項目別バックナンバー[5]:技術情報:27

電子制御

電子制御という言葉は、現実的にはコンピュータ制御と同じです。
別にコンピュータを使用する必然性はありませんが、現在ではコンピュータ制御が一番効率的です。
最近の機械動作は、ダイレクトな力の伝達ではなく、電子部品にプログラムさ れた複雑な動作を行う事が普通になっています。
機械とコンピュータ・電子回路とが、組み合わさって機械の動作を行う仕組みになっています。
昔から、自動制御は・比例制御・微分制御・積分制御の重ね合わせで行う事が 良いとされていましたが、それを実現するには難題がありました。
コンピュータ関連の発達は、その壁を除く事になりました。

電子制御(コンピュータ制御)の利点は、
・複雑な制御が可能になる
・変更や改良がソフトの変更で対応できる
・複数のハードに対して応用が出来る
・電子産業の急速な進歩で、機能・コスト等で優位性がある
等メリットが多く、殆どの製品で利用されています。
短所は、
・長い歴史でみれば新しい技術である
・ハードと電子回路とソフトという構成になり、複雑になるとの見方も出来る
・電子回路の持つ短所はそのまま持ち込む(長所と同時に)
・電子制御を理解できない年代が存在する
等でしょう。

電子制御の特徴のひとつとして、利用方法次第では自己診断プログラムを組み  こむ事が出来る事があります。
もっと条件が良ければ、その結果等を集めて解析を行う事も出来ます。
こちらは、多数の条件が揃う必要がありますので、なかなか実現は少ないです。
自己診断で問題があれば、アラームを出して警告する事になります。
それが事前に可能ならば、事故防止にも繋がります。
計測器では普通に使用されています。
民生機器でも、次第に組込まれていますし有効利用は今後も課題となります。
装置の定期検査も、実は検査員が検査プログラムで調べる事が主体になっています。

昔から、機械的可動部は摩耗等の故障・劣化が生じやすいと言われています。
電子制御は、設計内容によっては可動部が減少または無くす事が可能です。
それが電子制御の特徴にもあげられます。
ただし、電子回路もハードディスク等の機械的な部分を含む時や、ショックや 振動等がある場所での使用ではその対応が要求されます。
具体的には、部品点数の減少・半田つけ等の接続の減少をはかります。
ディスクリート回路をIC化したり、少数のチップ化したり工夫します。
また回路自体の材料選定まで、用途に応じた設計が必要です。
この事情は、機械的制御と思想は同じです。
電子回路は使用温度等の環境条件の制約があります、それも含めた全体設計が必要です。

電子制御は、産業の各分野に大きな変動をもたらしました。
それ以前は、電子産業と無縁だった分野が急激に電子産業に接近するそして、 ついには自社開発や関連会社での開発を行うようになりました。
日本では、旧財閥系のグループの中に電気・電子関係が含まれる事が多いです ので、電子化の移行はスムーズに行われます。
ただし、電子業界の急激な進歩は、関連企業に格差を生みます。
その時には、グループという考えは逆に不要な制約となります。
電子業界の競争から再編成の動きは、電子制御を使用する業界も同様に動く事になりました。
それは、グループではなく個々の企業の戦略的な技術力の重要さとなります。


磁気共鳴

磁気共鳴も、既に実用化されていますし新規用途開発も進んでいます。
物質の持つ多様な磁性に対して、その内容を共鳴現象を利用して抽出ます。
その結果の処理方法が確立してくると、トータルで非常に重要な情報になります。
特に多くは、非破壊・透視的な方法が可能ですので非常な新技術となる場合があります。
早くから研究されていたのが、核磁気共鳴(NMR)と電子磁気共鳴(EMR)です。
エネルギー源と反応を検知する方法が研究・実用共に重要でした。
特にエネルーギー源は、物質の透過能力・距離や物質の選択透過・吸収に影響します。

共鳴という現象は、周波数選択性を持っています。
そして、周波数を変えてスキャンする事で平面的な状態を反映したデータを得られます。
それをもう一方に機械的にスキャンすると、立体的な情報が得る事が出来ます。
これの計算方法は、高速フーリエ変換で確立しており、装置としてはCTとして利用されています。
何をどの探査とセンサーで情報を得るかが決まれば、原理的には可能です。
実際は装置・機器としては、かなりの大がかりにはなります。

