項目別バックナンバー[5]:技術情報:52

銀河と宇宙

人間の宇宙に対する理解は18世紀から急激に変わり発展し始めた。
その理由は天体観測用の望遠鏡の進化が大きな要因だ。
望遠鏡による天体観測は1608年のガリレオから始まり使用された望遠鏡はガリレオ式と呼ばれるが現在は使用されていない、1611年にケプラーは上記の改良型のケプラー屈折式望遠鏡で観測した。
1663年にグレゴリーが、反射式望遠鏡の原理を考えたが、1670年頃にニュートンは現在の反射式望遠鏡の基になる「ニュートン式反射望遠鏡」を制作した。
1730年代にホールは屈折式望遠鏡に、屈折率の異なる二種類のガラス材を組み合わせて対物レンズを作る事で色収差を大幅に少なく出来ることを発見して一気に技術が向上した。
1789年にウィリアム・ハーシェルは対物鏡の直径が122cmの巨大な反射望遠鏡を制作した、1845年にロスが口径184cmの大反射望遠鏡を作った。
1897年にアメリカのヤーキース天文台に対物レンズの口径が1mの巨大な屈折式望遠鏡が作られた。
1918年にウィルソン山の口径254cm反射望遠鏡が作られた、そこでは金属の反射鏡に変わり、ガラス素材に金属メッキを行い重量を軽くするという技術改良があった、望遠鏡の素材の改良は以後も行われて1948年にパロマー山に鏡の直径が5mもある反射式望遠鏡が作らるまでになった。

人間は望遠鏡で宇宙を観測する事で認識が新しく変わる事になった。
それは初期は望遠鏡の進歩の歴史に登場する、ガリレオ・ケプラー・ニュートンらの名前と、その発見と業績を見ても判る。
宇宙の広さは望遠鏡での観測が始まりその観測範囲が広くなると、従来の推測よりも広い事が判った、それが繰り返し更新された。
1919年にへールとハッブルはウィルソン山の巨大望遠鏡で星雲の距離を調べた、当時はその測定自体も難しかったが「変光星の光度と変光周期」を利用した方法で行い、近いとされるアンドロメダ星雲は200万光年の距離と知った。
この結果は銀河の直径の2万5000年光年より遠かった、地球は太陽系の惑星だと判ったのはそれほど古くはないが、太陽系は銀河の隅にあったが、その銀河は無数の銀河(星雲として観測された)の一つだと認識された。
1912年からスライファーは「物体の運動による波長の変化=ドップラー効果」を測定して多数の銀河の動きを観測して銀河に遠ざかる赤方遷移を見つけた、ハッブルはその精度を上げて測定数を増やして「遠ざかる速度は距離に比例」すると見つけた。

ハッブルは観測結果から「銀河の遠ざかる速度は距離に比例」事を「後退速度=ハッブル定数Xわれわれからの距離」 と表した。
この結果からは「宇宙は膨張している」という結論になった、だがそれよりもその現象を過去に遡った場合の推測の「宇宙には始まりがあったかもしれない」と言う推察が仮定として生まれた。
ハッブルは銀河の後退速度を観測していると考えたが、その後の考え方では赤方遷移がドップラー効果と見なせるのは物体が観測者の近くにある場合のみであり、非常に遠くからの光は届くまでの間に宇宙は膨張しているので、観測結果は光が届く時間までの間の宇宙の変化を示す尺度だと考えられている、赤方遷移は宇宙が小さい時に出た光だと示していると考える。

「後退速度=ハッブル定数Xわれわれからの距離」の式のハッブル定数と、「全ての銀河は一定の速度で運動している」との仮定からは、全ての宇宙が1点だった時期が計算出来る。
この仮定では宇宙の始まりはおよそ150億年前で、宇宙の始まりの出来事を「ビッグ・バン」と呼ぶが、それはホイルが使い始めて、拡がった。
ホイルは定常宇宙論の支持者でそこでは、宇宙が膨張する時にその密度を維持するために物質が発生したと考える、この考えは物質発生自体は可能性はあるとも言われるが、エネルギー保存則とは合わない。
ホイルは宇宙の始まりのメカニズムを考えるよりも、定常宇宙論の方がその問題が解除出来ると考えたが、今では宇宙がはじめから存在し続けている事の理由の理解と説明が難しいと言われている、初期の定常宇宙論については現在は支持されていない。

