項目別バックナンバー[5]:技術情報:10
制御
現代は人間ではなく機械・コンピュータに制御をさせる時代です。従って自動
制御と呼ばれます。
自動制御の基本はフィードバックです。何かの指令を出した後で、結果を見て
(センサー等)、目標と結果の差を求めそこから求めた制御量を、次の指令
にフィードバックします。フィードバックされた指令を新たに加えて、次の
指令を補正します。
この時に、フィードバックする補正量の求め方で、自動制御方法は変わります。
制御=コントロール(controll)の頭文字Cが入っている略号が沢山あります。
最近では、ATC(automatic train contoroll)=自動列車制御装置が話題に載っています。
制御は、目標との差をどのように処理してフィードバックするかが問題です。
基本的には、比例制御(p)、微分制御(d)、積分制御(i)、の組み合わせでお
こなわれます。比例=1回の差、微分=差の変化の大きさ、積分=差の累積
を使用する事で考え方は普段よくやっている内容です。
注:ATS(automatic train stop)=自動列車停止装置はATCの機能限定タイプで
す。自動制御ですが、無人では運転はできません。
比例制御(p)、1回の差とは直前の設定値からの狂いのみで設定値に近づける
方法です。単純ですが、基本です。欠点は異常値に弱く、急激な変化で制御
される事になります。
微分制御(d)、差の変化の大きさとは、急激な変化の時は強く設定値に近づけ
緩い変化の時は弱く近づけます。直前のみのデータではなくもう少し前のデ
ータも使用します。なめらかに制御しますが、急激な変化に追いつけにくい
面も持ちます。
積分制御(i)、差の累積とは設定値との差の累積がゼロになる様に制御する方
法です。長い時間のデータを使用します。よりなめらかな制御ですが、設定
値からの誤差がプラス・マイナスで逆になった時に希望しない制御になる場合があります。
用途によって、使い分けるというよりも全てを組み合わせて使いこなすのが標
準です。コンピュータはそれを容易にしています。
自動制御は、シーケンス制御が中心でしたが、電子化されてコンピュータ制御
になってより一層進歩しました。電子素子自体が制御用の性格をもっていま
すし、コンピュータの最も得意とするのが制御だからです。
コンピュータといっても、人間用のパソコンとは異なります。現在の家電品で
マイコンチップを使用していないものがほとんど無いと言われるように、チ
ップコンピュータと少量の追加部品です。逆に、目にあたるセンサー機能が
重要です。そして、結果を反映する機能があります。電気をオン・オフする
のは一番簡単で、温度ならばヒーターや電子冷却(ペルチェ効果)、機械動
作ならば数々のモーターの動作が必要になります。
この機能が全て自動になると、いわゆるロボットとなります。センサーという
目を持ち、コンピュータ知能を持ち、モーター等の駆動機能を持ちます。
ロボットの実用化は自動制御の目標のひとつです。
話題を変えて「ファジイ制御」を取り上げたいと思います。これは過去や通常
の自動制御からは全く異なる所から出発しています。
人間は時として誤りますが最大の制御機能を持ちます。しかしその制御行動は
複雑で通常の自動制御では扱えない分野でした。例えば、熟練工の動作をロ
ボット等に学習させる「エキスパート・システム」が発達しています。どち
らかと言えばこれに近いと考えられます。すなわち理論より実用面が先行し
ている感があります。
ファジイ制御は、あいまいさを持つ制御方法と言われています。非常に複雑で
本質がなかなか掴めないために、結果としてその様に感させます。基本的な
方法は学習等で、条件分岐を沢山組み込み、制御が必要な時はその中から一
番合っている条件を選んで正しいと思う方向に分岐します。結局人間が成長
に伴い経験と学習で学んで行動を選ぶ方法と同じと言えます。
条件分岐(if--then)とそのデータベースは、コンピュータの最も得意とする
分野です。ファジイ制御はコンピュータ時代に初めて成り立つとも言えると思います。
電池
現在は携帯・モバイル化が進んでいます。結果として電池の使用が拡大すると
共にその性能や種類も拡がっています。
電池には、1次電池(1回使用)と2次電池(充電式)があります。後者が基
本ですが前者の使用も多く、双方が改良・発達しています。
昔は、円筒状と箱形が主体でしたが、現在は小型化にともなって薄型の要求が
広がり、ボタン型が増えています。またノートパソコン用のような大型の充
電式のものもあります。
コスト重視から、形状や能力重視の要求もふえたために、鉛電池・ニッケル水
素電池・ニッケルカドミウム電池などからリチウム系などの高級電池の普及
がめざましいです。
充電式には寿命がありますが、こちらも改良が進んでいます。小型用途を中心
としてその重要性は変わらないと思いますが、異なるタイプの電池の開発も進んでいます。
電池といっても全く異なるのが太陽電池です。普通の電池が化学反応を利用し
ているのに対して、太陽光を電子素子で電気に変換します。一般にクリーン
エネルギーと呼ばれる理由です。
電子素子は通常は、単結晶を使用しますが高価です。面積の必要な太陽電池で
はコストがあいません。従って主流は、薄膜アモルファスシリコン-hと呼ばれる材料です。
太陽光が当たる面積を広くして、材料費の効率もよくすると薄膜になります。
アモルファスは、狭い範囲では単結晶的な性格で全体的には分子の並びに欠陥
が多い材料です。しかし製造コストの安価な事と薄膜が作り易い事から使用されています。
-hとは、不純物を含むと意味でこの不純物で半導体としての性格が決まります。
太陽電池の目標は、光を電気にかえる効率を上げることです。つまり、太陽電
池の製造コストより、寿命の期間内に発生させる電力のコストが上回る事で
す。これによって太陽電池のトータルコストがプラスに変わります。この状
態になれば用途が急激に拡大すると予想されます。
クリーンなエネルギー発生機構に、燃料電池があります。電池という言葉にと
らわれる事はやや問題ですが。化学反応を利用しますので電池と呼んでいます。
水素と酸素を反応(燃やす?)させれば、水ができますがその時にエネルギー
が発生します。それを利用しようとするものです。
特徴は、何といっても廃棄物が水という無害なものである事です。多くのエネ
ルギー発生機構ではその廃棄物の処理が大きな問題となっています。
地球では、酸素は空気中にありますので、水素の保管が重要な技術となってい
ます。制御されなければ危険な爆発物になりかねません。気体か液体かも問
題です。液体での保管は低温の問題があります。
現在は自動車用途の進歩が目立っています。低公害車の開発は極めて大きな競
争ですし、電気自動車と共に注目を浴びています。(ハイブリッドカーもあ
ります)。電気自動車・燃料電池自動車共に、ガソリンスタンドに相当する
充電設備・水素補給設備が必要です。これらも大きな問題です。