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待ち行列

待ち行列(queuing)は数学用語の行列(matrix)とは異なる。
待ち行列理論は、顧客がサービスを利用するために行列に並ぶような時に発生する混雑現象を、それが確率的に生じるとしてシステムとして現象を数理的モデルで解析する目的の理論だ。
待ち行列理論は歴史的には、電話交換システムの回線数決定の理論として1910年ころから始まった。
何かを待つ場合に、サービスを受ける側の「到着時間」と「到着人数」、サービス側の「サービス期間」と「サービス人数」等の関係を数学的手段で把握するための理論だ。
この様な待つ事とそこで発生する混雑と渋滞は、電話通信だけでなく通信全般とコンピューター関連分野における、処理の順番を待っているジョブの制御や、プリンターの動作など多数に関わる。
一般社会でも行列が出来るケースや混雑・待ち時間が絡む事には、同様に混雑と渋滞解消が課題となり、解決の数学的・統計的な研究の必要が生じている。

待ち行列モデルでは、サーバ (server) と待合室 (waiting room) とのシステムと、そこに来て滞在する客 (customer) を考える。
待ち行列の例として銀行のATMに並ぶ顧客の列があり、ATMをサーバ、銀行内の待つ場所を待合室、そして顧客を客と考える、しかし言葉の対応はモデル化する対象によって自由に変えて良く、他の広範なシステムに対しても理論的には同じ考えができる。
待ち行列の考え方が応用できる例としては
・コールセンターや電話交換機や電話網
・インターネットや、サーバやルーターなどのバッファ機能の設計
・高度道路交通システム
・生産システム
・空港の搭乗手続きや病院の診察などの施設設計
・スーパーのレジ等の店舗設計

ビジネスでは、最大限の利益を上げるために、商品やサービスを提供する時に客の回転数を高める必要がある、回転数を上げれば客の待ち時間が少なくなり、それは客へのサービス向上にもなる。

待ち行列のシンプルなモデルは、客がランダムに来る事と、早く来た客から順番に先入れ・先出しで対応して処理して行く事としている。
その仮定とモデルでは、「混み具合」を0から1の間で設定し、それが判れば、どの程度待つかの待ち時間が判る、というのが待ち行列の理論だ。
数学的には「平均待ち時間」は「混み具合」の変数のみの関数として表らされる事を示している、その式は
・「混み具合」を「X」とすると
・待ち時間 = X/(1-X)  となる。

これは客が人間とすると、自分の前には「X/(1-X) 」人が既に並んで待っている事を表している
「混み具合」=0は全く混んでいない状態であり待ち時間は0になる、Xが0から増えると待ち時間は徐々に増えて行く、1に近くなると待ち時間が急に長くなってしまい、1は最高度に混雑している状態でありそれになると永久に待つ事になる。

ポアソン分布とは、時間当たり・場所当たり・距離当たり等の、一定区間の中で偶然に発生する事象の数の分布を示す、そこでは「単位時間あたりに平均R回起こる現象が、単位時間にK回起きる確率」を表すのに使われる確率分布を指す。
これは一般的には起こる確率の低い事象に対する分布であり「少数の法則」と呼ばれる、統計学での一般法則として発生件数が多い場合は正規分布に近ずいて行く。
確率の低い事象を「ほとんど起きない」「珍しい」と考えがちになるが、中にはそのような事象も勿論含むが、多数回起きる事象にもポアソン分布はある。
ポアソン分布で事象が次々に起こる状態をポアソン過程と呼ぶ、ポアソン過程ではある事象が起きる回数を「ランダムなイベント」(「起こる確率が常に一定である」ようなイベント)と見なすとこれからのある期間内にそのイベントが起きる回数がポアソン分布で表せる。
ポアソン過程は、病院や銀行の窓口に来る客、交通事故の発生数、放射線のカウントなどの事象をモデル化するのに使われる、待ち行列はそれに当たる。

