項目別バックナンバー[3]:ビジネス情報:64
キャッシュレス決済
日本でキャッシュレス化が進まない理由としては、
・現金への信頼が高い
日本は世界中でも治安が良く、現金を持っていても盗難被害のリスクが低い事がある、次には日本の紙幣・硬貨製造技術が高くて偽札が出回るリスクが低い状態に保たれている事もある。
それらが積み重なり現金取引のほうが信用があるという国民感覚が強い事で、現金を使う人が多い。
・キャッシュレス決済への対応店が少ない
キャッシュレス決済は導入には初期費用がかかる、また例えば以前から普及しているクレジットカードではカード会社に支払う手数料が必要だ、これらがコストとなる。
日本では利用者からのキャッシュレス決済への希望が少ないので、導入が利用者へのサービスにならなかった。
日本でも近年は少子高齢化での労働力不足や人口減少での経済衰退が起きており、対策の一つとしてキャッシュレスによる業務の効率化や消費者意欲活性化を目的として政府がキャッシュレス化を推進している。
経済産業省は以下のメリットを示している。
・消費者のメリット
消費履歴の情報のデータ化で、家計管理が簡易になる
大量に現金を持ち歩かずに買い物ができる
・事業者のメリット
レジ締めや現金取り扱いの時間が短縮できる
キャッシュレス決済でそれに慣れた外国人観光客の需要がある
購買情報をデータ化して、マーケティングに使用できる
政府と店舗等の事業者は、キャッシュレス決済のメリットを前回の様にあると考えて普及を目指している。
日本でキャッシュレス化が進まない理由の、「現金への信頼が高い、キャッシュレス決済への対応店が少ない」の内の後者に関しては、大規模小売店や都会の店舗を中心にキャッシュレス決済が進んで来た、ネット通販店では多種の決済方法が過去から利用されて来ている、スマートホンでは新たなキャッシュレス決済が林立して利用者獲得を競っている。
日本では依然として「現金への信頼が高い」事は変わらないが、電子決済の消費者側の利点が増えれば、普及が見込める状況になって来た。
キャッシュレス決済の消費者側の利点としては、「家計管理が簡易、大量に現金を持ち歩かない」の他には、
・硬貨や紙幣を携帯する必要がなくなり、財布重量が軽くなる。
・小銭が不要になり、おつり計算と授受がなくなるので、利用時の店頭での決済が簡単になり、時間的に短縮されて楽になる。
・現金は盗難等のリスクは高いが、キャッシュレス決済ではカードや決済に必要な媒体を紛失したりあるいは盗難事故にあった場合でも直ぐに決済サービス会社に連絡する事で、決済を凍結する事が可能だ。
・オンラインショッピングが簡単に利用できる。
・既に普及しているプリペイド式無接点交通カードの利便さの広がり(自動販売機・コインロッカー等)。
・ファーストフード等の外食店の予約と決済が簡単になる。
・金融機関での現金引き出し頻度が低下する。
など。
キャッシュレス決済は政府と共に、店舗等の事業者もメリットがあると考えている。その内容は前々回に下記とした。
・事業者のメリット
レジ締めや現金取り扱いの時間が短縮できる
キャッシュレス決済でそれに慣れた外国人観光客の需要がある
購買情報をデータ化して、マーケティングに使用できる
企業・店舗側のメリットの内の最初は実店舗でのメリットであり、
1:店舗での現金決済時間のが短縮できる
2:現金決済が減少し、現金の管理が軽減し、多額現金保有のリスクが減る
3:新型コロナ・ウィルス感染対策で客との接触を減らせる
4:ポイントやクーポンの運用が広がり、客の囲い込みに繋がる
加えて
5:中国を中心にした外国人観光客の需要
6:電子データのマーケティング利用
さらには
7:インターネットを使った電子商取引と親和性が高い
例えばモバイル予約や、生鮮物や飲食物の宅配サービスに展開できる
8:オンラインショッピングでの決済方法の手段
9:人件費削減、省人化対応、無人化の可能性
