項目別バックナンバー[5]:技術情報:20

カメラ

現在はカメラといっても広い範囲を指します。
「アナログ」「デジタル」。「静止画」「動画」。「オート」「手動」。
その他・・分類方法を考えたらきりがありません。そこに使用されている技術 も多様です。1台の新作カメラの発売には100位の特許が必要という時代 が有りました。少なくても最新技術を詰め込んだ製品である必要はあります。
また、携帯電話への組み込みに見られるように、機能と機器が一致しない時代にもなりました。
ここでは分類ではなく、トピックス風に関連技術を取り上げたいと思います。
カメラ機能とは、映像の何かの媒体への記録です。そこでの最低の必要技術は シャッター・フォーカス・記録・媒体になると思います。
媒体としては、長く銀塩フィルムの時代がありました。併行して磁気記録も進 歩しました。音声から映像記録は、容量で非常に大きな差があります。半導 体の集積密度と同様に、磁気記録密度の進歩は著しく早く、その影響はカメラに直接に関係しました。

「デジタル」化が一番大きなキーワードでしょう。これはデータの保管方法・ 通信送付方法・非劣化寿命等で大きな変化をもたらしました。
同時に、機器・媒体メーカーの技術地図を塗り替えてしまいました。アナログ カメラメーカーは、デジタル対応に時差が発生しました。また電子機器メー カーの多数の参入がありました。当初は得意分野がはっきり分かれていました。現在はその面の差はすくなくなったと感じます。
電荷カップリング素子(CCD)というものが多用されるようにもなりました。 電子業界の技術進歩、特に小型化は急激に進みます。従ってデジタルカメラも同様に急激な小型化が進みました。
携帯電話を代表とする種々のデジタル機器に、カメラ機能が搭載されたのも小型化の結果です。

「オートフォーカス」はその登場時期から見てもデジタル化とは直接は影響は ないです。しかし、その原理・画像処理技術自体はデジタル技術と密接な関係があります。
シャッターを押すと、自動で受光素子が左右に移動して往復の中で最適な焦点 を見つける事が基本原理です。画像の処理と最適判断は電子化された技術でデジタル処理になります。
電子化・画像処理・デジタル処理は、その後のカメラの多くの新技術・発展の 基本技術になりました。そもそも、マイコンでの処理自体が可能にしていますのでデジタル信号である必要が存在します。

「記録媒体」は、一番分かり易い変化です。銀塩感光フィルムが主体から一気 に電子記録に変わりました。電子記録も急激に変わっています。
最初は磁気記録がメインでした。VTRが代表です。斜め回転ヘッド開発の歴史は 技術史に残りますが、今や衰退の方向です。フィルムはランダムアクセスが 出来ませんので、これが可能な別の媒体が生まれると次第に変わる運命に有ります。
もう一つは、媒体自身が固定か着脱可能かです。基本は着脱可能ですが、HDD が利用される様になって固定と着脱媒体の併用が拡がりつつあります。着脱式記録媒体は次回で。

表示機能がついたのも大きな変化です。銀塩フィルムでは、DPEの後で初めて 撮影結果を見る事が可能でした。
それ故に、ポラロイド方式の短時間現像方式も広く利用されていました。現在 では、撮影した1枚のみで原板が残らないという用途で生き残っています。
初期のデジタルカメラでは、即時再生機能はありませんでした。しかし、液晶 画面を備えてファインダーと再生を行う機能が登場してからは、少なくても 再生用の表示機能がある機種が急増しました。特に動画用のカメラでは、ほとんど持つ機能です。

昔ならば盗み撮り用と思われるような形状や、他の製品の機能の一部としてカメラが設置・付属しているようになりました。
代表は、携帯電話でしょう。撮してそのまま通信で送るという機能は有用です。 現実には、盗み撮りといわれても仕方がない使われかたも多いようです。 いろいろな所で、指摘されています。結果的に、携帯電話の持ち込み禁止になります。
カメラ機能の超小型化と、必要機能の他のデジタル機器との共用可能化が上記 につながっています。それはデジタル化により生まれた事でもあります。
色々なデジタル機器の機能のなかの、目の部分がカメラだと考えれば自然に、用途が非常に広い事が分かります。
通常はセンサーで外部情報を集めていましたが、映像処理技術が進歩してくる とカメラから入手する情報は非常に重要になっています。


逆浸透膜

膜は研究レベルと一部の実用レベルではある程度の歴史があります。
ただ、一般的な使用にはまだなじみがない状況と思います。
逆浸透膜の原理は、簡単に言えば濾過・理科の実験で行った濾過紙を通すと濁った溶液がすんだ溶液(水)になるようなものです。
液体と溶解した物質の分離機能が主体です。
何の物質かと言えばそれは色々です。それぞれに、分子のサイズがありますか ら、そのサイズに合わせた(簡単ではないですが)穴を膜に作れば分離する事が原理的に可能になります。
現在、よく知られているのは、海水の塩分を取り除き水を作るモジュール設備です。

