項目別バックナンバー[5]:技術情報:31

発電・送電

原発事故以来、電力エネルギー関連の話題が多くなっています。
ただ、電気の基礎は中高で学んだ以来、忘れたという人も多いかもしれません。
実際に、技術的にはどんどん進む分野であり筆者も最新の事は判りません。
ただ、基礎を振り返る事も必要かと思います。
電気は、静電気・電流・電波に分ける事が多いです。
この中で、使い易い電気としては電流にほぼ限られます。
電流とは何かとは、厳密には難しいですが、実用的に静電荷(存在が確認されています)が動くと発生する電荷の流れと言えます。
電磁効果から述べても、相対論から述べてもありですが省きます。
電流は、電荷が動いている>単位時間当たりにある断面積を通過する流れです。
これは、流れる媒体=電線が必要であり、それには電気抵抗が存在し、熱となって消費する性質があります。
送電・蓄電が難しいという理由は、電気は流す事だけで減少する性質がある事です。

電力エネルギー問題は、発電方式・送電方式・蓄電方式に別れます。
現状は、発電方式が主体に注目されています。
送電方式が問題になるのは、西と東で周波数が異なる事でしょう。
蓄電方式に至っては、全く念頭にない人もいるようです。
現実は、揚水型水力発電が対象でしょう。
ただ、自然エネルギーの多くは発電が不安定であり、蓄電方式がないと実用は難しいです。
狭い時間単位で言えば、新しい発電方式・送電方式・蓄電方式設備を作るエネルギーは深夜電力等の非ピーク電力の利用が、必要になるでしょう。
広い眼で見ると、一種の蓄電方式開発とも言えます。

電力の送電には、電力消費がついてまわる事もかなり広くしられました。
送電中に、失われる電力は無視できません。
送電方法の開発、送電距離の短縮などの課題は多いです。
高圧送電は、そのひとつですが、鉄塔周囲の立ち入り禁止は、消費電力によるエネルギーの影響への注意も含みます。
そもそも、狭い国土の日本では送電は普通に考えられて来ましたが、一般的には、長距離送電という課題は長く続いています。
超伝導という期待もありますが、まだ未来の期待の技術の段階です。

余裕電力を備蓄する方法は、規模は少ないがあります。
揚水発電は、夜の間の余裕電力を使用してモーターで水を高い場所に揚げる。
昼の電力使用ピーク時に、その水を利用して水力発電します。
効率的には、マイナスはありますが備蓄発電法として利用されています。
自然エネルギーについても、その設備生産に必要なエネルギー消費が、完成後の発電エネルギーに対して低い事が問題になる事が多いです。
確かに、主力電力源として見るとそれは不可です。
ただし、比率が低い時は余裕電力で設備生産して、電力消費ピーク時に発電すると考えれば、揚水発電と同様の備蓄用途になります。
24時間稼働の主力発電方法がある前提です。

発電方式は、原発事故でそれだけが注目されていました。
ようやく、徐々に現実に近くなりつつあります。
当初は、実用方式・実験プラント方式・小規模テスト方式・研究開発段階方式・理論検討方式等の実用性の有無が近いものから、何も不明なものまで、まるで同じ段階の様に提示されたり、あたかも直ぐに実用化出来るかの様に議論する人がいました。
それは、同時に現行方式のみに偏る反対に繋がるものでした。
何事も段階を進めないと、実用化に近づけません。
可能性のみ、否定のみの議論ほど、無意味な事はありません。
現実をみない無意味とと、実用化に向けての技術開発を進める必要性とが理解され始めた所です。

原発事故のバックアップの主役が、火力発電だった事は皮肉というか、緊急避難的です。
特に石油系は、埋蔵量の制約とコストの制約があります。
そもそも、火力発電所減少を元にした二酸化炭素排出規制目標はどうなったのでしょうか。
まだ、液化天然ガス火力発電ならば状況も変わりますが、急激に対応出来る状況ではありません。
ただ、自然エネルギーを求めるだけで、液化天然ガス火力発電等のより現実的な方式が見過ごされている傾向はあります。
ただし、液化天然ガスの調達自体は容易ではありません。

