項目別バックナンバー[5]:技術情報:61
ユニポーラ・トランジスタ
バイポーラトランジスタに対して、ユニポーラトランジスタがある、やはりp型半導体とn型半導体で構成されているが、構造がバイポーラタイプと異なる、そして正孔と電子のどちらか一方が動作に関系するので、ユニポーラの名で呼ばれる。
ユニポーラトランジスタでは駆動方式は、バイポーラトランジスタとは異なり電圧となる。
ユニポーラトランジスタにはFETがある、FETはField Effect Transistorの頭文字であり、電界効果トランジスタの意味だ。
FETは接合型FETとMOS FETに分類される、現在の主流はMOS FETであり高速スイッチングが可能であり比較的低電力でも駆動する特徴がある。
フォトトランジスタもユニポーラトランジスタであり、光の入射を利用して電気信号を伝送する特性があり非接触式のデバイスを構成するのに有用だ。
バイポーラトランジスタと例えばMOS FETどっちが優れているということは無く、用途や価格やスペックによって選ぶことが普通だ、集積回路では集積度が上げやすい方が選ばれる。
ユニポーラ・トランジスタの代表としてのFET(電界効果トランジスタ)の中の主流がMOS FETだ。
「MOS FET」の「MOS」はMetal Oxide Semiconductorの略であり、金属酸化物半導体または金属酸化膜半導体を意味する、構造は金属(Metal)と酸化物・膜(Oxide)と半導体(Semiconductor)を積層させたものだ。
一般的な素子では、半導体のシリコンの表面を酸化させて二酸化シリコン膜(SiO2)を形成する製法を使い、その上に電極としての金属を乗せた構造となっている。
バイポーラトランジスタでは例えばp型半導体でn型半導体を挟み込む(PNP型)構造だが、MOS FETではそれとは異なり、n型半導体を二か所積層させる形になる。
MOS FETも端子(=電極)は三本だが、バイポーラトランジスタではコレクタ・ベース・エミッタと呼ぶのに対して、対応する端子をドレインとゲートとソースの呼びかたを使用する、役割は電荷の排出がドレイン、制御がゲート、電荷の源がソースとなる。
バイポーラ・トランジスタは2種類の半導体のサンドイッチ構造だが、MOS FETは平面的に積層した構造だ。
Nチャネル型MOS FET
p型半導体を土台にして、その上にチャネルの間隔をあけてn型半導体をソースとドレインとして積層させる(実際は不純物を拡散させる)、チャネルとなる部分の上に金属酸化物(Metal Oxide、MO)を重ねてその上に金属(実際はポリシリコン)を乗せた構造を作りゲートとする、それぞれから端子を取るとNチャネル型MOS FETとなる。
PN接合となった半導体で、そのままでソースとドレインとの間に電流を流してもほとんど流れない、そこにドレイン・ソースに電流を流す状態でゲートからプラスの電圧を印加すると、土台のp型半導体のわずかの電子がプラス電圧を感知してMO部分に近づく、その結果でソースとドレイン間に通路が出来て電子が移動できて電流が流れる。
チャネルは「通路」の意味で、n型半導体が電子の通り道になるのでNチャネル型MOS FETと呼ぶ、ゲートは通路を開け閉めする水門の役割を行う、ゲートに加える電圧の大きさで、ドレインとソース間の電流を制御することができる。
Pチャネル型MOS FET
Pチャネル型は、Nチャネル型とは逆になり、土台にn型半導体を使用して、電流の通り道としてはp型半導体を使用したMOS FETだ。
動作原理は同じだが、ドレイン・ソースはそれぞれマイナスとプラスに設定して、ゲートには電圧をマイナスにかけて動作する。
電解効果トランジスタ(FET)は電流の流れ方による分類があり、エンハンスメント型とデプレッション型がある。
エンハンスメント型は、MOS FETの構造の時のように、ゲート電圧を印加して電流が流れる仕様のFETであり、ノーマリーオフと呼ぶ。
エンハンスメントは増加という意味であり、ゲート電圧の増加により駆動する意味だ、MOS FETの多くはエンハンスメント型に設計されている。
デプレッション型は、ゲートに電圧を印加しない場合に電流が流れる設計のFETであり、ノーマリーオンと呼ぶ。
ノーマリーオンのFETはチャネル間に最初からp・nの反転層を作りマイナスバイアスが掛かって電流が流れなくしている、マイナス電圧が減少すると電流が流れはじめる。
