項目別バックナンバー[3]:ビジネス情報:67

iモードの規格

音声通話用だった携帯電話に、情報サービス機能を追加して、急激に利用者を増やしたiモードは、日本の携帯電話の他のキャリアにも類似のサービスを実施させる結果になった。
だがその後にはスマートホンが登場した事で、現在に至ってサービスの提供中止が近くなっている。
その理由は何か、技術革新が理由なのか、ビジネスモデルの問題なのか一概には判断は難しいが、規格・技術面での詳細を見る事で考えて行く事にする。

・携帯機器端末から、アクセスポイントとして接続するiモードセンター設置。
・通信方式としての、パケット方式
・携帯電話業界の規格であったWAP・HDML・WMLを採用しなく、パソコン等で一般的になっていたHTTPとHTMLを採用
・電子メール機能として、キャリアドメインのiモードメールを使用
・具体的なコンテンツと料金方式。    等を考える。

「iモード」対応携帯電話端末はアクセスポイントとして「iモードセンター」に接続する、「iモード」はキャリア(ドコモ)単独の閉鎖的な「iモード専用ネットワーク」を使用するが、「iモードセンター」には外部のインターネットに接続するゲートウェイの役割もある。
「iモード専用ネットワーク」内では、キャリア(ドコモ)に認可されたプロバイダから提供されるコンテンツが各種のウェブサイトに表示されている、それらが「iメニューサイト」を経由して提供されている。
コンテンツのプロバイダは情報料を設定することが可能である、課金される場合はキャリア(ドコモ)がiモード情報料として課金徴収代行を行い、手数料を得る。
「iモードセンター」ではiモードメールの設定や契約情報の変更なども行える、そして外部のインターネットからiモード専用ネットワーク内に入ろうとしてもアクセス拒否エラーとなるので、高いセキュリティとなる。

iモードでは通信はパケット方式で行われた、この方式では通信料金は通信時間単位ではなくて通信データ量(パケット量)に応じた課金システムとなっていた。
具体的には利用時には、「iモード基本料」「iモード付加機能使用料」「パケット通信料」が課金された。
通信データ量が発生するタイミングは下記になる。
・iモードブラウザではページの更新時。
・iモードメールではメールの送受信時及びiショット画像のアップロード時にかかる、iショット画像や他社の画像メールサービスの受信時はiモードブラウザの通信データ量に準拠する。
・iアプリでは、アプリにもよるがアプリ側が通信を要求して認可した場合にかかる。
初期には、通信データ量(パケット量)に応じて料金が加算される従量制の課金システムだった。
 そのために、iモードの使用頻度が多くなるにつれて通信データ量も多くなった、結果的には大きな使用料金となる現象が起きた。
その問題は社会問題となった事で、その後に通信データ量が見直された、パケット通信料が定額制の「パケ・ホーダイ」が導入された。

iモード登場時の携帯電話業界の規格は、WAP・HDML・WMLだった。 一方では、コンピュータとインターネットとウエブではHTTPとHTMLの規格が使用されて既に普及していた。
iモードでは携帯電話の規格ではなくコンピュータで普及していたHTTPとHTMLの規格を採用した、この影響はプラス面でもマイナス面でも影響は大きかった。
プラス面としては、HTTPとHTMLの規格を採用した事でコンテンツの開発が容易になった事がある、実際にiモードサービスでは、iアプリやデコメールやiモードFelicaなどの多彩なサービスが開発されて利用できた。
実際に使用されたウェブの通信プロトコルおよび記述言語は、HTTPとHTMLのサブセットであるCompact HTMLだった。
iモードでは正式なコンテンツプロバイダを承認していた、だが承認されていない企業や個人であっても、コンテンツをCompact HTMLで記述して、インターネットのウエブサーバー上に公開する事でコンテンツを提供することが可能であった。
ドコモとiモード側は、上記のサイトの内容については関知しない。

iモードではメール機能として、「iモードメール」を提供した(内容は後述)それはサービス加入者に基本サービスとして提供されて、通信料が安価であり、さらには機能制約はあるがインターネットメールとしても使える事から、初期から急激に普及した。
サービス開始の初期には加入者の急激な増加により、iモードセンターの処理能力を超えて、iモードの通信が繋がりにくくなるトラブルが発生した、それに加えてサーバー運営の人為的ミスも加わり、長期に渡りiモード接続が利用不能となる障害が発生した。
その時のトラブルとその対応への問題は、その後の類似サービスの導入と運営時には教訓となって行った。

