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補聴器

人間の耳の機能・聴覚の障害=難聴の原因は幾つかある。
・伝音難聴=「音を伝えるところ」部分の障害
 中耳炎等で鼓膜に穴が開く等で破損したり、鼓膜と内耳を繋ぐ骨の機能障害等で、内耳に音を伝える外耳・中耳に障害が生じると難聴になる。
・感音難聴=「音を感じるところ」部分の障害
 内耳では入って来た音の振動を電気信号に変換するが、信号を脳に伝える聴神経の傷害や、脳の障害で難聴になる。
 加齢による難聴も感音難聴の一種だ。
・混合性難聴
 双方の障害による、伝音難聴と感音難聴の両方が原因での難聴だ。

補聴器は聴覚障害の改善目的で機能補助をする補装具で、マイクロホン・アンプ・レシーバーから成り、交換式の電池を電源とする電子機器だ。
音を大きくする拡声器と思っている人もいて、単純に音を増幅する機能だけを考える人もいるが、耳の聴力は大きすぎる音では耳に障害を与えかねないので出力制限装置が必要であり、聴力検査・測定に基づき個人個人で調査・調整された機器が必須だ。

1960年代の補聴器は弁当箱サイズだったが、1970年代には小型化されタバコ箱サイズが登場してポケット型補聴器と呼ばれた、それでは受信部・バッテリー部をポケットに入れて耳穴はめ込み部をケーブルで繋げた。
1980年代に耳たぶの上部に引っ掛ける形の補聴器が登場して耳かけ型補聴器と呼ばれ、そこでは耳に引っ掛ける部分に受信部・バッテリーが入れられた。
1990年代には耳内部に入れる補聴器が登場して耳穴型補聴器と呼ばれ、小さなイヤホーン状の部分に受信部・バッテリー等全てが入った。
2000年代には、それ以前のアナログ補聴器からデジタル補聴器へ移行が行われ、それ以降はデジタル補聴器が主流となっている。
デジタル補聴器は、飛躍的な性能向上が進んでいる、その理由はソフトウェアで特性を変更出来て調整が非常に容易になる。
・デジタル制御では高度で複雑な処理が可能となった。
 等であり、最近の補聴器の飛躍的な性能向上に貢献している。
補聴器は電子工学の進歩を取り込んで、パワーと機能を向上しながらも小さくなる進歩をしている、それに加えてファッション性を加える方向性もある。

補聴器は日本国内では薬機法において管理医療機器に指定され法的な規制が行われている、補聴器の名称は正式に管理医療機器として承認されたもののみを指す。
上記によって補聴器は制約の厳しい条件下で販売されて、効果や安全性・信頼性が確立されている、薬機法の規制を受けない機器は集音器等に分類されて、補聴器では無い。
補聴器は使用するには基本的に個人の聴力や使用状況に合わせた調整が必要であり、補聴器専門店や取扱店または医療機関で調節する必要がある。
補聴器専門店での購入が一般的だが、日本ではメガネ店で売られるケースも多い。
補聴器は単に音を大ききする機器では無く、一定の音量以上にならない様に音量を抑える機能を持ち、使用する人の症状で周波数制限や、雑音の抑制を細かく調整できる。
補聴器ではない集音器では、基本的に全体的な音の大きさの上げ下げのみの機能であり補聴器としての使用上で問題がある。

補聴器は形状に依り4タイプと特殊に分類される。
・ポケット型
 耳にイヤホンを装着し、コントローラー本体をポケットに入れるタイプで、イヤホンと本体をコードを繋いで使用する。
 操作は概ね簡単であり、高出力が得られやすい、やや大型で本体やコードが邪魔になりやすい欠点がある。
・耳かけ型
 耳にイヤホンを装着し、小型の本体を耳たぶに掛けて使用する。
 操作はやはり簡単で扱いやすいとされ、技術革新で小型軽量化された。
 人にいり外れやすい事があり、失う危険性もある、マスクや帽子等との相性が悪いと言う人もいる、汗が入りやすいともされる。
・耳あな型
 イヤホンと本体共が小型軽量化されて、耳あなに収まるタイプだ。
 耳あなに完全に収まる小型の商品から、耳の外にまで部分的にはみ出すやや大型までいくつかタイプがある。
 やや大きいイヤホンと似た感覚で使用出来るが、耳あなの形状の型を取り個人個人で外形もオーダーメイドで造る事が一般的だ。
・メガネ型
 メガネのツルの部分に補聴器を内蔵させるタイプだ。
 メガネと補聴器を併用できる利点がある、逆にレンズと補聴器の両方の調整が必要とも言える。
・特殊補聴器
 離れた場所に設置したFM送信機から手元の補聴器に音を送るタイプ。
 騒音を減らしたり、高音域の音を聴き易くする為に周波数の処理を行う等の、特殊な用途で使う補聴器。

