項目別バックナンバー[5]:技術情報:24

冷凍

現在は冷凍食品をはじめ、冷凍技術が色々な用途で実生活に利用されています。
温度という環境が色々な物質に大きな影響を及ぼす事は、人間にとっては理解 出来る事ですが、具体的には未経験の温度領域も含まれます。
まず温度を如何に下げるかの話になります。
熱力学(熱統計力学)では、エネルギー保存法則・エントロピー増大法則があ りますがいずれも温度が関係した平衡状態とその移行を表します。
従って、それに関わるものを変化させるとそれに応じて温度も変化します。
その温度変化が、下がる方向であれば低温を作れます。
何を変えるかは、効率の問題で種々あります。物質にもよりますが、圧力・磁気等の物性など多数あります。
ただ、エントロピー増大法則によって平衡状態を移行させると、温度の発生等 でエネルギーのロスが生じます。
従って、エネルギーロスなしには低温は作れないと言う事です。

低温を作っても、周囲の環境を含めた平衡状態ではエントロピー増大法則で温度上昇が起きます。
考え方としては、作った低温をより低温にする部分と、その周囲を冷やす部分 に分けます。後者で前者を冷やします。
これで、最初と同じ条件に戻り、同じ操作でより低温が作れます。
ただし、誰でも分かる様に次第に「目的の低温部」は少なくなります。
低温作製と保温の技術が劣ると、実用的な体積の低温を作る事は困難です。
目的温度によって、製作コストは変わります。これは当然です。
冷凍といっても、使用温度別に分けて考える必要があります。

低温・冷凍はその使用温度で区分されます。
それと水分を含むものと、それ以外で異なります。
冷凍は冷蔵とことなり温度が低いと同時に、冷凍する物質に含まれる水分が氷 結してそれが成長して冷凍した物の組織を破壊する事を防ぐ事も含みます。
水分の氷結と成長は、温度がゆっくりと下降する時に生じます。
従って、水分を含む物の冷凍は急速な温度低下で、行う必要があります。
その時は、目標温度より余裕のある低温と充分な熱容量がある環境が必要です。
どちらが欠けても実際の冷凍過程は、ゆっくり進み氷結が発生します。
例えば食物や生物では、細胞の破壊で死や腐敗が起こります。
逆に、低温では細胞の破壊で死や腐敗の速度が遅くなります。冷凍は腐敗が激 しい物の長期保存が目的となります。

低温・冷凍環境をシンプルに得る方法として、量産の低温材料の利用があります。
具体的に多いのが、「ドライアイス(固体二酸化炭素):-79度摂氏で固体 から気体に昇華」と「液体窒素:-196度摂氏で気化」です。
どちらも量産化されており低温剤として大量に使われています。
どちらも大気中にある気体ですが、気化したときの大量の濃度上昇は注意が必要です。
このふたつの温度は低温の目安となります。ただし、この中間の温度の低温剤 が要望されているという事も事実です。
特に液体という利用性から液体窒素は、より低温を求める時の出発温度や設備環境として重要です。

食品の冷凍保存の面からいえば、-18度摂氏以下で1年以上が目安とされてい ます。これは微生物等による腐敗からみた目安です。
この温度をもっと低くすると寄生虫の死滅という事も可能です。
家庭での冷凍・解凍方法・機器の普及と、冷凍商品の普及が広がっています。
冷凍商品の製造費用+冷凍保管費用+解凍調理費用と、従来の家庭での調理費 用の比較は、関係メーカーのいう調理の省力化になるかどうかは商品でも異なり単純ではないでしょう。
もうひとつの、鮮度の確保という面からは明らかに有効です。
最近の業務用の冷凍食品の増加を見ると、コスト面でも有利ではないかと推測できます。


人工衛星

最近、人工衛星の話題がいくつかあります。
スペースシャトルでの長期宇宙滞在。
人工衛星の、宇宙での衝突と破片等の多い危険地帯の存在。
人工衛星の実験か、ミサイルの実験か? 等。
衛星は、惑星の周囲を回る物体です。
地球では、自然物は「月」ですが、人工の衛星はすでに無数に近く発射されています。
その内で周期軌道にのり、有用な機能を持つ物を人工衛星として認識して来ま したが、廃棄されたものも宇宙空間に残りやはり衛星といえる状態である事 が、人工衛星同士の衝突で多くの人に理解されました。

