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放射線と物質

電子は物質中を通過するときに荷電重粒子と同様に、原子の励起電離により自分のエネルギーを失う。
だがエネルギーを増すと原子核の強い電場の影響によって、電磁波(光子)を放出(輻射)する、それによって大幅にエネルギーを失う、このことは荷電重粒子と比較したときの大きな特徴となっている。
電子は、上記の電離と輻射の双方でエネルギーを失うが、電子のエネルギーが増大するとはるかに輻射でのエネルギー損失が増える、電離と輻射のエネルギー損失がほぼ等しいエネルギーを臨界エネルギーと呼ぶ。

γ(ガンマ)線は原子核の励起のエネルギーが光子として放出されたもので、エネルギー領域は核の励起状態により異なり、さらに電子の輻射過程で生成される。
X線は電子と原子の非弾性衝突や内部転換現象等で原子が励起された場合や電子が弾き出された場合、安定状態に戻るときに生成される。
γ(ガンマ)線とX線は発生は異なるが、物質との相互作用は類似している。

γ(ガンマ)線とX線は発生は異なるが、どちらも電磁波(光子)だ。
物質との相互作用は、主に光電効果、コンプトン効果、電子対創生になる。
γ(ガンマ)線とX線の物質中の吸収は、線形吸収係数で扱われ、それは吸収の原因として上記3つの吸収係数の和で表される。

・光電効果
 光電効果は、光子が原子内の電子と相互作用して自分のエネルギーを電子に与えて、電子が運動エネルギーを持って原子の外に飛び出す現象だ。
・コンプトン効果
 γ(ガンマ)線とX線を物質に当てると散乱するが、散乱したγ(ガンマ)線とX線の中には入射γ(ガンマ)線とX線より波長の長いものが含まれる、この現象をコンプトン効果と呼ぶ。
・電子対創生
 電子対創生は、γ(ガンマ)線が原子核の近くで消滅して、陽電子と陰電子の対が創生される過程だ。
 これが起きるにはγ(ガンマ)線のエネルギーが電子対の全静止質量より大きくなければならない。

中性子は他の粒子とは異なる性質を持っている。
中性子は中性であり、原子核のクーロン場との相互作用がない。
中性子と物質の相互作用は、中性子が原子核のごく近くまで来たときに核力が作用する領域での原子核反応になる。
中性子が原子核に衝突し、その後放出される過程を散乱と呼ぶ
さらに衝突で核が励起されないときは弾性散乱と呼ばれ、励起される場合を非弾性散乱と呼ばれる。
衝突で中性子が原子核に捕獲されてエネルギーがγ(ガンマ)線で放出される時は、捕獲反応と呼ばれる。
荷電粒子が放出される場合に、荷電粒子放出反応と呼ばれる。
核分裂は複合核が2つの核破片と複数個の中性子に分裂する。
蒸発過程は高エネルギー中性子が重い原子核に入射させると、励起されていろいろの粒子が放出される。

放射線検出器は、放射線の種類が多い事もあり多彩だ。
検出器は人間の五感には感じない放射線を五感で認識できる物理量に変換するものを指す、故に増幅器や写真測定装置等は含めない事が普通だ。
検知器には放射線の存在の認識に加えて、その物理量の測定も含まれる。
検出器で直接測定可能なものは荷電粒子であり、中性粒子は物質との相互作用で荷電粒子を2次的に出さないと検出できない。
荷電粒子の検出器は、・電気的な検出器、・光を利用する検出器、・飛跡による検出器がある。

電気的検出器
荷電粒子は物質を通過すると、原子等を分離して正イオンと電子が出来る、電子は原子等に付着して負イオンを作る。
これらに電圧をかけると、電流が流れるのでそれを増幅して電気パルスとして検出する。
その例として、検電器、GM計数管、比例計数管、電離箱、スパーク計数管、結晶係数器がある。

光を利用する検出器
・荷電粒子が透明な物質中を通過すると原子または分子を励起する、この励起状態から基底状態に落ちるときに光を放出する、これをシンチレーションという。
 これは微弱だが、光電増幅管を使用する事で検知できるようになる。
・透明な物質中を荷電粒子が一定以上の速度で通る時にシンチレーションとは異なる原理で光を出す現象があり、チェレンコフ輻射と呼ぶ。
 これを利用したチェレンコフ検出器は、放射線の速度・進行方向をきめる特長を持ち高エネルギー核物理学・宇宙線で利用されている。

飛跡による検出器
・放射線検出原理は電気的検出器と同じだが、電気的でなくて物理現象を起こさせて、放射線の飛んだ跡を作り撮影して検出する方法がある。
 霧箱は、気体中の電離によるイオンに液滴がついてできた霧を見る。
 泡箱は、液体中の電離によるイオンをもとに出来る泡を見る。
 原子核乾板は、写真乳剤の銀やブロム原子を電離して出来た現像核を現像して使用する。
 放電箱は、気体中のイオンか電子をもとに高圧で放電を起こして、出る光を写真撮影する。

