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CDの応用技術理

CDのディスクの音楽情報はレーザー光線で極小さいスポットをトラックに照射して読み取る、ビットがればビームは散乱して反射光は検知できず0で、ビットがないと全部が反射して戻るので1となる。
レーザー光線の光源としては、現在では半導体レーザーが使用されている、半導体レーザーは発光ダイオードのガリウムひ素のPN接合タイプダイオードの動作と同じで、CDには780nmの赤いに近い色が使われる、特徴は安価でコンパクトなサイズである事だ。
CDの光学系はレンズとプリズムと半導体レーザーから出来ている、それを光学系ヘッドシステム(タオス)と呼ぶ。
タオスとモーター等のサーボシステムと、反射光を検知する受光部のフォトダイオードを組合わせて、光学式ピックアップとなる。

アナログ・レコードは角速度一定(回転速度一定)だが、それとは異なりCDの再生系は線速度一定であり光学式ピックアップと記録トラックの相対速度が一定になる(内側はゆっくり回転し、外側は速く回転する)。
CDはビットがずれると信号の再生は出来ない、それ故にビット同期がないと音の再生は不可能なので相対速度が一定となり条件的には厳しい、線速度一定についてはCDプレーヤ―では盤を回転するスピンドルモーターにサーボを掛け行う。
CDの記録媒体としては12cmが使用されているがそれ以外にのちに8cmが登場した、12cmCDはLPレコードを全て置き換えたが、8cmCDはハード機器がソフトよりも先行した形になった。
線速度一定のCDは内側から信号を書き込むので12cm用再生機に8cm用アダプターを付けると同じ場所から信号が始まるので同様に再生できる(LPレコードでは外側から記録するので、始まりの位置は異なる)、8cmCDはポータブルタイプも人気が高かった。
CDの機能ではデジタル信号を扱う事から色々可能だ、利用者には多機能を望む人もいるし、逆に簡単操作を選ぶ人もいる、目的により異なるし、音質重視かどうかでも変わるだろう。

デジタルデータで音を扱うCDやDAT(デジタル・オーディオ・テープ)では、再生音質をより向上させる目的で「オーバーサンプリング」を行っている。
オーバーサンプリングとは、録音記録系と再生系でサンプリング周波数を44.1kHzから、4倍の176.4kHzかあるいは8倍の352.8kHzに上げて処理を行う事を指す。
正常サンプリング(44.1)では音声信号の波は、変調信号の波と接近している、そこではLPF(ローパス・フィルター)を使って不要な下側側波帯を除去して音声信号のみを取り出す、その時にLPFが弱いと下側側波帯が残り、強いと群遅延と呼ばれる位相歪が多くなる。
オーバーサンプリングを行う事により上記問題が改善できる。
オーバーサンプリングの出力は、高い標本化周波数に変換されているので、最後に標準に戻す必要があり、それをデシメーションと呼ぶ。

CDは音声情報の記録・再生から始まり、その標準規格が決まり普及していた、さらには映像情報を記録・再生する用途でビデオディスク(LDやVHS)が登場して普及していた。
このCDをデジタルデータファイルや画像ファイル等の読み出し専用のROMとして使用するのがCD-ROMの考え方だった、コンピュータの半導体メモリーよりはアクセス速度は低いが周辺記憶装置としては十分に有用だった。
1986年に540MB容量で使用が始まり、辞書では約10冊、新聞で1年分が記録出来た、1987年にISO規格が決定され、パソコン用の標準ソフトのMS-DOSに組み込まれた、1988年には1回だけ書き込み可能なシステムが登場した。
CD-ROMは音楽用と同様に大量複製が可能であり大量配布の用途に向いていた。
その後に書き込み可能なタイプを含めて多様な光ディスクが登場して行った、現在ではDVD-ROMやその読み書き可能タイプが主流となっている。
光ディスクのアクセスタイムは、フロッピーディスクや固定ディスクに近かったが容量が桁違いに大きい、そして非接触で摩耗に強く寿命が長く傷やほこりにも強い特徴がある。
コンピュータの外部記憶装置としては、高速・中容量のハードディスクが長く主流だが、そこに低速・大容量の光ディスクが加わった、その後にはより高速・低容量の半導体メモリー(USBメモリー、SDD)が加わった。
それぞれが速度と容量の改善を行い技術改革を進めてきている。

