項目別バックナンバー[5]:技術情報:28
プレス
プレスには複数の意味がありますが、ここでは「プレス機械」とそれで作業す
る行為に限定します。
金属や類似の被加工材を、ある形状の金型ではさんで同じ形状を作りだす事と
機械を指します。
形状を作るのはひとつの例で、曲げたり、せん断加工もあります。
これだけでも、多数の組み合わせが存在しますが、巨大製品加工や精密加工技
術の進歩で、ジャンルは広がる一方です。
プレス機には、大きな動力が必要ですがその利用する物にいくつかあります。
一般的なのが油圧プレスです。
液体は、力が加わる部分の断面積の単位当たりに比例した力が得られます。
また、変形した断面でも面に直角に力が働きます。
液体の中でも一般的なものが油圧です。
通常は液体を循環していて、動作時にシリンダーに切り替えます。
以降は上記の様に、力に変わります。
電気プレス又は機械プレスは、モーターの回転を上下運動に変えて使用します。
通常は、クラッチで接続した時のみ力が上下運動に伝わります。
プレスとセットで使用するのが、金型です。
プレスは主として挟み込んで圧力を作る装置です。
対して、金型はその圧力を実際に何かの形状に変える加工を行うものです。
プレス機にセットできる金型ならば、交換可能でそれぞれに応じた加工が可能です。
金型材料は、非加工材料よりも堅い必要がありますが、その条件ならば限定されません。
成形・切断・穴明け・・・・色々な加工が金型の種類で可能になります。
逆に言えば、加工精度は金型精度とも言えます。
プレス機を使う技術と、金型を製作して使いこなす技術で製品の加工精度が、決まります。
プレス金型の設計は、ノウハウの塊といわれています。
数値的な目安はありますが、制作工程・設計・装置含めてノウハウが支配します。
非加工品の種類によって、設計等が敏感に変わります。
形状を作る時に、材料が均一に変形する事は理想ですが現実は変形部が薄く伸
びる事で可能です。ただし、溶解して圧力下で固化する場合は異なります。
2種類の金型で挟み込んで、成形しますがそれらの重なった時の隙間の形状・
サイズが非成形物の最終形状を決めます。
同時に、穴明け・切断等の加工を含める場合や、複数回の加工・金型で最終形状に達する場合があります
プレス金型は通常は、め型・お型と呼ぶますがこれの嵌め合い精度が重要です。
現在は、同時加工多ドリル加工機が存在しますので、複数の型の基準穴を同時加工出来ます。
同時加工ならば絶対位置は、ずれても相対位置関係は精度が良いので嵌め合い精度は高くなります。
この基準穴を起点に他の加工を行います。
型の修理にも使用しますので、基準穴は大事に扱う必要があります。
金属製の金型精度を高めた技術に、ワイヤー放電加工があります。
ワイヤーと型の金属とを、僅かな隙間で配置して放電する事で加工します。
流せる電流が多いほど加工速度は高いですが、精度はおちます。
従って、ワイヤーの径を次第に細くしながら多数回の加工を行います。
直角部の精度は、ワイヤー径で限界があります。
それ以上が必要な時は、研磨という厄介な方法になります。
金属金型の設計方針は2つあります。
堅いものがぶつかれば、どちらかが破壊されます。
金型の破壊を防ぐ方法は、
・め型とお型がぶつからない設計
・ぶつかる場合は修理が容易な片方を堅さを抑えて、わざと摩耗させる です。
後者の方法は、他分野でも常識的に使用されています。
例えば、列車のパンタグラフが柔らかい材質で作られていて、高い頻度で交換
されています。これは、接触相手の電線が交換する事が困難だからです。
成形型や加工材質が厚い場合は、金型どうしの接触はない設計になりますから
金型に焼き入れします。硬度を高めるのですが、寸法変化も生じ易いので、
経験的なノウハウが必要な世界です。
プレス技術は、精密かつパワーという異なる要素を合わせて要求されます。
それでかつ、コスト競争の激しい用途も多数あります。
結果として、ニッチ(隙間)産業と言えるノウハウを持つ事業者が多数存在す
る分野になっています。
最先端分野の機械製造や製品の加工に、欠かせない技術が継承される必要のある分野です。
