項目別バックナンバー[5]:技術情報:29

AD変換

アナログ情報をデジタル情報に変える事を、アナログ-デジタル変換(AD変換)と呼びます。
多くの場合に、デジタル情報の方が取り扱い易いとされています。
アナログ情報も、無限大にアナログではなく、どこかに最小単位が存在するの でデジタルとも言えるという意見もありますが、情報の扱い易さから実用的な分類ではありません。
一応、寄り道すれば、アナログ写真も銀塩フィルムでは、銀分子以下には情報 はならないというような事です。
実際のデジタル記録でも、オンとオフの2種類を判別するだけで、情報の記録 方法は判別できれば、精度は問われません。

情報的には、ベクトル・デジタル変換という似た意味の言葉もあります。
これはプリンタやディスプレイ等の描画方式の事です。
ベクトルデータは、人間が字を書く様に筆順に従って筆を運ぶイメージです。
その意味では自然ですが、重なる場合は同じ所を複数回なぞる事や機械的な移 動が激しい欠点が多いです。
ベクトルデータは、アナログデータの性質があります。
ベクトルデータを含めて、AD変換が重要になりました。
たとえば、ページ単位で完成したイメージを計算によってコンピュータメモリー上に作ります。
これをその過程で、デジタルのドット・テーブルに書かれています。
ドットは大きさがありますが、その部分的な描画部があるときは、閾値を決め ておいて、その面積以上をオン、以下をオフと判定してドット単位で埋めてゆきます。
ドットが荒い場合は、拡大して見ると境界部はギザギザになります。

AD変換は、ページ上の表示・描画をドットのスキャンで行う時に有効です。
テレビの様に、左上から右へ・1ドット下の行も同様・・・以下右下まで繰り返します。
プリンターも同様に、平面を点を行+列方向にスキャンする事で印刷します。
スキャンするデータは、AD変換でドット(ピクセル)データになっている必要があります。
この方式は、機械的な移動が少ない事が特徴で、速度も速く位置精度も高いで す。機械的な精度は複雑な動きでは、難しいですから。
特に光(レーザー)は、プリズムの制御と、1方向の機械的移動の組み合わせが可能なので、非常に向いています。

2次元で表示する事は多数あります。
その方法の中で、定期的な書き換え方法と相性が良いのがAD変換+スキャンという方法です。
書きやすい事が利用の理由であるとともに、書き換えやすい事も大きいです。
印刷では書き換えはありませんが、ディスプレイでは絶えずスキャンを繰り返して最新情報に書き換えています。
ドット(ピクセル)データは、この目的には適しています。
時間的な位置の同期が必要ですので、位置と時間を変える時は記憶する領域が必要になります。
記憶領域を使用する時は、AD変換時に必要なデータ展開領域と似ています。

AD変換は、アナログデータを記録してからデジタル変換する必要はありません。
データ入力時に、直接にデジタル化して取り込む事もあります。
むしろその方向でしょう。
デジタルカメラ等で使用している、電荷カップリング素子・撮像素子はアナロ グデータを直接にデジタル化した状態で電気信号に変えて記憶します。
入力時点でデジタルに変換しています。
デジタルデータは、補間という方法でアナログに変えるので、デジタル記憶はデータ的には同じです。
ただし、ピクセルのサイズ=解像度はいつも重要です。

パソコン用のモニター(=最近は液晶表示が主体ですが)は色々な変遷を経て 来ましたが意外とコネクター等の規格が統一されています。
少し前は、アナログ出力がパソコン本体から出る(通称・ブルーコネクタ)でした。
今は、ほとんどがデジタル出力に変わっています(通称・ホワイトコネクタ) 。色だけでなく、形状も違いますから繋がりません。
ただし、液晶モニターを買わずにパソコンのみを買い換える時は注意が必要です。
2種類ついているパソコンもありますが・・。
パソコンをテレビのデジタル放送やワンセグ対応にする動きがありますが、最 後の表示が何かは確認しておいた方が良いでしょう。
変換自体はあちこちで行われていますから。