膜で水等の液体と、それに混ざった物質を取り除くというと複雑に感じますが 理屈は濾過と同じで、膜に分離する分子のサイズに合わせた孔をあけるので す。問題は孔のサイズの製造制御と、どのような圧力で濾過的な作業をするのかです。
この事は、各製造メーカーのノウハウになっています。
しかし、液体の種類や分離分子の種類を考えると、他種類の膜と孔サイズが必要で有ることは容易に予想できます。
それぞれの専門メーカーと、複数に対応する膜総合メーカーが存在します。 そして、膜を実際に使用するモジュールに組み立てるメーカーが存在します。兼業も当然あります。
技術的に、膜の作成という化学的な部分と、モジュールという機械・システム的な部分は異なる技術が必要になります。

膜は使い捨てが基本的です。
勿論、強度の高い膜で洗浄して繰り返し使用もあります。それでも、機能の維 持の面からは寿命は短いと考えるべきです。
モジュールという考え方は、定期交換という使用方法とつながっています。
孔を形成しやすい材料を選べる事や、微妙な孔のサイズの制御という機能の要 求は定期交換という使用方法があって、成り立ちます。 これには、モジュール寿命の容易な判断、膜の洗浄法などのメンテナンス方法が含まれます。
例えば、海水の淡水化モジュールとするとコンスタントに稼働が必要になりま す。従ってメンテナンスでの停止期間を含めた、代替えモジュールの準備と 切り替えながらの長期連続稼働がシステム的に組み込まれている必要があり ます。補充用の膜のストックや、その寿命や補充発注納期等も重要です。

逆浸透という言葉について説明しておきます。
膜にあいた孔を通して、孔のサイズにあった分子を通り抜けるという方式です。
濾過紙の場合は、重力で落ちますが、膜での分離では圧力を利用します。
浸透という現象は、濃度が異なる場合に膜で分離された両側の濃度が同じになるように分子が孔を通して移動する現象です。
実際の使用方法は、その逆で濃度の差を大きくするために使用します。自然法 則に反する現象を起こすのですから、何かのエネルギーが必要です。
使用するのは圧力です。液体に圧力をかけると、孔を通れる分子のみが膜を通 して移動します。これにより、ある特定の分子を分離できるわけです。
それゆえに、自然な浸透現象の逆の動作を行うので逆浸透膜と呼びます。


移動平均

物事の時系列変化や条件変化をグラフ化する方式のひとつに、移動平均があります。
そもそもグラフは、平均とバラツキ(標準偏差等)で表すのが望ましいですが色々なメデイアでよくみるのは、平均のみです。
かなり慣れた人ならば、それが有効な変化か単なる誤差か推定できますが、コ メントでは思わせぶりにあたかも有効な変化であると仮定して議論を展開してゆきます。
グラフというのは、デジタル的でなめらかな変化は表しにくいです。年単位で 表示したとして、現実は1月1日で突然変わる事はありません。
これをカバーする方法が移動平均です。例えば、年単位の変動を前後3年の平均で表します。

移動平均から雑音をなくすには、平均を取る期間を3つから例えば5つに増やせば良いです。
しかし、雑音か信号かの判断は実は非常に難しいです。
ある点で、大きな値を示していても、移動平均の取り方でなめらかな変化に変 わります。雑音であれば良いですが、信号であれば大きな見落としになります。
単純グラフ・複数の移動平均グラフを比較して、傾向や解釈に差が生じる場合 は正しい結果を選ぶには、他の要因を調べる必要があります。
逆にいえば、しばしば見る統計と称するグラフには作成者の作意が入っている 可能性がかなりあると言えます。グラフが結果で証拠という主張は、まずは疑う必要があります。

しばしば例にされるのが、放射線アルファ粒子の波長分布です。
実は、2粒子の放出と分かっていますが、実験精度とその整理方法によって、測定誤差で複数の山が得られます。
これを移動平均でなめらかにして行くと、次第に測定誤差が消えて山がふたつなめらかな分布としてあらわれます。
これをもっと続けると、予想される事ですが最後は山はひとつになります。
これは全て移動平均の性格です。問題は、どの程度のデータ処理を行うかにあります。
これは、測定誤差を含めた・平均+ー標準偏差で表し、移動平均で見かけのサ ンプル数が減少して標準偏差が小さくなって結果で判断します。
移動平均は有用ですが、誤差的に必要最低限の使用が必要です。

この項目の最後に、移動平均の数学的な考え方をまとめます。
移動平均を適合するのは、基本的に不連続グラフ・データです。年別・月別等 の人為的な離散したデータです。例えば12/31と、次の1/1に決定的 な差は存在しませんが、年別グラフでは明確な差となり区別します。
元々連続したデータを、特別な根拠なしに離散化する理由はありません。そこに見逃しやすい要因が発生する原因があります。
これを、元の連続データの性質に戻す方法の試みが移動平均と言えます。デー タに可能な限り同等の価値を与える試みですので、過度に多くのデータを平 均しても意味は生じません。意味なく区切られた隣接データを合わせて利用 する事には大きな意味があります。(注:ここでの連続は数学的に厳密な内容ではありません)

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