項目別バックナンバー[3]:ビジネス情報:58

交通カード

公共交通機関としては鉄道・バス・タクシー・船・飛行機等種類もサービス内容も多様になり普及してきた、そしてその利用料金の決済は他の一般の商品売買方法と同様でもあるが個々に工夫がされてきた。
鉄道では乗車券=切符を介して決済する方法が取られている、リピート利用が多い特性から定期券が導入されている、また座席指定や予約販売もある、それを含めて、決済システムとして改善がなされてきた。
乗車券=切符を交通カードとする見方もあるが、繰り返し使用する定期券は交通カードという言葉に相応しい、プリペイド方式の印刷して目視確認する交通カードであり発券と回収作業を省く有用さは鉄道会社と利用者双方にメリットがあり、同時に先払い=プリペイド方式はその後の交通カードの殆どに採用された。
他の交通機関は独自の決済方法を取ったが、鉄道の方式を参考にしたり応用する事も多くあり、最近では鉄道の交通カードの相互利用も行われてきた。

鉄道は電子化やIT化を導入する理由とメリットが多数あり、その中には乗客の管理や料金決済方式が含まれた。
座席指定やその予約販売はリアルタイムのオンラインが有効であり、実現した後では必要不可欠となった。
それ以外の一般乗車券の発売・発券と改札と回収作業は利用客が膨大な駅でも、逆の利用客が少ない駅でも内容は異なっても問題を抱えていた、人件費削減と人手不足は自動化と電子化を必要とした、定期券の区間や有効期限の確認方法も同じ課題があった。
乗車券の無人販売として紙印刷方式の自動発券機は早期に登場して、長距離等の対象外や利用客が少ない一部の駅を除いてはほゆき渡った、そして次には磁気記録カードを使用した自動改札機が導入された。
磁気記録カード式は裏に磁気色のコーティングまたはラミネートがある切符であり、部分導入後は長い併用期間と職員の複数台監視期間を経て、その後にはトラブル対応員のみでの自動化・省人化が進んで来た、定期券や座席指定券等にも対応し、更には異なる鉄道・交通機関の相互乗り入れにも対応し、加えてプリペイド方式で複数回使用可能な磁気カード券の発行と運用も行い拡がった。

日本での交通カードは鉄道における磁気カードでの接触式として、自動改札とオンラインのシステムの一つとして普及した。
交通カードとしての用途拡大と偽造防止能力の向上とさらには電子マネー機能搭載を見据えての、交通カードのICカードへの移行が行われて拡がって来た。
2001年にJR東日本が日本で始めてICカード乗車券「Suica」を導入した、そこではソニーの非接触式ICカード技術「FeliCa」を採用した、その後に全国の鉄道会社が独自のICカード乗車券を導入して、数としてはICカード乗車券は乱立した。
ただしICカード乗車券の種類は多いが方式は「FeliCa」で同じであった、その事から近畿圏で2006年にJR西が採用していたICOCAと民間鉄道会社が採用しているPiTaPaが乗車カードとしての相互利用を始めた。
JR東日本は首都圏で、2007年にSuicaとのICカード乗車券機能互換としてPASMOが導入されたが、それは首都圏ICカード相互利用サービスの電子マネー機能との完全互換利用を含めて導入された、その後翌年にJR東・東海・西でICカード乗車券の相互利用が始まり広まった。

非接触式の交通系ICカードは全国的に拡がった、JR東日本と関東地域では「Suica」と「PASMO」が利用者が多く、JR西日本と関西では「ICOCA」と「PiTaPa」に利用者が多い。
関西の「ICOCA」は「プリペイド(前払い方式)」であり、「PiTaPa」は「ポストペイ(後払い型)」という大きな違いがある。
そのメリットとデメリットは
・「ポストペイ(後払い型)」の「PiTaPa」では申込みに審査が必要であるが、「プリペイド(前払い方式)」の「ICOCA」では申込みに審査が不要で自動券売機やみどりの窓口で発行・購入出来る。
・プリペイドでは事前に自動券売機等でチャージしてから使用する、使用中に残高が不足した時は精算機で追加でチャージするか、不足分を現金で支払う事になる。
・「PiTaPa」では残高が少なくなると一定金額がオートチャージされる機能がある。
・クレジットカードと連携した「SMART ICOCA(スマートイコカ)」では、チャージ機に挿入して現金なしでチャージできるクイックチャージ機能が使える。
・交通系ICカードはプリペイドが多いが、それらではどのカードでも原則的に別のICカードエリアでも乗車カードとして利用できるという相互利用協定が結ばれている、ただし方式が異なるポストペイの「PiTaPa」は利用出来ない。
 交通系ICカードの電子マネーとしての相互利用でも、PiTaPaは外れている。

