項目別バックナンバー[5]:技術情報:4

地球物理学

物理学の中心は、素粒子と物性でした。しかし、現在はその領域を拡大してい ます。対象が大きい方は「地球物理学」「宇宙物理学」などと呼ばれていま す。地球物理学は初期は「地学」の1部門に入れられていましたが、現在で は重要な分野となっています。
1960年代の終わりころまでは、地球は堅い動かないものと考える人が主流 でした。しかし1970年はじめから、大陸移動説が正しいと考える人が増 え、主流となりました。従ってまだ新しい分野と言えます。
この変化は色々な知識の蓄積からの整理の形で行われました。その一つが太平 洋の海溝です。そして、そのいくつかが日本列島にそって存在します。これ は偶然ではなく、しかも日本に地震が多い事にも繋がります。
大西洋の中央の溝や、世界の岩石の年代測定が進むにつれて、それがわずかず つ一定の方向に移動している考えを生みました。大陸移動説です。そして次 に地球内部からしみ出す所と、移動の結果として二つがぶつかり、片方が地 球内部に沈みこむ所が存在する事です。地層の対流説です。
ふたつの地層がぶつかって、片方が地球内部に沈む事が穏やかに行われる訳が ありません。そこでは大きな歪みが発生して地震の発生の原因になります。 太平洋では地層の動きは、東から西で地層の衝突は、ユーラシア大陸との間 で起きます。そこはまさしく日本列島のそばです。
駆け足で、大陸移動>地層の衝突>地震、そして日本列島の位置について述べ ました。次回はもう少し、細部を述べたいと思います。現在ではニュースで も、普通にXXプレートとかプレートの衝突とかでてきます。地層ではなく プレートと呼んだ方が分かりやすいかもしれません。

大陸移動は最初は地図の大陸の重ね合わせからはじまったと言います。大陸を 動かすと、かなり隙間無く重なってしまいます。
現実には地層の年代測定技術の発達により、具体的になりました。そして、地 下からマグマがしみ出す所と、プレートが溝に入り込む部分の存在の発見で 現実的になりました。太平洋の島を見ていると1列に並んで見える所があり ます。これは、海底火山の噴火によって島が出来た事を示しています。噴火 は時々しかおきませんが、プレートが動いているので、1列の別の部分に次 の島が出来るのです。
日本はユーラシアプレートに属し、移動して来た太平洋プレートがこれに衝突 して、地下に潜る部分が、日本列島の太平洋側直ぐにあります。まさに、地 殻変動が起きやすい部分です。
プレートがぶつかると大きなエネルギーがたまりますが、それが一度に吐き出 された時に地震が起きます。
プレートの移動は非常にゆっくりしたものです。従って昔の映画等の様に急に 島が沈む可能性は少ないです。小松左京氏がこのプレート理論を基に、日本 をゆっくりと時間をかけて沈めたのが小説「日本沈没」です。

火山と地震は、地殻変動やマグマにたまったエネルギーを放出する事に共通点 があります。そして、同じ地域に多いといえます。
日本はこの二つが多い事で有名です、通常面積比率で平均より100倍多いと 言われています。前回にも述べたように、これらが多い所は限られています。 地殻の移動から見て、マグマが地下から上がって来るところと地下に沈んで 行く所です。日本の太平洋側にある海溝が地下に沈んでゆくところです。
大陸移動説はまだ新しい説ですし、地震の詳しい測定も同様です。しかし火山 の噴火記録は大きいものは有史以来から記録がみつかります。そして、火山 ・地震・地殻変動(上がる・沈む)の分布が一致している事が分かると、大 陸移動説の傍証にもなりますし、火山噴火予知と地震予知の研究に共通点が あることが分かります。
ただ、地殻のエネルギーの放出ですので大きな活火山のある所では、大きな地 震は少ないとの研究もあります。ただ地域ではなく、特定の場所ですので日 本全体が、どちらも多い事には変わりはありません。火山の噴火に伴う小型 の継続的な地震は多くあります。


