項目別バックナンバー[2]:パソコン情報:76

ヘルスケア産業と腕時計型端末

アップルは「腕時計型端末のApple Watch」を使ってのヘルスケア産業への進出を目指している。
ヘルスケア産業はそのデジタル化によって巨大な産業に拡がりつつあり、情報関連産業やインターネット産業の巨大企業、いわゆるメガテック企業が揃って参入している。
ヘルスケア産業のマーケットが拡大する理由には多様な事が重なる。
1:2020年頃からの新型コロナ・ウィルス感染問題は世界的に深刻な影響を与えた、だが同時にそれによって様々な規制緩和が行われた、それによって関連したテクノロジーで急激な進化が起きた。
 ヘルスケア産業でもデジタル化が直撃した。
2:ヘルスケア産業でもデータは重要だ、そこでも関連する一連の作業はデジタル化・AI化されて、その結果で得られるデジタル・データが利用される。
 データ利用でレベルが向上して、関連産業の価格・サービスの価格が下がる。
3:プライバシーの重視が進み、個人データの保護が重要視されている、そこではサイバーセキュリティが重要視されている。
 ヘルスケアのデータは最高レベルの個人情報であり、セキュリティの進歩とともに成長する。
(続く)

ヘルスケア産業のマーケットが拡大する理由
(承前)
4:人命が関わるヘルスケア産業は従来から、経済性よりも安全性が重視される規制産業だった。
 だが、コロナ感染問題により規制緩和が進み、一般的には普通に期待される様なサービスの利便性、価格の透明化、パーソナライゼーションが問われ始めている。
 かっては医療機関のみが提供していた医療サービスがそれ以外の民間事業者にも認可され、商品化・サービス化されている。
5:ヘルスケア産業が進むのがアメリカだが、そこでは高齢化する人口がある。
 これは社会問題にもなるが、同時に新しい市場創出機会にもなり、自宅での医療関連のテクノロジーが拡大している。
(続く)

ヘルスケア産業のマーケットが拡大する理由
(承前)
6:メガテック企業がヘルスケア産業でも台頭した。
 アップル、アマゾン等のGAFAMをはじめとして、メガテック企業が軒並みにヘルスケア産業に進出した、そしてそれらは次世代のヘルスケア産業のイニシアチブを握りつつあった。
 これらメガテック企業は最初は消費者向けの商品やサービスが中心だった、だがその後は産業分野にも進出していた。
 ヘルスケア産業でも、メガテック企業を中心にすべての企業がテクノロジーを活用した。
 例えば、アップルのアップルウオッチとフィットネスのサブスク、アマゾンのクラウドサービスとヘルスレイク、「フェムテック」、「ウーラ」等多数があり、さらにはコロナ渦でのモデルナの新薬開発のDXとテクノロジーは注目されている。

次世代ヘルスケア産業での戦いの構図

既存ヘルスケア企業 対 テクノロジー企業の戦い
・一方には、薬局等の小売業、製薬会社、病院、医療機関、保険会社等の既存のヘルスケア企業が存在する。
・これらに対してテクノロジー会社が対抗して、既存企業とテクノロジー企業の戦いの構図がある。
・この構図は他の産業でも多数見られる。

既存ヘルスケア企業 対 テクノロジー企業の戦い での勝敗を決める条件
・1:ヘルスケアのDX化をめぐる戦い。
 2:アウトカム重視。
 3:カスタマーセントリックをめぐる戦い。
 4:プラットフォーム&エコシステム。
(続く)

次世代ヘルスケア産業での戦いの構図
既存ヘルスケア企業 対 テクノロジー企業の戦い での勝敗を決める条件
(承前)
・1:ヘルスケアのDX化をめぐる戦い。
 DXにはデジタルを手段にして企業のトランスフォーメーションを継続的に行う意味がある、会社のビジョンの実現に向けて戦略的に立案するもので、企業の中核から刷新して、同時に自社の事業を本質からアップデートする。
 DXの恩恵の最大は、あらゆるものを「つなげる」効果で、オンライン化・モバイル化・クライド化・ビッグデータとAI化は「つながる」を可能にするテクノロジーだ。
 「つなげる」では、ヘルスケア産業は次の事が可能になる。
  (1)「人とインターネット」がつながる
  (2)「モノとインターネット」がつながる。
  (3)「人と人」がつながる。
  (4)「モノとモノ」がつながる。
  (5)「人とモノ」がつながる。
(続く)

次世代ヘルスケア産業での戦いの構図
既存ヘルスケア企業 対 テクノロジー企業の戦い での勝敗を決める条件
(承前)
・2.アウトカム(結果・成果)重視
 人やモノがデジタルでつながり、それまでに目に見えなかったアウトカムが可視化されるようになった。
 日本の医療は医療行為ごとの点数から報酬を計算する「出来高払い」であり、プロセス評価であり、医療費増大の要因とも指摘されていた。
 アウトカム重視は医療行為の過程でなく病気が治ったか等の結果で報酬を評価する形に変革する。
 アウトカム評価とは、医療プロセスを全く無視するものではなく、さらにすべての医療行為がアウトカム評価になるわけでない。
 インプット(患者、薬剤や機器)ベースのアプローチからアウトプット(患者にとって最大限のアウトカム)ベースのアプローチへの移行が可能になった、支払いがインプットに基づく場合は少ない努力で同じ報酬を受け取りたい逆インセンティブが働く、アウトプットに基づく報酬はインベーションを促進して「無駄」の見直しに繋がり医療費削減にも貢献する。
(続く)


次世代ヘルスケア産業(1)