待ち行列では(あ)どのように到着するか、(い)どのようにサービスされるか、(う)サーバがいくつあるかが重要であり、この3つの情報を「あ/い/う」と書く形式をケンドールの記号と呼ぶ。
この用語を使った時の代表的な待ち行列が「M/M/1」でありこれが基本となる。
M/M/1は、
・到着過程 = M :ポアソン過程>ランダムに到着する
・サービス = M :サービス時間が指数分布に従う
・サーバ数 = 1 :サーバが1台(ATMで言えば窓口1台、病院では医師一人)
・新しく到着した客や要求は待ち行列の一番後ろに並ぶ
・窓口やサーバは待ち行列の先頭から順に客や要求を処理する(先着順方式)
・待ち行列のバッファは無限に大きい(待つ場所は無限に広く、待ち行列の長さに限界がない)。
この確率解析から前々回に記述した式が導かれる。
・「混み具合」を「X」とすると>待ち時間 = X/(1-X)  となる。も導かれる、窓口にすれぞれ1列が出来る場合は該当する。
M/M/nは複雑になるが計算出来る、そこからnが異なる場合を比較して、サービスと窓口数と行列数の設計が可能となる。

M/M/nは(到着過程=M>ランダム到着・サービス=M>サービス時間・サーバ数=n:サーバ数(窓口数))は、複雑だが計算出来るので、そこからnが異なる場合を含めて比較する事で、サービス処理時間と窓口数と行列数の設計が可能となる。

1:サーバ数は行列数に対する数であり、窓口数を増やしてもそれぞれに別の行列を作ればサーバ数n=1のままであり、全体の処理能力は倍になる。
2:サーバ数を変えずにその処理容量を2倍にした場合も、やはり全体の処理能力が倍になる。
3:行列数を1のままで窓口数を2にすると、サーバ数n=2になる。
 空いた窓口で行列の先端から処理して行く。
 理論計算式からは、全体の処理能力が同じ場合では窓口(サーバ数)が多数になる程に、全ての窓口が塞がっている確率が小さくなり、早くにサービスが受けられる確率が大きくなる。
 それによって平均待ち時間が短くなる。
銀行のATMの例では、
・窓口の処理能力を2倍にする場合(処理時間を半減する)と、窓口個別に行列を作る場合で窓口数を2倍にする場合とは、同じ効果がある。
・窓口数を2倍にした時に、行列数を1のままで空いた窓口に振り分けた方が平均待ち時間が短くなる。(現在行われている方法)
・窓口当たりの処理能力を2倍にするよりは、行列数を1のままで窓口数を2倍にした方が平均待ち時間が短くなる。(窓口を増やす事が効果が高い)


ガラス・ガラス状態

物質の3状態は固体と液体と気体であるが、それ以外にもいくつかの状態がある、その1つが無定形であり、その中にガラス・ガラス状態がある。
物質を高温で溶融させて、結晶が出来ない状態で急激に温度を降下させると、粘性が増して凝固して硬い固体(固化溶融物)になる、この固化溶融物をガラスと呼ぶ、ガラスは結晶状態である固体とは異なって規則的な原子配列をしていない。
別の定義としては、高温溶融状態の液体を冷却するときに、一定の凝固点(液体から固体への相転移温度)を示さずにだらだらとした温度幅で凝固する非結晶質の固体の総称を指す、この明確な相転移温度を示さない凝固過程をガラス転移状態と呼ぶ。
ガラス状態をとる物質としてはケイ酸塩ガラスや硫黄やセレンなど無機物があり、それらの他にはポリエステルやポリエチレン等の有機物・プラスチックもある。

ガラスの定義の一つとして、高温で溶融状態にあったものが急速に冷却された時に結晶化せずに固化したものとその状態がある、それからは「ガラスは、固体状態になった過冷却液体」となり、過冷却液体とか液体状態の固体とも表現される。
同じ固体の結晶と比べられる無定形状態の固体にはアモルファスもあるが、ガラス転移点(狭い温度域を境にして物性温度係数や比熱が急激に変化する温度)が存在して観測される物質だけにガラスを限定する事が多い。
その時のガラスの一般的特徴は、・透光性が良い(光の波長で透明)、・絶縁物である、・耐食性が高い、・曲がり難くて堅くて脆く割れやすい、・組成が簡単に変える事が可能、・形が自由に変形加工し易い等がある、それは商品名としてのガラスのイメージと同じだ。

