項目別バックナンバー[5]:技術情報:18

推計・仮説

確率計算で予測を行う時は、1:「確率計算手法」と、2:「分布の妥当性」 と、3:「サンプル数の妥当性」と、4:「真と判定する閾値の設定」があ ります。2と3は密接な関係があります。
確率論は基本は「ガウスの正規分布」が前提にあります。この分布は「確率の 性格からスタートして純粋に数学理論的に算出した分布です」従って、完全に任意性のある時はこの分布になります。
そして、いかなる2:分布の種類にかかわらず3:サンプル数が無限になると この正規分布になる事も知られています(正規分布の極限定理)。
サンプル数が無限は不可能なので、現実はどうかというと正規分布の時は、サ ンプルが10を越えるとある程度意味を持ち、100を越える推計が誤りの 確率が小さい(実質はほとんど起こらない)仮説・推計を出す事が出来ます。
問題は、分布が正規分布かサンプルの任意性の保障にあります。 4の判定するしきい値は、推計する内容の重要度により変える必要があります。
国政選挙で、テレビ局が誤った当選確実を出す事が問題になっています。これ はあきらかに推計の手順にミスが有ることが分かります。たぶん、事前調査 ・出口調査内容の任意性不足でかつ判定のしきい値を甘く設定している為と 推察します。簡単にいうと重要性の認識が不足しているのでしょう。

推計予測は「帰無仮説」をたてて行います。
帰無仮説とは、たぶん否定されるであろう仮説です。統計的に否定される確率 が設定したパーセントより大きいと仮説は間違いとします。
逆にいえば、帰無仮説とは逆の確率が充分に大きいとする推計ができます。
たとえば、「トランプ52枚を全て内容を予想する事はトリックなしには出来 ない」という仮説を確かめる時は、「内容を予想して正しい確率は充分に存 在する」という帰無仮説をたてます。これが否定されればよい訳です。
トリックなしでは、1枚目は1/52の確率になります。2枚目は1/51になります、これを53回行うので、確率を掛ければよいのです。
分子が1で、分母は1から52までを全て掛けた数値です。計算しなくても、最 初だけでも、0.02を掛け続ける訳ですから0.02,0.0004,0.000008とあっとい う間に低い確率になります。これは事実上起きないと言えますので、帰無仮 説は否定されます。そして、「予想出来ない」ことが正しい推計と見なされます。

統計では「標準偏差」(s)という数値が用いられます。
サンプルが正規分布の時には、2sは95%、3sは99%、が目安となりどちらかが判定の基準に用いられる事が普通です。
最近は、4s,6s管理が要求される用途も増えているようです。いわゆる誤差率 (不良率)がフォーナイン(99.99%)、シックスナイン(99.9999%)レベルになります。
実質起きない・仮説が間違っていない・不良がない等の判定基準をどこに設定するかの問題です。
人によっては、ばかばかしい数値に見えるかもしれません。しかし現代は量子 論の時代です。量子論とは、確率で存在を表す世界です。トンネル効果は物 質が障壁を通り過ぎます。コンクリートの壁を押しているといつかは、突き 抜けるのがトンネル効果です。ただ計算すると、宇宙誕生よりもまだ比較で きない長い時間をようして1sが生じるレベルです。それは、起きないとするのが正しい判断です。

抜き取り検査という手法があります。
全数検査ではなく、統計的に母集団の一部のみを検査して母集団全体の状態を推計する方法です。
この技法は、高度成長期をはさみ発達してきました。ただ、不良率が著しく低 くなると(品質の要求レベルが高くなると)抜き取り数とその中に不良が含 まれる確率が従来の3シグマ(99%)管理レベルとは全く異なります。
基本的な考え方は、母集団を大きくして抜き取り数も同時に大きくすれば対応 可能だろうです。しかし、技術的な面では母集団の均一性の仮定・多くの抜 き取り数の処理(機械化)及び統計処理の、コンピュータ化など全体の技術的向上が必要です。
品質管理は、非常に大切でかつ難しい技術的課題です。


有機EL

薄型戦争の最中だそうです。対象は表示部のある製品です。代表はテレビです。
薄いと場所をとらない、軽量である等のメリットがあるとの事です。価格が同じならばそのとおりでしょう。
現在は、プラズマ方式と液晶方式との闘いです。
それに参入をしようとしているのが、SED(プロジェクター方式)と有機EL方式です。
有機ELは、かなり昔から表示関係の有効さを指摘されながら、期待と異なった普及をしています。
自発発光という、究極の発光方式は薄型の実現性では一番です。
しかし、製品はコスト・寿命・周辺機器・そして大型等の多用途対応等の多彩な要求が加わります。
実用化が遅れるほどハードルが高くなり、ますます実用がおくれてゆくようにみえます。