逆に言うと、先端産業の好況・不況の影響をまともに受けやすい分野ともいえます。
一度衰退すると、基に回復出来るかどうかが判らないでしょう。
この様な技術分野は多数存在しますが、プレス技術もそのひとつです。
摂動
しばしば聞く言葉に、「学校で、XXを勉強しても社会で役に立たない」という
事があります。これは100%間違っていますが、ちょっと一言追加して、
「学校で、XXを勉強してもそれだけでは、社会で役に立たない」とすればほとんどは正しいでしょう。
学校で学ぶ事は基礎の基礎です。
社会で必要な事は、色々な段階があるものと、最先端に近い高度のものとが有ります。
そして、基礎ではなく応用です。応用とは、誤差・摂動です。
人は、保有する知識には限界があります。それから外れた事は、何も判りませ
ん。判らない事が役にたつかたたないかが判断出来る筈はありません。
自然科学系は、役に立たない勉強の例としてあげられる事が多いです。
これらでは、大学の専門課程で学ぶ事は基礎にあたり、社会に出てから学び続
ける事で、漸く有用レベルになります。大学の専門課程以前の基礎の基礎が
あって、基礎が学べる。基礎があって、応用が学べます。
自然法則に特許性はありません。
いわゆる「発明」ではないからです。
自然法則で全て解く事が出来る事は、発明では無いことです。
そして、学校で教える殆どは、全て解ける問題です。
これを知っていても、社会でそのまま活用できる事は少ないですし、それは多
くの人が容易に可能なので、人数は少なくとも常識の範囲です。
発明とは、解けない問題に対する実用的な答えと言えます。
解けない問題を、実用的に解くとは、正解に限りなく(あるいは実用的に)近
い解答を得る事です。
このあるとすれば正解と、実用的な発明との差を「誤差」「摂動」と言います。
現実の社会では、解ける問題は商売と無縁ですから、「摂動」を含む発明を如何に得るかにあります。
これは、学校では殆ど教えない事ですが、学んだ事の応用とも言えます。
ノウハウは全てが数値化できるとは限りません。
ただ、出来る限り「近似式」を作ります。
解けない部分を、可能なだけ近い数値で得られるように工夫した計算式です。
学問的には、近似・摂動を得る方法がいくつか研究されています。
稀に、これらが利用できる事もありますが、個人的には稀です。
ただもう一段基礎の、無限級数・多変数解析・誤差論・統計・等価式・帰納法
等を使用することが多いです。
これらを見ると基礎といいながら、高校以前で学ぶ事が非常に少ない事に気づきます。
近似・摂動を避けて、あえて答えのある対象のみを学ぶ教育に疑問を持つのも根拠はあるのです。
摂動的な解を得て、量産になる場合には、知的所有権の問題があります。
具体的には、特許を請求するかノウハウのままに眠らすかです。
特許は、権利化の可能性はありますが、公開されれば内容次第で模倣も可能で
す。ノウハウは、製品化してしまうと公知事実になり同じ内容の特許化は出
来ません。
摂動・近似的な解を元にした製品は、特許請求が難しいです。
自然法則は、発明にならないので、発明部分を明記する必要があります。そし
てそのなかで、請求範囲の設定が難しいです。
出来るだけ具体的には、書きたくないですが当然、権利化は困難です。
そして、必ず実施例が必要です。内容によって、必要な例の数が異なります。
特許は、請求範囲のみが権利です。
同時に、権利侵害を証明出来る内容でないと他社の侵害を防げません。
ただし、出願者の生産を維持するための防衛的特許もあります。
近似・摂動を、数値的に請求範囲にするのは非常に難しいのです。
近似・摂動と、実験は密接ですが同時に思考実験も多く行われます。
理論解析とは言えないですが、近似式を求めて実験等の事実と合うものを探す行為です。
無闇に試行錯誤しても、効率が悪く期待できません。
その代わりに、頭の中やコンピュータに考え・計算させて最適の近似式・摂動式を探します。
それには、モデルとなる式か理論が必要です。
これに、実験的に求めた変数(決定すれば定数に実際はなります)を加えて、近似式を探します。