核磁気共鳴(NMR)とは外部磁場にある原子核が固有の周波数の電磁波と相互作用する現象です。
原子核の多く(正確には原子番号と質量数がともに偶数でない原子核)は磁気 的性質をもつ磁石の様にふるまいます。
従ってこれらは、共鳴吸収と対応周波数の発光等を行い、検知も出来ます。
この精度が高くなると、核のわずかな状態の変化で周波数シフトが発生して、それを検知できます。
自然界の多くが核磁気共鳴を起こすし、水を含む物質は水の状態のわずかな変 化で異なる発光シフトが起きます。
これらを詳細に調べた結果、原子核の研究以外に生体を含む多くのものの状態 観察に使用できる様になって来ています。

電子スピン共鳴(ESR)は、不対電子(最外殻の対になっていない電子)が特定 のエネルギー(周波数)のマイクロ波を吸収し、高エネルギー準位へと遷移 現象を利用して不対電子の検出を行います。
物理的にはNMRと同様だが原子核スピンの代わりに電子スピンが励起される。 原子核と電子との質量差でNMRより低磁場・高周波数で測定が行われる。
不対電子を持つ有機物は少ないので用途は限られるが、異なる分野での利用も有ります。

核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging:MRI)の登場と生体への利 用・医療用MRIが急激に広がり、知名度を上げました。
MRIは、核磁気共鳴で生体内の内部情報を画像にする方法です。
断層画像という点ではX線CTと同じですが、物質の異なる物理性質を利用して いる為にX線CTで得られない情報が得られます。
原理は複雑ですが医療への実用で有名になりました。
医療用MRIでは、ほとんどの場合は、水素原子の信号を見ています。
核磁気共鳴する原子は他にも多数ありますが通常は微量であり、画像にするには少なすぎます。
水素原子は水を構成する原子核であり、人間の体の60-70%は水であるので強度的に充分な画像が得られます。

電力の磁気共鳴伝送も徐々に話題になっています。
非接触の方式としては、電磁誘導が有名です。
この方式の原理は、「コイル内の磁束に変化が生じると起電力が発生する」というファラデーの法則です。
磁気共鳴伝送方式も外観的には似ています。
こちらの方式では、給電側コイルの電流で発生した磁場の振動が、同じ周波数 で共振する受電側共振回路に伝わる方式です。
利用する周波数の波長に制限がありますが、実質的に短い距離に受電側コイル があれば磁場振動で電流が流れます。
実用的には、無接触として携帯電話や電気自動車などのバッテリー関係の充電 方式として実用化が研究されています。


超伝導

リニア中央新幹線の話題でついてまわっている超伝導磁石浮揚に使用する、超伝導現象です。
通常はあらゆる物質は有限の電気抵抗値を持っており、その電線で作った電磁 磁石は発熱します。これが制限となり磁石の強度が制限されますし、エネルギーも消費します。
ただし、物質によってはある低温から突然に、電気抵抗がゼロになる現象があ ります。これを超伝導と呼びます。
超伝導は、オランダのオンネスが水銀で発見して以来、金属や金属化合物で徐 々に実用化が研究されています。
理論も完成したと思われていましたが、金属酸化物での高温超伝導が発見されてあらたな研究課題となっています。

超電導という言葉があります。電気抵抗値のゼロ化現象に関しては判り易い用  語です。
超伝導現象は、電気抵抗値のゼロ化現象のみで定義されていません。
超流動という現象も合わせて保有する事の確認を含みます。
超流動とは、超低温で流体の粘性が無くなる現象です。
このあたりも、高温超伝導物質の発見に絡み定義が整備されて来た内容です。
超伝導は、量子論・統計力学を駆使して説明されてきました。
高温超伝導の発見以前は、BCS理論というもので説明出来ていました。
フェルミ統計・ボーズ統計・クーパーペア・ジョセフソン効果等の言葉が飛び交います。
エネルギーが低い状態が安定で、その状態で何が起きるかが超伝導の鍵となります。
エネルーギー最小の法則は広く知られていますが、超低温の量子論では常温の常識とは全く異なる現象が生じます。

