項目別バックナンバー[5]:技術情報:42

リニアモーター

リニアとは直線という意味で、回転=ロータリーの対義語だ。
モーターは多くは、ロータリーモーターの事で回転型だ。
非回転型を、リニアモーターと呼ぶ事が多い。
直線とは非回転との意味なので、曲がっていても関係なく、同じ位置に回転で戻らないという意味だ。
モーターを位置決めに使用する時は、XとYではなく、回転角と1軸の位置を使用する(角座標)。
モーターでは、ロータリーモーターとリニアモーターの組み合わせだ。
ただし、例えば現在のハードディスクではリニアモーターとして、ロータリーエンコーダを使用する。
これは、回転角に対応する1軸の位置を決める物で、形はロータリーだが機構はリニア方式だ。

ロータリーモーターの電気的構造は、電流方向で磁場発生方向が変わり回転方向が変わる、等速度回転にみではシンプルで高速を目指す。
起動時の力と逆回転防止機構が電気的な課題だ。
後は機械的な寿命と、全体の電力効率だ、無駄があると熱になるので放熱が問題になる事もある。
位置のコントロールが必要になると、多彩な仕組みが使用されるが初期とその後の仮想高速化ではかなり異なる。
リニアモーターは原理的にシンプルだ、基本は2本の電源線で動作する。
位置決め目的なら、稼働範囲内の長さが通常必要で、軽いと精度が上がる。
これを長く繋げると、長距離の移動にも使用出来る、現在注目されているのはその目的だ。

リニアモーターは、言葉の通りに回転運動ではなく往復運動のモーターだ。
位置決め用途と、何かを移動させる用途に使用される。
ハードディスクでは、書き込み・読み出し素子の位置決めと目標場所への移動を行う、媒体が回転式の記憶装置は軸方向の位置決めに使用する。
ロータリーモーターと同様に放熱や、静止や駆動に力が必要で動き出しから、定速移動と静止の過程で台形型の移動負荷曲線を持つが、往復距離が短い時は完全な移動負荷曲線にはならない。
移動距離の少ない位置決め用途と、安定動作時間部の長い移動用途では、移動負荷曲線の重要部が異なり要求性能も大きく異なる。

リニアモーターに求められる事は、原理原則はロータリーモーターと同じだ。
移動用のリニアモーターの歴史は古いが、一般の知名度が上がったのはリニア新幹線計画だろう、超伝導を利用してロスの少ない浮上駆動方法の開発の、大幅な速度向上の交通機関設置計画だ。
現在の主流のロータリーモーターでの駆動方式を使用せずに、リニアモーター使用には浮上させて非接触方式とする意味が強く、電気で実現するにはリニアモーターが適している。
ロータリーモーターの回転に伴うエネルギーロスは原理的には、減少する筈だが新技術故に越える課題は多い。

モーターの敵は摩擦だが、ロータリーモーターではその面積は限られる。
一方では、リニアモーターでは長さだけ影響する。
リニア新幹線計画では、電磁誘導ロスを無くす為に超伝導物質のコイルで電磁誘導を発生させる、走行時の接触摩擦を避ける為に車体の浮上走行を行う。
しかし、線路に相当する設備は運行区間だけ必要になる。
また、超伝導状態にする事にエネルギーが必要になる。
電気エネルギーは自動車等にも使用されつつあるが、モーター方式は電気エネルギーの使用方式の代表だ。

モーターの多くは電気モーターであり、その方式上で磁気・電磁誘導との関係は避けられない。
電場・磁場は自然界にも存在するが、人工で作るものは強度が高い時に有効利用が可能になる。
その様な強度の大きい電磁場の生体への影響は歴史的に短いので、充分に研究されてはいない、特に長時間の時の影響は推測を越えられない。
現在開発中のリニアモーター方式の高速鉄道でも、強磁場の影響は実験出来る範囲の対応とならざるを得ない。


