項目別バックナンバー[5]:技術情報:40

論文

突然話題になった論文ですが、それに含まれるものは多岐です。
英語では、細分化されていても日本では知られていないものも多いです。
論文は、表現の1手段です。
その分類は、自然科学だけではないし、学術論文だけではないです。
ただし、目的が公表ですから、それを掲載する先の存在が必要で、そこでは多くが内容の形式を或る程度定めています。
論文はオリジナル性が高い程に貴重ですが、反面その内容の理解が難しいし、そもそもその内容の正否は不明です。
それは後日の研究に残るとしても、証拠となるデータと論理展開に矛盾がない事が最低限必要です。
特に後者は採用検討時にチェックする対象です。

論文の基本は、扱うテーマの概況とその中のどの部分についての論文かの説明から始まります。
読む人に判り易い様に記述する事が重要です。
そもそも新規の話題をテーマにするのですから、それ以外を判り易く記述しないと、本題にまで読む事が出来ないです。
次ぎに、テーマが何か、そして理論か実験か・・どの様な新規の報告を述べるかを説明します。
いきなり、本題に入っても何を目指しているかが不明では2度読まないとわからない内容になりかねません。
そして、データ類が示されますが、その詳しい条件と統計的な処理内容の記述も重要です、それらがデータの信頼度に関わります。

論文の考察や理論や解析の記述は、初めて推論が入る場所であり、筆者の考えが中心となります。
その考察には、他の論文の引用やそれより前の実験等の結果を総合して、その論文で何を伝えたいか、新しい何を見つけたかあるいは推測できるかを、述べます。
意見の異なる人の討論会で自分の考えを如何に訴え、認めて貰うかと似た状態です。
論文が引用される場合は、実験内容と、この考察等の部分が殆どです。
逆に言えば、オリジナル性を主張するのはこの2つとも言えます。

論文の考察や理論や解析の記述は、多くの他の論文や資料の引用になります。
既に詳細が語れている事を必要以上に述べる事は冗長ですし、オリジナルでない部分とオリジナル部分との区別が曖昧になります。
実験が主体の論文で、理論展開が引用ばかりになる事は珍しくありませんし、末尾が引用文献の羅列は論文では常識的です。
それ故に、しばしば引用回数がその論文の有効性・興味を持つ人の数として考えられています。
また、引用には孫引用がついてまわります。
オリジナルが入手困難な場合に多いですし、オリジナルよりもある程度の成果をまとめた方が判り易い事情はあります、これらの論文には当然に原文献も記載されていますが、時々オリジナルを見ていないか軽視してかつ、引用論文が引用ミスの時があります。
孫引用は、原則避ける様に指導されており間違いの元ですが、無くならないのも実状です。

パソコンの普及でプレゼンソフトや、表計算ソフトやワープロなどで論文作成が普通になっていますし、少なくとも利用はします。
それは単に結果のテキスト入力だけでなく、データ・資料類のデータでの公開に繋がります。
ネットでの公開は読者を広げて、多くに読まれて引用も検証も増えるのでプラスが多いと思います。
紙媒体の論文誌への影響は個々に考える事でしょう。
論文作成過程の電子化と合わせれば、特に作業自体は困難ではありません。
とにかく、実験・データ整理・論文等の電子化は自然な流れです。

論文の目的は研究等の成果の発表ですが、それは成果の先行性と絡みます。
一部には、先発明性を採用する国もありますが、多くは日本も含め先発表性です。
成果の発表・登録には特許制度もあります。
こちらはビジネス目的ですが、現在は応用研究の比重が増えているし、基礎研究でも特許の権利化は避けられません。
研究・開発の費用を考えると何かの単位で見返りを求められ、それはビジネス等の成果に最終的にはなります。
ビジネスだけではないですが、他がその応用で権利を取るとそれ以降の研究・開発に費用を出す所が無くなってゆくでしょう。
論文と特許の関係は密接ですが、論文発表が先行すると特許の新規性を自ら否定する事になりますので、双方の知識も必要です。