化学結合

テレビの報道番組でノーベル化学賞受賞者の鈴木教授の受賞内容「クロスカッ プリング」について、全く理解出来ないキャスターがいたのは驚きです。
高校生なら習う初歩の内容だからです。
いつも原稿を読んでいても、内容は理解していないと思われても仕方ないです。
素粒子以下まで行かず、原子から始める事が化学では多いです。
ただし、原子核や電子はその反応には深く関わっています。
原子が複数に結合して、分子を形成するには、原子核の一定の配列と電子の共有・重なりが必要です。
この電子の関与の仕方で、化学結合が分かれます。
エネルギーが低い状態が安定ですから、化学結合はエネルギー的に安定な状態に結果的になる事を意味します。

力には、色々ありますが、静電力・磁力が強い力です。
それ以外は弱い力です。
これらは、電子の働きが大きいです。
化学結合は、電子の移動の結果生じますのでエネルギーと密接です。
いくつかの力の集まりから、トータルエネルギーが計算出来ます。
物質は、そのエネルギーが安定な状態になります。
化学合成は、何らかの方法で安定な状態から別の安定な状態へ、状態を移行する事です。
イメージ的には、安定状態と別の安定状態との間には、エネルギーの高い状態が存在します。
それを超える何かの方法が必要です。
それには、熱・圧力・等が使用されますが、中間状態を作る触媒も重要です。
直接に変化させるのでなく、間にいくつかの中間状態を挟んで反応させるのです。

結合の中でも強度の強い物に、原子が電子を共有する共有結合があります。
同様に、共有から一方に引かれてしまうとイオン化しますのでイオン結合となります。
これに、結晶状態の原子核の格子のなかを電子が動くというイメージの金属結合があります。
強い結合というか、単に結合という時のイメージです。
ただ、ファンデルワールス力という弱い結合もいまでは同様に扱われる事もあ ります。これは、中性原子の電子が弱く繋がるというか、影響しあっている状態です。
強い結合が存在するときは、ファンデルワールス力は無視出来る程度の力です が、何も無いときはこの力のみ働き、無視出来なくなります。

炭素(C)・水素(H)・酸素(O)・窒素(N)等を中心に化学結合させて、物質を 作る化学を、有機化学と呼びます。
自然界にも有機物は多数存在します。
それ以外の物質、高分子物質等は合成して作ります。
そのときの結合は、共有結合とイオン結合になります。
いずれにしても、電子の共有状態を制御して最終的な安定状態に移行させる事になります。
結合時の電子の状態で、一重結合や二重結合等が存在します。
二重結合は、ひとつが切れて他の原子・分子と結合しやすいです。
勿論、エネルギー的に何かのきっかけ・エネルギーの移行が必要です。
現在は、電子の占有状態は確率で理解されていますから、共有とかイオン化と かの表現は確率的に、そちらに近い状態を指します。
100%という事はありません。

化学結合の強さは、不思議なものです。
非常に安定なものから、不安定なものまであります。
その安定な物同士を反応させて、別の物質を作る事も可能になっています。
それは、はじめと終わりの間にいくつかの、中間状態を経由させる事です。
その手段は、熱・圧力等のエネルギーがひとつです。
化学反応は、あるレベルを超えれば進み易い性質があります。
また、触媒や反応促進材等による方法も有効です。
後者は、より効率的な方法を見つける必要があります。

化学結合は、未知の物質を作る事も多いです。
身近では、高分子化合物が代表です。
プラスチックとも呼ばれる製品群は、化学結合が進んで多くの結合でひとつの分子が出来たものです。
しかし、完全な制御は困難で、細部の分子量の制御や均一材料とは正確には、言えません。
ただし、その物質の性質は構成原子の種類や比率と、平均分子量でほぼ決まります。
従って、実用レベルで高分子化合物が作られて使用されています。
物質の性質や、結合方法や製造方法は多岐になりますので、多くの研究分野に分かれています。

