項目別バックナンバー[5]:技術情報:74

放射線の検出技術2

飛跡による放射線検出器
泡箱
(承前)

・泡箱では、泡の寿命は短く300μS以下だ、故に泡箱を膨張させる以前に入った粒子の飛跡によるバックグラウンドは少なく、霧箱の様にイオン除去のための電場は不要だ。
・寿命が短いために、粒子が泡箱に入ってから動作させる事は不可能だ、しかし加速器の実験では粒子が入る時間が判っているので問題はない。
・泡箱は粒子の検出器だが同時に核反応の標的でもある、故に実験目的に応じた種類の液体の泡箱が作られた。
 ・陽子・中性子・中間子と陽子の相互作用>液体水素
 ・π中間子・γ線が伴う核反応や崩壊実験>ゼノン泡箱
 ・その他、プロパン等有機溶剤・ヘリウム・フレオン・WF6 等。

飛跡による放射線検出器
原子核乾板
・荷電粒子が乳剤中に作る飛跡により粒子を検出する、荷電粒子は乳剤中を走る時にその中の臭化銀の結晶に衝突し通る、この時に電離作用で電子が出来る、この電子は結晶内の感光核にとらえられる、核は負に帯電して銀イオンを引いて銀原子集団を作り、大きくなると潜像を作る。
・原子核乾板では作られる電子数が少ないので、現像可能な銀粒子は作り難い、故に感度をあげる必要がある。
・原子核乾板は現像されると、検出器を終えて記録になる。
・飛跡の銀粒子は1μm程度で、角度・位置が精密に出来て、それは粒子の種類や質量やエネルギーの測定に有利になる。
・乳剤は固体で密度が高い、核反応の断面積も大きい、輻射距離が短くγ線の検出に有利だ。
・乳剤の種類によって中性子の検出が可能になる。
・原子核乾板は普通の写真乾板より厚みを厚くする、多数をまとめて乳剤の体積を増して使用する。
(続く)

飛跡による放射線検出器
原子核乾板
(承前)

・原子核乾板での電離密度の測定は銀粒子の測定で行う。
・乾板の感度や現像の仕方で銀粒子密度は変化するので、既に分かっている粒子の電離密度を基準にして相対密度を調べる。
・飛跡の銀粒子密度は粒子の種類やエネルギーにより変化する、銀粒子の濃さで区別する、「薄い飛跡」「灰色の飛跡」「黒い飛跡」であり、後者2つを合わせて重い飛跡と呼ぶ。
・乾板での質量決定は、電離密度と飛程、運動量と飛程、電離密度と運動量の関係が利用される。
・写真乾板を霧箱・泡箱と比較すると、輻射距離が短いのでγ線の検出に効率が良く、衝突平均自由行程も短いので中で核反応が生じる確率も多い。

飛跡による放射線検出器
ホドスコープ
・GM計数管を平行に多数並べる、さらにこれらを幾段にも積み重ねて行く。
・粒子がこれらの計数管群を通過すると、どの計数管が放電したかを検出できる様にしておくと、粒子の飛跡を知れる、その飛程指示器をホドスコープと呼ぶ。
・分解能を高くするには、個々の計数管の直径を細くするか、計数管列の間隔を離す方法がある。

放電箱
・キャンベルシ管と呼ぶ放電管でガス圧を高くして幅の狭いパルスを掛けると、放電はイオンのある所に止まる、導電性の二面の間に粒子が通過する時に高電圧パルスをかけると、飛跡の部分に放電が起きる。
・これをFM放電箱と呼ぶ。
スパーク箱
・平行金属板にパルス高電圧をかけると、粒子が通過してイオンが出来た所に放電が起きる。
・この金属板対を重ねる事で、放電により飛跡が判る。

試験用測定器および装置
シンクロスコープ
・特長は観察しようとするパルスがきたときのみ、時間軸が発生しブラウン管に波形が描かれる、故に不規則なパルスの時にも時間軸上の一定の場所に像が出来るので観察が便利だ。
・時間軸の掃引速度が速い時には輝点の明るい程に像が観測しやすいので、通常は後段加速のブラウン管が使われる。
・シンクロスコープの性能は、垂直方向の増幅器の性能すなわち立ち上がり時間と感度、時間軸の掃引速度の範囲および使用してあるブラウン管の種類で決まる。
・立ち上がり時間が非常に短くなると、ブラウン管の構造や高増幅率の増幅が問題になる、そこでは速い現象を遅い現象におきかえる、サンプリング法や、改良した超高周波用シンクロスコープが使われる。

後段加速
・電子流が偏向板を抜けて偏向を受けた後に、さらに第3極で加速する事で、偏向感度を損なわない明るさが得れる。。

時間測定法
・各種測定器は著しく改良された、特にパルスは非常に早い立上り時間と、短い時間間隔を持つ。
・測定電気回路も当然に早い立上りで短い分解時間が要求される、現在ではナノ秒かそれ以下の速いエレクトロにクスが必要とされる。
・時間差の正しい測定は放射線計測の課題だ。
・時間間隔を測る方法は色々ある。
 ・2つのパルス信号がある時間内に同時に到達したかどうかを知る回路の同時計数回路による方法。
 ・時間間隔をパルスが走る幾何学的距離に変換して測る方法。
 ・時間間隔を電荷の量に変換して測る方法。
・放射線測定は放射線と物質との相互作用を利用して行われるが、非常に短い時間差が問題となる場合にはエレクトロ二クスだけでは解決しないので、検出器の開発が問題となる、そこではシンチレーターやチェレンコフ輻射体と光電増幅管との組み合わせとなる。