メッキ

元々は冶金として、金属の皮膜をかぶせる技術分野があります。メッキはその 厚みが薄いイメージがありますが、最近は湿式のみを言う場合が多いようで す。乾式は蒸着やスパッタ等でここでも別に取り上げたいと思います。
湿式でも、電解電気メッキと無電解メッキに分かれます。無電解メッキは可能 性は非常に高いですが、その安定性から工業的にはまだ制約が多いです。
結局、一般的にメッキとして認識する人がおおいのが、電解メッキです。これ は2枚の電極の間に電圧をかけて、液中成分または片方の電極成分を他の電 極に付着させるものです。このように書くと面状にしか出来ないと思いがち ですが、バレルメッキ等で例えばかごの中に入れて凹凸のあるものにメッキ をする事も多く行われています。
メッキの下地は基本は金属ですが、予備処理によって電気をながさない物質に もメッキする事は可能です。
メッキは、装飾用途や電子部品・回路の表面処理・改質・保護などが主な用途 です。メッキは理論的にもかなり研究されていますが、工業的には経験やノ ウハウによる職人芸の部分が多くの比重をしめています。
筆者は化学専攻では有りませんが、縁あって長く関係してきました。その結果 得た知識は文献等にはほとんど書かれておらず、詳しいはずの化学専攻者に も理解できない内容が多かったです。現在は環境・公害等の問題もあり、乾 式が発達してきていますが、コスト面などから完全に廃れることは当面ないと思います。
個々の具体的な種類等の話しは、次回へ。

電解メッキは、電位差のある電極(+、ー)に電圧をかけて電流を流して片方 の電極物の表面に目的の物質(通常は金属)を付着させます。この時、電極 が浸かっている液体の中のイオンが実際は付着するのですが、その補給が必 要です。可溶性電極の場合はもう一方の電極から溶け出して補給します。普 通のメッキのイメージです。不溶性電極の時は、液体の補給を行います。一 般には精度により、継続的に補給する方法と断続的にまとめて補給する方法 のいずれかが用いられます。
メッキには効率と、目的の特性を得られる条件があります。これらは、金属や 液体の種類により変わります。
メッキに使用する液体は「メッキ浴」と呼ばれます。組成で呼ばれたり、酸性 浴・中性浴・アルカリ性浴などの区別で呼ばれる事があります。
メッキ工場の立地条件は法律等で規制されていますし、使用するメッキ浴が規 制されている事もあります。メッキ浴が変われば、形成される付着金属の特 性も変わりますので、複数の生産工場で作る場合や複数の外注専門業者を使 用する時はその違いの有無を調べておく必要があります。
メッキ浴は、一般に劇薬が多いので管理担当者や管理体制が厳しくチェックさ れます。金メッキを中心に多く使用されるシアン化浴は有名な青酸ですので 小説やドラマで入手経路をメッキ屋に設定される事があります。

無電解メッキは学問的でビジネスとしては、注目されていませんでした。最近 漸く状況が変わりつつあるようです。
原因は簡単で、安定性・再現性に問題があるからです。電解メッキは電気エネ ルギーで強引にある程度の安定性を得ていました(用途的にもよります)。 一方、無電解メッキは溶液・温度・触媒などの制御困難な微妙な条件で行い ますので、とても安定とは言える事はできませんでした。特にビジネスとし て大型の装置を前提にすると、難しいです。
それでも、研究が続けられていたのはその可能性の広さです。電気が流れない と出来ない・種類が限定されている電解メッキに対して、無電解メッキは広 い範囲に広がるのです。
丁度、金属主体の時代から多方面の材料を相手にする時代になった事が原因で す。しかし、技術の進歩は湿式の時代から乾式の時代へも変わっていたのです。
乾式メッキ、通常は真空蒸着・スパッタ等を言います。とてもビジネス的には 困難と言われていた物が、技術の中心になりました。次回は、これらを取り 上げます。

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