項目別バックナンバー[3]:ビジネス情報:55

人工知能将棋・囲碁

コンピュータチェスの歴史は、コンピュータの誕生から始まり並行して進歩してきた、その歴史は後のコンピュータ人工知能将棋・囲碁と重なる部分がほとんどだが、日本に於けるチェスの普及度の低さゆえに部分的なニュースだったようだ。
将棋・囲碁は日本での歴史は古く江戸時代では共に幕府から世襲制の家元として扱われてきた、ただしその初期は在野から挑戦されて家元の地位を賭けた争い対戦が行われた。
明治時代以降では幕府の家元制は無くなったが、民間に名人家・本因坊家は残り、その以降に競技団体と実力制のタイトル制が設立された。
ゲームとしての争い・対戦が前提の分野であり、一般人でも勝敗とそれに繋がる強さ見える仕組みが基になり、プロ制度設立と競技運営とその対戦記録の新聞等のメディアへの提供が行われてきた、勝敗が見える意味ではプロスポーツとの類似がある。
コンピュータの普及が進みパソコンが登場する中で、コンピュータゲームと人工知能ゲームのプログラムを作製したい、人工知能研究としてのシンプルなモデルとして扱いたい、対人間と対コンピュータ間での対戦と勝敗結果を見たい等の複数の対応が重なって進歩した。

現在は人工知能はいくつかの実用化例が登場しており、それを含めた研究・開発が行われている、実用化以前では研究・開発では目標やシュミレーションに対象となるミニモデルが有用と考えられた、実用化商品・実用化対象よりはシンプルだが研究・開発の段階としては充分に難しい対象であり、かつ進行度の評価が可能な対象が有効だと考えられた。
その対象の具体例としてゲーム類があり、特に偶然の関与がない完全情報開示ゲームのチェスや将棋や囲碁には人間が競いあう頭脳ゲームの歴史と実績とプロ棋士が存在して、強さ・勝敗という評価での研究・開発度の評価が可能であり研究対象として向くと考えられた。
人工知能研究に於いて、人間の脳の研究が有用とされた時もあり、あるいはニューロコンピュータ研究との関係が言われた事もある、プロ棋士の脳内思考をMRIで測定観測も行われた事がある、その結果が発表された事があるが、コンピュータ対人間の対戦ほどには話題にならなかった。
コンピュータ将棋・囲碁は、「人工知能研究」との関連が度々言われて来たが今は否定する面も肯定する面もあると言われており、人工知能研究での有用性もまた二面性があるだろう。
東アジア圏で行われている囲碁はルール的にはチェスと大きく異なり、日本国内だけ普及する将棋と共に、コンピュータチェスと比べてコンピュータ将棋・囲碁は遅れて開発された。

コンピュータ将棋ソフトの開発は、全幅探索から始まり読みの速度を向上して如何に深く多く読むかが最初の課題だった、並行して効率的に探索する方法が研究された。
全幅探索では時間的に読める深さが限られる、実用的な時間内で読める深さ以降で局面が大きく変化するときに間違う現象=水平線効果が壁となった、それの対策として全幅探索は行わず有望な候補のみを選択する手法、例えば枝刈りや凶暴数などが導入されて、実用な時間内に一部だけを深く検索する手法が開発されてきた。
初期には人間の思考方法を研究して、人間が経験・知識で有効な定跡の知識で候補を絞りそれだけを深く読む事をコンピュータでも導入しようとした、定跡というデータベースで対応可能な所までは利用して効率を図ることが広がったが、その後は定跡は使用しない方向に代わっている。
定跡を使用しない理由は、毎回同じ手を選ぶ事と、乱数を併用しても癖を研究されると不利になる事があり、探索の評価目的で使用する評価関数の技術向上と精度向上で定跡が不要になった事がある。
評価関数は対局を繰り返す事でその精度が高くなるが、理由は強い相手との対局で学習する事であり、現在ではコンピュータ同士の自動対戦を繰り返す事で急激に学習させて強くする手法が開発された、それは人間では不可能な手法だった。

