項目別バックナンバー[5]:技術情報:46

無人運転

「無人」と言うキーワードを多く見かける。
それは多くのプラス思考と夢を持つが、省人化を通して人間の排除に繋げるマイナスのイメージも含まれる。
無人という言葉には自動という言葉が重なる事が多い、実際は自動稼働を少数の人が監視するケースが多いし、リモコンで操縦する事も含まれるので過去から行われて来た広い概念だ。
ただし、機械的なメカニズムや、コンピュータによる自動運転や、通信技術による遠隔操作が絡む事が多く、現在進行形の技術が多い事は事実だ。

無人運転では人間以外の誰が運転するかと言えばコンピュータだろう、未来と夢は別にして現在はノイマン方式のプログラムで動作する。
何でも行って欲しい汎用の考えは誰しもあると思うが、まだまだ作業限定のロボット作業が無人運転の実施例だ。
人間の達人と言われる人の動作を教えて憶えさせる事で、似た動作を行わせる事は利用範囲を拡げた、つまり人間が教える事で作業を憶えて疲れを知らなく、毎回同じ作業を繰り返す事になる。
無人とは、教え込まれた作業をする状態を指す。

無人運転ではロボットやコンピュータが動作させるイメージになるし、実際にはそうだがそれが装置に搭載されても外部から判る必要はない、従って何かの装置がロボットやコンピュータ搭載で無人運転機能があるかどうかは一般には見た目で区別出来ないし、その必要もない。
ただし例外もある、無人で動作する事が外部から判る・区別出来る必要がある装置もある、例えば交通機関が無人で動くとそれが無人運転だと判らないと事故だと思う人もいる、民生機器は無人動作かどうか表示した方が無難だ。
一般にはまだまだ無人運転に慣れていない・信用度が低い装置が多いので不安を与えるし実際に事故の場合の対処が異なる。
例えば複数台の自動改札装置を1人で見張る様にトラブル対策を取る事がまだまだ一般的には多い。

無人運転は、最初は省人化と人件費ダウンが目的で始まった。
それが製造に絡むと、まずは手作業と同じレベルの達成へ、次に連続運転と速度アップへの改良へと向かい、人の作業以上の精度の追求となった。
人はミスや疲れや精神的な乱れが生じる、それ故にそれらがない装置とコンピュータ等での無人運転が技術向上で人の作業以上の精度を達成する事は可能となる。
交通機関での利用が進んでいる、航空機の自動運転は進むが現実に人間が膨大な計器とコントロールを正確に行う事には限界が早期に生じていた、鉄道でも自動列車コントロールシステムは運行密度の高い地域を中心に必需となっている。
そして今は、小型飛行体・ドローンや乗用車の無人運転が注目されている。

民生用途の無人化は商品の差別化と付加価値の追加が目的で競って開発された、それが利用者に受け入れられるかは個々の内容で違った。
同時にそれは社会環境の影響も多いと言える、登場が早すぎる商品は先駆的であっても受け入れられない事も多い。
社会環境の具体例としては、インターネットや無線通信や情報機器と半導体等の普及と価格(使用料)の低下と、技術の向上だ、一旦普及が始まると同時に価格が下がり加速的に広がる。
他の社会環境は人口(主に省人化)と高齢化がある、炊飯器や洗濯機を始め起動スイッチを押すと自動無人運転で作業終了まで進む、利用者は時間が不足する人と自動無人でないと作業出来ない人を含む。
高齢者は操作ミスや作業疲労が多く、需要が期待出来る。
特に注目は、高齢者の自動車運転事故の急増に伴う運転免許制度の見直しとそれに伴う、高齢者用の自動または無人運転自動車の開発だ。

無人運転では人に代わる運転者が必要だ、事前プログラムや遠隔操作で対応できる事もあるが、一般的では無い。
そこで重視されているのが人工知能と関連技術だ、頭脳と目などの監視情報とその結果の動作と、それをまとめたシステムだ。
特に急激に研究が進むのが人工知能だが、ただ特定の限られた用途では成果をあげているが、一般化するには法律とか倫理とかの難しい判断能力が要求される。
人間でも判断ミスを起こしかねない状況で正しい判断を行える事が求められるのだが、その課題は避けて通れない。