送電については、日本では中部を境に周波数が異なり変換が必要です。
これが、電力の融通の制約になっている事は知られています。
全国規模で考えると、この対策も必要です。
もうひとつは、直流送電技術です。
長く研究対象になっており、理論的には電力の送電ロスが少ないとされています。
これも、全国規模での電力供給バランス確保の考えからは考慮するべき技術です。
発電方式の重要さは変わりませんが、それの制約を少なくする、送電と蓄電の技術開発は結果的に大きな役割を果たすと予測出来ます。

技術問題が、ある時点から法律問題・政治問題になる事情があるのがこの分野です。
技術進歩や開発が、法律の壁で止まる可能性があるのがこの分野です。
重要だから、積極的に技術開発して成功して量産段階に進むかどうかが、全く違う所で決まる可能性の高い分野です。
技術開発に無駄はつきものですが、始まる時点で極端に言えば、技術とは関係なしに無駄になるリスクを考える必要があります。
それが出来る環境・機関は、限られるのです。


食品

食品といえば、自給率が注目されている時代から、食品安全が注目される様になりました。
生活必需品の食品に関する技術は、進歩しています。
品種改良・養殖・輸入・防腐・冷凍・レトルト・・・多彩です。
また、「しお」の様に自然生産から工業合成生産になったものもあります。
多数の大きなテーマの基本的な事を見直して行きたいと思います。
とにかく、多くの事については現在は世界的な視野で見ないと何もわからない時代です。

食品自給率はいつも話題になります。
資源の少ない国、日本にとって問題視され続けています。
ただ、複雑な食物連鎖の末に位置する商品は、直感的には思い違いが出来る傾向があります。
自給とは、全ての輸入が無かった時の状態を仮定します。
そこには、直接的な食品だけでなく、加工品・原料・えさ等も含まれます。
日本で加工率が高くとも、原料が輸入では自給率は低いです。原料の自給率が最終加工品の自給率になります。
家畜等の飼料も同様です。
日本では、家畜の飼料(えさ)の輸入率が高いので、家畜から得られる食品の自給率も同様に低くなります。

生産者から消費者への輸送手段は、大きく技術的に変わりました。
食品の場合は、1:輸送時間を短くする、2:食品の寿命食品の寿命(通常は賞味期間等が使用される)のどちらかになります。
その他には、品種改良とか加工食品絡みの事もあります。
輸送時間の短縮は、国内ではトラック輸送の発達があります。
コスト面がクリアすれば、国内・海外共に輸送時間の短縮方法は他にもあります。
技術面では、食品の寿命を長くする事が大きいです。
冷凍・冷蔵輸送は、こちらになります。
評判の良くない防腐剤も、こちらのひとつです。
それよりも、冷凍食品・レトルト加工等の技術の進歩が、大きいです。
なお技術進歩は文字通り実用の広がりで、思想・研究的には起源は古い。

冷凍技術の進歩は、食品産業のみならず、利用者のライフスタイルも変えました。
裏では、電子レンジの普及等の解凍技術・冷凍庫等の保存設備の進歩も後押ししています。
たんなる食材の保存方法ではなく、加工商品の保存に拡がりました。
同時に、食品の鮮度・賞味期間の長期化をもたらしました。
食品には大量の水が含まれています。
食品をゆっくり冷凍すると、水が氷になり尖った成長で食材を破壊します。
それを解凍しても腐敗が生じます。
急冷技術の進歩は、水がゆっくり氷になる時間を無くします。
食材の破壊なしに冷凍出来るのです。

真空パック・不活性ガス注入の技術も進歩しました。
腐敗の多くは、酸素の介在が原因です。
また多くの、腐敗に関わる微生物は酸素の存在下で活動します。
酸素のない状態を作ると、食品の寿命や鮮度を長く保つ可能性があります。
現実に、最近ではこれに関する技術を利用する事は、常識的に行われています。
酸素吸収剤や二重包装なども似た考えです。
防腐剤を単にふりかけるような、食品を傷めかねない対策よりは進歩があります。