次世代ヘルスケア産業での戦いの構図
既存ヘルスケア企業 対 テクノロジー企業の戦い での勝敗を決める条件
(承前)
・3、カスタマーセントリック(顧客中心主義)をめぐる戦い
 アマゾン創業者・べゾスはカスタマーセントリックを「聞く」「発明する」「パーソナライズする」の3つの動詞で定義した。
 「パーソナライズ」は「顧客を起点にサービスを提供する」事で、「画一的なサービスでは無く、顧客個人を尊重して徹底的にパーソナライズされたサービスを提供する事だ。
 米テクノロジー企業はカスタマーセントリックを磨いてパーソナライズされたサービスを提供して、ユーザーの支持を得た。
 ヘルスケア産業でも同様に、病院・医師起点で展開された画一的サービスが、テクノロジーの力で患者起点のパーソナライズされたサービスに置き換わって来た。
 既存のヘルスケア企業も危機感を持ってきている。
(続く)

次世代ヘルスケア産業での戦いの構図
既存ヘルスケア企業 対 テクノロジー企業の戦い での勝敗を決める条件
(承前)
・4.プラットフォーム&エコシステム
 商品やサービスの提供者と購入者が取引するための共通の場のようなものをプラットフォームという。
 プラットフォーム型ビジネス自体は従来から存在して、例としてはデパート等が該当する。
 プラットフォーム作りにITを使用する事で、従来とは異なる効果的・効率的なプラットフォームを非常に低コストで構築できるようになった、その事が重要だ。
 エコシステム(生態系)は「相互依存的な協調関係が企業や個人との間で形成されている」意味になる、そこではプラットフォームが土台となり、ユーザーと事業者との間で協調関係が自律的に生まれて行く。
 これらの効果は「ツー・サイド・プラットフォーム」と呼び、「2つの異なる集団の出会いを促すプラットフォーム」を指す。
 テクノロジー企業は、単体ではなく、エコシステム全体で勝負する戦略を取る、その例はスマートホンでありスマホ=デバイスと認識した日本のメーカーは、アップルのOS・アプリ・サービス等のエコシステム全体での攻勢に市場を奪われた。
(続く)

次世代ヘルスケア産業での戦いの構図
既存ヘルスケア企業 対 テクノロジー企業の戦い での勝敗を決める条件
・4.プラットフォーム&エコシステム
(承前)
 プラットフォーム&エコシステムの時代のヘルスケアを指す言葉として「ソーシャルホスピタル」の概念がある。
 従来の病院で行う医療行為から、現在は自宅や民間事業者等の病院以外でも行おうとしている、それを可能とするテクノロジーの一つがアップルウオッチであり、それは次第に医療機器へと進化している。
 プラットフォーム&エコシステムは病院と自宅がシームレスに繋がり、その分野ではアマゾンがシステム構築を目指している。
 未来ではあらゆるヘルスケアサービスが一つのプラットフォーム&エコシステムの中に統合されて行き、巨大な生活サービス全般のプラットフォーム&エコシステムのみが存在する可能性がある、全ての産業を包括するのが「スマートシティ」になる。

日本のヘルスケア産業での動向
日本の高齢化率は世界一であり、それによって要介護者の急増と、介護人材の不足が生じる。
さらに高齢化は、社会保障費の急増をもたらす、故に継続的な社会保障制度の改革が必要だが、同時に医療・介護等の公共サービスを質を維持しながらも効率的に運営してゆく方法の検討が必要になる。
日本政府は病気・治療のみならず、それ以前に「病気にならない」予防によって、治療費を減らして社会保障費の増加を抑える事を考えている。
高齢化により介護保険施設が不足して「施設から在宅へ」の考えが拡がる、だが在宅医療は難しい、その事から地域包括ケアシステムが始まっている。
日本政府は「社会保障と税の一括改革」の中心施策として「地域包括ケアシステム」の構築を目指している。
そこでは、日常生活圏域を単位とする、利用者・患者を中心としたシステムに再構築される事になる。

医療のデジタル化(デジタルヘルス)
2020年の閣議決定でデータヘルス改革とオンライン診療が出された。
・データヘルス改革では、被保険者番号の個人化と資格確認の導入のための「保険医療データプラットフォーム」の本格運用開始、患者の保険医療情報を本人や医療機関で確認できる仕組みの稼働が提起された。
・オンライン診療では、新型コロナウィルス感染問題への時限対応措置と効果検証、オンライン診療システムの普及推進が提起された。

「デジタル時代の規制・制度について」政府は5つのポイントを提起した。
1:ビッグデータ、AI等の活用による診療技術の高度化。
2:病院・診療所という「場」を前提にしない医療サービスの提供。
3:デジタル技術を活用した自己の健康管理。
4:健診・医療・介護関連サービス間の情報連携による効率的なサービス提供。
5:先端技術の活用による医療・介護の質と効率の向上。
(続く)

医療のデジタル化(デジタルヘルス)
(承前)
「AIホスピタル」構想は「AIやLot、ビッグデータを活用した、高度・治療システム」であり、これにより医療機関における効率化を図る。
「AIホスピタル」構想は2014年の内閣府のプロジェクトであり、2018年から計画が進められてきていて、音声認識で診療記録が文書化できるシステム、患者に疾患や治療方針について説明するコミュニケーションシステム、リキッドバイオプシーによる癌の早期診断システム、内視鏡の操作支援技術などがある。
「AIホスピタル」の要が「医療AIプラットフォーム」で、医療機関に加えて民間健診センター、保険会社等でも利用できる、プラットフォームにはAIを展開する各社が解析機能を提供しる、そこでは患者のデータはプラットフォームからベンダーには送られない。
「AIホスピタルシステム」は健診から外来、入院、通院治療のすべてのプロセスをカバーできる。

VPSならミライサーバー

このページの先頭へ