コンピュータ思考ゲームソフトでは最初に浅い深さで多数の候補手を評価して優先順を決める、優先順で深く読んで行き時間内で1つを選択する、そこでは選ばなかった中に本来は評価が高い手が存在するリスクはある。
単独コンピュータ思考ではなく、複数に同時に思考する事でリスク低減を図る手法があった、コンピュータチェスや将棋などで使用されたのはコンピュータ機器を複数繋いで通信させた分散コンピューティングで、複数のコンピュータで同じプログラムを同時に走らせて分担するか、プログラムを分割して異なるコンピュータ上で走らせて全体で問題解決を行う、元々は故障対策の意味もある手法だ。
思考ゲームソフトでは優先度が上位の複数の選択枝を同時に計算させて、時間内に終了した結果から候補手を選ぶ、優先度を低く見積もった為に読まずに選ばないリスクを減らす事が可能になり、通信機能と全体をコントロールするソフト技術が向上する事で全体の能力向上が期待できる、ただし多数台のコンピュータを使用するシステム故に実用的には使用環境は限定される。
パソコンの機能・性能が高くなると、一般人が入手可能な環境でも強い思考ゲームソフトが開発されて来た、その分野では専用機・ハードを使用しないソフト開発が競いあい、研究・デモ・鑑賞・広告用から分野と数量の限定があってもパソコン用ソフトとしてビジネス展開される。

囲碁は「盤面が広い」「データベースが膨大」「評価関数が難しい」等の理由でチェスと将棋と比較した時の実現可能な全局面数が多く、その為に強くなるには時間が長く必要だと予想されていた、実際は短期間で強くなった。
囲碁はルール上から局面の流れが緩く最善手と次善手以降の差が少ないとされてその事からモンテカルロ法の手法が現れた、モンテカルロ法は例えば正方形に内接する円の面積を計算する場合には正方形内にランダムに針を多数回落として円に入る確率を計算する、その回数を多くすれば確率が正解に近くなるという方法だ。
候補手をシミュレートして勝ち負けを決め、候補手の勝率を調べて優劣を評価する、勝率の比較判定はそれ以前の評価関数よりもコンピュータの計算力を生かせて効果があった、その後にも候補手選びの方法やシミュレートの効率化等の改良が行われた。
米グーグルの囲碁AI「アルファ碁」が登場してその膨大な計算力で、人間の定跡を使用せずに、ゼロからランダムな手とそのシミュレートを繰り返し学習する手法(機械学習)で強くなった。
囲碁AIはその後も進化しており、その結果として稼動するハード機器の条件が緩和されてきた、現在ではアマゾンやグーグルのネットワークとクラウドサービスを使用して通信する事で個人レベルでのローカル環境でも高度の囲碁AIが使用可能になってきている。
同時に囲碁AIから導入されたソフトと機械学習は、チェス・将棋や他のゲームでも有効だと示されてきた。

人工知能将棋・囲碁はそれぞれに人間の強さに匹敵した段階で対人間の対局が組まれてネット等で放映・報道された、それはチェスとも同じだったが、コンピュータの進歩の速さが急に変わて来た事から、対人間の対局が注目される期間は開発順が遅くなると短くなった。
コンピュータのハード構成で強さが変わり、ソフトウエアは改良と学習で機能が変わる(通常は強くなる)、それ故に自由ルールから始まり、次にコンピュータ側のハードとソフトを固定して、人間に貸し出して研究・経験するルールで行われた。
しかし、そもそもが人間とコンピュータはアウトプット以外は全て異なるので、環境的なルールで調整する事は無理があり短期間で終えた。
コンピュータ同士の対戦は、かなり前から行われており、ハード+ソフトの強さが増しても継続している、ただしレベルが上がるとプロ棋士もあるいはプログラム開発者も理解できない内容とも言われる、短時間でのリーグ戦が少ない日数で可能なのでネット放映での優秀なコンテンツになっている。
コンピュータ人工知能ソフトが人間を超えた状態は、人間同士の対戦棋譜を評価させる事で有力な形勢判断方法になっており、ライブ解説や観戦記に情報として使用され、またネット動画サイトでは人工知能ソフトの評価付きの棋譜が公開されている。
プロ棋士を中心に人工知能ソフトを研究用ツールに利用する事が広がり、利用した棋士と戦略の知識が急激に変化して向上する現象が起きている。
ゲームソフト用の性能を向上したハードや、高い性能と機能を装備したソフトウエアが発売されており、人工知能ソフトの代わり盤面を操作するロボットは人間とコンピュータの対戦のデモ用として話題となった。


