項目別バックナンバー[5]:技術情報:12
低次元
我々が住んでいる所は3次元です。論理的には、多次元は通常のように使用さ
れますがこれは別の話として、1次元・2次元の話題を取り上げます。
初歩の物理等の教科書では、説明のために低次元を使用します。現在では、物
質の性質を考える時に、実際の自由度から低次元を仮定すると理解が容易で
現象とあう場合が報告されています。簡単に言えば、分子の運動の自由度が
性質を決める場合にはその自由度にあった次元で取り扱う事が、良い結果を
もたらすと考えます。
複雑な実際の物質の性質は、近似的にしか解明できませんが、その近似がどの
次元を適応すれば一番現象とあう結果が得られるかの問題です。
そして、現実にはそのような近似が良い結果をもたらす場合が、かなりあると
いう結果が出ています。
1次元は鎖状の物質、2次元は層状の物質・薄膜・表面現象等が適応可能性があります。
3次元未満については、理論が先行していました。それが、実際の物質にも適
応可能な事が分かると非常に注目されています。
物質の特性は、全て近似と言えますが3次元といっても無限大ではなく必ず区
切りが存在します。その部分を界面などと言いますが、当然通常の3次元の
性質ではありません。ただ、近似的には以前は界面は無視してきました。
ところが、形状が小さくなるとバルクと呼ばれる中心の3次元の部分と比較
して界面の部分の影響が無視できなくなります。この部分は2次元か2.5
次元的と言えるでしょう。
物質の状態では界面を表面と呼ぶ事もあります。液体の表面が始めに思い浮か
びますが、表面張力のように独特の特性が存在します。現在はナノ物質が、
一般にも知られてきていますが、活性が高いと言われますが表面という存在
は3次元になろうとする性質があり、他の物質と反応して結合してより大き
な3次元に近い状態に変わろうとする為反応し易い(活性が高い)と考えれ
ば理解しやすいです。
層状物質というものが存在します。複数の層状物質を交互に積み重ねた様な構
造になっています。例えば片方が非活性(電気特性とすれば絶縁性)ならば
層と直角方法は自由度がなくなり、活性な層内の2次元に近い特性を考えた
方が現象とあう事がかなりあります。
層状物質が極端に注目を浴びたのに、高温超伝導があります。これのメカニズ
ムは研究中ですが、発見に至る指針に層状物質を探すがありました。自由度
が3次元よりも少ない2次元物質の方が低温特性への転移が起こりやすいとの考え方です。
理論に実験がついていったようにもみえますが、その後の理論研究はゆっくり
と歩んでいるいるように見えます。ターゲットがあると検証という作業が可
能ですので、提案だけで放置が少なくなるからでしょう。
低次元の世界は古くて新しい分野といえるでしょう。
1次元の適用は鎖やひも状物質でみる事ができます。
これも超伝導からみの研究が多いようです。
低次元は理論的に考えやすいですが、あくまでも実際の3次元の世界の近似で
す。近似というものは、それが現実をどの程度反映しているかが重要で、た
えず確認が必要です。
どの特性では、低次元の近似が有効で、別の特性では有効でないかの確認が必
要です。全てが低次元的との保証は全くありません。
逆に、特定の特性のみが低次元的特性であれば、全体として新しい特性の物質
といえます。そしてその中には今までになかった、特性が含まれる可能性があります。
新しい材料・特性を求める時に、低次元の考え方を用いる意味は、可能性が高
いという理由からです。
故障
機械は故障するものですが、最近は航空機・電気製品のPSEマークと中古製品等
色々と話題が豊富です。
技術が進歩しても、同時に製品やシステムも複雑化してゆくので、故障・欠陥
問題が無くなる事はないでしょう。
これに対する考え方として、1:信頼性工学・システム工学、2:故障物理・
信頼性物理があります。
前者は、システム的なアプローチで全体から見て故障や非信頼性を極端に言え
ば経済的に合う範囲で抑える方法を探す方法です。
後者は、逆に製品やシステムを作っている個々の部品までおりて、それの故障
原因を追及してゆき全体の故障を減少させる考え方です。
トップダウンとボトムアップとも言えますので、どちらがどうとも言えません