量子論では、偶数と奇数とで物質の状態と性質が大きく異なります。
それが表面的に現れるのが熱雑音の少ない低温でその結果超伝導が生じます。
パリティというのが偶数奇数に関わる性質です。独楽の回転方向にたとえられ ます。反対回転が結び付くと安定になり、エネルギーが低くなります。
エネルギーの高い奇数パリティを持つ物質は、2つがペアになるとエネルギーが低くなります。
例えば、電子は奇数パリティですが2個結び付くと偶数になりエネルギー的に は低くなります。ただし、通常は電子同士はマイナスに荷電しているので反 発します。これが、超低温では反発よりもペアになりパリティが偶数になる事がエネルギー的に有利になります。
これが超伝導理論で有名な「クーパー・ペア」です。
常温では反発しあう電子が、超低温ではペアになると不思議な現象が生じます。
超低温は、普通の概念が変わる別の世界です。

物理的には常識ですが、あまり知られていない事に物質の性質は温度と圧力の関数だと言う事があります。
関数関係ですから、3つが相互に関数関係にあるという事です。
超伝導は、転移温度が注目されますが圧力も重要な要素です。
常圧力では、転移温度が高い物質でも少し電流を流すと超伝導状態が破れるのは圧力が関わる現象です。
従って、実用的な超伝導物質は単に使用温度のみでは決まりません。
超伝導の利用の一番進んでいる事は、超伝導磁石でしょう。電磁誘導からは、電流を多く流せば強い磁力を得る事が出来ます。
通常物質では、電流による発熱で制約されます。超伝導では原理的には制約は ありませんが、上記の様に超伝導が破れると使用できませんので、こちらが制約となります。

ベドノルツとミューラーが発見した高温超伝導(従来との比較)は大きな話題 でしたし、今は理論と利用に向けての検討などが行われています。
従来は、金属と金属化合物と一部の有機体でのみ、発見されていた超伝導です し、それに対する理論もBCS理論としてほぼ完成状態でした。
その理論からは、超伝導転移温度に上限が見えていましたので、層状の金属酸 化物で発見された高温超伝導は衝撃でした。
再現性は問題ですが、簡単な装置で誰もが似た現象を示す物質を発見可能状態 がしばらく続き、とても学問とはいえない状況でした。
BCS理論で説明できない物質に対する理解と新理論あるいは、BCS理論を含んで しまうより広い理論の研究が行われています。
超伝導転移温度が高い事のメリットは計りしれませんが、実用的には線状材料 に出来るかどうか、高電流を流す事が出来て機能の高い磁石になるのか等の 課題が多いです。まだ時間は必要といわれています。

超流動現象は、超伝導と密接です。
流体の性質が、まるで粘性が無くなるごとく急激に変化します。
丁度、電気抵抗がなくなるのと同じように起きます。
原因は、超伝導と同じですので、いまでは超伝導物質の判定のひとつにもなっています。
粘性のない流体の挙動は、抵抗のない電流や重力のない物体の運動に似ています。
器に流体をいれても、器の縁をつたわって外へ流れ出します。
粘性がありませんので、流体は障壁を越えて一番低いエネルギーの低い所に移動します。
超流動はこれもスピンと呼ばれる量子的性質の偶数奇数の差で生じます。

低温という言葉や、高温超伝導という言葉が出て来ました。
これらは、超伝導という世界の中であり、一般生活の用語とは意味は異なります。
一般生活では、低温は零下でしょうか?>絶対温度273Kです。
高温は、30-40℃か、水の常圧での沸点の100℃(373K)ぐらいでしょう。
超伝導の世界は、絶対温度(カルビン温度:K)0度からすこしプラスになる領域です。5-20K付近です。
超伝導の高温は、それより高いという意味になります。
超伝導等の世界では、いくつかの温度が目安になります。
通常の水の固体化温度0℃ (273K)と、水の気化・沸点100℃(373K)に当たります。
・二酸化炭素(ドライアイス)の昇華温度=-79℃(196K)
・酸素の液化温度=-183℃(90K)
・窒素の液化温度=-196℃(77K)
・水素の液化温度=-253℃(20K)
安定化・量産性を考慮すると、これらの温度より上か下かは差が大きいです。
これらの温度が、目安・目標になります。

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