2010年に話題になった、クロスカップリング反応について簡単に述べます。
これは、触媒を用いた複数(通常2つ)物質の選択的化学結合の方法の事です。
化学反応の多くは、その引き金となるものが必要ですが、最適な触媒を使用し て行うと、作りたい物質を狙って作る事が出来る時があります。
その時の、材料と方法を合わせてクロスカップリング反応と呼びます。
元の2つの物質が同じ場合は、ホモカップリングといいます。
これに対して、異なる物質間の反応をヘテロカップリングまたは、クロスカップリングと呼びます。
色々な方法が開発されており、実用性も高いです。


集積回路

電子技術は20世紀からのジャンルで、結晶と量子力学からのバンド理論から 実用化した半導体特性を使用します。
ショックレーのトランジスタの発見・発明は、それ以前の真空管回路を置き換 える固体回路の誕生に繋がりました。
トランジスタやダーオードという、単体の電子素子の進歩から始まりました。
次に、それらを複数集める素子>集積回路の思想と製造技術が開発されて、一気に集積回路へと進みました。
それは、小型・高機能化の始まりでした。

単体の電子素子の中身は、既に超小型です。
それを保護するケースや外部と信号をやりとりする電極が素子の大部分です。
そこから、複数の機能素子をまとめて、外観的に1素子にする発想が出ます。
次には、次第に膨大な数の素子を、1チップに載せてしまう発想になります。
これが、集積回路(IC)の誕生になります。
集積回路では、デジタル素子の殆どの機能が実現できます。
同時に電気信号の伝達距離が小さくなり、速度が速くなります。
量産効果により、大幅なコストダウンの可能性があります。
その後の、集積度の急激な進歩は、そのメリットから必然的です。

集積回路の製造技術は、非常に難しいです。
それ故に技術開発も激しい進歩で進みました。
そこには、加工単位(シリコン・ウエハーのサイズ)の面積増大と、集積度の 増加による加工費の削減がついてまわります。
特に後者は、技術力が高くなり集積度が高くなるほど(性能が高くなるほど) 製品価格が安くなるという、事実が生まれました。
この性能が上がると、安くなるという方向は、驚くほど急激な技術・性能・価格ダウンを生み出しました。
これは、他の産業ではなかなかみられない現象でした。

集積回路の技術進歩の中には、個別素子自体の方式の進歩も大きな比重を占めています。
バイポーラと呼ばれる初期のトランジスタから、MOS型の素子への方式の変化 は集積回路の密度と製造技術に大きな貢献をしました。
構造のシンプルさと、集積密度と製造工程の効率化が同時に進みました。
一番需要が多かったのが、記憶素子(メモリー)です。
情報を保持する素子ですが、書き換えが可能なタイプが需要が大きく、また最 初は電源が入っている時のみ動作するものが主体でした。
その用途的には、1ダイオード+1キャパシタのダイナミック・ラムが最適で した。集積度が非常に高くできます。
量産効果とシェア争いと、撤退して異なる素子へ移行する動きが起きました。

アメリカ西海岸のサンフランシスコはシリコンバレーと言われます。
日本の九州は、シリコンアイランドと言われました。
昔は、半導体工場は塩害に弱く、海岸には作れませんでした。
しかし、技術の進歩で海岸にも工場ができはじめました。
また、リスク分散で日本及び世界各地に分散させる方向です。
結果として、どこで災害があっても巻き込まれる製造工場はあります。
ただ、問題は部品レベルでリスク分散出来ているかどうかです。
これは企業機密ですが、災害等から見える事もあります。
精密機械の集まりで、埃に弱い半導体工場は、地震に弱い面があります。

材料・部品が調達出来ない為に、工場の稼働を遅らせている製造業が多数存在します。
標準化されている部品や製造が多くの企業で可能な場合は、対応は早いです。
しかし現実を見ていると、一部の部品が供給不足で全体の生産を止めているケ ースが多数あります。(公表された理由では)
細部は機密で不明ですが、電子部品のなかで特殊な物はそれに該当すると予想できます。
拠点が多数ある企業は、拠点の移動を検討します。
ただ、中小の技術先端企業は被災した場合は、復興が時間がかかります。
場合によっては、ワールドレベルでの話になります。
そのような噂も時々あります。

このページの先頭へ