小型部品

完成商品の小型化については、取り合えず否定する人が居る。
存在しない物がイメージ出来ない事や、現在で不便を感じないという理由が殆どだが、過去の進歩の激しい商品・・例えば電子関連ではそれは絶えず、裏切られて来た。
完成商品の小型化について否定的な人の多くは、構成部品の小型化については考慮していないようだ。
小型部品には、材料費や量産コストや消費電力や廃材・廃品処理など多数のメリットがある。
ただし、殆どが完成商品の量産が前提になり、技術開発と商品(部品)開発の間に微妙に食い違いは生じる。

最終製品は主に人が使用する場合は、その間のインタフェースが必要で適度のサイズが存在する、それ故に小型化に否定的な意見も生まれる。
ただし、製品のインタフェース以外の部分は、小型化>軽量化>高密度化>省電力化等のメリットが期待出来る。
小型部品の製造技術は、想定したメリットと同時に新たなメリットも生む可能性が有り、それ故に継続して技術革新が行われている。
最も顕著な例が電子素子で、個別素子>複合素子>集積回路(IC)>大規模集積回路(LSI)と進んできた。
機能と性能の向上と、小型化を同時に達成しコスト的にも、下降方向で維持してきた。
結果として、多方面で利用が進んだが、部品製造者・最終製品製造者の全てが収益を確保は出来なかった。

小型部品を製造する技術には、製造装置メーカーの力が大きい。
装置開発は、受注生産と一般開発からの拡販がある。
前者は、部品製造者・最終製品製造者等のどこかから需要が出て来ないと進まないが、具体的になる頃には逆に短い納期が要求され、しかも販売権が制約される事もある。
共同開発という言葉を使う事もあるが、権利も共有となれば製造装置メーカーにはリスクが減るが拡販の可能性は少ない。
製造装置メーカーがマーケティングから開発して、製造メーカーに売り込むのは展覧会や工業技術展などが主体になるが、需要とマッチするのは現実には難しい。
早すぎる先端技術が必ずしも成功しないという、厄介な現実もある。

小型部品は個々の製造と共に、使用装置や取扱を考慮した納入形態が切り離せない、手で取り扱え難い小さな部品をバラで納入されても数量確認も容易でないし、実使用も出来ない。
小型部品は、現実にはロボットというか自動生産装置で使用するのが前提となり、それに対応した納入形態が必要になる。
部品は単独で使用される事は少なく、多種のメーカーから購入した多種類の部品を同一の装置で扱う事が要求されて、自然に納入形態が複数の規格に統一される。

部品の歴史は、小型化と集積化の繰り返しで進んだ過去がある。
小型部品は絶えず、集積回路等に組み込む事を狙われる。
集積回路等に組み込め難い部品が、単独部品として生き残って来た。
集積回路の材料と機能シュミレートでは実現出来ないものだ。
ならばと、1部品形態に多数の部品が組み込まれたものが要求されて、製造される方向もある、どこかが実現すると他のメーカーが追従できないと独占される。
組み込まれた機能で見れば、それもまた小型化と言える。

家電製品を含む電機産業と半導体を含む情報産業は、大型化・大画面化と小型化・モバイル化で進んで来た。
生活空間の狭い日本では、大型化の無関係な人が人数的には多く、キーボード文化に慣れない高齢者を中心にした人がやはり人数的に多いという実状がある、そしてその人には仲間を集めたい風習・傾向がある。
日本の高度成長が上記産業絡みで進み、無関係な人は少ないが、現状の頭打ち状態も絡み、多い批判が日本の将来に役に立つかの錯覚に陥る。
技術開発が部品や製造技術で、最終製品が圧倒的に少ない状況と、安いが優秀な労働力と教育レベルが製造面で優位をもたらしたが、利用面では全てが恩恵を受けていない実状が間違った批判を起こす。
既に存在しない安い労働力や高齢化問題に逃げる事無く、優秀な部品製造技術や製造技術の生かし方へ考えを替えて行くべきだ、安易な小型化批判は日本の優れた強みをも捨て兼ねない。


