項目別バックナンバー[1]:インターネット情報:79
「ネット興亡記」を読む11
杉本貴司著「ネット興亡記」を読む。
第12章:「ネバー・ギブアップ--敗れざる者たち」
(承前)
「『インターネットの父』からのヒント」
宇野は社名を「有線ブロードネットワークス」に改称した。
インターネットの父・村井純は、電話線の敷設に時間がかかりすぎたが、大阪有線のケーブル敷設は早かったので、社長になる前の宇野にインターネットをやる様に勧めた。
宇野は電柱問題後に、光ファイバー高速回線を電柱に音楽ケーブルと並べての敷設を考えた、だが多額の費用が必要でありパートナーを探した。
「幻のブロードバンド連合」
有線ブロードネットワークスの宇野はソフトバンクの孫正義とで光ファイバーの共同出資会社を立ち上げて、ソフトバンクは有線ブロードに500億円出資する事になった、だがソフトバンクの株価急落で白紙になった。
宇野は単独で光ファイバーの高速回線を目指した、一方の孫はNTT回線を借りてADSLに進出してすぐにシェアを奪った。
(続く)
杉本貴司著「ネット興亡記」を読む。
第12章:ネバー・ギブアップ--敗れざる者たち」
(承前)
「大きくなった藤田晋」
宇野は光ファイバーインターネットを始めたが、当時のインターネットはまだコンテンツが無いと言われていた、故に自身で動画ビジネスへの進出する事を考えた。
宇野は2002年にカルチャー・コンビニエンス・クラブ創業者・増田宗昭の取り持ちで、楽天の三木谷と組みペイパービューの「ショウタイム」を始めた、だがインターネットはまだ動画を楽しむ場でない事を痛感した。
宇野は2004年に「インターネットの無料テレビ」のアイデアを思い付いた、だが自身の会社の役員からは反対された、だがサイバーエージェントの藤田晋からは良いアイデアだと言われた。
2005年に宇野は動画配信の「GyaO」を始めて、社名を「USEN」に変えた。
(続く)
杉本貴司著「ネット興亡記」を読む。
第12章:「ネバー・ギブアップ--敗れざる者たち」
(承前)
「焦燥」
熊谷はインターキューを、孫正義から頼まれて「ナスダック・ジャパン」市場に上場させた、だが東証1部への思いが強かった。
故に、東証2部上場を果たすと、続けて東証1部への上場申請を目指した。
熊谷は「インターネット鉄道経営論」にもとずきインターネットのインフラを抑えていたが、縛りが解けて次の行き先を探した、そこではライバルの宇野を意識してそこと異なる分野を探した。
熊谷は金融を選び、東証1部上場の2月後の2005年に消費者金融のオリエント信販を買収した。
「弱気にならない。諦めない」
オリエント信販の買収直後の2006年に「利息制限法の上限金利を超えるグレーゾーン金利について、業者側に返還を求める判決が出て、信販業界は経営危機に陥った。
熊谷のGMOも経営危機に追い込まれて連続赤字になり、金融事業から撤退を決めた。
(続く)
杉本貴司著「ネット興亡記」を読む。
第12章:「ネバー・ギブアップ--敗れざる者たち」
(承前)
「六本木心中」
GMOが経営危機に追い込まれて、熊谷は米金融機関に会社再建のコンサルティングを依頼して契約した、だがそこのプレゼンでは再建の手立てがないとして、GMOをその金融機関へ売却することを言われた。
熊谷は拒絶したが、年末にも再度売却を持ち掛けられた。
「現れた援軍」
熊谷はいくつかの銀行から支援打ち切りを言われていたが、あおぞら銀行からは逆に支援すると言われた、あおぞら銀行は長期信用銀行から普通銀行に転換したばかりでインターネット産業との取引を考えていた。
熊谷はさらに、かって村上ファンドを率いた村上世彰から無利子での資金援助を受けた、さらには一度はGMOの買収も考えたヤフーからも出資を受けた。
さらには持ちビルの現物出資に対して、契約に応じた人物も現れて、熊谷は踏みとどまった。
(続く)
杉本貴司著「ネット興亡記」を読む。
第12章:「ネバー・ギブアップ--敗れざる者たち」
(承前)
「お前の会社なんかはいつでも潰せる」
2005年アメリカで元ペイパル社員3名がユーチューブを創業した、当時はユーザー投稿の形で無秩序にテレビ等の番組が違法にアップロードされていた。
USENの宇野康秀はすぐに脅威だと思ったが、大阪無線時代の違法電柱使用問題の経験から興味はあったが踏み切れなかった。
2006年にグーグルがユーチューブを買収した、現在の広告収入モデルが確立していない状況であり世界を驚かせた、その後にユーチューブは急成長して行った。
2008年にリーマン・ショックが起きて、それは宇野を追い詰めた。
「落とし穴」
リーマン・ショックの2年前にUSENの宇野は出版社の学生援護会の買収していた。
リーマン・ショックで学生援護会の買収後も資産価値が下落して、USENは赤字となり、純資産維持条項違反になった。
銀行は宇野に次ぎつぎと事業の売却を要求した、宇野はGyaoを継続できるヤフーに売却した。
(続く)
杉本貴司著「ネット興亡記」を読む。
第12章:「ネバー・ギブアップ--敗れざる者たち」
(承前)
「首を吊ろうかと」
宇野は「Gyao」に続いて、「ショウタイム」「映画配給のギャガ・コミュニケーションズ」「通信カラオケ」「光回線事業」等のインターネット事業のほとんどを売却した、さらび危機の元になった「インテリジェンス」も手放す事になって、死の危機をも感じた。
宇野は創業メンバーの一人・島田亨を頼った、島田は職は辞められなかったが宇野の相談には乗った。
宇野は島田の紹介で、経営コンサルタント・井上賢治に助けを求めた。
「もう一度やってやる」