高分子合成

プラスチックとも呼ばれる有機化学で合成された化学物質群がある、自然界には希な物質だが、原理的には無数の組み合わせを作る事が出来る。
ただし、低分子物質とは異なり分子数や重合場所の厳密な管理・コントロールは難しいので正確な数値で表せる物質ではない。
同じ低分子物質から合成して作られた物質でも、重合度によって分子量が異なり性質の違う物質=高分子物質が出来る。
重合度は明確にコントロール出来ないので、幅を持った分子量の物質の混合体となるが連続した似た性質の集まりなので、厳密では無くとも性質と再現性が得られれば商品となる。
個体が集まり集合となると、正確には一致しなくともある幅で性質が定まると考え、そして集合として機能を持つと考える、それらの高分子物質を作る方法が合成だ。

高分子合成品は、その性質から熱軟化性と熱可塑性とに分類される事もある。
熱軟化性は、温度を上げて転移点(温度)を越えると固体が軟化し、再度温度を下げるとほぼ元の固体に戻る性質だ、高分子合成品は例えばアモルファスやガラスなどと似ていてある温度で突然に固体から液体に相転移しなく、徐々に性質が変わる。
熱可塑性は、温度を上げるとより硬化する現象と高温で軟化する現象が重なり起きる性質であり、再度温度を下げると初期よりも硬化が進んだ状態になる、これは温度を上げる事で分子の重合がより多く起き続ける現象であり、分子量が増加する事で起きる。
熱可塑性は分子量増加が続くと同時に、熱劣化による破壊も生じる、その2つの区別・分離は難しい。

高分子合成は合成化学会社の主力業務だ、規模は多様だが低分子材料製造会社から材料を購入して、合成で高分子製品を製造する。
製造した高分子製品もまた、多くは材料として販売されて、次のメーカーで商品に加工される。
元に遡る程に規模が大きい製造施設等が必要で、企業規模も大きくなるのが一般的な傾向だ、それ故にその企業数は多くはない。
材料には一般科学名と共に、商品名を付けて販売するが提供者が少ないので商品名で扱われる事も多い、特に人工合成物は広い集合の名称よりも技術的に有用なレベルに分類された商品名の方が有用だ。

販売される素材料が分子量の少ない高分子(呼び方を変える事もある)の事も多い、代表は熱可塑性樹脂のエポキシだ。
提供する材料を合成する事で新しい高分子を合成する、実務的に販売提供される材料も多様だがその分類は組成よりも分子量が主体だ、同じ組成でも分子量が異なる材料でシリーズを作る。
基本組成はメーカーが異なっても同じにする事のメリットがある、また商品名も分子量と繋がる物もある、例えば商品番号が分子量を表すものだ。
素材料は合成しやすい形態で提供されて倉庫保管し必要に応じて使用するが、同じ温度(例えば室温)で分子量が小さいと液体でそれが次第に固体に変わって行く。
一番扱い難いのが室温で液体と固体の境目の材料だ、温度が少し高くなると柔らかくなりくっついて扱い難い形態になる、その材料は低温保管して顆粒状を保つ必要がある、その判断は分子量が判る商品名・番号が判りやすい。

高分子材料は素材構成や重合度で多様な性質を作れる、その中から用途に合った高性能の物質を作り提供するのが合成メーカーだ。
その提供品が機械的加工を残す製品であったり、熱と圧力で成形加工する直前の製品であったりする。
合成は素材料の他に各種の触媒や改質材料を使用するが多くはノウハウになる事が多い、ビジネスでは新開発品は組成・材料と製法を特許化するが、高分子材料の場合は特許範囲の隣接した部分を調べる事で互換性のある商品を開発出来る事も多い。
それらを含めた特許戦略で他が類似商品を作れなくして独占的な販売を行うには、商品開発方法や特許を含めたビジネス展開の能力になる、入り口は広いが奥行きも広い分野だ。

高分子材料は廃物処理方法が問題になる、もっと言えば再生方法で、焼却で分解する方法もあるが分解した気体が問題だ。
分解したタール状液体を石油並に扱うのはまだまだ難しい、組成よりも顆粒や粉末にして構造的な再生がひとつの方法だが、ごく一部だ。
廃棄と再生を考慮した高分子合成は如何にもテーマになりそうだが、高分子合成の費用的なメリットが弱くなる。
合成と分解は反対の反応だが、不可逆で高分子合成でコントロール出来るのは合成方向だけなのが一般だ。
廃棄と再生とはまだまだこれからの課題となっている。