キャッシュレス決済で、政府から見た利点・メリットは利用者と事業者と重なるものも含めて下記がある。
政府の利点
1:海外客のインバウンド消費の拡大
中国を代表とした海外旅行客によるインバウンド市場の拡大にはその地域で普及しているキャッシュレス決済に日本も対応する必要があり、日本政府はキャッシュレス決済を推進している。
2:人手不足と、生産性向上の対策
日本は少子高齢化が進んだが、今後もさらに高齢者が増加すると予想されてあらゆる場所で人手不足の問題が起きる、その対策として少ない人手でその生産性を上げる必要がある。
キャッシュレス決済は人手不足や生産性向上の解決に有効と考えられている、例えばキャッシュレス決済が有効なのが店舗等のレジ現金残高の確認作業であり、大幅の削減が期待できる。
3:現金決済のインフラコスト削減
キャッシュレス決済で現金決済のインフラコストの削減が実現できる。
ATM(現金引き出し等)機器の設置や運営などの多くでコストが発生している、電子化決済やキャッシュレス決済により、現在の現金決済インフラの維持費用が年間・約1.6兆円を超えるとも言われるが、コスト削減が期待できる。
4:貨幣が電子データ化されることで、市場に流通する貨幣の総額を計測しやすくなる。
5:貨幣の製造コストと管理コストが削減できる。
6:少額の貨幣を減らすことで、海外に貨幣の金属の流出を防げる。
スマホ決済とは、現金を必要としないキャッシュレス決済の一つで、スマートホンにインストールしたアプリを使って支払いを行う方法だ。
2019年の消費税増税と同時にキャッシュレス・ポイント還元事業が始まったのでそれを機に利用者が増えたとされる、また新型コロナウイルス感染問題後は、お札や硬貨に触れずに支払いできるので感染予防の理由でスマホ決済の利用も増加している。
スマホ決済は2種類ある
・「非接触型IC決済」
非接触型IC決済は、スマートホンに搭載されたFeliCa等の通信規格を利用した決済方法で、対応するクレジットカードや電子マネーを登録したスマホを専用読み取り端末にかざして決済する。
・「QRコード決済」
QRコード決済は専用の決済アプリを使用し、「QRコードを店に読み取ってもらう」「店の専用QRコードを読み取る」ことで決済する。
スマホ決済のメリット
・現金なしで簡単に支払い可能
・ATMで現金引き出しの手間が省ける
・現金よりも時間的に速く支払いできる
・個人間の送金も可能で、銀行振り込みより簡単
・ポイント還元やキャッシュバックがある
・ロック機能がある
・支払い履歴やチャージ履歴が自動保存できる
スマホ決済のデメリット
・店がスマホ決済サービスに対応する必要がある
・電源が入らない時、通信ができない状態では使えない
・初期設定が必要
・不正利用のリスク
キャッシュレス決済はそれが普及する中国を中心とする訪日客数増加でのインバウンド市場の拡大目的で進められてきた、だが一方では2020年は新型コロナ・ウイルス感染問題でインバウンド需要の落ち込みが日本全国で起きている。
日本は少子高齢化で多くの場所で人手不足の問題が生じており、少ない人手で生産性を上げる必要がある、それに対してキャッシュレス決済は人手不足や生産性向上の課題を解決する可能性がある。
キャッシュレス決済が有効な例に「レジ現金残高の確認作業」がありそれを減らしていくことがキャッシュレス決済の理由の1つだ、そしてコロナ下では対面決済の減少や金銭の取り扱い減少にも有効だ。
現金決済インフラの維持に年間で約1.6兆円のコスト発生の試算もあるとされるが、キャッシュレス決済は現金決済のインフラコストの削減が可能だ。
現在は支店窓口業務やATM機器の設置や運営など多くの項目でコストがかかり、それを下げる目的もキャッシュレス決済推進の理由だ、コロナ下では金融機関は支店窓口等の利用を避けて欲しいとしており、ATM機器利用でもコロナ対策の下で行っている。
都会を中心とした交通機関カードは成功例であり、人件費と現金処理コストを減少させている、それが遅れているキャッシュレス決済での成功後のイメージともなっている。