1987年にCD-ROMを搭載した自動車用ナビゲーションシステムが発表されて、以降に車に搭載され始めた。
CD-ROMに地図を記録してディスプレイに表示する、そこに現在の自動車の走行場所を表示する、初期の精度は荒かったが、その後には基地局や人工衛星との通信手段で精度向上が図られた。
民間組織のナビゲーション研究会で地図データベースのファイル構造案を1987年にまとめた、ファイルはGPS衛星や道路のビーコンや地磁気センサーや車速センサーなどのデータを使用して、自分の位置を地図上に表示する。
走行開始時に地図上に出発位置をカーソルで入力しておけば、地磁気センサーと走行速度から現在の走行位置を計算して表示する。
技術開発による、精度向上が図られて行くが、同時に各メーカーは地図の作成に独自の工夫と差別化を模索した、さらにその表示では画面中央表示や進行方向を上にする表示や、サポート機能の追加を行い、さらには音楽機能の追加・充実も図られた。
自動車用途は大きな市場となった。

データ読み出し専門のCD-ROMと、1回のみデータ書き込み可能なディスク(CD-WORM:write once read many)は急速に普及した。
この結果を受けて、従来の磁気記録装置(例えば固定型装置のHDD)と同じ様に読み書き共に複数回使用方式の記憶装置が開発されて行く、1つは磁気と光を併用する光磁気記録ディスクで、2つ目は光のみの記録ディスクだ。
固定型磁気記録はデータ転送速度やアクセス時間に優れている、これに対して光ディスク装置はそれより記憶容量が大きく可搬性に優れている、ただし転送速度とアクセス時間は遅く重ね書きが出来ない(次には書き換え可能な光ディスクも開発されて行く)。
磁気記録方式と光記録方式とには、長所と短所があるが、その技術を合体した光磁気記録ディスクが考えられて開発されて行った。
書き換え可能型光ディスクはパソコン用の外部記録装置用として急速に普及して行った、それに応じてISOで国際標準化が行われた。


光ディスクの技術

音楽用のCD-ROMとCD-WORMは、記憶容量を増やしたDVDに発展して映像用の記憶媒体となり普及した。
これらはパソコンの分野でも、着脱可能な可搬性の記憶媒体として、あるいは大量生産が容易なデジタルデータの交付・販売用のメディアとして広く普及して行った。
これらの光を利用したディスクはフロッピディスクの可搬性に並んだ、そしてその容量を劇的に上回った、さらには磁気記録の固定ディスクであるHDDの記憶容量にも容量的には並んでいた。
この時の光ディスクの課題には下記があった
・読み書き可能型の開発
・重ね書き可能型の開発
・転送速度とアクセス速度の向上

これらは、光ディスクの利用方式・記録方式・材料面の開発と、磁気の併用による光磁気記録方式の開発等が並行して行われて、多彩な商品開発が行われた。

光ディスクを大きく分けると
・光磁気ディスク
・アモルファスによる相転移  になる。
光磁気ディスクは、レーザー光線による磁化の変化を利用する(詳細は後述)アモルファスタイプでは、アモルファス薄膜にレーザーを当てることで反射率に変化が生じる事を利用して書き込みを行う、書き込んだ情報の読み出し時には弱いレーザー光を当てて反射率変化により、記録情報を読み取る。
より具体的には、アクリル板にレーザートラック溝を設けて、その表面に薄い蒸着膜層を作る。
そこに半導体レーザーを使い、レーザー光を細く絞り込んで照射する。
データの記録時には強いワット数を照射して記録層を加熱する、その次に急冷却するとその部分が反射率が低いアモルファスに転移する。
反射率の差を形成する事で2つの状態を作り、それで0と1を記録できる。
消去時は、レーザーを収束しないでやや広い長楕円形状に照射する、比較的に長い時間を照射する事で反射率の高い元の状態に戻る。