固体の最も安定な状態は原子または分子が規則的に整然と配列した結晶で、その場合がエネルギーが最も低い平衡状態になる、それに比べるとガラスは配列の規則性が低くなるので、エネルギーも結晶よりはやや高い非平衡状態にある。
実用ガラスの主成分の二酸化ケイ素を例にして、それが単独で結晶になった物とガラス(シリカガラス)になった物とで原子構造を比較すると、結晶とガラスは同じで共通の構造単位を持っている事が判る、ただし狭い領域では両者間に差は無いのだが、より広い領域で比較すれと差がある事が判る、従ってガラスには密度のゆらぎがあることになる。
室温でガラスの密度は結晶の密度より小さいが、それは同一構成単位が、結晶では規則的配列になっているが、ガラスでは部分的には不規則な配列になっている事から判る、ただし水が氷よりも逆転する関係のように、ガラスのほうが結晶よりも密度が大きい場合もある。
ガラスと結晶とはガラス転移点以下でほぼ等しい熱膨張を示す、それは温度変化に対して原子配列が互いに相似性を持っているからだ、転移点以上の過冷却液体では構造の相似性は崩れる、温度上昇によりガラス構造から溶融液への構造変化は、結晶の場合とは異なる構造変化になる。

ガラスの性質・特徴は前述したが、その中に成形しやすいという加工性がある、それによって用途に、窓ガラスや瓶類やレンズ類や光ファイバーや蛍光灯等の照明類や平面薄型テレビや食器類や鏡類やガラス工芸品などがある、多様な形に加工されて色々なジャンルで使われる。
ガラスの加工性の理由は、結晶とは異なり固体でも融点がなく、液体>過冷却液体>固体ガラスの変化の間で、殆どの性質が温度変化に伴って滑らかにかつ連続的に変わる事にある。
ガラスの粘性率は溶融温度と常温とで10倍位変化するので、その間の温度領域ではいろいろな成形加工がが可能になっている。
ガラスは組成の組み合わせの制約が少ない性質があるので、殆ど全てに近い元素をガラス成分として含める特性がある、用途の例としては原子炉の放射性廃棄物の化学組成を変えて安定なガラスにすることもできる。

固体状態のガラスは部分的には不規則な配列もあるが、全体的には固体結晶と相似した構造を持っている、だがガラス転移点以上の温度での過冷却液体状態では構造の相似性は崩れてゆき、温度上昇に伴ってガラス構造から融液の構造へと結晶ではない構造変化を示す。
この構造変化は熱履歴によって変化するものなので、同一組成のガラスでも熱履歴によって密度や、屈折率等に程度は異なっても差が生じる事になる。
従ってガラスの密度や屈折率を正確に決定する時には、熱処理温度と時間に加えて冷却速度などの熱履歴を制御しないと再現しない。
例えばガラスの光ファイバーでは、光路が非常に長くなるので、僅かの密度の差と揺らぎが光の散乱を起こす、それが原因となり光の伝送を妨げる事になった。
ガラスの構造は主流の二酸化ケイ素単一成分系のシリカガラスでも完全には定まらず、コンピュータのシミュレーション手法で構造の詳細を明らかにしようとされつつある。
それに酸化ナトリウムや酸化カルシウム等が加わった多成分系ガラスに関しては構造にはさらに不確定な要素が増えるために、結論はそれ以上に出にくい、これらもコンピュータのシミュレーションでの研究が行われている。

代表的なガラスはケイ酸塩ガラスだが、それのある程度の組成範囲ではガラスの比重と屈折率と熱膨張係数は、成分となる酸化物や組成物イオンとの間に関連性がある、そこではガラスの構造は固体よりは液体に近い事から異なる酸化物を融解する事で多種多様な組成のガラスが作れる。
一般的なガラスを組成で分類すると、
 ・ソーダガラス >板ガラスや容器用のガラス
 ・電気用鉛ガラス>ランプやバルブ用
 ・高屈折率鉛ガラス>光学ガラスや装飾品
 ・ホウケイ酸ガラス>化学用ガラス
 ・アルミナケイ酸塩ガラス>電気用やガラス繊維用 等に分かれる。
ガラスの多くはフッ化水素を除く化学薬品に侵されずに安定だ。
ガラスには組成によっても異なるが、熱処理で分離した2相が混在した構造も生じる、それに熱処理を進めて行くとその比率が増えるがそれは光を散乱するので白濁する。
2相に分離したガラスの、2相の内の片方が塩酸等に溶ける場合があり、分相したガラスを塩酸に浸すと、片方の相が溶けて微細異な孔が無数に出来る、それは表面積が大きくなるもでその多孔性ガラスは吸着用途に使用される。

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