ELは、エレクトロ・ルミネッセンスの略です。
有機というぐらいですので、無機もありますが機構が異なります。
特徴は、自発光である事です。面状の自発光体であることから、薄型には非常 に向いています。同時に発光機構から消費電力も少ないとされています。
それにも関わらず、同じ自発光タイプのLED(発光ダイオード)と比較して普及 が遅れているのは、寿命がまだ短い・製造コストが他の方式よりも高い・面 状の欠陥除去や均一性の問題より大型表示装置に対応できていない。などの問題点が残っているからです。
パソコン関係では、初代東芝ダイナブックのバックライトとして使用されましたが、不安定のため直ぐに異なる方式に変わりました。

ELは、エレクトロ・ルミネッセンスの略です。
エレクトロ・ルミネッセンスは物質自体が持つ性質から生じる現象です。この 正確な説明には、半導体・状態遷移・バンド構造・量子論まで遡ります。
簡単に説明されているのは、安定なバンド状態から何かの外部エネルギーで高 い離れたバンドに電子が状態遷移します。この状態はエネルギーてきには安定性はないので、安定な状態に戻ります。
この時に、決まったバンドから安定なバンドへ遷移するので一定のエネルギー を放出します。これが光となって色と強度のあるていど揃ったものが発光するというものです。
言葉上は、レーザーに似ていますが外部からのエネルギーの与え方や元に戻る までの時間や波長の揃い方が極端に揃っておらず、イメージ的にはむしろ発 光ダイオード(LED)に近いです。LEDも1ドットとして多数並べてオン・オフ を制御すれば面状の表示装置となります。


デジタル放送

今回は、テレビの地上波放送のデジタル化にしぼりとりあげます。
現在の地上波テレビ放送の主流は、アナログ放送です。各放送局ともにデジタル放送を行っていますが普及率は低いです。
地上波放送の全面デジタル化の日程のみ決まっていますが、まだ動きは少なかったです。それがここに来て動き始めました。
まだまだですが、考えて見たいと思います。
デジタル化は、情報量・双方向性・データ通信その他色々なメリットが言われています。
逆に、普及度の高いアナログ受信機が使用できなくなる問題点が極めて大きい です。期限を決めても受信体制が出来なければ・・というシュミレーションは公開されていないようです。
災害予報警報の使用・受信料問題・アナログ-デジタル変換器開発問題・デジ タル放送のコピー問題など一部であると思いますが、表面化してきました。

アナログ-デジタル変換器開発がようやく表面化しました。
多くの人が、必ず必要になる・登場すると思っていた製品です。
しかし、政府から目標価格と開発推進の形で出てきたのは予想外の人もいるかもしれません。
しかし、現状のアナログテレビの廃棄がもたらす問題・デジタル機器が広まら ない状況がテレビ離れに繋がりデジタル化の目的が失敗するリスク等を考慮すると、結果的に納得できる進展です。
その内容、具体的には目標価格は、デジタル化需要を期待していたメーカーで は困った内容だと思います。一応「技術的に無理」と反論がありますが、過 去の例をみても、莫大な需要を抱える製品に対してとりあえずの意見としか受け取る事ができません。
すでに激しい開発競争が行われているのか、あるいは開発は終わって競争相手 の出方や価格・戦略を見ているのかはいわゆる機密でしょう。

デジタルについてまわるのが、コピーの問題です。デジタルは原理的には無制 限コピー可能です(情報の劣化なしに)。これでは情報の作成・配信側は困 ります。そして、採算が立たないと衰退します。
一方、録音・録画機能を装置の製造メーカーはコピー不可では製品は売れませ ん。現在は「コピーワンス」の状態になっています。1回のみコピーは可能ですがコピーからの再コピーは出来ません。
急速に普及しているのが、HDD録画機能のコピー装置です。デジタル放送になる とより普及する可能性がありますが、「コピーワンス」ではDVD等にはコピー は出来ません。かならず移動になります(元のHDDのデータは消える)。
これでは普及に問題という事で「コピーナイン」等の検討がされています。こ こで注意が必要なのは、コピー世代と回数が混在している事です。「コピー ワンス」はコピーは1世代であとは移動です。「コピーナイン」は1世代目 はコピーで、1世代目から2世代目へのコピーが8回可能という事です。こ の回数以降及び2世代以降は移動になります。これは明らかにHDD録画を想定しています。(2世代コピー=HDDから他媒体へのコピー)

デジタル放送への対応が徐々に、表面化してきました。
ところが、実は一番基本のデジタル放送受信地域が、まだアナログ放送の受信 エリアに達しておらず、完全に目処がたっていない問題があります。
他の問題がクリアされても、受信地域が減少してはスムーズな移行はありえません。
アナログ放送とデジタル放送は、受信チューナーの問題も大きいですが、配信装置とその設置基地の問題も同様に大きいです。
現状は、まだデジタル放送の配信基地が不足していて、もっと増やさないと受 信出来ない地域がかなり生じます。これって誰が負担するのでしょうか。放 送局の淘汰があるのでしょうか。デジタル放送中に、画面の一部に広告が表 示され続けておれば興さめでしょう。はたして、設定日にはどのような姿になっているのでしょうか。

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