時期が公表されている。
iモードでは、「公式サイト設置」や「サービスに課金方式」「バケット課金方式」等のビジネスモデルを設定して、そこに「公式サイトのホームページのブラウザでの閲覧」「キャリアメールでの電子メール機能」を可能にして、「個人でのホームページ開設」等の個人対応から、ニュース・天気・から金融機関の利用等のビジネスへの利用も可能としていた。
その後のスマホを含めた、モバイル機器を中心にしたインターネットサービスに影響を及ぼした見方もある、少なくとも先駆的なビジネスモデルは多数見られる。

NTTドコモが提供したiモードは大ヒットサービスとなり急激に利用者を増やしたが、NTTドコモの通信サービス網に限定された閉じたサービスだった。
その為にそれが日本で人気が出たことで、他の3G回線携帯電話キャリアではそれぞれに類似サービスの導入を行い追従した。
現材のau(KDDIグループ)は沖縄セルラー電話と連合の形だが、当時はDDIセルラーはEZwebのサービスを始め、IDOはEZaccessのサービスを始めた。
その後はEZwebのサービスに統一されているが、iモードと同様に3G回線のサービス提供の終了と共にサービスは終了する。
現材のソフトバンクは、2000年はJ-フォンであり、J-スカイのサービスを始めた、その後に2003年にJ-フォンがボーダフォンに社名変更した事でサービス名もVodafone live!(ボーダフォンライブ)に変更になった。
さらに2006年にボーダフォンがソフトバンクモバイルとなった事で、サービス名はYahoo!(ヤフー)ケータイになった、3G回線のサービス提供の終了と共にサービスが終了する事は同様だ。

iモード以外にも、NTT東日本とNTT西日本は、固定電話を用いたiモードサービスに似た「Lモード」を2001年に開始した。
このサービスは、パソコンでのインターネット利用率の増加によって契約者数が減少した事もあり、2006年に新規申し込みを止めた。

iモードの歴史を整理しておく。
1999年1月に発表されて、同年2月にサービスを開始した。
開始当初からネットバンキングや待受壁紙や着信メロディの配信などを含む、iメニューサイトが利用出来た。
サービス開始当初は当時の3G携帯電話の高付加価値サービスという位置付けであり、その中の上級の特定の機種シリーズに限定してサービスが展開された、その後は一般的な機種にもiモードを対応させた。
2001年以降に発売された3G携帯電話は海外メーカー製を除いてほぼ全てがiモード対応となった。
NTTドコモは2006年1月に、世界最大の登録者数のワイヤレスインターネットプロバイダとしてギネスから認定を受けた。
その後はスマートホンが登場して、次第にそれに利用者が移行した。
iモード契約者が減少した事で、2015年発売の機種を最後に以降は新機種は発売されていない。
2016年11月2日にiモードケータイの出荷が終了した、一部の機種は出荷を継続していたが、2017年6月までに販売を終了した。
iモード対応携帯電話を新品で購入することは不可能となった。
2019年9月30日にはサービス自体の新規受付が終了した。

iモードのサービスでのコンテンツ(情報の内容、サイト)は開設時から多数有り、その後も増えた。
いくつかの分類があるが、例として4種類の分類を示す。

1:情報系
 ニュースや天気予報や株価情報や道路情報などがある。
2:取引系
 モバイルバンキング(銀行口座への振込や、残高照会など)。
 モバイルトレーディング(株式売買)。
 航空機チケット予約や、ホテル予約や、旅館等の宿泊施設の予約。
 書籍や物品の購入。
3:データベース系
 情報の中でも利用者が探す・検索するデータベース機能。
 グルメ情報や、辞書や、百科事典や、地図情報や、乗換え案内など。
4:エンターテインメント系
 占いや、ゲームや、着信メロディー配信や、待受画面の配信など。

スマートホンが登場した後に、iモードを提供していたNTTドコモは「spモード」を2010年9月より提供を開始した。
「spモード」はNTTドコモがそこでのスマホ向けに提供した携帯電話IP接続サービスだ、spモードはiモードとは別のインフラを利用するが、一部重複する。
spモードを契約することで、通常のiモードでのメールと同様にキャリアのドメイン名のメールが使用可能になり、プッシュメールや絵文字なども利用が可能になる。
同じキャリア故に、iモード解約と同時にspモードを契約する事で、従来のiモードメールのアドレスを引き継ぐことが出来る。
iモードとspモードとを同時に契約する事も可能であり、その時はキャリアのドメイン名のメールのアドレスを2つ持つことになる、ただし例えばスマホで2アドレスを同時には利用できない、1つのメールアドレスはiモード端末で、他のメールアドレスはスマホでの、制限がある中での利用が可能になる。

オープンプラット株式会社

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