精密モーター

ロボットや自動装置が注目されているが、多くはコンピュータが知覚として中心になりセンサー入力と手足としての動的出力を持つ構成が基本となる。
コンピュータが中心となると現在はデジタル信号を扱うので、入力も出力もデジタル信号を扱う事になりそれに適した機器が使用される。
デジタル信号を動力に変換する機器の1つがデジタル精密モーターで、制御用に作られたモーターがある。
デジタル信号をそのままに使えば、ステッピングモーターの様にデジタル動作になる、1単位毎に動く訳でなく離散数値を動くだけで一括動作だ。
この分野は高度に発達した情報処理技術を背景に利用する事が出来る事や、デジタル機器の特徴である、複数の重ね合わせの合成動作を使用する事が出来る、それが例えば人間の動作のシュミレーションとして有用な事が考えれられる。

ステッピングモーターは、パルス信号に同期して動作するモーターで、パルスモーターとも呼ばれ、正確な位置決め制御用途に使用される。
長所としては、1:運動量が駆動パルスの数に比例、2:デジタル制御回路とでの動作が容易3:開ループ制御が可能
欠点は、1:エネルギーの効率が悪い 事がある、これは精度の為にエネルギーを消費すると考える事が出来る。
ステッピングモーターの用途は、プリンターやコンピューターの可動式の記憶装置全般があり、全般的なロボットや数値制御機械は全て対象となる。
ステッピングモーターはサーボモーターと共に精密モーターの代表的に使用されている。

ステッピングモーターは入力パルス信号に応じてモータ-が回転するが、類似用途のサーボモータ-は軸の回転角度と回転速度を検出器(エンコーダ)で検出してその情報をモータドライバ-へフィードバックしてこのフィードバックとモータドライバ入力される制御情報の差を無くす様に動作する。
サーボモーターはステッピングモーターを比較して、
・回転制御がなめらか
・電流フィードバックを行うので急な負荷変動に対応しやすい
・AC100V以上の高い電源電圧で駆動する
・耐剛性が必要で、制御・機構部が複雑の為にコスト高となり易い
・トルク変動に対し追従するので、その際に偏差=遅れが発生する
絶対的な優位ではなくて、用途的に向いている方を利用する。

精密モーターによる位置制御は、1モーターで1軸と考える。
一般には3次元が対象であるし、画像処理の基本も2次元が対象になる事もあるが、いずれにしても複数軸の制御を行う用途が必要だ。
多軸制御は複数モーターの重ね合わせで行う、動作前と動作後だけを制御するだけのものは現在では対象から外れている、単純に言えば最初にX軸を動かして次にY軸を動かす方法は結果だけが同じで過程は異なる、これはデジタルの動作単位が大き過ぎるとも言える。
コンピュータのマルチタスクでは厳密にはタイムスライスでも同時に動作しないのだが、動作単位を小さくする事で見た目が複数軸が同時に動作する様に見せる、それはデジタル的な動作がアナログ的ななめらかな動作に見える事でもある。

パルスモーターは駆動から見ればオープン方式で入力したパルスで動作させる。
これに対して、サーボモーターはクローズ式で出力を制御器にフィードバックしてコントロールする、サーボモーターはそれに直流と交流や複数の要素が絡む、要素が多いことはマイナスと考える場合もあるだろうが、技術改良要素が多いとも言える。
パルスモーターもサーボモーターも、モーターイメージが強い回転部分だけではなく制御部分があってはじめて動作する、パルスモーターではパルス発生装置であり、サーボモーターではロータリーエンコーダ等のセンサー部でありフィードバックドライバ等の制御器だ。

精密モーターには、回転ではなく同じ軌道を往復するリニアモーターがある、線形という意味で1軸動作を思わせる、実際にそのようなモーターもあるし例えばフロッピィデスクドライブのヘッドの動きは直線だった。その後の回転体記憶装置では回転モーターと軸移動機構で位置決めするが、軸移動は単純な1軸動作の他に、ロータリエンコーダを使用する事が増えている。
その動作はスィングとも円弧とも言われるが、回転円盤の軸方向に動くが2次元の円弧の動きをする、これは動作スペースと駆動部と含めて少ない面積で稼働が出来る事や、解像度が得られる事が理由で、同時に壊れやすい機械稼働部がスィング動作の方が寿命的に長く設計出来る理由がある。
ロボットを中心にした、多軸制御が増えているので位置決め用の精密モーターの装置当たりの使用数は急増する方向だ。

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