補聴器では、音を処理する仕組みの違いでデジタル補聴器とアナログ補聴器に大きく分かれる、現在の補聴器はデジタル補聴器が主流だ。
補聴器はマイクで音を集めてアンプで音を増幅してスピーカーで音を発生させるのだが、そのアンプの部分がアナログ処理の物をアナログ補聴器と呼び、デジタル処理の物をデジタル補聴器と呼ぶ、中間的な補聴器の調節がデジタルなアナログ補聴器もありそれはプログラマブル補聴器と呼ぶ。
現在の主流のデジタル補聴器は、アンプも調節もともにデジタル方式のフルデジタル補聴器となっている、電子技術の進歩を導入しやすくその結果として小型化・軽量化されてきた。
補聴器の電源は空気亜鉛電池が使用されて来たが、これも最近では電子技術進歩の結果として小型補聴器では充電式のリチウムイオン電池や銀亜鉛電池を使用した機器も販売され始めている、用途的に充電しながらの使用や使用中断は望ましくなく電池交換方式になり易いとは言える。
補聴器はイヤホンやヘッドホンと同様に構造的に水分に弱く、汗や雨の水分侵入に弱いと言われる(防水の補聴器も登場はしている)。

補聴器は色々な機能がある。
 ・雑音を抑えて聞き取りやすくする機能(雑音抑制機能)
 ・特定の方向からの音を聞きやすくする機能(指向性機能)
 ・ピーピー音(「ハウリング」)等の不快な音を取り除く機能
機能と性能は、補聴器の価格の差になる大きな要素だ。
ただし個人差があるので、一番大事な事は使う個人に合った補聴器かどうかになる、多機能・高性能の補聴器が最良とは限らないので状態や使用目的や環境を考えて、個人に合った補聴器を見つける事が重要だ。
補聴器は使う人にあわす事で補聴器本来の力が発揮されるが、聴力や耳の形状や生活環境は個人個人で異なる、加えて時間が経つ事で聞こえ方の状態や耳の形も僅かずつながらも変化をしてゆく。
その為には一度調整した補聴器でも、快適に使用し続けるためには、補聴器の調整やメンテナンスが定期的に必要になる、その為に購入時の調整と共に購入後の定期的な調整等のアフターメンテナンスなどの技術料が補聴器の価格に含まれている事が一般的だ。


トランジスタ特性

トランジスタとは半導体デバイスの1つで、P型半導体とN型半導体と呼ばれる2種類のタイプの半導体を重ね合わせたPN接合を2つ持つ事が特徴だ。
半導体材料としては主にシリコンであり、2つのPN接合は3層に重ね合わされて、それぞれに電気的な端子を設けられる事から3端子デバイスとなる、小型の半導体素子でありながら「増幅」と「スイッチング」と言う能動機能を持つ事は革命的な素子であった。
トランジスタの発明は1948年に行われ、発明者のショックレーとバーディ-ンとブラッテンはノーベル賞を受賞した、この発明がその後の半導体エレクトロニクス技術の発展の最初になり、半導体素子・集積回路に繋がり、コンピュータと多数のエレクトロニクス技術と商品へと繋がった。
 (用語は全て、後述)

トランジスタの特性・動作・機能は、「増幅」と「スイッチング」だ。
・スイッチング作用
 トランジスタは入力端子から外部信号を受け取り、オンオフを切り替えるスイッチング作用を行う
 コンピュータなどで使用するデジタル信号では、トランジスタは0と1を切り換えるスイッチの役割を果たす。
・電流電圧の増幅作用
 増幅作用は電子機器には必須の機能だ、半導体が無かった時代ではダイオードの整流作用やトランジスタの増幅作用が無く真空管がそ役割を行っていた。
 半導体素子は小型・軽量化が容易であり消費電力も少なく長寿命が特徴で、単体素子から集積回路(IC)や大規模集積回路(LSI)へと進歩して行った。
 トランジスタの増幅作用は、入力信号の波形を変えずにその電圧や電流の大きさのみを拡大する。
 ICやLSIは中身はトランジスタの集合であり、その働きの基本はこのトランジスタの増幅作用だ。