放射線の記録方法

放射線測定は初期には人手と時間を掛けて行われてきた。
その後は自動化されて来た事で測定は便利になった。
だがそれに伴い、非常に複雑な測定も行われる事になって来たので、情報とデータの解析には複雑な手続が必要になってきている。
実際の測定からデータさらに解析を経て、最終的な答えを出すまでには、色々なやり方がある。
それは測定の規模によって変わり、さらには測定者によっても考え方が異なり、どのような道筋が良いのかは相違が生まれる。
簡単な測定に於いて、装置と自動化に時間と費用をかけすぎる事は目的から外れてしまう事もあり注意が必要だ。
大規模な装置を使用して多面的な測定を行う場合には、自動記録装置を導入してさらに計算機による自動計算を行う、さらに加えて必要に応じては結果をフィードバックして自動的に測定条件を変えるシステムを導入する事も行われる。

記録される量には
・アナログ量:電流計の針・電圧計の針、ブラウン管のパルス高。
・デジタル量:度数計、スケーラーのデカトロン、EIT,トロコトロン がある。

本質的な差は無いが、高い精度が必要な場合は計数はデジタル量で行い、有効数字の桁をあげる必要がある。
自動記録でデジタル計算機を使用する場合はデジタル量が必要だ。
アナログ量で記録したときは、アナログ-デジタルコンバーターが必要になる。

アナログ記録には、メーター自動記録計・シンクロスコープ記録・磁気テープ記録等がある。
デジタル記録には、機械記録計・スケーラー等がある。
デジタル記録(コード記録法)
・コード記録は、記録表示が直接に計算機に適用できる様に考案された。
 2進数を使用するが、外見上は8進数・16進数での表示も使う。
 記録媒体はデジタル記録やコンピュータの進化で次々革新されてきている。

測定計画と実測定とデータ整理は、いずれも同じように重要視する必要がある。
データの整理は、測定が終わってから始まるのではなく、測定の進行とともに始まる(始めるべきである)。
測定とともにデータを整理して、グラフ化すると測定に不都合が見つかる場合がある。
その時は測定条件を変えてやり直しが必要になる、データ整理やグラフ化を測定と併行して行うと、不都合に早期にきずくので測定途中でやり直しが可能になり、無駄が少なくなる。
放射線計測では単位時間の計測値が一定でない事が起きる、それは時間的にアットランダムに独立な現象が起こる場合の統計的変動による。
放射性原子核の崩壊、宇宙線の量は制御できない。
個々の現象は全く他の現象と独立に起こっていて、時間的にランダムだ。
この統計的変動は放射線計測の場合には必ず付きまとう。

・放射線の検出測定では、必要な放射線以外が同時に検出器に入る場合がある、それはいつでも大なり小なり影響を受ける。
 例えば宇宙線の測定時に、検出器や場所によれば、自然放射性物質からの放射線が邪魔になる。
 また、強度の弱い放射性物質の放射線の測定では、宇宙線の影響が無視できない。
 これらの測定したい放射線以外を「バックグラウンド」と言う。
 バックグラウンドの大きい測定では、その補正のためには測定精度の向上や、測定時間を長くするなどが必要であり、難度が高く作業も増える。
・数え過ぎの補正:同時計数回路では偶然一致の問題が発生する。
・かぞえ落とし(計数損失)の補正:測定器の種類によっては不感時間が存在する、それにより数え落としがある。
 その場合には補正が必要だが、本質的には装置の設計・配置等で対策する事が本質対策となる。

放射線計測のデーター整理に使用する統計的方法は、一般的な物理学と同じだといえる。
・重み付き平均
 同一の量を2つの方法で測定したときに2つの測定結果を得る。
 この双方を結合して最も確かと思える値を得るには、標準偏差の2乗に逆比例した重みを付けて平均する。
・最小2乗法
 放射線物質の崩壊の測定では統計変動が存在するので正確には決められない、そこで精度を良くするためには多数回の測定から非常に確からしい値を求める、これを最小2乗法と言う。
・χ2乗の方法
 観測値の集団があり、その関数式を仮定して関数式に含まれる定数を決める時に、χ2乗の方法を使う。
 または観測データから仮定された関係式が正しいかどうかを検定するときにもχ2乗の方法を使う。

飛放射線の計測時の記録では、同時にグラフ化が有効なので、グラフ用紙を準備しておく事が一般だった、具体的には一般の方眼紙・片対数方眼紙・両対数方眼紙をすべて準備する。
デジタル技術とコンピュータ技術の進化によって、コンピュータ制御によるデジタル自動測定も普及している、あるいは簡易測定でも部分的にデジタル機器やコンピュータを使用する事も多い。
そこでは、記録用紙・計算用紙さらにはグラフ用紙の代わりに、電子記憶装置にデジタル記録され、さらには数値表示と同時にグラフ化表示も行える事も増えている。
過去には計算尺は必須であったが、その後は電卓が普及して置き換わり、さらにはパソコン等のコンピュータが普及した、その機能はスマートホンやタブレット端末に置き換わりつつある。
デジタル記録では過去にはデータ破壊や消失のトラブルがあった、現在ではデジタル機器ではデータのバックアップ機能やインターネット等のオンラインでのクラウド上のバックアップ機能が整備されてきている、その結果では紙のノートに残すが重要で必須だった時代とは変化が起きている。

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