USENは産業革新機構から組み入れを勧められたが、宇野は井上に相談して機構入りは免れた、だが社長の座は降りた。
宇野は売れ残った有料版の「Gyao NEXT」を買い取り「U-NEXT」と改称した、宇野は動画ビジネスの時代が来ると思っていた。
「U-NEXT」は成長して、上場を果たし、2017年には「USEN」を買収してと経営統合した。
メタバース
メタバースは、「メタ=超越した・高次元の」と「バース=ユニバース=宇宙・銀河」の単語2つから作られた言葉だ。
メタバースの概念は「インターネットで繋がった三次元バーチャル空間=仮想空間 でアバターと呼ばれる自分自身の分身を介して、プレイヤー同士が様々なコミュニケーションやコンテンツを楽しめる」事がある。
またVRというデバイスを装着する事で仮想空間を現実と同様に五感で体験できるともされる。
メタバースは数年前頃からいくつかの理由で注目された、その後はその時ほどの大きな話題にはなっていないが、技術革新・研究は進んでいる。
1:新型コロナ・ウィルス感染問題で急激にビジネスやコミュニケーションのデジタル化が注目された。
2:スマートホンの普及ととも、VR技術が進歩しており、VR機材が低価格になりつつある。
3:フェイスブックが、社名をメタに変更した。
メタバースで出来る事の例には下記がある。
・コミュニケーションツールとしての用途>チャットに仮想空間を加えた状態で、より現実に近い会話が出来る。
・オンラインゲーム用途>オープンフィールドのゲームの世界で、自分自身の分身のアバターを操作して、移動・探索・戦闘・アイテム製作等が出来る、ゲームでの活動範囲が広がって行く。
・オンライン会議用途>メタバース空間では自分自身のアバターで仮想空間に入り、現実空間にいるように話が出来る。
・バーチャルライブ用途>メタバース空間で同じ時間と空間を共有して楽しめる、バーチャルライブは人数制限がない。
・探検用途>メタバース空間をアバターが自由に動き、仮想空間を探検するイベント等が可能になる。
・商業活動用途>現実空間では出来ないアイテム・デジタルコンテンツを作り、売買出来る、現実の商品の売買も可能だ。
・メタバース空間の土地やアイテム等が売買用途>それらの創造や投資も可能だ。
メタバースのメリット
・接触しないでコミュニケーションが取れる。
新型コロナウィルス感染問題の時に特に、注目された。
・仮想空間の中でエンターテイメント体験が出来る。
例えば、コンサートや各種イベントを現地以外で、一体感で体験出来て臨場感も持てる。
・仮想空間内では参加者自身がクリエイターとなれる、そして自身の作品を公開・配信できる、さらにその事で収益が得られる。
・VRオフィスを持つことで、実オフィスが省ければコストカットが可能になる。
実際のオフィスを持たず、自宅でVRでオフィスに出社して仕事が出来る。
・仮想空間でのビジネスチャンスが拡がる。
・メタバース経済圏が拡がると、新しい収益源が見つかる可能性がある。
日本以外の全世界に経済圏を拡大できる。
メタバースのデメリット
・VRの装備が必要になる。
VR装備は安価品も登場しはじめているが、高価なものが多い・
メタバースでのコミュニケーションでは、その為だけにVR装備が必要にる。
VR装備中は、現実世界の周囲に対して無防備になるので、安全な環境が必要になる。
・メタバース空間へ依存してしまいがちだ、故に現実と仮想空間とが混乱しない注意が必要だ。
・仮想空間に入る機会が増えてそこで集まる機会が増えると、現実空間でのコミュニケーションが不足になる心配がある。
・仮想空間で、仮想通貨を使用する時にはウオレットと呼ぶ仮想財布を使用する。
ウオレットがハッキングや盗難の対象となった事があり、セキュリティへの注意が必要だ。
インターネットやAI等のデジタル技術の進歩は、デジタル化(DX)やメタバースに関わりそれらを支える。
だが、デジタル先進国のアメリカでは経済格差問題が拡がり、それが政治的・社会的な分断を起こしている、富裕層は経済的に潤ったが、中間層は没落しており、国全体としては衰えて来ている。
それは欧州でも日本でも問題となっており、ネットによる情報共有と民主化への期待はあったが成り立たず、匿名誹謗中傷やフェイクニュースが溢れる状況が生まれている。
この事態の悪化は、デジタル化が進まないという事態を引き起こしている、それ故にこれらが持つ本質的な問題の解決が必要だと言われている。
メタバースはインターネットの未来形だとも言われている、DXはオープンなインターネットを全世界に広げるデジタル改革だ、メタバースはその上で加えて人々をリアル空間から離れて、デジタル仮想空間に組み込む計画だ。
新型コロナ・ウイルス感染問題によりリモートワークが拡がった、国土が広くかつデジタル化が進んでいる米国では、メタバースのなかにオフィスを持つ企業が現れたとも言われる。
そこの従業員は自宅にいて、会社のメタバース内の仮想オフィスの出社して、どの空間で会議をしたり事務をしたりして作業を行う。
製造業でも、メタバース内に仮想工場をつくった所があるとも言う、生産ラインと工場労働者の様子が動的に再現されており、管理エンジニアはリモートでアバターになることで生産プロセスを制御する。
メタバースは地理的な距離を超えての、オンラインでの共同作業を可能にしつつある。
2000年代に米国の仮想三次元CGゲーム「セカンドライフ」があり、参加者はチャットしながらビジネスを行う、そこでは現実以外の第二の生活を楽しめるとされて、一時は人気があった。
メタバースをゲーム感覚で見ると似ているが、いくつかの違いが指摘されている。
(続く)