iモードメール
携帯電話向けの電子メールサービスとして「iモードメール」があり、加入者には「希望した文字列@docomo.ne.jp」のメールアドレスが提供された。
それは加入者間で絵文字などを含めた独自形式のメールを送受信できた、それに加えて絵文字等の独自形式を除くと、インターネット上のメールアドレスともメールのやり取りが可能だった。
携帯電話事業者のドメイン名を用いたメールアドレスを取得して、端末から送受信できるメールサービスは普及して、iモード以外のサービスや携帯電話他社でも広まった、現在では「キャリアメール」と呼ばれている。
iモードと類似サービスで提供するキャリアメールは、サービス解約または事業者の変更に伴い解約になった、さらにはiモードと類似サービスは提供と運営を終えようとしている。
その状況で2021年に、キャリアメールを提供している3キャリアは、「2022からサービスが終了するかまたはキャリアを変更した場合でも、有料でキャリアメールの継続を可能にする」と発表した。

iモードを利用する場合には、携帯電話としての使用料金に加えて、iモード使用の為の付加機能料金が必要になる。
その内訳は基本料金と端末別に設定されたパケット利用料金と、アクセスするサイトによって必要なiモード情報料だった。

iモード付加機能使用料は税抜きで200円から300円程度で設定されていて消費税で変動した、他のサービスとのセット割の対象となったりして、組み合わせて契約すると割引もあった。
携帯電話の料金とあわせての徴収が行われたが、コンテンツへの情報料を設定した場合は課金されるがキャリア事業者がiモード情報料として課金徴収を代行して行い、手数料を引いてコンテンツ提供者に支払われた。
幾つかの決済サービスも行われた。
・iモードFelica>クレジット決済サービス
・eサイト>iモードのサイト上から料金プラン・割引サービス、オプションサービスの申込・変更・廃止、クレジットカード等を使った料金の支払い等の手続き。
・ドコモケータイ払い>ドコモ利用料金を請求書払いとする契約者に、QRコーレジのリーダーにかざして支払いが可能なサービス。


iモードと海外展開

日本でiモードが普及した事で、2002年頃から日本以外の国の携帯電話サービス会社に対して、iモードの技術と権利を供与しようとし始めた。
iモードは開始した当初は世界的にも先進的な事例だった、それ故に日本発のモバイルインターネット事業の成功例と考えられて、世界から注目を受けて称賛をも集めた、日本国内では他社・他キャリアも次々に同種のサービスで後追いした。
しかし一方では、iモードの海外展開やその技術の標準化などは進まなかった、それには様々な原因があったが、日本国外への展開は苦戦した、iモードの国際共通化や事業の多角化のための海外投資では巨大な損失になった。
その後に、アメリカ発のスマートホンが登場して、スマホ時代になり、そこでは米国勢のアップルやグーグルが主導する規格や端末やサービス等が全世界で普及した。
その結果で、iモードは対応する携帯電話端末と共にガラパゴス化・ガラパゴス携帯電話として見られる事になった、ガラパゴスには技術や市場が日本国内でのみ、特異な発展を遂げて世界から孤立することの意味がある。

NTTドコモの「iモード」が登場して普及すると、モバイル情報端末(例えばPDA)には興味がなかった一般のユーザーも使い始めた、だがPDAと比較するとiモードは制限が多いので、パソコン中心だった情報機器ユーザーには必ずしも好まれなかった。
提供するキャリア側ではユーザーに最新技術を提供しようとして、色々の施策を展開して多数のサービスを用意して利用者のモチベーションを上げていこうとした、通信速度が速くなったことやコンテンツやサービスなどの見える形が、一般のユーザーへの普及に繋がった、結果として当時は普及前だった3Gが広く普及する事に繋がった。
ただし、この展開には携帯端末機器と無線通信ネットワークとコンテンツサービスの全てをキャリアが提供して、それをコントロール出来る必要があった、それが可能だったのは日本だけだった。
当時でも世界各地でも無線通信技術を基にして、iモードと同じようなサービスを展開しようとしたキャリアがあったが、日本のようには全てをまとめた取り組みは出来ない事から失敗した事があった。
日本のiモードは唯一の成功例として世界に知られた、世界的にはパソコンユーザー等の高い情報能力を求めるユーザーにも普及した現在のスマートホンの登場まで待つ事になった。

