項目別バックナンバー[2]:パソコン情報:62

SSD搭載コンピュータ

SSDはHDDと比較してビット当たり単価は高いが優れた高速性・高信頼性という高スループットに加えて低消費電力という利点がある、頻繁にはデータ書き換えを行わないが大量のデータを扱う用途では2010年頃から例えばデータセンターではHDDに替わってサーバ用途に採用されつつあった。
一方ではカーナビやビデオカメラ等の民生用途でもSSDが使われ始めたがそこには機械的強度や軽量の理由があった、それに加えて、業務用の装置でも使用されてきたコストよりも性能優先の理由があり、HDDと比較しての容量単価は高くとも特性面で選択される用途があった。
パーソナル用途では、特にコンピュータではコスト優先のデスクトップ中心では高容量HDDの使用が進んで来た、一方では薄型・軽量のモバイル用コンピュータではHDDを搭載していないタイプのコンピュータが登場していた。
後者にはスマートホンやタブレット端末との2ウエイ用途型パソコンや、クロムブックタイプのクラウド型のコンピュータがある。
そしてHDDとSSDの双方を搭載したパソコンが登場していた、双方の利点を組合わす使用方法を目指したが成果もあれば限界もあった。
その後のSSDのコストダウンと使用方法の進化は一般用途のパソコンで必要な記憶容量では実用的な価格になり、一般的なフルSSDのパソコンが増えてきている。

USBメモリやメモリカード等はUSBのインタフェースを持つデバイスだが、通常はSSDには分類されていない、場合によればSSDの中のサブクラスとして「USB SSD」のように分類されることはあるようだ。
それにソフトウェアによりエミュレートしてHDDの用に扱う方法もあるが、その場合もSSDには分類しない。
HDDメーカーはHDDの技術開発を続けているが、一方ではSSDに対応した動きも行っている、用途的な市場シェアを持っているので競合するよりも、HDDとSSDのトータルでのシェア確保を狙う戦術を選ぶことが多い。
そこでHDDメーカーはフラッシュメモリのメーカーと提携してSSDの共同開発を行った、あるいは大手HDDメーカーがSSDメーカーの買収を行ったなどがあった。
その過程でHDDとフラッシュメモリの双方の長所を取り入れたハイブリッドHDDが開発されて実用化された、色々な方法が考えられるが、HDDを基本にしてフラッシュメモリをキャッシュとして使用する装置が多い。
あるいはHDDとSSDを併用する方法もある、ユーザーに開放して別のドライブとして扱う方法もあるが、OSがコントロールするタイプもハイブリッドHDDとして使用されて来た、そこではソフト的なコントロール技術が重要になる。

SSDの構成としては、記憶用のフラッシュメモリに加えて、キャッシュ用のDRAMメモリと、アクセスの制御専用のコントローラチップ等を組み込まれる事が多く、一般的になっている。
一般的にはSSDに使用されているフラッシュメモリチップのデータ転送速度はHDDよりも劣っている、だがSSDでは複数個のフラッシュメモリチップを搭載して、それらを専用IC等を用いてコントロールして並列動作させることで高速化に繋がる、そこでは部分的な書き込みを行う時にブロック全体を一時的に保持している、高速化以外でも複数の細かな書き込みにおいてキャッシュメモリに蓄えておく事で書き込み可能回数の実質的な向上を行なえる。
安価タイプのSSDではキャッシュメモリの省略もある、あるいはDRAM以外の周辺素子を使用したタイプもある、例えば不揮発性メモリであれば電源トラブルでも書き込み中データを保持できる。

HDDでは記録媒体とモーターと磁気端子というハードウエアの構成だけでは無くそれを制御するコントローラーが重要であると知られて来たが、SSDでもその状況は変わらない。
コントローラは、フラッシュメモリチップと接続端子の間に位置して、データの読み書きを制御している、一般的なSSDではコントローラとしては組み込みプロセッサとファームウェアが内蔵される、キャッシュメモリーの内臓もある。
コントローラはSSDの性能を決める重要なものだが同時にSSDの寿命にも影響することは前回に述べた、具体的には読み書き速度や書き換え回数の上限もコントローラチップの仕様で決まる、その為にチップベンダーと型番が仕様の一つだ。
コントローラが行う処理に下記があげられる。
 「エラー訂正」・「ウェアレベリング」・「エラーブロックの管理」・「不良モード管理」・「リード・ライトキャッシング」・ガベージコレクション」・「暗号化」・「圧縮機能」。