ビッグバンモデルでは、宇宙はかっては熱い火の玉だった事から始まり、宇宙が膨張する事で全空間に満ちた放射の波長が引き伸ばされた、それによって宇宙の温度は下がったと考える、なぜならば波長が長くなると宇宙のエネルギー密度は低下するからで、宇宙のスケールに温度は反比例する、(例えば冬にストーブで狭い部屋は暖かく出来るが、ドアを開けて広くすると温度が下がってしまう事と似る)。
ビッグバンモデルの検証目的でその名残の放射が探された、マイクロ波背景輻射を調べて、2.728K(マイナス270C)の物体が発する放射を観測した、詳細な観測で、地球と太陽系と銀河の動きを考慮するとどの方向でも等しいと判り、かっては宇宙は超高温で高密度だったと判った。
宇宙の物質量を仮定すると、場の方程式から宇宙のスケールが時間の変化で如何に変わったかを知れる、現在の膨張速度と、宇宙のスケールに温度との関係を加えて、組み合わすことで宇宙の温度に時間的な変化の様子がが推定出来る。

ビッグバンモデルは当初に爆発のイメージを持たれた、そして最初に1点で起きたという考えもあった、しかし現在はその可能性は低いと考えられている、1点で起きるためには宇宙が閉じている必要があるが、永遠に膨張する宇宙を考えて開いた宇宙を考える事が増えた。
現在では、宇宙は閉じても開いてもいない平坦だと考える事が増えた、その考えでは膨張は次第にその速度を遅くなってゆくと考える。
そして、ビッグバンはいたる所で起き、そこでは宇宙は初めに1点では無かったと考える、それは宇宙は初めから無限の広さを持っていた事を意味し、ビッグバンはその無限の空間のいたる所で起きたと考える。
宇宙はビッグバンが起きた頃の事象はコンパクトで密度が非常に高い状態である事になる、そこでは現在の物理学が適用されないので正確な理論の構築ができないでいる、理論の構築には重力の量子論が必要になると考えられているがその理論は現在はまだ研究されている段階だ。


有機EL

有機ELディスプレイが急速に普及を始めている。
物理的な原理・現象として、発光ダイオード(LED)で電子が基底状態からエネルギーを得て高い励起状態に移行した時に、励起状態から再び基底状態に戻る時にエネルギーを放出する、通常は多くのエネルギーは熱として失われそれは無放射となる。
熱ではなく光を放出すると発光するが励起状態から直接に基底状態に戻る発光は蛍光と呼ばれる、励起状態からそれよりもエネルギー準位の低い状態を経由し基底状態に戻る場合の発光を燐光と呼ぶ。
層状の発光物質を陰極と陽極で挟み、そこに電圧をかけてエネルギーを与えると電子または正孔が励起状態に移行する、それらの電子と正孔が励起状態で結合してエネルギーを放出して基底状態に戻るが、その時の光が蛍光であり、層状の発光物質として有機化合物を使用したものが有機ELだ。
有機ELは上記の発光原理だが、層状の有機ELを発光層として使用する事で面状の発光素子として使用する事が可能になる。

有機ELディスプレイでは、発光素子は金属等の陰電極・電子注入層・電子輸送層・発光層・正孔輸送層・正孔注入層・ITO(インジウムスズ酸化物)等の陽電極と、ガラス板や透明のプラスチック板などの基板から構成されている。
簡単に言えばN型半導体とP型半導体のPN接合の中央に発光層が有り、全体を電極で挟んでいる形だ、自発光素子なので液晶で必要なバックライトは無く片側のみに透明電極を使用する。
両電極間の各層の厚さは数nm-数百nmで5層を合計しても1μm以下の厚さになる、この層構造を形成する基板に折り曲げ可能なプラスチック材料を使用すると発光素子全体としてもフレキシブルに曲げられる事になり、折り曲げて使用する有機ELディスプレイとなる。
有機ELディスプレイでは発光素子を縦横の各画素ごとに配列する、このマトリックス構造にアクセスして描画する、駆動方式にはアクティブマトリクス型(AM-OLED、アモレッド)とパッシブマトリクス型(PM-OLED)がある。