ネット通販では現金決済が原則不可であり、カード・銀行引き落とし等のキャッシュレス決済が普及してきた、コロナ下では通販が増えており、同時にこれに加えて「QRコード決済」でのスマホ決済が増えている。
インターネットバンキング
銀行での預金の入金と出金は、支店等の窓口で種類と預金通帳と印鑑を使用しての対面での処理だった。
その後にATM(現金自動預け払い機)が設置されて、利用者にキャッシュカードが発行されて、それとパスワードを使用しての窓口の対面以外での現金の取り扱いが行われて来た。
ATMはカード1枚の手軽さから普及しているが、設置場所に出向く事・利用時間に制限がある事などで窓口利用からの一部改善方法の位置ずけとも言えた。
銀行預金と口座の利用方法には現金預けと払い出し以外に、他の口座への振り込み出金と他の口座からの振り込み入金がある、これらも当初は窓口と現金を使用して行われた、その後にATMを利用して現金を介さず口座から口座への振り込みも行われた。
この内の後者では現金を介さない事から、電話を利用してのテレフォンバンキングが導入された、そしてインターネットを使用したインターネットバンキングが導入された。
インターネットバンキングはオンラインバンキングとも呼ばれ、インターネットを介して、パソコンとブラウザを使用して銀行取引を行うサービスであり、その後にはスマートホンの利用サービスも行われている。
銀行窓口での入出金や個人取引は場所と共に利用時間にも大きな制限がある、ATMでの取引でも似た制限はあるが、設置場所や個々のサービス時間には差があり、どちらも緩和されている、無人稼働が広がる事で土日・休日の利用も広がっている、ただし制限はある。
インターネットバンキングは原則は24時間365日稼働となる(メンテナンス等で使用できない時間帯が生じる事はある)、場所もアクセス可能なパソコン等の機器と通信環境があればどこでも可能となる。
銀行側には、窓口業務が一番人件費が必要であり、ATMでの取引になるとシステム管理員と機器のメンテナンス要員と少数のサービス要員のみに人件費は急減する、ATMの設置・稼働コストを加えても経費削減になる。
インターネットバンキングでは銀行側は、システム開発費の初期投資は必要だが、稼働時はシステム管理要員と少数のサービス要員だけで運用できるので大幅な経費削減が可能になる。
銀行窓口では冊子式通帳使用が基本だが(現在は通帳レス・電子通帳になると、カードで取引になる)、ATMではキャッシュカードでの取引になり冊子式通帳は記帳や補助的な使用となる。
インターネットバンキングは、IDカードやワンタイムパスワード生成器等の補助的なものの使用もあるが、基本はIDとパスワード情報の入力のみで取引が行われる、そこに通帳レスでの電子通帳になると冊子式通帳に関する経費が大幅に削減される、銀行では冊子式通帳廃止に」よる口座維持費用の低減を目指している。
日本では充実した機能のATMが普及した事もあり、インターネットバンキングの普及は難しい意見もある、スマートホンが登場してそれを利用したインターネットバンキングが広がっている事もあり、インターネットバンキング全体の普及が注目されている。
インターネットは情報の伝達が速く同時性があり、しかも情報伝達量が大きいので詳細情報を遠隔的に閲覧可能だ、それ故に金融取引との相性が非常に良い、その為ににインターネットの初期から金融関係の利用が進んだ。
一般金融機関・銀行の対応としても、インターネットを使った銀行取引の提供が早くから登場した、そこには一般銀行のネット支店としてのインターネットバンキングがあったが、一方では支店ではない新形態のネット専門銀行の登場もあった。
一般銀行のネット支店としてのインターネットバンキングでは、開始当初は現在と比較すると相互のネットワークかが行われておらず、実際の送金作業は営業日・営業時間であったり、バッチ処理だったりもあった、取引相手にも制約があった。