鉄道用として拡がった交通系ICカードは種類が多数作られたが、順次に主要なカードが相互利用出来る様になった。
次には10種類の交通系ICカードでは、ICカード相互利用センターを介して相互利用で発生するデータ処理等を行った、次には10種類以外の地域限定交通系ICカード等でもそれと10種類の交通系ICカードのいずれかとの間で相互利用する事で、システムを経由して接続することによって10種類の交通系ICカード全てでの利用を可能となった。
この結果として、全国47都道府県のほとんどで、県庁所在地と主な人口の多い都市で10種類の交通系ICカードを利用することが可能となった。
10種類の交通系ICカードのいずれかを持っている場合には、そのエリアでICカード乗車券として、鉄道の改札機と同様に路面電車やバスでも設置されているカードリーダーに非接触式でタッチして使用出来る。
ほとんどのケースでは残高確認や現金チャージも相互に利用可能となっており、普通運賃と別にIC運賃が設定されている区間では、相互利用カードを使用した場合でもIC運賃が適用される。

PiTaPa以外の9種類の交通系ICカードは、電子マネーとしての相互利用も可能であり、交通機関以外の買い物時の決済にも利用できる。
コンビニエンスストア等で地元地域で発行されている特定の1種類の交通系ICカードに対応・提携している事もある(例えばローソン・ポプラ)、それは交通系ICカードが全国的に相互利用されている事が前提としてあり、それを通して全国的な相互利用が可能だからだ。
PiTaPaが電子マネーの相互利用に加わらないのは、PiTaPaは決済方法が唯一ポストペイ(一定期間の利用額を後日まとめて請求する)方式だからだ。
相互利用ではなく片利用可能な事業者は乗車券のみで、電子マネーは利用不可となっている、またIC乗車券の利用に非対応の交通機関でも駅券売機などが交通系ICカードの決済に対応しておれば、交通系ICカードでの乗車券購入が出来る事もある。
交通系ICカードの中でJR東日本のSuicaには、モバイルSuicaが存在する、そこではICカードを持たずに、スマホがあれば利用可能でありその手軽さが大きなメリットとなっている。


チケットビジネス

チケットを販売するビジネスは幾つかある、そのなかには使用可能期限が長いか指定がないものもあるが、コンサートやライブイベントでは1回の開催期日・時間のみ有効でありそれ以外は使用できない、当日販売の可能性はあるものの前売りでのチケット販売はイベント成功の為には必須となる。
コンサートやライブイベントの内容やレベル等が高くとも、チケットを販売する方法やノウハウがなければイベントは成功しない、そこでは興行としてのチケット戦略が重要となっている。
イベントの主催者はチケットを売り捌く必要があり、幾つかの方法を使う。
・主催者自身の直販>学生や小劇団では多い
・地域にある販売機能を利用する
・プレイガイドへの委託販売
・チケット販売サイトへの委託>郵送を利用した通信販売は昔でもあったが、インターネットでの販売は広まり一般的になった
・企業スポンサーへの団体販売

イベント主催者にとっては直販ルートだけで完売するのが望ましいが、規模の拡大の為と、チケットにタイムリミットがある商品のためとで、イベント日までに売り切る必要があり、協力者が必要になる。
そして各地方で強い宣伝力や人脈を持つ地域プロモーターが古くから存在していたが、次第に全国展開するチケット販売業者が大きな力を持つようになった、例えば「ぴあ」「ローソンチケット」「イープラス」等がある。
国内チケットビジネスの本命のビジネスモデルとして、「プレイガイド事業」が生まれて成長した、このビジネスモデルでは、業者へのチケット販売の委託では、チケットの売上に対して例えば10%程度の手数料を払う。
主催者は販路拡大と委託によりイベント自体に注力出来る、利用者はイベント情報の入手が容易になり同時にチケット入手も容易になる、プレイガイド事業者は販路拡大で市場規模を拡大して成長ビジネス化した。
このビジネスモデルの特徴は、販路拡大が利用者拡大に繋がり、それがイベント拡大に繋がり、全体の市場規模を拡大する事だ、そしてプレイガイド事業の拡大にはインターネットの利用が強く関連する。