惑星のまわりを回るのが衛星ですから、通常は地球の周囲を回るものを指しま す。ただし、惑星探査機で送られて他の惑星を周回すればそれも人工衛星です。
人工衛星は、目的を含めて多数の技術の蓄積で可能となります。
最初は、大気圏の外に送り出すロケットの技術です。宇宙に飛び出してからも 姿勢制御をはじめに推進力は必要ですが、地球の重力から脱するためには、 多くの推進力が必要です。
その多くは大気圏外ですので、ロケットになります。
ロケット技術は、軍事用途とも密接ですので、最初は宇宙開発競争が行われま した。人工衛星自体が軍事用途としても大きいですし、その技術は軍事用のロケット技術にもなるからです。

ロケットにより打ち上げられた人工衛星は、予定された軌道に予定の姿勢でせる事が次の課題です。
いわゆる遠隔操作技術・自動制御技術・姿勢制御技術です。
人工衛星はその目的により、軌道高さ・周回軌道・姿勢等が精密に要求されます。
通常は軌道高さが変動しにくい円軌道に近い要求が多い。
地球の自転と人工衛星の公転周期が同じの通常は「静止衛星」と呼ばれるもの。
太陽光を電源として受けながら、電波等の受発信を行う「通信衛星」。
周期ごとに、軌道が規則的にずれて複数周回で地球のほぼ全域をカバーする「偵察衛星」。
いずれにしても、精度が必要です。

人工衛星はその目的に合わせた軌道を取る必要があります。
ただし自然の衛星は、惑星と衛星の質量(引力)とバランスが取れた軌道に存 在します。それ以外は、惑星の引力からのがれるか、引き寄せられて衝突するかになります。
人工衛星は、必要な軌道に合わせて質量を決める事は出来ませんから、軌道維 持や制御はロケット噴射等のエネルギーを使用して行います。
宇宙で人工衛星にエネルギーを供給する手段としては、短期的には燃料搭載で すが、長期的には太陽電池の利用と、小型原子炉の搭載になっています。 比較的に高い軌道の静止衛星や通信衛星は、太陽電池を利用します。
一方、低い軌道で地球の引力に逆らう必要がある軍事偵察衛星では、原子炉が使用されます。

静止衛星の用途は広いです。
静止といっても、地球から見た位置が静止しているという意味で、実際は地球 の自転と同じ公転周期を持っています。
その軌道高度は人工衛星の質量にもよりますが、かなり高くなります。
静止衛星は、通信用途には欠かせません。
また、GPS機能が民生用途で使用される時代になりましたので、単に海底ケー ブルの代用ではなくなっています。

偵察衛星は、地球の映像を映しますが解像度の高さが勝負です。
そのためには、地球に近い低い高度を周回する必要があります。
同時に、広い範囲をカバーするために軌道は変則的でかつ公転周期も早くなります。
その解像度の高さは、新聞等でも一端はわかりますが、最高機密の部分は不明です。
地球の引力に引き寄せられて使用不可にならない為に、自身のエネルギーで高 度を維持する必要があります。
それ故に原子力搭載となります。
寿命が来ると廃棄になりますが、その処置はかなり問題となっています。
宇宙に原子炉を廃棄する可能性がありますので。

古くから構想されていて、いつ実現するか未定なのが「太陽発電衛星」です。
太陽電池はクリーンエネルギーとして徐々に普及しています。
それならば、宇宙空間で大規模に太陽発電を人工衛星で行って、エネルギーを 地球に送電する事を考えます。
地球上にエネルギー資源がなくなれば、宇宙に求めるのは自然な発想か、安易 な資源浪費の末なのかは考え方次第です。
ただ、現実に研究はされており、エネルギーの枯渇と宇宙工学の進歩とが重な って、少なくても技術的な検討は進んでいます。