高密度記録が進むが従来の磁気記録方式では限界があった、記録密度向上へのアプローチは、「垂直磁気記録」と「レーザー光での光磁気記録」へと発展した。

希土類元素と金属の化合物は、非晶質(アモルファス)磁性膜と呼ばれて、金属結晶ではない金属の薄膜に出来て、非晶質磁性膜は膜面の垂直方向に磁化されるのが特徴だった。
非晶質磁性膜の特徴はキュリー点を変化出来る事だ、非晶質は成分でキュリー温度を変化出来て100度Cまで可能だ。 レーザー熱磁気記録では、収束したレーザー光線を非晶質薄膜上に当ててスポットの部分をキュリー温度まで上げると反転磁化領域を生じる。
その時に外部から磁界をかけていると、キュリー温度以上になるとその部分に大きな磁化の変化が生じて、1か0の情報を記録できる。
光磁気記録の欠点の1つは、データの重ね書きに「消去1回、書き込み1回」の2回転が必要な事で、転送速度が遅くなる。

キュリー点
・磁性金属をある温度まで加熱すると磁性体が非磁性体に変化する、その温度をキュリー温度と言う。

レーザー光での光磁気記録を書き込んだ光磁気ディスクの再生には、記録時と同様にレーザースポットを使用する、異なるところは、キュリー温度以下の弱いレーザー光を当ててその反射光から記録内容を読み出すことだ。
反射膜としては希土類ガーネット非晶質(アモルファス)薄膜を使い、カー効果とファラデー効果を利用して、光の偏光面を回転させて読み出しを行う。

カー効果
電界中に物質を置くと、電気力線の方向を光軸として光の屈折を生じる。
あるいは、光が電界中の物質を通過すると、位相差を生じる事をカー効果という。 物質中の分子が電界によってある程度、方向を整えて異方性(物質でX軸とY軸の屈折率に差が生じる)が変化する。

ファラデー効果
磁界中に置かれた物質中を光が通過すると、磁界が光の進行方向と同一の場合に、光の偏光面が回転する現象を指す。

磁気ディスクでは高密度記録が進んだが、従来の磁気記録方式では限界があった、そこでは記録密度向上へのアプローチとしては、「垂直磁気記録」と「薄膜ヘッド」の技術開発があった。
「垂直磁気記録方式」は、1975年に東北大で提案された方法であり、従来はディスク面に平行な面のみに記録していたが、それに対してディスク面に対して垂直に記録するので、格段に容量が高くなった。
信号の書き込みと読み出しを記録面に対して近い距離で行うと、狭い記録面積で可能になる、それを実現させたのが「薄膜ヘッド」でありディスク面から0.1μm程度浮上させて移動させて使用する。
「薄膜ヘッド」では、基板にニッケル面を使い、磁性層との間に中間層を設ける、さらに精密な仕上げを行う等で実現させている。
磁気記録はさらに高密度が可能になったが、益々難しくなって来ている。
光磁気記録方式は材料面を含めて技術的な開発要素が大きく磁気記録からは遅れたが、磁気単独方式には限界があるので、光併用方式である光磁気方式は技術的に追いつけば、磁気単独方式の限界を超える。

光ディスクはCDディスク・DVDディスク・ブルーレイディスクとして発達して普及した、それは着脱可能な記録媒体であり、さらには再生専用の用途だった。
着脱可能な記録媒体で再生に加えて書き込み可能な用途としては、CD-RやDVD-Rがある、それらには光記録方式と光磁気記録方式とがある、この分野では技術革新と規格統一問題が並行して起きていた、その為にハード的・ソフト的にサポートされている事が普及条件であり、単純な速度や容量だけでは決まら事情があった。
着脱可能なMOディスクは国際規格があり日本では1時期普及した、だが国際的には普及せず、現在では日本でも使用されていない。
磁気記録方式の内臓型ハードディスクドライブの置き換え用途が期待された光磁気記録ディスクドライブだったが、この用途では限定的な使用に留まった。
その間に、半導体メモリーを使用した半導体ディスクが、高容量と価格低下を実現して来た、その結果で動作時のRAM用途に加えてSSD(ソリッドステート・ドライブ)用途でも普及してHDDの置き換えが起きている。

スマートホンやタブレット端末では半導体メモリー使用のみであり、静かで高速アクセスでモバイル性も優れる長所を生かしている。 着脱可能半導体記録媒体としてUSBメモリーも普及しているが、用途的にCD-RやDVD-Rと棲み分ける面もある、再生専用の媒体としてはCDディスク・DVDディスク・ブルーレイディスクは優位性がある。

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