デプレッションは減少の意味で、ゲート電圧を減少している意味だ、ジャンクション-FETの多くがデプレッション型を採用している。
nチャネル型MOS FETとpチャネル型MOS FETの二つを組み合わせて論理回路を構成して同一の半導体チップ上に集積した電子部品をCMOS FET(CMOS)と呼ぶ、CはComplementary「相補的な」という意味があり、nチャネル型とpチャネル型が互いに助け合うことで動作する意味がある。
NMOSやPMOSでは、片方だけを利用する方式なので回路に常時に電流が流れつづけている、それに対してCMOSでは常時は電流は流れておらず、論理が反転する時にのみ、MOSFETのゲートに電流が流れるだけだ。
集積回路では消費電力を低くすることが課題だが、回路を微細化することで個々のMOSFETをスイッチングさせるのに必要な電力量をも減少できる、微細化技術で集積度を向上させと、高速化と消費電力の低減が同時に得られる事になる。
CMOSはマイクロプロセッサやメモリーやデジタルカメラのイメージセンサなどの広い用途で利用されている。
ユニポーラ・トランジスタの一つに光トランジスタがある、光を検出して電流に変換する素子だ。
光トランジスタでは一般のトランジスタと同じ様に、p型半導体とn型半導体をサンドイッチ構造にして作成する、ベースとエミッタ間は順バイアスにして、ベースとコレクタ間は逆バイアスに設定すると光が当たっていない通常時は電流が流れていない。
この素子に光が当たるとPN接合面で光起電力効果が生じる、すると内部の正孔はp型半導体へと、電子はn型半導体へと移動する、ベースとエミッタ間は順バイアスなので、エミッタからベースへと電子が移動するので、電流が流れる。
フォトダイオードは反応速度が高い特徴があるが反面としては感度が弱く微弱な光が検出できない、そこでフォトトランジスタとフォトダイオードを組み合わせてフォトカプラとして使用する方法があり一般的となっている。
フォトトランジスタ(フォトカプラ)は入力された信号を、フォトダイオードで光に変換して、それを再度電気信号へ変換する、そこでは入力側と出力側を電気的絶縁にして、出力側にノイズ等の影響を最小限にする特徴がある。
ダイオード
ダイオードはは整流作用=「電流を一定方向にしか流さない作用」という性質を持つ電子素子でありその歴史的には古い、現在では半導体を材料にした固体素子が主流であり、単にダイオード言えば半導体ダイオードを指す事が多い。
前回のトランジスタより歴史的には古く、半導体素子として電気を制御する事から共に「能動部品」と呼ばれる、半導体素子は最初は単体の素子として発明されて使用されたが、その後にそれらを集めた集積回路(IC)が発明されて一気に利用が拡大してその後の大規模集積回路(LSI)となり、マイクロコンピュータやメモリー素子となった。
(IC)や(LSI)の中心となったトランジスタに対して、ダイオードは単体素子としても複数の種類が発明された、特に発光ダイオードはほとんどの可視色と白色が発明された事で白熱光源や蛍光灯の用途を置き換えている。
発光ダイオードには発光原理から、ELも含める事もある。
1900年代の初め頃に、熱電子によるダイオード(真空管)と固体によるダイオード(半導体)は、無線受信機の検波用・復調用として同時期に個別に開発された。
この中で固体によるダイオードは、安定させる事が難しいという欠点があり、1920年代には真空管が一般的に使用され事になった。
1950年代にはまだ真空管ダイオードがラジオに最も多く使われた、これは初期の点接触半導体ダイオードが信頼性に劣ったことが理由にある、加えて当時の受信機には増幅用真空管が使われていたのでそこにダイオード部の混成搭載も可能だったことがある。
一方では1940年代後半には、点接触型トランジスタの発見があった、その後に次第に半導体理論・技術が進歩して行き並行して安定なPN接合の半導体ダイオードが作られるようになって行った。
その後はトランジスタの集積回路が急速に発達して、電子素子の半導体化が行われて行き、ダイオードも多種類が開発された、半導体ダイオードの歴史は長いが現在のダイオードはPN接合の半導体ダイオードとなっている。