熱伝導

電気伝導と類似の考え方で多くをシミュレートできるのが、熱伝導です。
熱エネルギーが物質中を、移動する現象です。
物質の種類によって、熱を運ぶものが異なりますので、電気伝導と異なる場合もあります。
電気伝導は、電子という電荷を運ぶものがどのように移動するのかで決まります。
多くの金属では、熱を運ぶのは電気伝導と同じように電子です。
この場合は、「電気伝導が良い物は、熱伝導も良い」という事になります。科 学的には「ヴィーデマン・フランツの法則」と呼ばれます。
これに従う物質はかなり多く、一般的な現象と覚えている人も多いでしょう。

電気伝導と異なるメカニズムで、熱伝導が行われる場合は金属のような導電体 以外にも熱伝導のよい物質はあります。
多くは、電気伝導の悪い絶縁体でありながら熱伝導が優れる物質です。
これらは、電子ではなく音子(フォノン)・格子振動が、熱を伝達します。 熱伝導の絶対値的には、電子伝動が主流の物質の方が、熱伝導効率は高いです。
固体の熱伝導は、電子・音子ですが、液体や気体はまた異なる機構で熱伝導が 起きます。これは次にします。
熱伝導は、温度により変化します。
当然ながら、熱伝導の機構が異なると温度による変化(温度係数)も異なります。

熱伝導は一応は、方程式が以前から存在しています。ただし、他の方程式と同 様に特殊な簡単な例のみしか解は得られません。
殆どの実用的な場合は、近似的な解・いわゆる摂動解になります。この様な解 さえも簡単ではありません。
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熱の伝わり方には、3種類あります。
1:伝導
2:対流
3:輻射
です。
このうちの1:熱伝導さえ解けないならば全ての合わせた解析は無理に見えま すが、現実は実験レベルで定数を求めた近似方法があります。
異なる対象の方程式の類似性の利用です。

自然科学の基礎方程式は、分野が違っても類似性があります。
例えば、基準に利用されるのが電気関係の式です。電流・電圧等。
力学の式も、基本は同じです。
単純な基礎的な式は、同じ構造をしています。
熱伝導も同様です。
従って、電気等の式に置き換えて考え、現れる定数を実験的に求める方法が、かなり有力な手段です。
実験で求める事で、近似値を求める体制になっています。
伝導・対流・輻射を同じ扱いで、組み込めます。
数値計算方法が、他の分野を含めてかなり多くあります。
そして、電気回路というシュミレート方法もあります。

電気回路のキルヒホッフの2法則は広くしられています。
1:1点で見ればインプット電流とアウトプット電流は等しい。
2:内部に電圧源(電流発生源)を含む場合も、その閉じた系では電流の損失は無い。
エネルギー保存の法則の別表現とも言えますので、電流以外でも成立します。
熱の流れに置き換えても成立します。
熱伝導は単純な場合はいくつか、解析方法はありますが近似解を得るにはよい方法です。
熱対流は、自然対流や強制対流時の実験データを使用すれば近似的に熱伝導と 類似に取り扱いが出来ます。この場合は温度差が変数です。(注:温度は基 本的に絶対温度です。摂氏ではありません。)
対流は流体力学ですから、ストークスの式をコンピュータで近似解を求める方 法が進んでいます。精度を求め、コンピュータ環境があれば使用する選択もあります。
熱輻射は、有名な絶対温度の4乗則に従います。室温附近では、伝導・対流と比べて影響は少ないです。

リチウム電池は、発展途中で機能・安全性・コスト等の改善がされてゆくでしょう。
実用面ではしばらくは主流でいると思われます。
ただ、異なる方式も開発・改善されていますので、長い目で見るときの予測は 難しいのが電子産業です。
具体的には太陽電池・燃料電池等があります。
最近注目されているのが、燃料電池です。既に試作品の発表はありますが、量 産までには時間がかかるという見通しが多いです。
当面、機能とサイズはリチウム電池と同等を目標としているようです。
リチウム電池はまだ長い期間の、使用実績とデータの集積が不足しています。
これらが徐々に積み重ねられてきました、そこへの新製品の参入は、リチウム 電池を超えるメリットの提案が必要になるでしょう。

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