が、前者が現実的あるいは当面では実用的といえるのに対して、後者は良く
いえば本質的ですが原因の全てを掴むという面からは理想的かつ非現実的とも言えます。
他の事とも同様に、どちらか一方ではなく双方のアプローチで進む必要があります。
信頼性工学はしばしば他の学問がそうであるように、第二次世界大戦から始ま
っています。戦争が技術を生むのは残念な事に真実のように思えます。
アメリカで生産した電子製品が、主にアジアで故障が多発したことやそこへ運
搬する間に故障した事の対策が必要だった事からはじまったとされています。
定性的に機能の時間的な安定性を扱う時に「信頼性」という言葉を使用します。
当然ながら、これが定量的(実際は確率ですが)になると「信頼度」という
言葉を使用します。
故障とは、機能を失うことですが、部品レベルで故障してもシステム全体では
機能を維持する事は可能です。
とは言っても、直感で分かりますが全体の故障率は部品単位の故障率のかけ算
になります。製品やシステムが複雑化して部品数が加速的に増えると同時に
故障も増えることが予想できます。
従って、部品単位の故障の少なさ・信頼性は非常に高くないと現在の装置には
使用出来ない事になります。そして、勘や経験のみでは無理で、細部までの
分析と改善が必須となっています。
よく知られている物に「故障率曲線」があります。「死亡率曲線」と呼ぶ場合
もあります。横軸に時間を取り、縦軸に故障率を取ります。使用を始めてか
らの故障率の変化を表したグラフです。
「初期故障期」(幼児期)は非常に故障が高く、しだいに減少します。そして
「偶発故障期」(青壮年期)と呼ばれる故障率が変動しない期間に入ります。
当然ながらこれが一番長いのが普通です。最後に、再度故障が増える「摩耗
故障期」(老人期)にはいり寿命を終えます。
問題はこのグラフは一般に正しい事が経験的に分かっていますが、具体的な数
値が得にくい事です。
製品の寿命は重要ですが、これが実用的に分かる頃には技術進歩でその製品が
使われなくなっているのが普通になりつつあります。従って早期に試験的に
調べる事が重要になっています。
初期故障は、出荷前検査で除く必要があります。このためにしばしば行われる
のが、加速ソートと呼ばれる初期故障を起こさせる検査です。残念ながら、
この作業が、その後の寿命を短くさせる事を否定は出来ません。
故障を少なくする方法は考え方はシンプルですが容易ではありません。
1:部品単位の故障を減少させる。
製品やシステムを構成する部品個々の故障率が小さくなれば、全体の故障率
も下がるという、実行が出来れば最善の方法です。現実は限界があります。
ただ、電子部品が個別トランジスタ等から、集積回路>大規模集積回路へと
部品数を減少する方向に変わっていったように、対応方法はなくはありません。
2:システム設計上で安全度を多く見込むことでも故障を減らす事が可能です。
また特に故障しやすい部分を2重化等の冗長設計する事でも効果はあります。
部品の改良と、安全設計のどちらがコスト的に有利かの問題にもなります。
3:故障するものならば、使用方法でカバーしようとする考えもあります。い
わゆる予防・保全です。これは故障対策ではないとも言えますが、現実には
故障防ぐ方法と考えています。
「予測」は難しいが、故障を技術的に取り扱う時の区切りとなる目標です。
逆にいえば、予測が出来なければ実用性の少ない技術分野といえるでしょう。
しかし当然ながら、全て確率の世界です。
何を予測するかと言えば、「故障率」「劣化」「故障モード・危険度」「保全
性」などです。
どのようなモデルで予測するかは色々あります。
「直列モデル」:システム全体を予測する時に個々の部品の故障率の合成で
求めます。
「偏微分モデル」:名前負けしそうですが、劣化までの各段階ごとの故障の
メカニズムに分けて考える方法です。考え方自体はシンプルです。
「マクロ・ミクロモードモデル」:簡単にいえば、マクロな現象とミクロな
理論展開の双方から攻めようとする考え方。考えは納得出来ますが、実行は
かなりノウハウの積み重ねが必要です。
他にも色々ありますが、考え方はシンプルですが、実際に有用性を持つには色
々な難しさがあります。