自動車

自動車という複雑で多機能な商品が、高価であっても市販され膨大な数量が普及している事は現代の奇跡と感じる。
科学や技術には、大きな進歩は戦争や軍事で起きると言われて来た、費用対効果に制限されない開発が進歩をもたらす意味がある。
絶えず費用対効果を要求される民生分野では、同じレベルは無理だが市場と関連分野が大きければ、費用対効果に制限されながらも科学や技術に大きな進歩をもたらす開発ターゲットになり得る。
交通関係はその1つだが、個人使用での普及という面では自動車産業の存在は大きいし、その動向や将来性や技術開発は殆どの産業が注目しているし、科学・技術的にも注目される。

自動車は不思議と、先進国では競合メーカーがある。
日本でも同様だし、統廃合も多い。
そして国内需要だけでなく、海外生産や輸出も多い。
先端技術の集まりだけに、海外が絡むと輸出管理令絡みで法的なバックアップ部署の存在が必要と予想される。
また、重要部の関連企業での生産や、部品・材料購入先の調査や密接な関係が目立つのは機密保持も含めて、その高度性を示す。
販売国で仕様が変える事は普通だが、部品が変わる事も事情で有りうる。
とにかく、機密で一杯という産業で関係会社や協力会社の系列を作り上げる事が巨大化や大量生産には必要だ。

自動車は商品としては高価だが、販売数は大きい。
使用部品や関連産業も広く、新商品をモデルチェンジでも出し続け、それと併行して中期・長期計画で大幅な技術革新を目指す面も強い。
模型実験や、風洞実験やテスト運転等の導入も早い、次ぎにコンピュータ化も商品にも製造にも設計にも早く導入した。
コンピュータ・グラフィックや3次元プリンターで、デザインや模型実験を置き換える試みは一番に対応する分野だ。
それでいて、人命に関わる商品でもあり、安全を含めた性能・機能は絶えず注目される、化石燃料依存の製品だったが、もはやそれに限定されない競争に入った。
基本原理の化石燃料エンジンを代える物は簡単にできないが、代替技術や改善技術は開発競争の最中だ。

自動車の技術革新は多いが何に注目するかで異なる。
エンジンと操縦システムが代表だろう。
エンジンは、化石燃料依存時代が長く現在も変わったとまだは行かない。
最近は燃費と排ガス規制とが大きな課題で、エコカーと呼ばれる自動車の開発競争が激しい。
燃費の最小化に取り組む方法、化石燃料以外の動力の開発が競いあう。
化石燃料でも水素でも電気でも、補給基地となる場所とシステムが必要だ。
現在普及前の物で補給基地の少なさを問題にしても、長期的には意味はない。
自動車には多様な種類と用途があり、一気に全てを変える事は期待しにくいが部分的に変わって行く事は充分に期待出来る。

自動車の操縦システムは、運転免許制度が出来て標準化が必要になった。
自動車の類似機種で操縦システムが異なると、運転免許制度は成立しなく、同時に社会的な普及も制限される、運転可否が不明では購入は慎重にならざるを得ない。
ただし、完全互換ではなく、人間が対応可能な差はある。
例えば、クラッチの切り替え回数でありその発展形の、オート切り替え方式だ。
パワーハンドルや、クラッチの位置など応用で対応範囲で差は作られた。
外国からの左ハンドル車の輸入も同じ扱いと言える。

自動車のエンジンと操縦システムを同時に変える、新規エンジンの開発競争が盛んだ。
全て、燃費とコストと廃棄ガス規制とを同時に要求内容に変えるための試みだ。
その要求は、暫定・中期・長期と多く、メーカーは多様な戦略で対応し、優位性の確保競争が激しい。
国で異なるが、普及補助金や社会インフラの見直しまで含めて注目している。
多様なアプローチのどれが残るかが判れば、勝利に近づくがそれの判断はいつになるかも知れない、まさに一長一短なのだ。
最近はアメリカでの、ディーゼルエンジンの審査不正問題が発生している。
これも同じ問題に対する不正だ、エンジンの問題を操縦システムのコンピュータ・ソフトで不正に誤魔化した内容だ、2要素が切れない両輪と判る。

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