項目別バックナンバー[5]:技術情報:5

真空蒸着・スパッタ

乾式メッキ、通常は真空蒸着・スパッタ等を言います。とてもビジネス的には 困難と言われていた物が、技術の中心になりました。今回は予告通りこれを 取り上げます。
ただ、あらかじめ言っておくと「真空」と言うことばは定義が困難です。やや もすると哲学的考察にまで行きかねません。それも面白いのですが、今回は 通常の気圧よりも、桁違いに気圧が低い状態を指すとします。低いだけで、 真空までは行っていません。少なくてもビジネス規模で、真空と言えるまで 気圧を下げる事は困難です。
蒸気圧という言葉が有ります。また、高い山などで水の沸点が下がる事も知ら れています。簡単にいうと、物質の状態は温度と圧力の影響で変わります。 温度で変わる事は、誰でも知っていますが、ほとんどを常圧(地上)で暮ら していると圧力も影響する事を忘れがちです。
液体や固体には蒸気圧が存在して、気体になる性質があります。温度と圧力に より変わります。圧力を下げてやると気化しやすくなります。気化した物は 付近に何か物体があるか、そことの間に例えば電圧等の力が働くと付着しま す。これを利用した物が、真空蒸着です。気化させるものに温度も加える事も普通です。
それでもまだ足りなければ、エネルギーを持った物をぶつけてやる事で気化さ せる事ができます。かなりあらい説明ですが、これがスパッタです。
どちらも研究的には進んでいましたが、ビジネス的には大きな装置を作る技術 や採算性で問題がありました。しかし乾式メッキの要求が強くなると、これ も乗り越えて発展しました。
現実的に、精密で大きな装置を作る所があるのかという疑問は、造船所が対応 力を持っていました。自動車・船舶・航空機等は典型的な大きくて精密な装置です。

蒸気圧が低い物質は気圧を下げるだけで蒸発します。普通はそれでは、不十分 ですので温度を上げる事をします。従って、単純な真空蒸着は乾式メッキを される物質は耐熱性が必要でした。
最近では、融点の低い材料にも乾式メッキを行う様になっています。熱伝導は 1)伝導、2)対流、3)輻射の3方法で起きます。低圧力では、2)対流 は少ないですので、1)伝導の少ない装置と3)輻射を直接受けない熱遮蔽 を工夫する事で可能になっています。
コストの問題は、湿式メッキとの用途の棲み分けと付加価値のある製品への利 用で対策されています。また、真空度があまり必要としない材料や装置の大 型化の対応なども大きな影響があります。
真空度が低くても可能にした方法に、スパッタがあります。真空蒸着が主に熱 を加えて蒸発させる方法に対して、スパッタはエネルギーを持った物質をぶ つける事でメッキしたい物質を蒸発(気化)させます。この方法は、組み合 わせの種類が多く、単純な方法では無理だった組み合わせを可能にしました。
メッキは、物質を付着させますが、それの逆の事をエッチングと言います。物 質を削る事ですが、希望の形状に削る事で多くの用途が可能になります。 通常は、メッキとエッチングの組み合わせで複雑な構造の物が出来ます。ま た湿式と乾式の双方の組み合わせも有用です。 と言うことで次回はエッチングです。


エッチング

メッキがある物質の表面に他の物質を付着させる事にたいして、逆に削り取る 事がエッチングです。
別に全部取り払ってもよいのですが、通常は選択エッチングが行われます。そ こにはマスキング技術が関与します。マスキング(表面保護)された部分は エッチングされず、露出した部分のみが取りのぞかれます。残った部分が、 例えば銅箔では電気・電子回路、酸化物では半導体の絶縁膜、貴金属では装 飾刻印など用途は多様です。
方法もメッキ同様に、湿式・乾式どちらも使われています。いずれも、取り除 いた物質の処理が重要になっています。不要物の処理方法・再生方法なども 研究されていますが環境問題も含めて大きな課題です。
メッキ・エッチング技術は、複合物質を作る上でかかせない技術です。現在で は回路・LSI等の半導体・透明電極など用途はふえても減らない状況です。
原理的には、マスキング+メッキでエッチングと同様の物ができる筈ですが、 技術的には多くの問題を抱えており、研究中の技術に留まっています。


ガラス

物質を、固体・液体・気体に分けますが、プラズマやアモルファスと同様に、 ガラス状態が存在します。
ガラスは実用的にも親しいですが、物理的には固体と液体の双方の性質を持っ ています。分子が固体ほどに整列していませんが液体ほど乱れてもいません。 温度上昇で溶融する時に、通常の固体のような明確な液体への転位温度がな く、ガラス転位点と呼ばれる温度範囲の幅のなかで変化をします。しかも、 ヒステリシスを持ち再現性が低い変化が起きます。
ガラスと呼んでも種類は非常に多く、その性質も多様です。一般生活ではその 透明性や加工性に注目がゆきがちです。しかし、物質の状態を指すときは、 その構成材料によりさまざまな性質を持ちますので、複雑で奥の深い材料となります。
通常は、一部の生活材を「ガラス」と呼びそれ以外を「XXガラス」の様に用途 や材質や性質をあわせて呼ぶ傾向になっているように感じます。

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