スポーツ中継

テレビの普及は番組としてのコンテンツ制作技術を進歩させたが、録画技術とビデオ技術の向上と記録・録画媒体の価格の劇的なダウンは、録画コンテンツの増加と主流化を起こし、その録画の放映後の保存化に変わった。
それは後のデジタル化とビデオやCDやDVD媒体での商品化という新ビジネスにも繋がる。
その中でスポーツやイベントのライブ中継あるいは録画中継への技術が進み、需要も増加した、これらも後には記録映像としての重要なコンテンツとなる、スポーツの試合を中継する放送番組は一般にはその主催者が放送局に販売することで収益を得ていてそこに放映権が発生する。
放映権は主にテレビ局でのテレビ放送において、他社から借りたり配給されたニュース素材や放送番組や、スポーツやイベント等を独占的に放映できる権利を指す、スポーツでは競技毎の人気度や思惑が異なりスポーツ放映権の扱いは個別の複雑事項が多い。
長くテレビはスポーツ中継での中心だったが、そこに衛星中継の増加や録画機器の普及とその機能(早送り再生・CMカット技術等)の進化が起き、インターネットとそこでの動画配信の普及が起き、次にスマートホン・タブレット端末のインターネット通信機能を持つ機器の普及が起きた。
特に番組に挿入されるCMからの広告収入で成立する民間放送業界を中心に、CMの広告効果が期待できるスポーツのライブ中継に注目された、その結果として放映権料・放送権料が急増した、それはテレビビジネスとスポーツビジネスを急激に変化させた。

日本に於けるプロスポーツとその中継はプロ野球が中心だった、そしてそれは歴史的にも古いアメリカ・メジャーリーグ(MLB)と比較されてきた。
MLBのテレビ放映権は、全国放送に限りMLB機構が管轄していた、それ以外のローカル放送は地元局やスポーツ専門放送とそれぞれのチームが契約していた、全米向けケーブルテレビ放送局が放映する時は個々のチームとMLB機構双方に費用を払う。
日本のプロ野球では、野球協約の放送許可権に規定されている「球団は年度連盟選手権試合のホーム・ゲームにつき、ラジオ放送およびテレビジョン放送、有線放送ならびにインターネット・携帯電話等を利用した自動公衆送信を自由に許可する権利をもつ。」がある。
この結果として、放映権を持つ「球団か親会社」はそれぞれの事情により、各放送局と契約を結んだ、特にセリーグでは各球団の親会社企業の事情が個々に異なり結果として各主催ゲームの事情も異なった。
中継放送の媒体が広がり、そこにインターネットが加わった事により新たな仕組みが必要な意見もあるが、権利問題は変わる事が難しいようだった。
パリーグではセリーグと異なり、放映権販売と中継放送の制約が弱く、CS放送では日本ハム以外の5チームの放映権を一括保有する企業が出来て各CSテレビ局に販売した、インターネット動画配信では6チーム全てが対象となった。

日本におけるスポーツ中継の放映権は野球中継放送の放映権の複雑さの反省と、放映権の高騰化への対策と、放送媒体の増加への対応を含めて進んだ。
ジャパンコンソーシアムは、世界的なスポーツイベントでNHKと民放各社が共同制作する放送機構だ、具体的にはオリンピック・FIFAワールドカップサッカー・アジア競技大会等でコンソーシアムが組まれた。
放映権でのアクセス制御や地域制限はオリンピック等の世界的スポーツイベントから始まり現在ではそれがイベントの最大の収入源となっている、イベント主催者が放映権を一括管理して、その収入を運営費用以外に、賞金や参加費用等で分割する方式も一般化して来ている。
世界的なスポーツイベントの放映権は各国ごとに別々の組織が取得する事から、それぞれが放映できる地域はそれぞれの国内に限られる、それ故に放映対象地域外からもアクセスできるインターネット上での動画配信には制限がある。
国毎の国内のスポーツイベントやプロスポーツ中継でも、主催者や主催競技団体が放映権を一括管理する方向が現在のメインの流れとなった、ただし過去のしがらみや権利は簡単には無くなっていない。