SSDの長所を生かして弱点をカバーするにはSSD組み込みコントローラーの性能が重要だと前回に述べた、それと同じ事がコンピュータのオペレーティングシステム(OS)にも言える。
OSがその開発時・販売時にSSDが実用化されていなかったときは、SSDでの利用が想定されていなかった、その場合には代用として接続するとOSのHDD用の処理がSSDにも適用される事が起きる、その場合はハード特性の違いから処理速度の低下や素子の寿命が短くなる不都合が生じる。
その例としては、OS:Windows 7が登場する前はHDDに対応する自動デフラグメンテーション機能が働いた、そのためにSSDを繋いでいると無用な書き換え処理が起きて素子の寿命が短くなる。
Windows 7以降からはHDDとは別種の記憶装置「SSD」として扱われる様になった、そこではデフラグメンテーション等のSSDには適さない動作の対象からは除外された、そして新たにウェアレベリングをサポートした。
他のOSも現在ではウェアレベリングなどのサポートに対応して素子寿命を延ばす対策がとられた、またSSDに対応したファイルシステムも登場した。

ウェアレベリング (wear levelling)
・ウェアレベリングは書き換え回数が制限されるメディアで、使用寿命を延ばすための方法だ。
フラッシュメモリメディアの書き換え限度回数は、メディア全体への回数ではなくメモリ素子(セル)への回数となるので、特定のブロックに書き換えが集中すると、そこは早く素子寿命になる。
書き換えが特定のブロックに集中せず、各セルに均等に分散される制御をすれば全体の書き換え限度回数は向上する、この均等に分散させる技術をウェアレベリングと呼び、この技術でメディアの書き換え限度回数はセルの書き換え限度の数百から数千倍になるとされている。

SSDはHDDの欠点を改良する目的と、そのアクセス速度を大きく改善する目的で考えられて導入されて改良されて来た、その結果はHDD用にその速度を想定して制作されたインタフェース規格の転送速度の限界にまで達した。
その結果からはより高速を目指す試行が行われた、例えば他の従来規格の利用が図られたり、あるいは従来の規格に対して準拠にとどめたり等も行われている。
SSDはHDDとは明らかに動作原理が異なり、その特性もHDDとは相当に異なっている、従ってその技術向上と使用の拡大を受けて「SSDに対応した形状から耐久性をも含めて、制御方法までの広い範囲を定めた標準規格の制定」が必要になっており求められている。
HDDとは異なり機構部品を持たないSSDは、半導体のみにより構成されているので高集積化の技術的余地が大きいと考えられる、集積回路やコンピュータの市場と技術革新と似た状況もある、そこでは市場の要求があり需要が広まれば非常に集積度の高い不揮発性の記憶装置が登場する可能性もある。
予想もしない半導体と技術が登場する可能性もあるが、SSDとしては既に製品として使用されているフラッシュメモリがより広まって行く可能性が現実のコンピュータ用途としては高い。


フルキーボード

パソコン等の入力手段としてのキーボードについては幾度か取り上げてきた、今回はデスクトップパソコン用のキーボードとしての、通称・フルキーボードを中心に取り上げてゆく。
タイプライターと似た設計で作られたデスクトップ用のキーボードは、タイプライター文化の無い日本でも広く使用されて来た、本来はタイプライター風の使用方法を前提としていたが、ノートパソコンという小型サイズ機器やスマートホンやタブレットと言うタッチ操作やソフトウエアキーボードでも、まだ影響は残っている。
日本では日本語入力方法の試行錯誤が行われたが、結局残った方式の1つがタイプライター類似のキーボードでの仮名漢字変換入力方式だ。 ただし、表向きの類似性と同時に、厚みや接続方法やメカニズムは大きく進化してきた、同時にポインティング入力装置(例えばマウスやタッチパッド)との組み合わせ使用技術も進化してきた。
スマホとタブレットが普及したことで一度はキーボードの使用は減った、だがタブレットではキーボードの使用は復活してきた、そしてデスクトップパソコンでは主要な入力装置として変わっていない。

パソコン本体の形状やディスプレイの種類・形状の変化に伴い、パソコンキーボードも変化している、デスクトップパソコンでは長く分離型と本体との一体型が並行して使用されてきたが、一体型のメリットが無くなって分離型が主流になった、ただしフルキーボードが採用される事は変わっていない。
液晶ディスプレイの普及後に登場したノートパソコンでは携帯性と小型化が目的となったために、キーボードとの一体型が標準だった、小型化目的でフルキーボード以外も登場したが主流にはなっていない、さらにはフルキーボードだが全体を小型化したタイプも登場したがこれも主流になっていない、タイプライターから出発したフルキーボードは原則には変わっていない。
現在のデスクトップパソコンでは作業性を考えてのキーボードの選定が行われている。
・有線接続のキーボードか、無線(ワイヤレス)接続のキーボードか。
・キーボードは日本語配列か、英語配列か。
・特殊キーの有無と、その配列は。
・数字入力用のテンキーの有無。
・キーピッチとキーストローク(フルキーボード設計か)は。
・キーボードの構造は?>厚さや作業性や好みは?。