放射線測定方法-1
・検電器:安価で市販品がある。γ線測定に向くが精度は良くない。
・GM計数管:放射線を1本ずつ数える。
 中性子測定は難しい。α線とβ線に使うが有効領域がある。
 手頃だが粒子の種類とエネルギーは判らない・
・比例計数管:熱中性子検出に使用。
・電離箱:正イオン用の遅い電離箱と、電気パルスで測定する速い電離箱がある。
・スパーク計数管:GM計数管の改良タイプで、機能をほぼ持つ。
・シンチレーター
 ・無機結晶:全ての荷電粒子に使える。欠点は価格が高い。中性子は使えない。
 ・有機結晶:無機結晶と似ている。
 ・有機液体固体:高速計測・高時間分解能を持つ。価格が安い。
・チェレンコフ検出器:速さと飛行方向を決めるのに便利。応用範囲は広い。


放射線の計測

放射線測定方法-2
・霧箱:閉じ込められた箱内に霧を発生させて、それを数えて電離密度を測定する。
 箱内の気体と圧力を目的によって変える、宇宙線測定や原子核反応の測定に使用する。
・泡箱:霧箱の気体の代わりに液体を入れたイメージだ。
 箱内の液体の密度が気体より高いので原子核反応が起きる確率が高くなる。
・原子核乾板:写真フィルムの乳剤の黒化度から一定期間にわたる放射線の総量を調べる。
 装置としては小型軽量が特徴だ。
・放電箱:霧箱の動作を、電気的に行う考え方だ。
 面積を広くしたり、動作をオートメーション化するのに適している。

放射線測定方法の選択は、どのような物理量を測定するのか、で異なる。
種類とエネルギーが不明な時や、2種類以上が混ざるときは複雑になる。
装置の候補が複数ある時は、より簡単な装置を選ぶことが必要だ。

電気的な検出器
 放射線による電離作用を利用して、放射線の検出と、さらに放射線の特性を電気的に測定する検出器だ。
 古くからある方法で、現在でも改良がされて使われている。
 検出器の原理は、電離により生成された電子、正イオンの量、電子正イオンの運動で誘起される電圧変化あるいは電子、正イオンにより作られる放電現象等の形で測定される。
種類は下記がある  
・電離箱
・比例計数管
・GM計数管
・結晶計数体
・ソリッド・ステート・カウンター

電離箱
・電離箱は動作が簡単であり安定している事から測定器として広く普及している。
・積分型:単純に電離箱内の気体中で生成されたイオンを集める。
 微分型:気体中のイオン電荷の運動により電極に誘起される電圧脈動を利用する。
・放射線源を外部に置く型と、内部に置く型とがある。

比例計数管
・電離箱は生成されたイオンが電極に向かう時に集電極に誘起される電圧を利用した。
・これに対して、電極間の電位差がある大きさ以上になると、最初に作られた電子は次の衝突までに十分なエネルギーを得てガス分子を電離する、この状態では電子が次々作られるが、このガス中で電子の増幅が起きる現象をガス増殖と言う。
・この状態では総電子数は最初の電子数に比例する、そのような計数管を比例計数管と呼ぶ。
・電離箱と比較して、比例計数管の特長はパルス立ち上がり時間は差が無いが波高が大きい事がある。
・比例計数管は、α粒子やβ粒子等の測定が可能だ、中性子の測定にはBF6ガスを封入した計数管を使う事で行われる。

GM計数管
・GM計数管は手軽に使える放射線測定器として普及して来た。
・GM計数管の特長は
 1:放射線に対して感度がかなり高い。
   放射線でGM計数管内に1ペアのイオンが作られると一定以上の放電が成長する。
 2:荷電粒子でもX線でもγ線でも検出できる。
 3:形状や大きさが容易に色々に作れる。
 4:出力パルスが大きいので検出電気回路が簡単で安価になる。
・GM計数管の欠点は、長所の2:の裏返しで、放射線を数えるには有力だが、半面としては放射線の種類には無関係である。
・β線用計数管は、β線の物質中の飛程が短いために、入射窓が薄い物質で作られている。
・X線とγ線の検出はそれらの作る2次電子で行われる、故に2次電子を多く作りそれで計数管で放電を起こさせる。
 ガス中では2次電子放出の確率はほとんどないので、電極からの2次電子を利用する。

結晶計数計
・電離箱の気体ガスを固体に置き換えたものと考えられる。
・放射線の検出に使用できる結晶には、塩化銀・ダイヤモンド・硫化カドミウム・臭化銀・臭化タリウム・ヨウ化タリウム・硫黄・塩化ナトリウム・硫化亜鉛などがある。
・結晶は通常絶縁体なので電流は流れない、荷電粒子が結晶中を通過するとその運動により電極間にパルスが誘起される。
・結晶計数計の長所は、媒質が固体なので阻止能(荷電粒子が物質との相互作用によって減速しエネルギーを失う程度を表す量)があり、大きいエネルギーを検出できる、γ線の効率が高い。
・欠点は放射線の強度が強くなると、空間電荷効果(放電管内部で,陰極から放出された電子が分子に衝突してイオン化が起きると、移動速度が遅いので、内部に残留して電荷分布に乱れが生じる)により効率がかなり低下する。

Solid state counter
・半導体(ゲルマ二ウムやシリコン等)と金とを結合させたα粒子検出器だ。
・α粒子が半導体内で電子と正孔を作り、それが半導体の接合部の表面にあるポテンシャルの山中で運動すると、電流パルスが生じる、それを利用してα粒子を検出する。
・この検出器の長所は、固体であり、小型であり、α粒子の検出効率が高い、パル波高が入射エネルギーに比例する、エネルギー分解能が高い事等だ。
・さらに光とβ線とγ線に対してはほとんど感度がないので、混在してもα粒子のみが検出できる。

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