ネット専門銀行は実店舗を持たず窓口やATMでの業務を行っていない、だが既存の金融機関と提携する事で、そこを出金口座にしたり、そこのATM店舗網を現金の取扱いに使用した、それらによって自社による実店舗(窓口やATM)を持たない営業方式の新たな形態の銀行として登場した。
ネット専門銀行は早くから自社内口座は24時間営業の即時送金に対応し、手数料も低額に抑えた、それはネットビジネスの決済手段として直ぐに定着した、そのビジネスモデルはその後にはすべての一般銀行・金融機関でもネットワークで繋がる事でどの金融機関でも行われる事になって行った。
最近のインターネットバンキングは、政府とネット事業者が進めているキャッシュレス化の一つとして、そして金融機関等が進める人件費と経費削減の方策の一つとして進められてきた。
そこに2020年からの新型コロナ・ウィルス感染問題への対策としての緊急事態宣言があり、出歩き自粛での巣篭り生活要請と対面販売の自粛が求められた事で、通販が増加してネット通販が拡大している。
通販に適したキャッシュレス決済は、それ以外にも店舗での対面販売でも金銭に触れない決済手段としての利点も有り、広がっている。
その中で注目されているのがスマートホンの利用で、独自のキャッシュレス・サービスとアプリが多数登場して競っているが、同時にスマホを利用してのインターネットバンキングも広がってる。
スマートホンでのインターネットバンキングは、携帯電話向けではなくパソコン向けの契約で利用可能となっている、専用アプリのインストールが必要なケースが中心であり、対応していない従来型携帯電話では使えない。
スマホ上のブラウザを使用する場合でも、ブラウザの種類では使える場合と使えない場合があるようだ。
インターネットバンキングの目的として「キャッシュレス推進」「経費削減」「新型コロナウィルス感染問題対策」等がある。
インターネットバンキングで専用銀行では開業時から紙の通帳は使用していないが、幾つかの大手銀行では最近では紙の通帳の廃止を進めている。
その目的は印紙代の削減と通帳の維持管理費の削減だ、「通帳レス」「ウエブ手帳」と呼び、ネットでの利用履歴閲覧期間の拡大等のサービスも行っている。
銀行には「休眠口座」と呼ばれる長期間利用されていない口座が多数あるとされていて、その管理費負担も大きい、その対策の一つには紙通帳の廃止もある。
インターネットバンキングの利用を推進する事で、窓口となっている支店やATM設置台数や設置場所の統合と削減を銀行では進めている、それは経費削減に繋がり、コロナ対策の対面作業の自粛とも繋がる。
インターネットバンキング普及の為に機能の拡大を行っている、ほとんどの銀行では支店の窓口と同じ手続がネットでも可能になってきている、むしろ他の金融商品との提携が行われて多角化が進み、端末もパソコンとスマートホンの双方の対応になってきている。
個人向けのインターネットバンキングのサービスは、大手銀行から全都市銀行へと広がり、現在では全地方銀行と全第二地方銀行と多数の信用金庫でも行われている。
地方銀行・第二地方銀行等は、地盤となる実店舗設置地域が限られているが、インターネットバンキングでは全国がサービスの対象となる、そこではコンビニのATMと組み合わせる事でATMに関しても全国に向けたサービスを展開可能となった。
インターネットバンキングでも法人向けでは、通常の機能に加えて、窓口で行っていたデータサービスや外国為替取引などの機能が加わってきたが、その中の幾つかは個人向けでも展開された、加えて生活情報や各種金融商品や引き落としや振り込みサービスにも対応した。
インターネットバンキングの初期には、インターネットバンキングのサービスのみを提供しているが原則として支店を持たないネット専用銀行とは、機能面で異なっていたが、次第に両者の差は小さくなってきた(現状でも差はあるが、それは別項で)。