発光ダイオード

アインシュタインはノーベル賞を光電効果で受賞しました。
電気と光が物質を介して結びつけられる量子効果です。
電気を流せば半導体が発光する>電磁波を放出する現象を追求すると半導体の発光現象と発光ダイオードに辿り付きます。
半導体のバンド理論は、量子論の基礎方程式・シュレディンガー方程式の解の1つの近似解です。
そして、生まれたバンド理論は、絶縁体・金属等の良電体と半導体と分類します。
半導体はバンドに少数の動ける電子(または空孔)が存在し、同時にメインバンド以外に不純物等が作る飛び地のバンドが存在すると考えます。
異なるバンド間を電子が移動するにはエネルギーが必要ですが、光や電気等がそれを提供します。

電磁波とエネルギーという言葉は、物理的には広いですが、一般使用時にはやや内容が異なる使い方になっています。
半導体の発光現象は物理現象なので、その説明と理解には物理的な意味が前提です。
電磁波は低波長からラジオ波・無線通信波・テレビ波・から赤外線・可視光線(通常の光)・紫外線・X線へと高い波長が存在します。
そして、電磁波は波と粒子の双方の性格を合わせて持ち、低波長ほど波の性格が強く、高い波長になると次第に粒子の性質が強くなります。
光(可視光線)が直進すると考えるのは、波長が高く粒子の性質が強いからです。
半導体のバンド理論は、粒子の移動を扱いますので、可視光線が粒子の性格を持つ事が前提です。

半導体のバンド理論で発光現象の説明は、最低2つのエネルギーレベルの異なるバンドを考えます。
電気エネルギー>電子の運動エネルギー>低いバンドから高いバンドへ移動(励起)される>位置エネルギーに変わる>ここから別のバンドに移動する・2つの時は元のバンドです>その時に余ったエネルギーを放出する。
放出するエネルギーは多くは熱で、これが電磁波の事も多く、その中で可視光線の時を発光現象と呼びます。
2つのバンドのエネルギー差が光の波長(逆数)になります。
エネルギー差が大きいほどに青から紫そして紫外線になります。
大きなエベルギー差を作りコントロールする技術、それが青色発光ダイオードです。

発光ダイオードは原理的に設計波長の放出効率は高いです。
現実は、まだまだ目標の可視光線以外のエネルギーになる部分も多いですが、それらは改良の課題となります。
他の光・・白熱光・蛍光灯は可視光線以外の電磁波の放出も多く、熱の放出も多い光源で、エネルギーを可視光線に限定すれば変換効率は悪いです。
また全体のエネルギー放出が多いと寿命は逆に短くなりがちです。
発光ダイオードがエネルギー効率が高くて寿命が長いという事は、動作原理からも予想され、実現されています。

発光ダイオードの実用には、光の3原色の知識が必要です。
絵の具の3原色と、光の3原色は反対になり、前者は全てまぜると黒色になり後者は白色になります。
白色光は3原色の混合で作られます。
3原色以外の色は、混合比で作ります。
ブラウン菅方式のカラーテレビは、シャドーマスク方式が主流でした、3原色の混合比を制御して多様な色を作ります。
白色光をバックライトに使用する液晶方式は不要な色を遮る事で実現します。
発光ダイオードでは3原色の発光自体の制御で混合比を変える方式が主でブラウン菅に近いですが、エネルギー効率の向上と熱等の無駄な発生を除きます。

旧白熱光と、3原色の発光ダイオード混合の白色とは異なる事がいくつかあります。
可視光線のちかくには、赤色側は赤外線があり、青色側は紫外線があります。
単独の発光ダイオードは色が違う(波長が違う)と性質も微妙に異なります。
旧白熱光から単色を取り出す時は、プリズムで分解するか光フィルターの使用になりますが、発光ダイオードは単独か混合比になります。
光源が出す熱は、明確に量が異なります、どの光源も光以外の放射・主として熱は効率低下になりますが、発光ダイオードは現状でも効率の高い光源といえます。
それをより高めるのは、今後の課題です。