OTTはOver-The-Topの略語であり、インターネットで動画や音声等のコンテンツを提供する事業者を指す。
スポーツ団体、特にプロスポーツ団体に於いては、現在では放送権の扱いは収入源としてビジネスの最大課題であり、ファンサービスを中心にしたファン対応と競技者等の育成も同様に課題だ、収支を含めてスポーツ団体が経営判断して行く事になるが、一度確定すると変更が困難な事が多く、未来を見据えた対応が必要になる。
テレビ放送権料はかっては唯一最大的な巨大ビジネスであった、現在でもその重要性は継続しているがインターネットの普及でOTTの影響が大きくなって来た。
アメリカのプロ野球MLBはテレビ放送権はスポーツ専門局ESPNを通してケーブルテレビや衛星放送へ配信しているが、自前のOTTを運営しておりMLBのすべての試合を有料ライブ観戦可能にして、録画映像に加えて球団や選手データ等の情報を配信している、それは米国以外にも対応している。
日本でもプロバスケットボール「Bリーグ」やサッカー「Jリーグ」はOTTに放送権を提供する契約を結んでいる、それらを含めてOTTの非常が高くなってゆくと考えられている。

日本のプロスポーツとして長く独占的だったプロ野球の放映権は各チーム毎に管理して契約してきた、その結果としてチームによる収入差が非常に大きくなり、その結果としてチームの経営面でも偏りが大きくなっていた、経営状態はチームの運営・強化にも影響していた、チーム数やチームが存在する地域も限られていた。
プロサッカーのリーグのJリーグが創設されたが、そこでは放映権はプロ野球の状況を踏まえて、Jリーグは全国放送を含めて一括して放送局と交渉を行い、中継カードの決定も行い、放送権料を各チームの収入に割り当てている。
2017年の放映権契約更新時に、イギリスの企業の動画配信サービス「DAZN」と「日本国内のインターネット・モバイル配信とその他」の放映権を10年間総額で大型契約した、その契約内容はJリーグが映像制作を行う・管理する、映像の著作権をJリーグが保有し、試合映像の二次利用を容易にする、無料放送の放映権は別交渉とするとされた。
DAZNはOTTサービスの1つだが、OTTは日本に広がりJリーグ以外のプロスポーツでもネット経由の動画配信されている、以前はスポーツはテレビ放送でライブ中継が得意との認識があったが、ネット動画配信登場で揺らいでいる。

地上波テレビ放映でのスポーツ中継はインターネット配信の登場で大きく変化している。
日本ではNHKや民放が2016年のリオデジャネイロ五輪に於いてテレビ放映を行わない競技を生中継配信した、また競技のハイライト動画のネット配信を行った、民放連の発表情報によると前回のロンドン五輪と比較してそれらの再生が3倍増加した、そしてその内訳はスマホからのアクセスが70%だとされた。
スポーツ動画配信サービス「DAZN」のサービスが2016年に始まり、日本での会員数が1年で100万人を突破したとされた、NTTドコモは2017年に「DAZN」と提携したが加入者増加に繋がったとも言われている、これもスマホからのアクセスの影響だとされる。
民放連ではインターネット配信サイトを共同運営しあるいは併行して独自配信サイトを運営して来たが、共同サービス「TVer」を中心として国際的なスポーツイベントの中継やハイライト動画のネット配信も行ってきた、最近では韓国での冬季五輪があり、サッカーのロシアでのワールドカップ大会がある。
地上波テレビの放映権はいまだ重要視されているが、それに衛星放送テレビが加わり、インターネット配信も加わって来た、スマホの普及によりそれからのアクセスを視野に入れたインターネット配信の重要性が増えた。

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