半導体pn接合ダイオードでは、n型半導体とp型半導体が滑らかに接合された構造であり、そのpn接合部は電子と正孔が打ち消し合うので、荷電キャリアが不足する空乏層が作られ、その内部に電界が発生して空乏層の両端では電位差が生じる。
ダイオードのアノード側に正電圧をカソード側に負電圧を加える事を順バイアスと言う、この状態はn型半導体に電子を、p型半導体に正孔を注入する事であり、キャリアが過剰となるので空乏層は縮小して消滅する。
その状態は電子がカソードからアノード側に流れる、電流はバイアス電圧の増加により急激に増える、あるいは電子と正孔の再結合が起きてエネルギーが熱や光となり放出される。
アノード側に負電圧を加えることを逆バイアスと言う、それではn型領域に正孔を、p型領域に電子を入れる事なので、それぞれでキャリアの不足が起きる、そして接合部の空乏層が大きくなる、内部の電界も強くなり外部からの電圧を打ち消すので逆方向には電流が流れにくくなる。
実際の素子では、逆バイアス状態でも漏れ電流・ドリフト電流が流れる、逆方向バイアスを増すとツェナー降伏やなだれ降伏が起きて急激に電流が流れる、降伏現象が始まる電圧を降伏電圧やブレークダウン電圧と言う、これを利用したツェナーダイオードもある。
ダイオードの主な作用・機能は4つある。
1:整流作用
2:検波
3:電圧制御
4:電流変換
この内の1と2に関しては、半導体pn接合ダイオード以外の真空管ダイオードや他の固体ダイオードにも機能がにもあったが、3と4は半導体pn接合ダイオードから出発して作られた多様な種類のダイオードの機能・性能だ。
物質が電気を通すかで3つに区分すると、「導体」「半導体」「絶縁体」になるが、「半導体」は導体と電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ、電気を流す仕組みの違いで半導体はP型半導体とN型半導体に分けられる。
このP型半導体とN型半導体を1つの結晶としてつなげたものがPNダイオードであり現在のダイオードの中では最も一般的になっている、PNダイオードの挙動は前回に述べたが、材料と電圧印加方法等の組み合わせで、挙動と機能が変わり、そこからは多数の種類のダイオードが作られている、それらが3とか4としてして使用されている。
たとえば、電流を光に変化するのが発光ダイオードであり、逆に太陽光を電流に変換するのが太陽電池だ、
ダイオードの主な機能の詳細は下記だ。
・整流作用
一般的な電源は交流電流だが、ダイオードは決まった方向の電気のみ流す性質があるので、交流電流の中から順方向の電流のみを取り出せる、これをダイオードの整流作用と呼ぶ。
・検波
ラジオ電波は、通信に使われる高周波に音声などの低周波を合成して作るが、ダイオードはラジオ電波等から音声信号を取り出す目的で使用される、その用途を検波と呼ぶ。
・電圧制御
ダイオードは整流作用で通常は決まった方向にのみ電流を流すが、逆方向への電圧が一定値を超えると電流が流れる、その時は電流が増加しても電圧が変わらない性質がある。
この現象が降伏現象で、降伏現象が発生する電圧を降伏電圧と呼ぶ、そして降伏現象を利用するのがダイオードの電圧制御であり、その用途のダイオードをツェナーダイオードと呼ぶ。
・電流変換
ダイオードの中に光を電流に変える性質を持つ場合もある、PN接合に光が当たると、接合部近傍のN側の電子が移動して太陽電池として使用できる、電圧を加えないと電池となるが、電圧を加えるとダイオードとして働く。
ダイオードの種類から代表的なものをまとめた。
・シリコンダイオード
一般的なPNダイオードで、整流ダイオードを指す事が多い。
・ゲルマニウムダイオード
PN結合ダイオードで、検波用に使用された、材料費がシリコンより高価なので、特定の機能に限られた。
・ショットキーダイオード
金属と半導体を接合したダイオードで、スイッチング特性に優れる
・スイッチングダイオード
スイッチとして電源回路を開閉する目的で使用するダイオード
・エサキダイオード
江崎が発見したトンネル効果を利用したダイオード。トンネル効果は、不純物濃度の高いPN接合ダイオードで量子力学的効果で電流が流れない状態でも電流が流れる現象だ。スイッチ速度が速い。
・発光ダイオード
PN接合部に電流が流れると発光するダイオード。
・ツェナーダイオード
本来電流が流れる方向と逆方向に電圧をかけて使うダイオード。定電圧を得る目的で使用する。過電圧からの回路の保護でも使用される。