キーボードに於ける「キーピッチ」とは隣接しているキーの間隔を意味している、一般的なキーピッチの長さは19mm程度となっている、そしてキーピッチが19mm程度のキーボードを「フルサイズ」(フルキーボード)と呼ぶ。
フルキーボードのキーピッチはタイプライターキーボードでのタイピングのしやすさから定められたので、一般的な人では使いやすいとされている、それ故に市場には圧倒的に多く採用されている、特に変えたい理由がなければ、キーボードを選択するときにはフルサイズのキーボードかをチェックする。
19mmX14.5キーのサイズがフルキーボードには必要であり、小型のノートパソコンではこれが入る幅で設計されていることが多い、アルファベットのキー以外のキーは残りのスペースに配置するので配列が異なるものも多い。
キー入力を早くするタッチタイピング技術の保有者・利用者はフルキーボードは必須になるが、それ以外のパソコン利用者にも個人使用パソコンを使用する時を考えるとそれがフルキーボードの場合が多いので、日常の個人パソコンにも使用する事には利点がある。

フルキーボードの選定にはキーピッチと共にキーストロークが重要だ、キーストロークとはキーを押下したときにキーが沈み込む深さを指す。
キーストロークが深いタイプのキーボードではしっかりとキーを押した感触が得られる事から、空振り押しをしたり、誤って隣のキーを押したり等のタイプミスが少ないが、高速タイピングには不向きだ。
一方ではタイピング速度を高めたいならば、キーストロークが浅いタイプのキーボードが向く、指先が引っかからず押す深さが少ないので、タイプのスピードを出せる、反面はキーを押した感覚が薄くてタイプミスがしやすいとされる。
タイピング速度と打ちやすさを両立させる事を狙うタイプの「アイソレーションタイプ」がある、キーとキーの間に空間があり、ストロークが浅いキーボードでもミスが少なくなると言われる。
ただし全てに個人差があり、使用者が判断する必要がある。

フルキーボードではキー配列は主要部は類似しているが、細部では多様な種類があり選べる、その選べる場合又は選ぶ場合には配列の確認が必要だ。
例えば
・英語配列・日本語配列
・WINDOWS用・アップル用・共用タイプ
・テンキーの有無
・FNキー
日本語・英語配列は使用者の好みだが、「日本語配列」と「英語配列」の2種類の配列の違いは、日本語配列のキーボードには「半角/全角」や「変換」キーがあるが英語配列には無い。(注:英語配列のでもショートカットキーを使えば日本語と英語の切り替え可能)
日本語配列を使って慣れている人が多いが、プログラミングなど英語や記号の入力が多い人は英語配列のキーボードを使用する事も多いといわれる。
数字入力が多い人はテンキーの有無は重要だ、ただしテンキーを付けるとその分だけキーボードの横幅が長くなるというデメリットがある、テンキーが無くとも数字入力は可能なので、必要ならば後で外付けテンキーを付けると考えて、テンキー無しのキーボードから始める事も一案だ。
日本語ワープロと一部パソコンでは長く親指シフト・キーボードが使用されていたが利用者の減少により、近年に生産中止がきまった。

フルキーボードはパソコンでは必須品であり、稼働時間のほとんどで使用する可能性も高い、利用者の作業環境を大きく左右する要因ともなる、個人使用の場合はその個人の用途と適合性を考慮して選ぶ必要がある。
多数人使用の機器の場合は価格や耐久性やメンテナンス性を重視する事が多い、現実はコンピュータ本体機器の付属品として導入される事が多い。
フルキーボードの選定の項目は
・価格、耐久性(使用方法)  >接点
・厚み>ストローク深さ、携帯性>作業性・作業スペース
・キーの反発力>作業性>感触・作業疲れ
・キーの独立性(メカニズム)>二個押し問題
・打鍵音の大きさ(オフィス用途では問題)
・ゲーム機等の特殊用途 その他

キーボードの構造は基本的に4つある。
・メンブレン方式
・パンタグラフ方式
・メカニカル方式
・静電方式、静電容量無接点方式

 

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