自然界はジャンルが異なっても、似た式が多数存在します。
それの利用は有望です。
一番有名なのは、電気回路です。
電流・電圧・抵抗の関係をあらわす2公式です。
キルヒホッフの法則と呼ばれる2公式は、同じ形が多くの自然科学で登場します。
この公式は、電気回路との類似性から予測や計算がやりやすいです。
色々な方程式を解く方法とともに、類似の公式を利用した思考実験を行う事は
近似・摂動の世界では、予想以上に有効です。
計算に必要な要素を、分離して考えやすい。
そして、個々の全体に与える影響の比率を知りやすい等が特徴です。
実験式・経験式等の、近似式・摂動解を如何に得て運用するかは、ノウハウの中心です。
如何にして、上記を得るかの過程はそのまま運用性に影響します。
条件が少し変動しても、直ぐに対応できるかどうかです。
そして、異なる開発での応用の可能性も、たまたま得た場合と、ある程度の摂
動理論と実験とから得た場合では異なります。
繰り返しかつ、多数のケースに応用の可能性がある事は、重要です。
画像認識
目の働きと脳の働きを、限定的に代用する技術と製品はかなり昔から有ります。
ただし、その性能は異なりますが人間にとって早くから有用と考えられていました。
目の部分にあたる、カメラとセンサーの組み合わせ、そしてそれを電気信号に
変換する技術が直接に必要です。
これが実用的になるのは、パソコンの進歩も大きく寄与していますし、その為
に電気信号はデジタルとなります。
同時に認識したものを解析する技術、又は認識物に対して何かのアクションを
取る技術も併行して開発されました。
画像認識の対象の最初は、存在の認識でありその次は位置の認識でした。
存在の認識は全てのセンサーの基本です。
そして通常は非接触での認識を指します。
距離は色々です。
人間の目で見えるのは、光の波長が可視光線の範囲です。
センサーは通常は、対応波長が異なります。
これを如何に使いこなすか、あるいはフィルタで制限するかは用途で変わります。
画像認識の波長を人間と比較して如何に設定するかは重要です。
距離の認識は難しいです。
信号を出して、対象物からの反射信号を受ける事で距離を算出する方法は、基本です。
ただ工業的に画像認識を使用する機器は、半接触又は短い距離での焦点合わせレベルが多いです。
焦点合わせは、早くから自動機構が使用されています。
カメラの自動焦点として、民生でも知られています。
微妙な距離を変えて、スキャンを繰り返し2回同じ位置で合った時を、正確とします。
寸法的に合わないものを、平均的に最適に合わす事も画像認識の課題です。
複数のものを重ねあわす作業は、かなり多いです。
それぞれが、微妙に寸法が異なりあるいは歪んでいる事は多いです。
それを可能なだけ、正確に平均的に位置合わせするには、センサーと計算と位
置移動の作業が連動している必要があります。
これらは、パソコンの進歩で急激に実用化されました。
複合技術として、その中核になる画像認識の重要性が、認められています。
画像認識の普及理由は、省人化と平準化と精度向上等があります。
機械とコンピュータで制御しますから、多くの場合はメンテナンス要員のみで稼働します。
人が操作する時でも、個人差が無くなります。
これらで結果として、ほとんどが精度向上に繋がります。
難しい作業は、学習機能を持たせる事で実現します。
その場合の、学習元はいわゆる職人芸といわれる人達です。
高いレベルで、平準化できる可能性があります。
目にあたる、画像認識のみでは無理ですが、これなくしては成立しないです。
一番身近な画像認識は、デジタルカメラの自動焦点でしょう。
左右の機械的スキャンと、レンズの距離の合わせを組合わせます。
中心の画像のボケぐあいの少なさを評価します。
どこかで、ピークを過ぎたらが見つかりますから、ひとつ前のピークの所が最善の焦点となります。
手ぶれ防止も類似の方法です。
焦点が合っている位置で、スキャンして前後の画像を比較して動いていない場合に、手ぶれがないと判断します。
いずれも、複数の映像の作業中の記憶は必要です。
最終の画像のみ、撮影として保存します。