項目別バックナンバー[5]:技術情報:9

磁性

磁性は掴みがたいイメージがあります。磁石は親しみがありますが、強磁性体 を扱っている感が強いです。現実は強磁性が一番研究されています。
磁性が掴みがたいのは磁荷(磁気モノポール)が発見されておらず、NとS極の ペアでの扱いになる事にも原因があると思います。
磁性には、色々あります。しかしそこには深く入らずに進める方が分かり易いと思います。
昔から分類されているのは、強磁性・反強磁性・常磁性・反磁性等です。そし て実用的には、強磁性に偏っています。特別に複雑な物質以外はこれらのど れかに該当されます。また転移温度が存在して、温度により特性が変わります。

磁性は奥が深いですが、通常に我々が目にするのは強磁性です。磁性は棒磁石 の小さいものが集まって生じると考える事が出来ます。これの並び方で性質 が変わります。同じ方向に並ぶ結果、強い力を持ちますが、逆に同じ方向に 並び初めて力を持つと異なる方向の磁石も向きを揃える性質があるとも言え ます。 強磁性は、方向が同じ状態ですが、方向が半分ずつ揃うと結果的に磁性力が 外にでません。
ただ磁性は温度(等)で変わります。その温度を転移温度・現象を相転移と呼 びます。強磁性体の場合はキューリー点といいます。
この温度は強磁性が、発生している状態と弱い他の磁性の状態との分岐点になるので重要です。
磁性はミクロとマクロで異なりますので、重要でありながら単純化して説明が される事が普通です。

強磁性は、磁石のNSが1方向に揃ったようなものと表現しました。それならば 磁石のむきは揃っているが、半分ずつ向きが逆で結果として、全体としては 外から磁性が見えない場合もあります。これを反強磁性といいます。これも 温度が上昇すると、相転移がおこり性質がかわります。その温度をネール温 度といいます。
強磁性・反強磁性共に、温度があがり転移温度を超えると常磁性になります。 通常の性質として常磁性の物質は多いです。常磁性は磁石の向きがバラバラ で外部からは磁性が見えない物質です。そして外部から磁力をかけると一部 が揃うので、弱い磁性が発生します。

磁性は利用方法は多岐ですが、エレクトロニクスでの利用が目立ちます。
電子素子としては、ホール素子が有名です。磁性と電流とを結びつけますので 精密なものから、スイッチまで多様です。
次にモーターがあります。基本は、電磁誘導を利用しますので磁性は重要です。 製品の小型化、精密化とともに、磁性を含めた機能を確保しながらの小型化 が急激に進歩しています。
モーターには、円運動をする回転モーター(ロータリー)と、直線的な運動を するリニアモーターがあります。記憶装置で円盤状のものが非常に多いです が、回転する円盤のモーターと、センサー等を直線的に移動させるリニアモ ーターがセットで使用されます。
直線的という表現は、多数回回転しないという意味で、最近は狭い場所や構造 から狭い角度範囲を往復運動するものが主流です。円弧を描いても往復運動 ですので、リニアモーターとして扱います。

磁気記憶は非常にポピュラーです。光等の利用による記憶装置が増えてきまし たがまだまだ重要性は変わりません。
FD、磁気バブル、HDD、光磁気記憶、磁気カード等が代表です。
強磁性が常態では、外部から磁性をかけられることで磁石的に向きが揃う事を 利用して書き込み、書き込んだ所に電流線を近づけると記憶方向に応じた電 流が流れて読み出せる事が基本です。書き込みも読み出しも基本は繰り返し 可能です。ただし、無限ではありません、特に書き込みと消去は磁性の変化 が伴うため材質の劣化が起きますので、制約はあります。
実際の磁気記憶装置では、デリファイ機能で書き込んだものをすぐに読み出し て正常に書き込んだかどうかの確認を行います。不可の部分が増えると、時 間と容量的に性能が落ちてきますが、現実は使用者には分からない程度です。
磁気記憶はその方式から、外部から書き込み磁力より大きい磁性がかかると記 憶内容は壊れます。FDやカードでは、しばしばトラブルがあります。


原子力

現在のところは、原子力は「核分裂」と「核融合」を指します。狭い意味で前 者のみを指す事もあります。兵器で言えばそれぞれ、「原爆」「水爆」に当 たります。平和利用は現在、「核分裂」のみです。
「核分裂」は大きな原子が小さな原子に分裂する時に発生するエネルギーを利 用します。「核融合」は小さな原子が結合して大きな原子になる時のエネル ギーを利用します。
大きな原子としては、ウラン・プルトニウムなどが使用されます。これらは放 射性物質で寿命(半減期)に応じた時間で、放射線をだして分解(分裂)し ます。これの速さを早める物質と遅くする物質があり、双方により速さを制 御します。制御する事で安定したエネルギー(熱)を取り出してタービンを 回す事で電力を得ることができます。これが原子力発電です。熱効率の良い 発電方法ですが、分解したあとに放射性の廃棄物が残ります。これの処理が 課題となっています。

(エネルギー)=(質量)X(光速度) という式は意味は別にしてかなり知 られています>アインシュタインの特殊相対論と共に・・。
原子力が、ウラン等の物質からエネルギーを取り出す事が出来る基礎になって います。そして、この式の元には、光速度一定が前提にあります。これは現 在では実験で証明されたとされていますが、なにしろ微妙な問題だけにかな り意見の対立がありました。
上の式は、例えば原子力発電で、いくらの核分裂材料からどの程度のエネルギ ーがえられるかの計算に使用されます。
現実はエネルギーを熱にして取り出し、熱タービンを使い電気にかえるので、 その変換効率がネックでかなり少なくはなります。
理論的には一番効率が良く、クリーンな原子力の利用が停滞しているのは、リ スク対策が未完成で、技術的に未完成といわざるえません。
地震でダムが崩壊するのと、火力発電が破壊されるのと、原子力発電所が崩壊 する事の比較など議論がタブー的になり、研究が遅れますます危険性が増す と言う悪循環にあります。未完成な状態で普及しすぎた逆作用です。

原子力は、はじめに兵器として開発され(これは多くの例があります)その結 果があまりにも悲惨な内容の為、極度のアレルギー的拒否を引き起こしてい ます。平和利用は、兵器利用よりもはるかに多くの技術力を必要とします。 しかし、原子力に対する拒否感が技術の向上をおくらせ、そのうえ未熟な状 態での見込み発車的平和利用がはじまった為に、完全に悪循環に陥っていま す。技術力の不足と絶対的危険性は異なりますが、危険性を持ったままの利 用が行われてきた為、現在では技術力を含めて課題ばかりが山積みされています。
技術者も人間ですので、拒否感が世間で強い分野には優れた人材が集まらず、 費用や設備も不十分になれば、悪循環が改善される可能性は期待しにくいです。
核分裂で顕在した問題点だけが原因かどうかは分かりませんが、核融合の平和 利用は計画と予測から歩みだしていません。勿論、見込みだけの進展は誰も 望んでいません。

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