項目別バックナンバー[5]:技術情報:8

純度

化学薬品には、工業用・試薬1級・特級などがあります。これは主に純度の差 を示していますが、99%前後の話で非常に低いレベルです。
純度が重要になったのは、電子の世界の発達以降です。特に半導体では高純度 と制御された不純物の添加で成り立ちます。この世界では、99.999・ ・・・%ですので、いくつ9が並ぶかで、XXナインという表現をします。 例えば、99.999999%はエイトナインと言います。
純度を上げる技術は温度制御をはじめとするノウハウの集まりです。純度の高 い物質と若干でも不純物のある物質は融点が微妙に異なります。棒上の材料 をリング上の加熱装置で多数回走査すると不純物が1箇所にあつまってゆく というのが理屈ですが、現実は高度の技術を必要とします。

なぜ純度が重要になったかと言えば、半導体と不純物の研究が急激にすすんだ からです。そして単結晶です。いまは、アモルファスや多結晶も研究が進ん でいますが、半導体・電子素子といえば単結晶です。純度の高い物質は、高 速道路を走るようと言いたいのですが、性質上動ける電子(空孔)を作って やる必要があります。この為に追加するのが不純物です。
純度の高い物質に、完全に制御された量の不純物を混ぜることが重要で、性質 を制御でき再現できます。
必要な物が必要な量だけ存在すると実用的に機能的な電子素子が作れます。そ れ以外のものはえたいがしれず通常は性能を悪くします。
どの分野でも純度が高ければ、という事はしばしばおきます。ただ大量に純度 が高い物を作るにはコストがかかります。結局、小型でコストに見合う分野 で発展したのも実用からの要請です。

特殊な分野での純度以外でも、それなりに重要なレベルは存在します。通常は 素材料の変更は、製造条件の変更ですので買い手の承認が必要です。コスト ダウンを優先するあまりこれを無視するケースがしばしば存在し、現実に大 きな事故に繋がることがあります。
化学材料にも、触媒やフィラー等を通常混ぜます。触媒は通常は量は非常に少 ないです。逆に存在すれば、害になる物質もあります。その場合はその物質 に関する純度が問題となります。
例えばメッキでは、不純物が核になりそこから付着して成長しますのでできあ がった膜への影響は大きいです。
高分子の重合では、重合度の制御に不純物が影響する事が多いです。透明度・ 絶縁度・接着剤などの重要な性質が必要な場合ほどその影響を受けます。
ひとことで純度と言っても、そのレベルは多岐にわたりますが、それぞれのレ ベルで重要です。


流体

流体とは、気体や液体のように形状を変える事ができるものを言います。やや あいまいな定義ですが、応用上は拡大して考えを使用する事も多いです。
流体自体の動きを問題にする事もありますが、流体の中を固体上のものが動く 状態(相対的に、止まっている固体に流体がぶつかる時も同様)がより重要です。
流体力学では、ナビアー・ストークスの方程式が存在してこれを解けばすべて 解決ですが、自然科学の他の方程式と同じで一般解はなくて解けません。従 って如何に近似解をえるかの問題になります。
泡はなぜ出来るのか?・飛行機はなぜ飛びのか?・野球の変化球はなぜ曲がる のか?・粘性とは何か?・風洞実験で何が分かるのか?・HDD等のヘッドと磁 気媒体の円盤がなぜ摩耗しないのか等は全て流体の特性と関係しています。
通常は、いくつかの定理や法則が理解に使用され説明されています。専門的に 扱う人以外はこれで充分と思います。ここでも、そのレベルでの理解で進めるつもりです。

ベルヌーイの定理

流体と言えば、ベルヌーイの定理(方程式)と言われるくらいに有名ですが、 基本的な説明に向きますが、現実の現象を正確に説明する程ではありません。
公式:「圧力」+0.5*「流体密度」*「流体の速度の2乗」+「流体密度」* 「重力加速度」*「高さ」=「一定」
これはエネルギー保存法則を流体に書き変えたものです。これを単純に使うに は条件があります。粘性を考慮しない・流体密度が一定・時間変化がない。
これを条件とすると、「圧力」と「流体の速度」の関係になりますので、色々 な説明が出来ます。(あくまでも近似的です)
駅で線路近くにいると通過列車が通る時に引き寄せられる:列車に接する空気 が早く動くので、圧力が低くなるため。
野球やサッカーのボールの変化球:ボールが回転していると進行方向と同じ回 転と逆方向があるので、空気の速度に差ができてそれが圧力の差になり、曲 がる力になる。
飛行機が浮く理由も翼が非対称で上下で圧力に差が生じると説明される事も有 ります。ただ説明自体が不十分な事も多く、この定理の前提条件が成り立っ ているとも思えないので、説明は難しい様に思います。

レイノルズ数:無次元量とは

通常は自然界の量は単位を持っています。重さ・長さ・時間・電流等とそれら の組み合わせです。当然ながらこれらの大小は、現象に大きな影響を与えます。
上記の量の組み合わせで単位を持たない量を作る事ができます。イメージ的に は比率のようなものです。これを無次元量と呼びます。無次元量を構成する 量が変わっても、組み合わせた結果の無次元量が同じならば類似した特性を 示します。これは非常に重要で、スケールの小さい実験結果や簡単に作れな い量の変化を他の量を変える事で無次元量を同じにする事で調べる事が出来 ます。流体を扱う時には、船・飛行機・乱流等の実験が難しい事が多いので 無次元量を活用します。風洞実験が有効なのも、無次元量を利用するからです。
流体での無次元量としては、レイノルズ数が有名かつ有用です。粘性・密度・ 速度の流体の中に、あるスケール(円柱等)を置いた時がレイノルズ数にな ります。これは風洞実験状態とも言えます。
自然界は何が起こるかわからないと言いますが、それでも多くの事がスケール の小さい実験で知る事ができます。

完全流体では、ラグランジュの定理があり渦は無視してもかまわないが、現実 は絶えず渦が作られます。
また、流れの中にある障害物の後ろは複雑だが、死水という安全静止状態を近 似値にする考え方もあります。
流速または障害物の移動速度が速い場合は、背後に空洞が生じる事があります。 これも近似的に死水と同様に扱うことが出来ます。
現実とは異なるが、近似的に渦なしで考えるときに流れを、不連続流と呼びま す。近似的な事と見える現象と異なるので、あまり理論解析を認め難い面が あるのも仕方がないでしょう。
これだけでも厄介ですが、実際は流体には粘性が存在します。解けない・難し いという話しばかりになりますが、流体とはその様な性質です。

粘性

流体は入門がなくいきなり奥深いですので、今回で一旦終わりとします。
今までは空気や水のように、粘性の小さい流体を対象にしていましたので、粘 性は無視してきました。油等は無視はできません。また、泡・渦は粘性がな い事を仮定して議論していますので実は矛盾があります。
粘性を簡単に取り扱う方法も理解する方法も実はありません。イメージとして 説明するならば、流体を小さな固体の集合と考えます。空気も水も分子から 出来ているので無茶な仮定ではありません。流体は障害物等に当たると、そ れに沿うように流れをかえます。当然ながら、小さな固体と考えるとそれ自 体に変形が発生します。そして、変形を妨げる力も働きます。その力は流体 により異なりますが、その力を粘性と考えるとイメージとしてはかなり近いと言えます。
粘性流体は計算上の取り扱いが極めて難しく、しかも粘性なしを仮定したもの でも条件次第では無視できなく変化する場合があります。

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