トランジスタとはP型半導体とN型半導体と呼ばれる2種類のタイプの半導体を重ね合わせたPN接合を2つ持つ事が特徴だ。
例えば純度の高いシリコンに不純物を混ぜて(ドーピング)、動ける電子または正孔を作る、それらの電子・正孔は一定の状況下で電流として流れたり流れなかったりする価電子となるので半導体としての特性が出る。
価電子が電子のタイプをn型半導体と呼び、価電子が正孔のタイプをp型半導体と呼ぶ、P型半導体とN型半導体を重ね合わせてPN接合を作る、そして3層を重ね合わせる事でPN接合を2つ作ると、それがトランジスタの基本構造とな る3層構造と呼ばれる。
トランジスタの三相の半導体には名称がありそれぞれ、電荷を集める「コレクタ」、電圧印加によって制御を行う「ベース」、電荷を出力する「エミッタ」と呼ばれる。

高純度のシリコン結晶の製造方法、ドーピング方法、バンド理論、正孔の物理的な意味、等関連事項は多いがここでは今回は省き、P型半導体とN型半導体とPN接合が存在する所を出発点としてトランジスタのタイプや種類を扱う。

トランジスタの代表的な特性としては、「バイポーラ」と「モノポーラ」がある。 トランジスタ素子はP型半導体とN型半導体の2種類のタイプの半導体から成っているが、バイポーラトランジスタと呼ばれるタイプではそこでの三層構造(pnp、npn)内では負の極性の電子と、正の極性の正孔とがキャリア(価電子)となる。
前述の様に、それが最初に登場したトランジスタ素子の構造であり動作原理でもあったので、単にトランジスタと呼ぶ場合はバイポーラトランジスタを指す。
その後で例えばMOS FET(意味等は後述)等が登場して、ユニポーラトランジスタと呼ばれた、ユニポーラトランジスタもバイポーラと同様にp型半導体とn型半導体で作られるが構造が異なる。
バイポーラトランジスタでは正孔と電子のどちらかが動作に関与するが、ユニポーラでは駆動方式は電圧となる。
「バイポーラ」と「モノポーラ」は特性や長所等が異なるので、優劣はないが用途的に選択される事になる、例えばユニポーラのMOS FETは比較的に低電力で駆動するので高集積IC等で使用される。

「バイポーラトランジスタ」とは、プラス極性の電荷である正孔と、マイナス極性の電荷の電子との二種類の極性の電荷が動作に関わるトランジスタだ、「バイポーラ」とは双極と言う意味がある。
n型半導体は電子が余っている状態の半導体で、p型半導体は正孔が余っている半導体だ(p型半導体は実際は電子が足りない状態だが、それを不足部分の空孔=正孔が余っているとして扱う)。
トランジスタには、p型半導体をn型半導体でサンドイッチ状に挟む構造のNPNトランジスタと、n型半導体をp型半導体でサンドイッチ状に挟む構造のPNPトランジスタが存在する。
サンドイッチ状に挟まれた中央の層がベースだが、そこに電圧印加しない場合はエミッタ側とコレクタ側に電流が流れる方向の電圧をかけると、エミッタとベースとの電荷が結合して空乏層が出来る。
その状態は結果としては電流は流れなくて、逆バイアス状態と呼ぶ。
電流が流れず増幅も行われなく、スイッチ的にもオフ状態になる。

サンドイッチ状に挟まれた中央の層(ベース)にプラスの電圧印加する場合は、エミッタ側とコレクタ側に電流が流れる方向の電圧をかけると、順方向バイアスに相当する場合は、エミッタ側から供給された電荷が逆の電荷に惹かれてベース側に流れる事になる、その場合はエミッタとベース間に電流が流れて、ベース電流と呼ばれる。
「NPNトランジスタ」では中央の層のベースはp型半導体だが、それは非常に薄いのでエミッタから入った電荷(電子)はコレクタ側に移動する、このプラスのコレクタ側からマイナスのエミッタ側に流れる電流をコレクタ電流と呼ぶ。
上記の様にベース側から電圧印加して、エミッタとベース間に少量の電流(ベース電流)を流すと、エミッタとコレクタ間に大きな電流(コレクタ電流)が流れるので、結果として増幅作用になる。
電源電圧より大きな信号を取り出すことは出来ないが、ベース側への電圧印加のオンとオフで電流制御を行える、それはスイッチング用途になる。
「PNPトランジスタ」は仕組みは「NPNトランジスタ」と全く一緒であり、同様にベースへの電圧印加でコレクタ電流の制御を行う、ただし半導体の並び順が「NPNトランジスタ」とは異なるので、ベースにかける電圧はマイナスと  なる違いがあり注意が必要だ。
「NPNトランジスタ」「PNPトランジスタ」は共に、正孔と電子の双方が動作に関わる事から「バイポーラ」(双極)と呼ばれ、「バイポーラトランジスタ」となる。

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