項目別バックナンバー[5]:技術情報:25

GPS

GPS(Global Positioning System)は、人工衛星を利用して地球上の位置を正確に求めるシステムです。
多くの高度技術の出発点と同様に、アメリカの軍事用途からスタートしています。現在でも軍事用途が主な目的です。
人工衛星から送られてくるデータは暗号がかかっています。
軍事用途は、アメリカ軍のみ使用可能です。
精度を落としたデータは、民生用途にも解放されています。精度を落としてい ると言っても多くの目的には充分な精度があります。
最初は航空機や船の運航に使用されていましたが、現在はカーナビを中心に多くの民生用途に使われています。
たぶん身近な製品の中で一番高度な技術と言えるでしょう。

測定できる情報は、観測点より1つ次元が下がります。
GPSの場合は、人工衛星が2つの場合は、2地点の距離が分かります。
人工衛星が3つの場合は、緯度と経度がわかります。即ち位置が分かるという 事でカーナビでの必要条件になります。
人工衛星が4つの場合は、これに高さが加わります。ある地点の高度というか 人工衛星からの距離が分かります。 民生用でも必要な情報になりますが、軍事用では必須の情報です。

GPS衛星は、米国防総省が管理しており正式には「NAVSTER衛星」と呼ばれます。
高度約2万キロメートルの軌道面に合計24個以上が配置されています。約半日周期で地球の廻りを動いています。
寿命があり維持する為に、毎年新しい衛星を打ち上げています。
GPS衛星は原子時計で電波で時刻を含むデータを地上に送信してきています。
データは暗号化されていて、アメリカの軍事用途用の精度の高いものと、公開されているやや精度の低いものがあります。

GPS衛星は、複数個が必要で簡単ではありません。
しかし、その能力や有用性は大きいです。
従って、参入する国や団体が増えてきます。
特に軍事用と民生用との使い分けを含めて、アメリカに依存しすぎるリスクは誰しも考えます。
この人工衛星事業とも言える事では、ロシア・欧州連合が独自のシステムを推進しています。
人工衛星技術を持つ国や、経済力のある国に対して参加を求める事もあります。
独自開発か、共同開発か、できあがったシステムを利用させて貰うのか?どれ を選ぶかはかなり将来を見た重要な選択になるでしょう。

GPSを利用した民生機器は急激に広がっています。
しかし、その原理・使用情報(人工衛星)が同じです。
従って、一定のレベルに達するとどれも同じ性能になります。
利用者は別に良いのですが、製造・販売者はいわゆる独自性が一番重要な機能では出す事が出来ません。
この結果、コスト競争か、付可価値競争という本来必要ではない機能の部分での差別化が行われます。
どちらも中心機能が同じのため、大きな差がでません。
最先端技術を駆使した商品では、時々みられるのですが、技術力があるレベル にある会社の製品は、どれも差がないという現象が起きてしかも、それが長く続きます。


ICカード

急激に進歩した電子技術、その結果である半導体集積技術とその産物=ICチッ プの安価化と記憶容量の増加と薄型化は、急激な普及を示しています。
ICチップ自体は元もと薄いのですが、最初はパッケージに封止して使用してい たので厚みがあるというイメージがありました。
その後、テープキャリア等の封止方法の改良と、ベアチップでの使用との組み 合わせでICカードとしての使用が普及しました。
カメラ・携帯電話・ICメモリーカードなど多くのものに利用されています。
そして、クレジットカードや類似カードにも組み込まれています。

ICカードはその厚みが、通常のクレジットカードと同じになった時点で普及し 始めました。それまでは、通常の磁気カードが使用されていましたが記憶情 報量の限界は、大きな制約ですし、複合用途への利用の拡大は困難でした。
インターネットが普及し始めた頃から、ICカードの実用実験が始まりました。 私も直ぐにモニターに申込ました。
既存のクレジットカードにICカード機能を加えて、それ専用の読み込み装置を 実験地域の店舗等に設置するものでした。その頃から基本機能の「金額の読 み込み」「小銭レベルの簡易決済」という機能は同じでした。金額が端数に なるコンビニ等で便利でした。
現在はクレジットカードでも、キャッシュカードでも暗証番号の入力が必要な 事は多いですが、当時はクレジットカードの少額は暗証番号入力は不要で、 ICカードの暗証番号の毎回の入力はやや手間でした。
その後、無接触入力等も開発されて、実用になりました。

ICカードは初期の実験段階から、ICチップの近くのカード表面に読み取り端子 がついていました。基本形状は現在の標準と類似です。
同時に開発されていたのが、カードの周囲(内部ですが)に沿ってらせん状に 配線した磁気センサー配線です。
前者は、接触式で後者は非接触式の入出力端子です。
細部は異なっても、現在と構造的にはおおきな変化はありません。
ICカードはそれ自身と、その情報を読み取るシステムと機器で稼働します。
従来の磁気記録カードと比較して、大容量の記憶が可能で同時に種々の情報も保持出来ます。
原理的には、1枚のカードで多用途対応が可能ですが、システム統合管理・セ キュリティ等の実使用上の問題が課題となります。

ICカードは日々、機能が進歩します。
それは上位コンパチブルで製作されます。
利用者は、どのレベルのカードを使用しているのかはたぶん分かりません。
カードの殆どは、期限があり更新・交換されます。
これは磁気カードの時代からも行われています。カードの劣化対策です。
ICカード化・ICカード機能向上はこのタイミングで行われる事が多いです。
ICカード機能は、通常は余裕を持った設計ですので、ある程度のサイクルで更 新すれば新機能・サービスを始めてもどのレベルのカードでも対応は可能で す。もし不可ならば、エラーメッセージで交換を促す事になります。