実験方法・装置

現在の小学・中学で何を教えているのかは詳しくない。
ただ、変化の激しい自然科学や情報関係は現実と基本教育がずれているだろうとは予想出来る。
何故なら、40年以上前からずれが見られていたからだ。
現在企業等の研究・開発では、装置の機械化が進んでいます。
センサーとコンピュータの進歩で、義務教育で習った器具は使わずに、電子機器を使用する事が圧倒的に多いのです。
原理が判っていないと使えないものでは無いですが、違和感はあります。

実験は難しいものだ、教科書に書いてある結果を再現できるかどうかは微妙な事は現実には多い。
教科書は材料が純度が高い時の結果や、多数の実験結果からチャンピオンデータを使用する傾向があるからだ。
現実は、個々の学校等の実験で同じ結果を得られる事は希だし、それは間違っている場合もあれば、正しい結果の時もある(材料や外因で異なる結果が正しいという意味)。
そして、実験器具や装置が揃った状態でも、実際に使用されるより見るだけで教科書の結果で学ぶ事の方が多いことも多い。
実験方法・装置を使わず、見て名前を覚えるだけで何の意味かは良く判らない。

実験方法・装置だけでは飾りで初期投資だけだが、実際に実験をするのは費用がかかる、いわゆるランニングコストだがどうもそれが不足の様だ。
議論される事が多いのは、カリキュラム時間の不足と指導者の不足だが、費用面は見落とされる事が多い。
指導者あるいは補佐は、材料や機器のメンテや補充等の作業が多く、実験の指導に加えて結果のまとめと解析とそれの指導が必要だ、そこには正誤だけではない過程や考察の評価が重要だ。
結果が同じでも誤差を含めて、全て同じ物は存在しない事も考えにいれての進め方になる、実際に行うと教科書に結果として掲載されるものと同じ事が容易に出ない事が普通だがそれを理解する事が出来ない者も実は多い。

実験方法・装置を提供するメーカーは多数存在するが、レデーメイドとオーダーメイドに別れる。
通常に利用するのは、レデーメイド製品であり教育で使用されるのもそれで、いわゆる基礎実験の分野であり共通の機器・道具の学習も兼ねる。
高価だが簡単に使用出来る機器が存在しても、それを購入して使用できる環境かどうかは現実にならないと不明だ。
特に最先端機器は価格が非常に高価で、装置の存在自体が珍しい。
使用方法は簡単でもランニングコストは大きく(含む原価償却またはレンタル料金)、有効利用面で目的・用途共に精通した者・目的だけに限られ、しかも多くは動作原理が難しい。
教育や一般知識の為に操作だけ教える事は、意味がない。

製造業では生産装置はノウハウの塊で大きな競合との差別化になる。
従って、生産装置の幾つかはオーダーメイドの設計品になる。
それは、製造側が仕様を示して装置メーカーが開発する場合と、製造側との共同開発になる時と、製造側の研究・開発の成果をスケールアップする過程で装置メーカーが加わるケースが考えられる。
オーダーメードは、機密保持契約の対象となるし、装置メーカーは相当な技術が求められる。
俗にビーカースケールという実験レベルの装置と、小さな部屋の様な量産設備では製造条件も技術も異なるし、そもそも大きな装置を作る事が可能かが問題となる。

生産装置のスケールアップは難しくかつ重要なテーマだ。
技術と投資判断という経営とが絡む、生産装置の新設スケールアップはその稼働が経営を左右させる。
大きい装置が、単純に大きな商品を扱える訳でない。
物理的には、単位を持たない式で表す事が出来ればスケール依存がないとされる、主に流体力学で利用され風洞実験が成立する根拠となる。
模型実験を行うときは同じ考えを導入して行う必要がある。
実験では誤差が付きものだが、生産装置では仕様が出来て、商品の良品と不良品に別れ、歩留まりという考えが導入される。
一般には歩留まり=良品率向上が目標となる。
ただし、例外的に良品率よりも生産性=製造コスト優先の場合があるので、先入観は持たない方が良い、生産性と良品率を合わせて、良品の価格が最小になる装置・方法が目標だ。

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