項目別バックナンバー[5]:技術情報:2

超伝導

現在の情報化社会と超伝導はまだ関係はありません。電気抵抗がない世界(超 伝導)が実用化されれば無限に近い大きな可能性があります。
導電体の金属の抵抗値が温度係数を持ち、温度が低くなる程小さくなります。 その一部が極低温で突然にゼロになり、その状態を超伝導といいます。電気 抵抗がなければ発熱・電圧降下がないので無駄なく電流が流せます。例えば 送電線は無駄がなくなります。強力な磁石が作れます。
超伝導の理論は、量子力学・統計力学等を基にBCS理論として完成しまし た。ちなみに3人の名前の頭文字ですがバーデイン博士はトランジスタの発 明でもノーベル賞を受賞しており、有名な発明でのダブル受賞となりました。 理論が完成すると、超伝導が生じる限界温度の予想も出来、実用には遠い存 在でした。ただ、もしも低温でもかなり高い温度で使えるならば一気に実用 が近づきます。夢を追う人は絶えずおりました。
高温超伝導が新聞等で話題になった事を憶えている人も多いと思います。まさ かの事が起こったのです。その発見の過程を見ると、高度であるが狭い専門 家のみでは越えられないブレークスルーが生じた事が分かります。
簡単に言うと、別の専門の人が可能性を見つけて材料知識を生かして発見し たのです。勿論、偶然ではなく超伝導物質を探す中から見つけました。
次は、一時、熱狂的になった高温超伝導の発見を振り返ってみたいと思います。

高温超伝導

自然科学の発明や発見が、一般のメデイアで広く取り上げられる事は少ないで す。高温超伝導の発見は、数少ない例外の一つです。
スイスのIBMチューリッヒ研究所のベトノルツ、ミューラーは二人とも超伝導の 専門家ではありません。セラミック類の研究家です。その材料研究の中で、 高温超伝導の可能性のある材料を見つけた事と、その構造からターゲットの 絞り込みを行った事が大発見に繋がりました。経験則によるサーベイですが 理論に走っていた専門分野の人と異なる分野でした。
一度発表されると、次々に発見が続き、直ぐにも夢の材料として実用となる様 な報道もありました。今は、基礎研究と実用化の研究が併行して進んでいま す。いずれは、夢の材料として実用化されるでしょう。最初のターゲットは 液体窒素温度と思います。
電流損失がない送電・強力な電磁磁石などが最初のターゲットでしょう。 リニアモーター列車も現実に近づいています。


プラズマ

物質の状態は、気体・液体・固体が有名ですが、他にもあります。プラズマも その一つです。分子は核(+)と電子(-)が結合して存在しますが、片方 のみが存在する状態もあります。これをプラズマといいます。主に電子がなります。
金属特に導電体では、電子が自由に動き電気を流しますので、見かけは電子の み存在すると考えることもできます。外部から電波等をぶつけると電子が、 自由に動いて対応するので電波を通します。しかし電波の周波数が高くなり ますと追従できないので電波を反射します。通常は光(周波数の高い電磁波) を金属が反射するのはこれが理由です。
気体状で、存在させることも出来ます。電極間にプラズマを閉じこめますと、 電子ならば(-)ですので+極にひかれます。そして電極にぶつかります。 電極に蛍光体などを使用していると光を出します。従って、表示装置になり ます。小型のものは古くからありましたが、最近になって電極間隔を狭くし た薄型の表示装置(PDP)として俄に用途が拡大して注目されています。 液晶表示装置との比較は一長一短があり、今後が注目です。


数値解析

数学問題をコンピュータで解く、これはあらゆる分野に応用ができます。アナ ログの問題をデジタルのコンピュータで解くには、その為の方法が必要にな ります。それが数値解析です。自分でプログラムを書く人は限られているで しょうが、パッケージソフトを利用している人は多いと思います。
近似値、無限:コンピュータで無限に時間をかけて正確に解く事に意味はない し、困難です。考え方としては実用的に正解に近い(設定します)近似値を 求める事になります。がっかりする人もいるかもしれませんが、現実の自然 現象やその他必要な計算で、正解が求められるケースは非常に少ないです。 如何に実用的な近似値を得る事が出来るかがテーマになります。専門的には 摂動論・誤差論の世界です。
試行錯誤:一番基本的な考え方は、適当な初期値から始めて試行錯誤の繰り返 しで、徐々に誤差を小さくして行く方法です。コンピュータにとっては、一 番得意な方法です。ただし、計算方法によって繰り返し回数が大きく変わり ます。効率のよい解法を研究するのが、数値解析と言う学問です。
人間とコンピュータとは得意が異なります、人間に解くのが大変な事をコン ピュータの得意な方法を使って解かせます。