養殖・品種改良が、急に食品と密接に繋がりはじめました。
自然食品ブームとは、重ならない部分もありが混同もあると思います。
人間が栽培している農作物と、養殖水産物とほぼ同じレベルです。
ただ、歴史は全く違います。
農作物は長い歴史があり、水産物はまだ短いです。
自然食品と言っても、栽培方法の事で人間が関与している事には差がありません。
品種改良も現在の殆どの栽培農作物は、人工の交配等の歴史から生まれたものです、遺伝子操作による改良との違いは明確ではありません。
ただ、歴史のあるものは自然淘汰されておりかつ、食品として実績がある事でしょう。
遺伝子操作によるものも、いずれはいくつかはその条件を満たすでしょう。
それまでは不安というのは、自然な感情と思います。
でも全てまとめて駄目という考えは、矛盾があります。

食品製品の加工度は、上がって来ています。
それで論じて意味がある事と、ない事はあります。
人が、食べるまでのトータルの加工度を問題にする場合は、必ずしも上がっているとは限りません。
素材を購入して、消費者が自身で加工して食べる、生活スタイルがあります。
加工度の高い素材を購入して、少ない加工のみで食べる生活スタイル。
外食という、加工品を購入して食べる生活スタイルもあります。
少量を手間ひまかけて、加工する昔からの生活は、意外に加工度は高くなってしまいます。
大量生産の、中間またはほぼ完成品の加工とか、大手外食店の加工の効率は、高いです。
定義の仕方で、どちらが加工度が高いかは微妙です。


人工衛星

人工衛星が地球に落下するニュースが続きました。
小型の場合は、大気圏突入で焼けて消滅しますが、ある程度大きくなると隕石と同様に、一部は地球に落下します。
アメリカから人に当たる確率が出ていましたが、大きいと見るか小さいと見るか?、個人で考えると地球全体の人口の分だけ、その確率より少なくなります。
地球の周りは、人工衛星が一杯です。
イメージ的には、利用している人工衛星だけに注目しがちですが、全世界・軍事的等の秘密用途・使用期間がすぎたがまだ残っている衛星等を全て加えると過密状態と言われています。
特に、静止衛星や軍事衛星等の地球監視衛星は、その軌道半径が用途的に似て来ますので、そこではより過密になります。
(注:軌道周期は、軌道半径の二乗に反比例の物理法則によります。)

衛星は、周回する中心の星の引力と周回速度等の遠心力等のバランスで軌道を安定化させます。
そのバランスが取れない時は、軌道を維持する為のエネルギーが必要です。
人工衛星はバランスの取れた所で自由に飛んでいても意味がないので、燃料等を使用した姿勢制御が必要になります。
従って、姿勢制御・軌道制御が出来なくなった人工衛星は、周回を続けますが本来の用途からは寿命となります。
そして、用途を無くした人工衛星が沢山、周回を続けている事になります。

人工衛星は、機能を果たす上にはエネルギーが必要です。
その必要エネルギー量によって、搭載燃料源が変わります。
消耗するエネルギーが多いですが、太陽電池や原子力の様に長期間にわたって利用可能なものもあります。
原子力は、偵察衛星用途が多く、使用する国も限られます。
エネルギーの用途は、姿勢制御・通信・観測等の用途等に必要です。

人工衛星の数は多いですが、有人人工衛星となると非常に少ないです。
有人人工衛星が話題になる時代から、有人人工衛星上で何をするのかという段階になっていますが、有人人工衛星自体は極く少数です。
アメリカのスペースシャトルが中止になり、宇宙ステーションへ人を運ぶのがロシアのソユーズだけになり、貨物を運ぶのが日本のロケットという現状です。
現在は、宇宙ステーションでの研究は危機的な状況になっています。

人工衛星の打ち上げは、地球の引力以上の力が必要です。
それによって、高度を確保して周回が可能になります。
従って、打ち上げロケットの使用が必要になり、コスト的に打ち上げ費用が、大きな比率を占めます。
打ち上げロケットは、打ち上げる人工衛星の重量に比例して高い能力が必要になります。
そして、地球の自転の遠心力の利用が有効です。
どこの国でも、発射台は一番遠心力の大きい赤道に近い所でかつ、地球の自転方向に向かって打ち上げる事が経済的で、実施されています。
日本は、種子島と鹿児島県内之浦に発射台があります。

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