プレイガイドビジネスが生まれて、コンサートなどのチケットは興行主が直接販売する物の他に、依頼されたプレイガイド事業者が店舗を開設してそこの窓口等で販売する手法が始まり広まった。
日本でのプレイガイド事業の始まりとして1972年創業の「チケットぴあ」があり急速に売上げを伸ばした、窓口販売以外では専門雑誌が創刊されてそれを活用しての通信販売が行われた、電話と郵送を利用しており現金とチケット送金には書留便と言う方法であり、当時は常識であったが現在から見ると面倒な方法だった、だが情報提供と市場拡大の効果は大きかった。
「チケットぴあ」は宅配便が普及するとその利用が行われた、インターネットが普及するとその活用が行われた、さらにはコンビニの全国展開が行われた後はコンビニ店のネットワーク機能を利用してのコンビニ店舗でのチケット印刷・発券が行われた。
ただし業務改善・拡大のタイミング遅れや多種のトラブル絡みで赤字経営に陥った、2011年に雑誌ぴあが休刊された頃から回復したともされるが、その時期には完全にプレイガイド事業は先端的な情報産業化しており、巨大な受注システムでの管理と発券を含めた全事業のコントロールが必要となっていた。
増大するチケット予約を扱えるシステムの開発に、多額の資金がかかると共にそのシステムの安定運用が必要だったが、「チケットぴあ」はトラブルで躓きトップシェアを確保していても成長が遅れた、その為にライバル会社が競争に加わる事になった。

イベント主催者からの委託を受けて販売代行をするチケットビジネスモデルである「ぴあ」型は、紙チケットをプレイガイド窓口で売る時代に登場したが、その後はインターネットの普及に依り、主流はオンライン購入になり、チケットの形態も紙から電子版へと移行して来た。
日本よりもインターネットの普及が早く、ネット化が早かった米国では委託業者を経由せず、イベント主催者が直販する方式へとシフトしてきた、主催者は委託手数料のコストをカットできて、委託業者のシステムに依存しない独自のチケッティング戦略が可能になる。
その例として米メジャーリーグ(野球)のビジネスがある。
インターネットの普及により、音楽とスポーツはネット環境やデジタルメディアから簡単に視聴する事が可能になった、それによって視聴者やファンを増やす事が可能になった、ただしそれだけでは十分な料金を得れなく主催者はネットは宣伝媒体と考えて、イベントや試合会場への集客を収益の柱にするビジネスモデルに戻す事を考えて移行させてきた。
例えば米国の音楽業界で、コンサート運営会社がライブイベントをプロモートすると同時にチケットを主催者として販売している。

プレイガイドによる窓口販売から成長したチケットビジネスは、「インターネット事業」となる事で成長した、なぜならばもチケットは紙媒体ではあっても非常にデータ的な商品であり、紙チケット自体の印刷デザインや手ケット形状が商品として問題になる事は原則はない、同時にイベント期日を過ぎると原則は役割を終える、それはインターネット商取引に向いている。
チケット業者によるネット通販に、その他の取次事業者によるオンライン販売が加わった、その中にはコンビニでの取次があり、チケット印刷しての発券端末としての役割を持った形だった。
ネット通販の急激な普及は、チケットビジネスが扱うイベントの多様化に繋がり、それを管理する情報ネットワークシステムが必要になり、そのシステムの能力がビジネスの成功を左右する事に発展した、それは最新情報分野のもつ宿命だった。
その面ではプレイガイドから始まったチケットビジネス業者にアドバンテージは少なく、ネットワークシステム技術と開発資金を持つ新規参入者との能力競争になり、結果としてチケットビジネスの利益率が下がる。
それに加えて、「二次流通市場」としての違法ダフ屋や個人間売買を含んだ雑多で多様な市場が問題となり、また「電子チケット」の登場も、チケットビジネスに影響を及ぼしている。

チケットビジネスの新課題として、「多様化するイベント管理」・「二次流通マーケット」・「電子チケット」が大きい。
「多様化するイベント管理」については既に取りあげて来たように、プレイガイドと発券業務からネット通販でビジネスモデルが巨大化する過程で多様化するイベントと量の拡大とネットワークシステムを全て含むシステム構築と運用が必要になって来た。
「二次流通マーケット」と二次流通チケットに付いては法規制を含めて市場の変化が起きて来ている。
 二次流通とはチケット購入者がイベントに参加できない場合にチケットを定価以下を前提に他者に譲る流通だ、インターネットの普及で二次流通チケットを扱うビジネスが拡大している。
問題はそこに転売目的でのチケット買い占めと高額転売行為が介入する事で有り、その間にグレーゾーンの領域が存在しておりトラブルの原因ともなっていた。
イベント主催者は二次流通チケットには責任を持てない、二次流通マーケット事業者は売り手側に責任を求める形でダフ行為などのグレーゾーンを容認してきたとの指摘があり、その脱却が課題だ。
二次流通が拡がれば一次流通チケットも売れてイベント事業自体も拡大するとされるので、ネットでの二次流通マーケットは避けられない課題となっている。
イベント事業者や一次流通チケット販売者が二次流通を扱う方に動いている、同一ネット窓口での一次流通のチケットと二次流通のチケットの併行扱いや、前者の二次流通サービス業者の買収がその例となっている。
そして「電子チケット」は紙媒体のチケットから脱却したサービスとして注目されて来ていて課題となっている。

株式会社ハイホー

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