ICカードは、運営会社にとっては多くのメリットがあります。
今すぐになくても、将来性は高いです。
従って、利用する側にもメリットが発生するように、システムを工夫して利用を普及させようとしています。
その過程に、技術力の進歩があります。
高容量化・互換性・寿命・コスト・外部インターフェイス・暗号技術・データ圧縮技術などがあります。
現在一番進んでいるのが、非接触タイプでしょう。接触タイプよりもカード認証手順が速いです。
ただ、ICカードになっていても、具体的な利用方法は未定が多いのも現実です。


統計処理

現代は自然科学・社会科学とその応用のビジネスで、アンケートや各種統計処理が行われています。
特に未来予想なるものが、確実性が明らかでないままに一人歩きしています。
統計処理には必ず、誤差・偏差があります。
推計には、間違いの可能性である危険率が存在します。
これらを見る事で、第3者は統計・推計の精度を知る事が出来ます。
勿論、母集団の大きさや、抜き取りサンプルの独立性も同様です。
しかし、それを含めて公表される事は非常に少ないです。

統計処理で一番怪しいのは、データの一番端またはその外を結論にする事です。
統計処理方法にはいくつかありますが、殆どがデータの中央部で有効です。
端のデータが優れていると言う結論は、誤差の観点からは根拠がありません。
それが、データの外を推計する場合は非常に大きい誤差を持つ事を理解する必要があります。
統計で、曖昧なデータを処理する方法に「移動平均」があります。あるデータ の前後のデータも含めて統計処理しますから、端のデータは利用はされるが結果からは消える事になります。
大きな誤差の可能性がある場合に、誤差の範囲を含めた数値・グラフを使用し ない場合・データの端に当たる部分を結論とする場合は、統計的なデータとは言えないです。

統計処理での信頼性は、危険率(間違い可能性)をどのように設定して判断するかです。
安全率が95%、99%では用途では危険率が高すぎる場合もあります。
99%は通常3シグマと呼びますが、4シグマや6シグマの要求が次第に増えています。
そもそも1億に1つでも、可能性がゼロではないとするべき時もありえます。
統計というのは、前提に無作為があります。これは、統計作業者が確保を注意する重要な事です。
単純な誤りミスから人為的な操作ミスまで、結果に影響する事項の無い事の確 認が極めて重要です。調べないで独立な項目との思い込みがミスの原因に多いです。少なくても独立性の検証は不足しています。

統計処理での手法に、定性的なデータを定量的に扱う方法があります。
基本は数学ですから、定量的な事が必要です。
ここで、定性データを定量データに変換する過程の統計的な問題があります。
それは、結果を狂わす・誘導する事が可能な事です。これには、ミスによる事も含まれます。
よくいわれるのが、選択式の設問です。
該当無し・その他があるとそれが増えてしまってデータ量が減少する。それを 避ける為に強制的に選択させる。選択肢の組み合わせで解答者があえて該当しないものを選ばずをえなくする。
という結果です。設問作製者が結果を予測すると起きやすいです。
また、ミスに気がつかない事が多いです。

多変数解析は複数の要因が同時に変化したときに、どのような結果になるかを解析して求める手法です。
未来予測も含まれるので、殆どの事が対象となります。
ただ有用な事ほど要因の数が膨大になりますので、高速化したコンピュータを 使用しても現実的な時間内に解が得られません。
ただ、単純化したモデルを作れば解は得られますし、有用に使用する事も出来 ます。その元はモデルが正しく作れるかどうかです。
モデルの作り方、計算速度の高速化ともに現在の重要なノウハウです。
予測が正しくできれば、その分野を制することに近づきます。

何かの結果を整理するのに統計処理は用いる事は出来ますが、内容によっては 十分な信頼性が得られない事も多いです。
そこであらかじめ、必要な内容を調べる方法が、実験計画法です。
実験計画法は、結果を有効にするのが目的ですからそれが要求する項目があります。いわゆる原則です。
・実験する項目以外は可能な限り同じ条件にする。
・誤差を省くための十分なサンプル量か、反復回数を行う。
・不明な要因の影響を少なくする為に、無作為(ランダム)に行う。反復する 場合の順序もランダムに変える事をも含みます。
実験計画法は最近の表計算ソフトには、ソルバーとして実装されていますし、 マクロによりより複雑な利用も可能です。
ソルバーの元は同じ開発メーカーですので、どの表計算ソフトも同じ機能と言えるでしょう。

表計算ソフトの統計処理機能が向上していますが、使いこなしている人は多く はいないです。専用ソフトの速度には劣りますが日常の統計処理はかなり可能です。
表計算内蔵の関数に「統計関数」があります。基本的な計算とちょっと複雑な 計算が出来ます。始めて使用する時は何に使用するのか分からないものが多 数あります。意味と使用方法を知っている事が前提ですので、一部の人しか使用しないのが多いです。
次に前回にも述べた「ソルバー」機能と、マクロ機能です。簡単なプログラム 的な知識が必要なので少し準備が必要です。
おまけではないですが、結果のグラフ機能も便利です。
これに関する専門書やウエブサイトもあります。

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