iモードの海外展開の失敗原因は幾つか指摘されている、幾つかの要素が重なり普及に繋がらなかったとの見方が強い。
・ノキアを始めとする携帯電話の規格ではなく、パソコンでのインターネットの規格HTMLを採用した事がある、ただしフル規格でなかった事を理由にあげる意見もある。
・日本人と諸外国人との携帯電話の使い方の違いが理由としてある、日本ではおサイフケータイなどの多機能化が進んだ、だが諸外国では通話とSMS(ショートメッセージ)の送受信用途が中心であり携帯電話の使い方が異なっていた。
・海外ではメールやインターネットは、携帯電話ではなくパソコンで行うのが一般的だった。
・海外では日本での定額通信料プランが無く、従量料金の携帯電話通信が主流であり、それがiモードタイプの普及を妨げた見方もある。
・携帯電話事業者が受け取る利益は、日本では全てを抑えるキャリアが低めに抑えたが、機器と通信とサービス事業者が異なる海外では通信手数料が高くなり、それがiモードタイプの不振に繋がった意見もある。
一般のユーザーが携帯電話でメールやインターネットブラウズを使うようになるのは、フルブラウズが容易なインタフェースを導入したスマートホンのiPhoneが登場してからになった。

iモードは海外展開に失敗したが、さらにはアップルがスマートホンを発表してそれが普及して携帯電話業界で台頭した事で、携帯電話通信キャリア自体の影響力は世界的にも大きく減少した。
一方では、iPhoneの発表によって携帯通信業界に台頭したアップルのビジネスモデルは、iモードのものに近いとの指摘もある。
アップルはそれ以前から自社製品ユーザー向け電子メールサービスを始めていたが、それを含めてiPhoneにはモバイルインターネット・コンテンツマーケット・課金徴収代行サービス(App Store)なども組み込んだ。
そしてフルブラウズを可能としており、自前のメールサービスを提供したがそれには拘らずに、各個人が保有するメールアドレスを使うことも認めた。
それらの意味は、自宅で保有するパソコンの使用環境をそのまま外に持ち出してモバイル的に使用できるようにしたことを意味する、それがiPhoneの人気の一因だとされている。
この経営判断はデバイスメーカーでもあるアップルでは可能だが、インフラ事業者としての立場をもつドコモには難しい事であったと思われている、一例ではドコモは通信品質やネットワークへのアップ・ダウンロードを最優先にする必要があった、それに対してアップルはそこでは自由な立場だった。

スマートホンは端末機器としてハード面で見れば電話機よりはPDA等の情報端末に似ている、だがソフト面では使うサービスはiモードと似ている、従ってスマホはそれ以前の機器とサービスの複数を組み合わせた面も持つ。
スマホのOSを設計したアップルやグーグルは、iモードから、コンテンツを一元管理する利点を学び、アプリマーケットの存在が重要だと考えたと言われ、その結果として「App Store」や「Google Play」がサービスに組み込まれたとも言われている。
スマホ発売からしばらくは、そのハードウェアの魅力に多数のユーザーがひかれたが、その後はユーザーの興味はハードウェアからソフトとしてのアプリへと移行していった。
iモードでは当初は「iモード公式サイト」のアプリが主体だったが、その後は公式サイトから非公式サイトへとユーザーの興味と関心が変わって行った、スマホでもiモードと似た同様の現象が起きて、アプリからその上の階層となるネットサービスが話題となってもいる、例えばFacebookやLINEやAmazonなどの比重が高まっている。

iモードの海外展開の失敗と、アップルがスマートホンを成功させて台頭した事で、それ以降は通信キャリアの影響力が世界的にも大きく減少した。
NTTドコモは2011年にアップルのiPhoneがSIMフリーとなっても、iPhone がiモードをサポートしないために販売しないと言明した事もある、だがそれも変わりiモード自体が終わろうとしている。
ハード面では、PDA時代は多様性のある端末が登場した、だがスマホは基本的な外観は登場時からほとんど変わらず、小型薄型の板状であった、その形状で軽量薄型をひたすら追求してきている。
スマホはハードウェアを工夫する余地がなくなっており、目だった変化はカメラレンズの数や性能だけで起きている、最近ではもはやハードウェアの新たな面白さは期待できなく、その結果としてスマホではプラットホームやサービスでの勝負が中心になっている。
今後もスマホを中心になってゆくと思われるが、結局はハード機器でもソフトウエアでも通信だけでもなく、サービス勝負になっている。
サービスはクラウドで提供される事から、ハードとかソフトとか通信とかを限定しての、何を持てば良いのかはあまり問題にならない、インターネットに繋がれば何でも良いとも言える。 スマホとは異なる展開は、いつかあるだろうがその予測は難しい。

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