有機ELの画素単位の表示素子は液晶素子とは異なるが、それをドットマトリクス表示の為に配列すると、液晶ディスプレイと同様に個々に電極を配線すると数が多すぎて周辺に電極が取り出せなくなる。
その為に直交させたストライプ電極にタイミングを合わせて電流を流してその交点の各画素を順次駆動する=パッシブ・マトリクス駆動か、TFT(薄膜トランジスタ)等のアクティブ素子を各画素に配置して駆動する=アクティブ・マトリクス駆動かが使用される。
パッシブ・マトリクス駆動は、液晶ディスプレイでのSTN型に対応する、こちらの方が構造はシンプルだが1ラインを光らせる事から発光輝度を大きくする事になり素子の寿命が短くなる、またクロストークでの画質低下の問題もある、パッシブ・マトリクス駆動は大型画面で画質低下が大きくなる為に小型パネルで使用される。
アクティブ・マトリクス駆動は液晶ディスプレイでのTFT型に対応する、パッシブ・マトリクス駆動が苦手な大型パネル用に使用される傾向がある、欠点は構造と回路が複雑になる事だ、課題としては画素ごとのバラツキが少なくする事と経年変化を少なくする事がある。

有機ELディスプレイの用途としてはテレビとスマホが大きい、その用途ではカラー対応が必須となっている。
有機ELディスプレイのカラー化方式には、1:RGB3色塗り分け方式と、2:カラーフィルター方式と、3:色変換方式がある。
1:RGB3色塗り分け方式は自発光素子の有機ELディスプレイならではの方式であり、赤色・緑色・青色の発光層を用いる。
 色純度が不足の時はその改善の為に2のカラーフィルターを併用する。
 サムスン製の有機ELディスプレイが採用すると言われている。
2:カラーフィルター方式は、ブラウン菅や液晶ディスプレイでも多く使用されている方式で、発光層には白色を使用して、その光をカラーフィルターを通して赤色・緑色・青色を作る。
 液晶ディスプレイの技術に近く、テレビ用等の大型化に適していると言われる。
 LG電子製のテレビ用有機ELディスプレイはこの方式だとされている。
3:色変換方式は、青色発光層を使用して発光を変換層を通して赤色・緑色を作る方式だ。
 色変換の難しい色もあり、青色材料の開発が難しい事もあり、現在はあまり使用されていない。

有機ELディスプレイは、その用途と外観的には液晶ディスプレイと類似した薄型の平面タイプの表示装置だ、液晶ディスプレイは急激に普及して機能を高めて来たが、それと比較する事で有機ELの用途と今後の予測も行える、ただし今後の技術革新の予測は難しい。
有機ELディスプレイと液晶ディスプレイとの比較
1:有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して明るさの面で劣るとされる、液晶ではバックライトの光を使用するが有機ELは自発光だからだ。
2:有機ELディスプレイは液晶ディスプレイと比べて消費電力が多い、交流電源で使用するテレビや画面が小さいスマホでは問題は少ないので使用されているが、ノートパソコンでは問題があると考えられている。
3:液晶ディスプレイは「グレーがかる黒」のみしか表現できないが、有機ELディスプレイは「漆黒」が可能でありコントラストではかなり優位だとされる。
4:有機ELディスプレイは液晶ディスプレイに比べて焼き付きが発生しやすいとされている。
5:有機ELディスプレイは「薄さ」と立体的な形状が可能な「デザイン」性に有利さがあるとされる、いわゆる高級高性能用途での使用に向いていると考えられている。
有機ELディスプレイの利用は、上記からスマホとテレビで進んでいる。

有機ELディスプレイを使用した新デザインとして折りたたみ方式のスマートホンが中国ベンチャーとサムソンから発表されている、折りたたむとスマホサイズで使用して、拡げるとタブレットサイズでの使用可能としている。
内側に折るか外側に折るか?、耐久性はどうか?、価格はどうか?、デザイン性と機能に対しての評価と、性能やコスト面での評価は発売後の話題となるだろう。
Googleは有機ELディスプレイが液晶ディスプレイと比べて消費電力が多いと言う課題に対して、ダークモード(ナイトモード)が消費電力的に優れると呼びかけた、バックライトで画面全体を照射する液晶とは異なり有機ELは必要な画素だけを発光させる仕組みであるので黒い部分は発光しなく省電力となる。
全体の色調を暗くするダークモードでは、夜間での薄暗い場所では目に良いと言われており既に複数のアプリが採用しているが、有機ELでは消費電力面でも優れていて、GoogleはGoogle Mapアプリで実験して有機ELでは消費電力が63%少なくなった(液晶は消費電力に差がなかった)と報告した。

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