多変量解析:自然科学にかかわらず、ある事が複数の要因で決まると考えられ る場合に、要因の相互関係を含めて統計計算する方法です。現実の社会では 要因は無数に近くありますので、ある程度絞っても計算量は膨大になります。 コンピュータの進歩によりかなり出来る様になりました。しかし、解法を含 めて用途の拡大が期待されています。
線形計画法:いくつかの条件(関数)の範囲で、ある条件を加えた時に最大値 または最小値を求める方法です。簡単にいえば、最適な条件を見つけること です。これまた、非常に多くの分野で使用されます。これにもコンピュータ での解法があり、利用されています。上記で述べた、表計算のソルバー機能 はこれの為につくられたものです。


タイムマシンパラドックス

SF小説ははじめは、サイエンス・フィクションの意味でしたが、その後内容が 拡大して現在では広いジャンルになっています。
ウエルズが最初に「タイムマシン」を小説にしてから、沢山の小説が書かれ ました。これには、解決しないパラドックスがあるとされています。それは 異なる時代にゆけば、その時代の歴史が変わり以後の歴史も変わる事です。 例えば過去に行って、自分の両親を殺害すればどうなるかの様な問題です。 上記の影になっていますが、実はもっと本質的な問題があります。はたして 人間本人の生きている時代以外にゆけるのかと言う事です。過去にゆけば若 返り、未来にゆけば年を取る、そして生きている時代以外はゆけないという 考え方です。そして、異なる時代に行った時の記憶・学習を憶えて元の時代 に戻って来られるかという疑問です。
例えば、現在のコンピュータ(ノイマン式)は未来は不可ですが、過去にはロ グがあればさかのぼれます。しかし、過去にさかのぼれば現在の記憶・学習 は忘れます。現在、人間の脳の機能を研究してニューロコンピュータを開発 する試みがあります。人間の脳は過去や未来に行ったとして、記憶や学習を 残したままで現在に戻ってこれるのでしょうか。ほとんどの人が疑っていま せん。もしそうだとすれば、ニューロコンピュータはその様な性質を持って いる事になります。現行のコンピュータとは異なります。
実は物理学にも同じ様なパラドックスが存在します。そしてその研究の中から 新しいコンピュータが出来れば、ニューロコンピュータと似ている可能性が あります。これについては次回で。


不可逆性パラドックス

自然科学、特に物理にパラドックスなど有って良い訳がないと思いがちですが そうとも言えません。物理の世界は「相対論」を中心にプラス・マイナスで 対称、すなわち可逆性の世界です。マイナスの時間は実現しませんが、計算 上は過去に戻ることが可能です。非常に美しい概念の世界とおもえますが、 実は基本法則の一つに「不可逆」なものが存在します。熱力学(現在は、熱 統計力学)の第2法則がそうです。熱力学の3法則(第3は補助的な面があ り義務教育で習うのは第2法則までです。)は、1:エネルギー保存の法則 2:エントロピー増大の法則、3:絶対0度でエネルギーが0、です。第2 法則のエントロピーとは、物の秩序や状態の確率の事です。例えば、湯と氷 を混ぜると水になりますが、水を置いておいても湯と氷にはなりません。( 正確には統計力学では、宇宙が誕生してからの時間よりもっと長い時間に1 回ぐらいは可能性があると計算出来ますが、これは事実上ならないと同じと 考えられます。)この第2法則は不可逆です。水を過去に戻しても湯と氷に 戻りません。もし部分的に温度のばらつきがあれば、過去に戻せばその時間 の経過と共によりエントロピーは増えて、温度は均一になります。これは、 一般にボルツマンの問題・システムと呼ばれています。
理屈ぽくなりましたが、前回のタイムマシンパラドックスと似ていると思いま せんか。前回は人間の脳とニューロコンピュータが学習という不可逆性を持 つと考えられていると述べました。もし、上記のボルツマンシステムが組込 まれたコンピュータが出来たらとしたら、コンピュータの中に不可逆な部分 が存在する事になります。もしタイムマシンで過去や未来に行っても、学習 したことはエントロピーが増える事になるので、元の時間に戻ってきても消 えずに残ります。人口知能やニューロコンピュータの研究と、物理の不可逆 性の研究は、繋がる所があるようにも感じます。そして、人間の脳の記憶・ 学習もそうではないかと考えられています。

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